私が自分の部屋に帰ってくると、なんだかだらしのない男が一人、金の座布団に座っていました。男は私に気づくと薄気味の悪い笑みを浮かべてこちらを見ていました。この男は勝手に私の部屋に上がり込んだのでしょうか。それとも私が自分の家を間違えたのでしょうか。私は今までどんなに疲れていても、どんなに酒に酔っていても自分の家を間違えたことはありませんでした。ここは私の部屋なのに私の知らない男がいる。ここは私の部屋なのに私の大切な座椅子がない。でも私はすぐに解りました。この男は、きっと何年も私の部屋に居座ろうとしているに違いないと。とにかく私はどうにかしてこの男を追い出さなくてはいけないと思いました。何語で話しかけるべきか?多分日本語で大丈夫なのですが、まずはじめは英語で話しかけるのが私のやり方。
「フーアーユー?」
男は黙ったままでした。やっぱり英語じゃ駄目でした。もしかするとこの男は哲学的にこの質問を解釈しているのかもしれません。「自分が誰なのか?」という問いにあなたは答えることが出来るでしょうか。まあ、そんなことはどうでもいいのです。今度は日本語にしてみました。
「あのう、誰ですか?」
今度こそ通じると思ったのに、男は黙ったままです。日本人じゃないのでしょうか?だとするとこれは面倒なことです。私は「ニイハオ!」とか言ってみようかとも思いましたが、それで通じてしまうとなんだか面倒なことになりそうなので、やめておきました。下手に知らない外国語で話しかけると、相手は自分がその言葉をしゃべれるものだと思って容赦なく話してきます。そんなことになっては大変なので、ここはひとまず退散して作戦を練り直そうと部屋を出ようとしたしたその時でした。(つづく)
--Little Mustaphaのフランス語習得に関する情報--
まだ10まで数えられません。ボンジュール。
(つづき)
「神様じゃよ」
「えっ?」
「わしゃ、神様じゃ」
「えー、嘘でしょ。神様には見えませんよ」
「君たちの想像している神様と本物の神様は違うんだよ」
「そうなんですか?それにしても、日本語がわかるのにどうして黙っていたんですか?」
「それは君が、誰なんて言う言葉を使うから。誰、というのは人間に使う言葉じゃ。性格には、あのう、何ですか?と聞くべきじゃったな。そうすればすぐに答えてやったのに」
「神様のくせに融通が利かないんですねえ。本当に神様なんですか?」
「疑ってるのかね?」
「まあ、どっちでもいいんですけど、あなた私の部屋に居座るつもりでしょう?」
「ほう、よく解ってるじゃないか」
「私はこの十年間この部屋で熊さんの世話をしてきてもうくたくたなんです。それに鮭缶代がばかにならなくて、お金だってほとんど持っていないんですよ」
「熊さん?熊なんかわしの知ったことか。わしはここが気に入ったんじゃ」
「熊と関係ないですって?あなたの後ろにかかっている写真、熊さんの持ってきた写真と同じじゃないですか。小雨さんでしょ、それ」
「うん?これか?この写真に移っている人は小雨なんて名前じゃないぞ」
「適当なこと言わないでくださいよ!それに、せっかく壁の穴ふさいだのにまた釘を打ち付けたんじゃないですか?・・・あれ、この写真・・・浮かんでますよ!」
「神様は釘なんか使わないのよ〜ん。神様の念力で浮かんでるのよ〜ん」
「あなた、本当に神様だったんですねえ」
「だからさっきから言ってるじゃない」
「でもこの写真はどう見ても小雨さんですよね?これはあなたが熊さんからもらったんですか?」
「君の言う熊さんっていうのは知らんが、それは小雨ではない。それは小川の写真だ」
「オガワ?オガワコサメが本名ですか?」
「何を言っているんだ。その写真に写っているのは、早乙女小川だ?」
「サオトメオガワ?小川が名前なんですか?」
「多分、君の言っている小雨というのは、神無月小雨のことだろ」
「はあ」
「じつはなあ、小雨と小川は腹違いの姉妹なんじゃ」
「へえ、そうなんですか。それにしてもそっくりですねえ」
「そう、その偶然のために悲惨な殺人事件が起こってしまったんだけどねえ」
「あれ?それってどっかで聞いたことありますけど。小雨さんのお母さんが実は小川さんのお母さんで、犯人はその小川さんのお母さんなんでしょう?」
「何を言ってるか解らないが、まあそんなところだ。それにしてもこのコーナーはこの先ずっとこんな感じなのかと心配してる人もいるじゃろうなあ」
「えっ?なんですか?」
「いや、君には関係のないことだよ。ヘッヘッヘッ・・・」(つづく)
--Little Mustaphaのアラビア語習得に関する情報--
アラビアの文字をまねたアルファベットを書くようになりましたが、アラビア語とは関係ないようです。シュクラン。
「それから、ここを読んでなんにも意味がわからない人は前回のこのコーナーを読めば少しは解るかも知れんよ」
「えっ?」
「まあ、気にするな。君には関係のないことだよ」
「関係ないなんて言わないでくださいよ。勝手に人の部屋に入り込んでおいて」
「君はわしが勝手に君の部屋にきたと思ってるのか?」
「そりゃそうですよ」
「嗚呼、悲しいねえ。人間というものは。君は今までことあるごとに私を呼んでいたではないか」
「確かに、神様何とかして!って思ったことはありますけど、頭の中に思い浮かべていた神様はあなたとは違う神様でしたよ」
「これだからなあ、人間ってやつは。神様は人の都合で動いたりはしないんだよ。こっちにも都合があるからねえ。それに、神様は人助けなんてしないんだよ。それなのに君は、ああ神様!神様!って。そんなによばれたら、まあそのうち顔出してみようかなあ、なんて思うだろ?だからこうしてやってきたんだよ」
「ええ!?そうなんですか?じゃあ何で人は神様にお賽銭を投げたりお供え物をしたりしているんですか?」
「さあなあ?人間っていうのは、わしら神様たちが楽に生活できるように作ったもんだからなあ。生まれながらにそういうふうになってるんじゃないかなあ」(つづく)
--Little Mustaphaアルトサックス習得に関する情報--
去年のクリスマスにもサンタさんはアルトサックスを持ってきてくれなかったので、Little Mustaphaはまだアルトサックスを手に入れてさえいません。そう言えば去年のサンタのおじさん襲撃作戦はどうなったのでしょうか?気になる?気にならない?
(つづき)
「そうだったんですか。やっぱり人間を創ったのは神様だったんですか」
「正確には、神様の世界の家電メーカーが創ったんだけどな。はじめは犬や猫みたいなペットから始まったんじゃ。技術的に人間を創るのは不可能だと言われていたんじゃが、企業の力というのはすごいもんだね。とうとう神様助けをするための人間を作り出すことが出来たんじゃ」
「なんだか納得できないなあ。神様の世界にも家電メーカーがあるんですか?それじゃあ私たちは洗濯機とか掃除機と同じ扱いなんですか?」
「まあ、そういうことになるかな。君みたいに神様にお供え物をしない人間は少し後に開発された娯楽用の人間だけどな」
「娯楽用!?神様は私たちを見ていて楽しいんですか?」
「あんまり、面白くはないね。はじめは良かったけど、もう飽きてきたなあ。でもメーカーは娯楽用と称してひどい人間をつくってばかりいてねえ、今では神様にお供え物をする人間なんて滅多にいなくなってしまったよ。おかげでわしは最近ほとんど食事にありつけない」
「でも、おかしいですよ。それならどうして神様はそんなに太っているんですか」
「太ってるのは芸風だから仕方ないさね」
「芸風?ますます怪しいですねえ。あなた本当に神様なんですか?」
「君は疑り深いねえ。あんまり疑ってばかりいると、神様の念力でひどい目にあわせてしてしまうぞ!」
「それはちょっと困りますけど・・・。ちなみに神様を怒らせるとどんなひどいことが起こるんでしょうか?」
「そうだなあ、例えばあの熊みたいな感じかな」
「熊ですか!?」(つづく)
--Little Mustaphaとコーヒーに関する情報--
コーヒーを飲み過ぎて寝ているのか起きているのか解らない状態が何日もつづいております。
(つづき)
「打ちました!大きい大きい!入ったー!ホームラーン!!」
「なんですか急に」
「ソロホームランというのは急に出るからびっくりするよねえ」
「まあ、そうですけど」
「つまりそういうことだ」
「なんにも解りませんよ。熊はどうなったんですか?」
「なんだ、今の説明で解らなかったのか。人間の理解力は当てにならんなあ」
「解るわけありませんよ」
「実はなあ、君が言っていた熊はわしの子供なんじゃ」
「でもさっき熊さんのことは知らないって言っていたじゃないですか」
「まあ、どうでもいいじゃないか。その熊がわしの子供だということに、わしが気づくまでのいきさつがあるはずだったんじゃが、考えるのが面倒になってしまったもんでな」
「それじゃあ、それって作り話なんですか?」
「いやいや、話の展開を考えた上で省いただけのことじゃよ。びっくりはしただろ」
「まあねえ。ソロホームランみたいですよねえ」
「ほらな。それで、その熊と一緒に住んでいた小雨だがねえ。あれ実は小川だったんだよ」
「そうなんですか。それじゃあやっぱり小川と小雨は同一人物だったんですね」
「それは違うな。小雨と小川はすり替わっていたんじゃ」
「そうすると、熊さんが殺したのは小雨さんじゃなくて小川さんってことになりますねえ。それじゃあ小雨さんは今どこに?」
「小雨か?コンビニでバイトしてるって話だぞ」
「そうだったのかあ。・・・それで、熊さんに起こった悪いことってなんなんですか?」
「ん?なんのことだ?」
「熊さんは神様を怒らせたから、ひどい目にあったんじゃないんですか?」
「君はこの話を聞いて、ひどいとは思わなかったんですか?」
「思うもなにも、話の内容すら解りませんよ」
「そうかあ、残念だなあ。でもまあ、事件は見事解決したんだから、いいじゃないか」
「どんな事件が起きて、何が解決したんですか」
「気にしない気にしない。そろそろ話に収拾がつかなくなってきたから、この辺でやめにしないか」
「・・・」
こうして太った神様は私の部屋に居座ることになりました。なんともひどい話です。もうなんにもありません。
どうしてこんな内容になったのかを説明すると、熊さんの時は話を先に思いついて今回は絵が先に出来たといえば解ってもらえるでしょうか。でもこの話をよく読んでみるとものすごい事実が隠されている?