Technólogia Vol. 1 - Pt. 22

Technologia

26. 道なき道

 困難な道を行くということがどのくらい困難なことなのか、ということは実際に困難に直面しないと解らない。困難な道を選んだ三人の中で一番この先の事を不安に思っているのは、やや心配性なところもある堂中である。賢い人間ほどあらゆる最悪なことを想像できたりもするので、彼が心配性になってしまうのも無理はない。
 花屋はどうかというと、彼女もこの世界の事は良く知っているし、事前に情報がない場所へ行くことが危険なのも知っている。ただ、彼女の場合はあらゆる事を想定してそれに対処出来るように心構えをする。彼女が余計な事を不安に思わないで済むのは、そういう気の持ち方が出来るからのようだ。(どうでもイイが、またそろそろ忘れている人がいるかも知れないので書いておくと「花屋」とは彼女の名前で「カヤ」と読む。「ハナヤ」ではないので要注意だ。)
 そして、今のところまだ観光気分なのが蚊屋野だったが。箱根にある街を出発したすぐ後の辺りの景色からするとそれもまた仕方のないことかも知れない。
 尾根に沿ったなだらかに上下する道を歩いていると、時々眼下に芦ノ湖が姿を見せる。この辺りは20年前の世界で蚊屋野も良く訪れていた場所だったが、こうやって自分の足で歩くのは初めてだった。彼らがさっきまでいた箱根の街は灰の影響をほとんど受けていなかったが、その周辺の山や湖も同様ということだろう。そしてあの街に食糧と潤いをもたらしている。
 朝日の中の山と湖を見ながら蚊屋野はそんなふうにのどかな事を考えていたのだが、歩いて行くと遠くの方に木が枯れて山肌がむき出しになった場所が見えるようになって来ている。いつまでも呑気な感じではいられないことに蚊屋野が気付いているのかどうか。
 イヌ君は吠えたりもせず、さらには蚊屋野だけに聞こえる動物の声で話す事もなく、彼らの前を進んだり、うしろからついてきたりしている。こういう時のイヌというのは一体何を考えているのか謎であるが、いつもと違う空気の臭いをかいだり、目新しいものを見つけてそれについて考えたり、イヌはイヌなりに忙しいのかも知れない。
「ねえ、このワンちゃん、なんて名前なのかな?」
イヌ君が自分の前を歩き始めた時に花屋が言った。確かにこれからずっと一緒にいるのだから、いつまでもイヌ君では変かも知れない。
「そうだな。いつまでもワン公じゃダメっすよね」
ワン公と呼ぶのは堂中だけだと思うが。
「じゃあ、コロっていうのはどうかな?なんか丸っこいから」
花屋が言うとイヌ君は花屋の近くを離れて蚊屋野に近づいて来た。
「(おいおい、頼むぜ。イヌにとってその名前がどれほど屈辱的か知ってるのか?なんとかしてくれよ、蚊屋野さんよ)」
「なんか、その名前はあんまり好きじゃなさそうだね」
蚊屋野が言ったが、イヌ君が花屋から離れる様子がコレまでの動きと違っていたのもあって、花屋もその意見に納得してしまった。
「じゃあ、何が良いかな。メロンちゃんは?」
どうやら花屋は丸いものにこだわっているようだ。
「(やめてくれよ。どうして人間の女はイヌに可愛い名前を付けたがるんだ?)」
イヌ君は意味も無くワンワンと吠え出しそうな不安げな様子である。
「マモル君はなんかないの?」
蚊屋野はイヌ君が動揺するのが面白かったので、まず堂中に意見を求めてみた。
「じゃあ、これはどうっすかね。ルークって」
「(おう、なかなか良いセンいってるぜ)」
イヌ君は満足げだが、そのSFファン的なセンスに今度は花屋が不満そうである。
「おい、イヌ君。キミは何て名前なんだ?」
蚊屋野が聞いた。彼にだけは本当の答えが解るのだが。
「(オレか?オレはケルベロスっていうんだ。まあ、生まれた時には名前なんてなかったんだがな。ある時ケルベロスってイヌの話を人間がしてるの聞いて、それが良い感じだったもんだからな。その時自分の名前をケルベロスに決めたんだよ)」
意外と中二病的なイヌ君のセンスにちょっと戸惑った蚊屋野である。この名前で二人は納得するだろうか?
「こういうのはどうかな?ケルベロスとか」
イヌ君のために蚊屋野が言ったのだが、これが自分のセンスだと思われるかも知れないと気付いて「しまった」と思ってもいる。
「それって、地獄の…」
早速、堂中からの反論が来たと思ったのだが、それを遮るようにしてイヌ君が吠えだした。それから蚊屋野の顔を見る。
「(すまねえが、もう一度ケルベロスっていってくれよ)」
イヌ君が良い作戦を思い付いたようだ。蚊屋野がイヌ君に向かって「ケルベロス」と言うと、イヌ君がそれに答えるように「ワン」と吠える。
「それって、気に入ってるってことっすかね?」
「そうみたいだけど…」
堂中と花屋は不思議そうにイヌ君の方を見ている。というか、イヌ君ではなくてそろそろケルベロスという名前に決まりそうなのだが。
「おいケルベロス」
堂中が言うと、イヌ君は堂中の方に走って行く。
「じゃあ、ケルベロスで決まりだな」
それを聞いたケルベロスは短い尻尾を振って蚊屋野に答えた。
「じゃあ、あだ名はケロちゃんだね」
花屋が言うとケロちゃんの尻尾は動きを止めた。
「(ああ、どうしてそうなるんだ?)」
「そうっすね。ケロスケの方が呼びやすいっすよね」
「(チクショー。それじゃあ、オレも後でオマエらに可愛いあだ名をつけてやるからな)」
ということで、イヌ君の正式な名前はケルベロスになったのだが、成り行き上、ケロちゃんと呼ばれることになりそうだ。地獄の番犬だがケロちゃん。コロというイヌらしい名前を拒否したら最終的にはケロというカエルみたいな呼び名を付けられてしまった。「(まあ、イヌ君よりはましだな)」と思ってケロちゃんは納得したようだ。

 それからしばらくは順調に進むことが出来た。山の中のアスファルトの道は所々で地滑りが起きたためか崩れているところもあったのだが、慎重な堂中が先頭を歩いて、色々と気がつく花屋が最後を歩けば多少の危険なら対処できる。
 しかし、芦ノ湖を過ぎる辺りまで来るとこれまでどおりに進めないのは、この世界に詳しくない蚊屋野にもだいたい解った。道は荒れ果てて場所によっては土砂と一緒に雨で流されたようで、道すらなくなっている場所もある。それよりも、まず木が枯れてほとんど無くなっている。木がなくなったところに雨が降って山が削られたようだ。乾いた斜面に土がむき出しになっている。
「マズいっすねえ…」
堂中が立ち止まって言った。それは目の前の悪路の事だけを言っているのでは無いようだ。
「どうやらこの先の中継塔が機能してないみたいなんすけど。どおりで通信が出来なかったワケっすね」
堂中が彼のスマートフォンを見ながら言った。この世界では電話というものがあるのか解らないのでスマートフォンという呼び方で良いのか解らないし、フォウチュン・バァはモバイルとか呼んでいたが。その辺は解りやすくスマートフォンで良いのである。
 蚊屋野もつられて自分のスマートフォンを取り出した。
「電波は来てるみたいだけど…」
確かに電波は届いているが、そういうことではないようだ。
「そうなんすけど、それはこっちに近い方の中継塔からの電波なんすよ。この先に進むと通信はほとんど無理かも知れないっす」
そういうことを言われると急に目の前が暗くなっていくような感じがする。20年前は特にスマホに依存していたワケでもなかった。しかし、スマホが使えればなんとかなるという安心感がどこかにあったのかも知れない。
 スマートフォンが使えないと道に迷ったらどこに進めば良いのか解らないし、誰かに助けを求めるために連絡を取ることも出来ない。蚊屋野は思いきって箱根に帰ることを提案しようかと思ったのだが、それは出来ない。少なくとももっと悪い状況になってくれたら引き返すことも出来るかも知れないのだが。ここはこの状況を受け入れるしかなさそうだ。よく考えれば、スマホを持つようになる前ならそれが普通だったのだし。下手に便利なものを使う事に慣れてしまったおかげで、こういう時に余計に不安になってしまう。
「それじゃあ、慎重に進みましょう」
蚊屋野がビクビクしながらアレコレ考えていたのだが、花屋は引き返すことなど全く考えていなかったようだ。
 その先をさらに進むと道にはアスファルトがほとんど残っていなかったが、わずかに残った痕跡を辿りながら先に進んだ。アスファルトが崩れてなくなっているということは、ここには例の灰が降ってくるという事なので、時間も気にしなければいけなくなる。電波の届く場所で最新の観測データを元にした灰予報を確認して、彼らは次の休憩地点まで急いで進むことにした。
 彼らは時々舗装されていない斜面で足を滑らせたりしていたが、蚊屋野にとっては箱根で堂中からもらった防具が役に立っていた。まだ派手に転んだりはしていないが、ヒザとヒジにプロテクターがついているとなんとなく安心する。花屋が着けているのはバイク用の防具のようだが、それに比べるとかなり簡単な作りでもある。蚊屋野が付けているのはスケボーとかをやる時に付けるものだろう。それでも安心感がかなり違う。転んでも大丈夫だと思うと、歩く時に余計な力を入れる必要がなくなるので、スムーズに進めたりもする。
 もしかして、人間は常にこういうものを着けて生活すべきだったんじゃないか?と蚊屋野は思った。何かが起きた時に怪我をするかも知れない、と思っていると何かと心配になってくる。心配になってくるとストレスも増えるし、そういうストレスをためた人間が多くなると世の中がギスギスしてくる。みんなが防具を着けて生活していたら、もっと世の中の色んな事がスムーズに進んでいたに違いない。
 蚊屋野がそんな下らない事を考えながら急な登り坂を歩いていると、彼は派手に足を滑らせた。そして転ばないように慌てて目の前の固い地面に手をついた。ヒザもヒジもぶつけなかったのだが、けっこう急な斜面だったために手をついた後も少し体が下に滑り落ちて、それを手で抑えないといけなかった。
 体勢を元に戻してから手のひらを見ると手首の近くがすりむけて血が出ていた。
「手袋もした方が良いっすよ」
堂中にそう言われて蚊屋野はそれまでの防具についての考察を全部取り消さないといけないと思っていた。
「あと少しで休憩出来ますから、そこまで頑張りましょう」
蚊屋野の後ろで花屋が言った。足を滑らせたりするということは確かに疲れている証拠かも知れない。花屋の方を振り返った蚊屋野は彼女の後ろにこれまで歩いて来た道を確認した。朝から歩いていた緑の多い場所はもうかなり遠くにある。
 そのせいなのか知らないが、蚊屋野は急に心細い感じがした。歩く度に砂埃が立ち、細かい石が斜面を転がり落ちていくこの場所に比べると、朝までいたあの緑の多い場所は別世界である。でもそれだけで心細くなったりするのだろうか?
 もちろん、理由はそれだけではなかったようだ。そういう時には無意識のうちに何かに気付いている。
「(どうやら、イヤでも頑張らなきゃいけなくなりそうだがな)」
いち早くその正体に気付いたのはケロ君だった。言われてから蚊屋野も見ている景色の異変に気付いたようだ。心細い原因は緑がないだけではない。空がミョーに暗くなっているのだ。これって何だかヤバい気がすると思って蚊屋野がさらにこれから起こる事を考えようとしていたのだが、その時にケロ君がワンと吠えて蚊屋野はビックリした。
 ケロ君の声に花屋と堂中も振り返った。ケロ君がさらに吠えるので彼らはその目線の先を追った。そして空の異変に気付いたようだ。
「ヤバいっすね」
「次の休憩所まではどのくらい?」
そう聞いてから花屋は辺りを見回して、そんな事を気にしている場合ではないと気がついた。休憩所に辿り着かない限り、この辺りに灰から身を隠す場所はなさそうだ。
「とにかく急いで進みましょう」
堂中も次の休憩所までの距離を考えるのが意味がないと気付いて先に進んだ。歩くよりも走るという感じの堂中を見て蚊屋野も慌ててあとについていった。
 空が暗くなって冷たい風が吹いてきた。それがどういう事かとしばらく考えないといけなかったが、それが灰の降ってくる前触れだと解って、蚊屋野は急いで先に進みながらも「あぁ!」と納得した。そして「これは大変だ!」と思って必死で堂中のあとを追いかけた。
 斜面を登り切ると先はゆっくりと下っていて、先が良く見渡せた。
「良かった!あったっすよ!」
堂中が少し遠くに休憩所の場所を見つけて大きな声で言った。それよりも「良かった」とはどういうことか?ということだが。実はこの辺りに関する情報は長い間入ってこなかったので、本当にそこに休憩所があるのか解っていなかったのである。蚊屋野がここでその事に気付いていたらゾッとしていたところだが、今は灰から逃げるのに必死でそんな余裕はないようだ。
 休憩所を見つけて少し安心したのか、堂中は進むペースを少し緩めたのだが、そうするとケロ君が吠えながら彼らを抜かしていった。
「(おい、走んないと間に合わないぜ)」
灰は曇っていようと晴れていようと降ってくるのだ。だからさっきより空が暗くなっていないからといって、それが灰が降ってこないという理由にはならない。この曇り空は風を呼んで、その風が灰を運んでくるだけなのだから。
「私達も走らないと間に合わない」
花屋が言った時には残りの二人もなんとなくマズい事になっているのに気づいていたようで走り出していた。
 どうやら灰が降ってくる前に休憩所に辿り着けそうだ。そう思っていた三人だが、先に辿り着いていたケロ君がその入り口に向かって吠えている。斜面に横穴を開けたようなトンネル状の休憩所は前に使った高速道路の高架下にあったものと似ている。ただし、今回は上に高架がないので、ちゃんと中に入らないと灰を浴びることになってしまう。
 ケロ君は早く中に入りたくて吠えているのかと思ったが、近づくとそうでないことに花屋が気付いた。そして、他の二人とは違う方向に走っていく。
「花屋さん、早く行かないと」
花屋がついてこないのに気付いた蚊屋野が言った。
「良いから早く行って!」
これまで聞いたことがないような花屋の厳しい口調に驚いた蚊屋野は、言われたとおりに再び休憩所の入り口に向かって走り出した。
 入り口の扉に近づくと、観音開きになっている扉の両側の取っ手に鎖が巻かれて、南京錠がかけられている。これは一体どういう事なのか?もしかすると代表者の堂中が鍵とか持っているのではないか、と蚊屋野は一瞬思ったのだが、堂中が鍵のかかった扉を前にして慌てているのを見ると、そうではなさそうだ。そして蚊屋野も慌てないといけなくなってきた。
 どうすれば良いのか?と思っても思い付くことなどない。その時、扉の上の方から声が聞こえてきた。
「蚊屋野君。これを使って!」
蚊屋野が見上げると花屋がいた。斜面にある休憩所なので、裏から回ると入り口の上の屋根にいくことが出来るのだ。そこから花屋が何か大きくて重そうなものを下に落としてきた。蚊屋野はなんだろう?と思いながら自分の方へ落ちてくるものを見つめていると、彼のすぐ横にコンクリートの塊がドスンと落ちてきた。
あと30センチでも落ちる場所がズレていたら、それは蚊屋野の頭の上に落ちていたかも知れない。上では悲鳴を上げる寸前で口に手を当てたままの花屋が目を丸くして蚊屋野を見て固まっていた。
 どうして、頭の上に大きなコンクリート片が落ちてきても除けようとしなかったのか。蚊屋野だってヤバいとは思っていたのだが、両足がそろった状態で顔を上に向けるとある種の金縛り状態になることがある。そんな事が本当にあるのか疑っている人は、休日にグランドに行って弱そうな草野球チームの試合を見ていれば、そういう金縛り状態の外野手を見る事が出来るはずである。
 それはともかく、ドスンという音を聞いてすぐ横に落ちてきたものを確認してから、もう悲鳴を上げるには遅すぎると思った蚊屋野がさらに考えた。この状況でこのコンクリート片を花屋が落としてきたということは、これで鍵を壊せ、ということに違いない。
 コンクリート片からはちょうど良い具合に鉄筋が二本突き出ていて、それを両手で持つとその大きめのコンクリート片も比較的楽に持ち上げることが出来た。
 蚊屋野がコンクリート片を持って近づいて来ると、堂中とケロ君は扉の前から下がった。鎖も南京錠もかなり頑丈そうだが、このコンクリート片で壊せるのだろうか?多少の心配はあったが、他に方法もないのでやるしかない。
 蚊屋野は一度コンクリート片の端を鎖の上にあててから、上に持ち上げた。そして、そこからコンクリート片を真っ直ぐ下に向けて叩き付ける。しかし、鎖に当たったコンクリート片の勢いは鎖のたわみによって吸収されてしまったようだ。
 これはもっと上手くやらないとだめだ。鎖の位置よりもさらに下をめがけて叩き付けたらそれなりに力が伝わるはずだ。空振りしたら腰を痛めるのだが。まあ、灰を浴びるよりはましだ。
 蚊屋野は思い描いたとおり鎖の下の方をめがけてコンクリートを叩き付けた。今度は上手くいって、扉の取っ手が外れかけた。ただ、取っ手とともに鎖も動いたのでコンクリート片を支えるものがなくなって、それはそのままの勢いで地面にぶつかって二つに割れてしまった。
 ついでに蚊屋野もバランスを崩してよろめいていたので、何が起きたのか解っていなかった。まだ鍵は壊れていないのだが、壊すのに必要な道具が壊れてしまった。そこに気付いた蚊屋野はどうして良いか解らずにイヤな汗が出てくるのを感じているだけだった。
「(おい、早く取っ手を壊しちまえよ)」
ケロ君が言ったが、蚊屋野は言っている事を理解するのに少し時間がかかってしまった。ずっと鎖と南京錠ばかりに気をとられていたのだが、さっき外れかかっていた取っ手を壊してしまえば扉は簡単に開くのだ。
 時間にして二秒もなかったが、終わることのない悪夢のような状況は希望だらけの世界に変わった。まだ助かる!
 蚊屋野は扉に手をついて、もう片方の手で取っ手をつかむと、力を込めてそれを引いた。木製の扉についていたその取っ手がバリバリと音を立てながら外れると、それと一緒に南京錠付の鎖も外れて、もう片方の取っ手の方にぶら下がった。
 よく考えたら始めから取っ手を叩けば良かったのだが。とにかく蚊屋野が活躍したことになって、休憩所の扉は開けることが出来た。扉が開いたのと同時に花屋も上から降りてきた。そして、彼らが休憩所に入るとすぐに灰も降ってきた。
 全員が無事に休憩所にいることに気付いた蚊屋野だったが、あまりの興奮のためか手の震えを抑えることが出来なかった。ついでにそのまま失神しそうな気さえしていたが、なんとかこらえて気持ち悪い笑みを浮かべていた。
 この世界は思っていた以上に大変だ。

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