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#075 「保留 part2」 2006-02-11 (Sat)

「ちょっと、ちょっと。○○の奥さん」

「あら、□□の奥さんじゃありませんか」

「ちょっと、今度のあれ、どうするんです?」

「あれでしょう。もうなんかどうしたらいいのかホントに困ってしまいますわ」

「ホントよねえ。まったく町内会ももっとましなことに会費を使ってくれたらいいのにねえ」

「あなた知ってた?△△の商店はあれのせいで店をたたまなきゃならないって言ってましたわよ」

「あらそうだったの!?だから△△の奥さん、この前あった時あんなだったのね」

「ホントに困るわよネー。あらいやだ、もうこんな時間。主人が帰ってくる頃だわ」

というわけで前回に引き続き、私が町中の会話が何でも聞こえてしまうという「望遠耳」を使って聞いたことを書いていきたいと思います。

「おい、ジャンボ!あれ持ってこい」

「はいはい親方。ただいま」

「…」

「はい親方」

「おう、ご苦労。…あれ?何でこれっぽっちしかねえんだ!?お前オレに黙って勝手に使ったのか?」

「そんなことしてませんよ。だいたいボクはそんなものを使ったりはしませんよ。親方が使い方教えてくれないから…。ああ、そういえば、さっき親方の別れた奥さんが来てましたよ。親方はスーパーに買い物に行ってるって言ったら黙って帰っていきましたけど」

「あいつの話は聞きたくねえ!」

「そうなんですか。でもなんかすごく困った様子でしたよ。そわそわして、あれがどうとかつぶやいてましたけど」

「なあ、知ってる?」

「知らないよ」

「おいおい、聞く前に否定するなよ」

「どうせくだらないことだろ。いちいち考えるの面倒だから、キミに何か聞かれたら全部知らないってことにするように決めたんだ」

「なんだよそれ。冷たいなあキミは。でもこれを聞いたらそんな気分はどこかへ行ってしまうぞ」

「さあ、どうだろう」

「キミは知ってるのか?バストアップサプリを」

「知らない」

「なんだか素っ気ない返事だなあ。飲むだけでバストアップなんだぜ!もっと驚いてもいいと思うけどなあ」

「別に驚かないし。だいたいキミはそれをどうしようというんだ?キミが飲むのか?それとも誰かに飲ませるのか?」

「まあ、ボクが飲んでも仕方ないかな。…どうだ?キミが飲んでみたら」

「嫌だよ!」

「バストアップしたキミは結構なナイスガイだと思うけどなあ」

「オレが巨乳で何でナイスガイになるんだよ!」

「まあ、たとえばの話ですけど」

「何のたとえだよ!」

「おい、そこでたむろしてる少年達!」

「アッ、やばい警察だ!」

「いやいや、私は警察官ではないよ。私はザ・ガードマンだ!」

「なんだよ。ビビらせんじゃねえよ」

「いやいや、これは失礼した。ところでキミ達はなにやらジュースのようなものを沢山持ってるねえ。さっき近所のスーパーで大量のジュースが万引きされて、その犯人を追っているんだが。それはまさか…」

「万引きなんかしてねえよ。むこうの△△の店で買ったんだよ」

「あっ、それはもしかすると今話題の『脳が0%になるジュース』じゃないか!?」

「店じまいセールで一本5円だぜ」

「本当か!?それはぜひ買いにいかないとな」

「もう遅いよ。オレ達が全部買い占めちゃったから。可愛そうだから一本あげるよ」

「おうそうか。キミ達は見かけによらずいい人達なんだなあ」

「そりゃ、脳が0%になるジュース飲んでるからねえ。へへへへ」

「ありがとう。今すぐに試したいところだが今はザ・ガードマンの仕事中だから、後でゆっくり飲ませてもらうよ」

「てめえ、なにガンクレてんだよ!」

「うわ、なんで急に暴力的?」

「てめえ、ドコ中だよ。あん?」

「ドコ中って?私はザ・ガードマンですよ。それじゃあ任務に戻るのでこのへんで失礼!」

「ねえ、あなた」

「…」

「あなた!?」

「…」

「あなたってば!」

「ん?…ああ、キミか。またうたた寝をしていたようだよ」

「知ってますわよ。うたた寝のくせに凄くうなされてましたわよ」

「そうか?なんか凄く怖い夢を見たような気がするんだけど、良く覚えてないや」

「まあ、ダメな人ねえ。それよりもあなた気付きませんか?」

「何をだい?」

「あたくしの何かに、ですわよ」

「キミの何か?さあ、よくわからないけど」

「もうそれだからあなたはダメなんですのよ!」

「ゴメンゴメン、怒らないで。ちょっと寝ぼけてただけだよ。もう一度キミのことをよく見てみればきっと何かが…」

「…」

「…」

「どうですの?もう気付いたでしょう?」

「うーん。…髪切った?」

「もう!鈍感なんだから。あたくしが頑張ってあれを飲んでるのに、あなたは全然気付かないんだから」

「あれって、なに?」

「いいですわよ。でも今晩、あなたはビックリするはずですわよ。ウフフッ」

「なんだよ急になまめかしい笑いで」

「今夜のあたしはナイスガイなんですの。ウフフッ」

「ガイ!?」

「あっ、部長!」

「ん?何だね?」

「例のオフィス・ガイ計画のことなんですけど。どうやら他でも似たような計画が進められているとの情報が入りまして…」

「うんうん。それはいかんね。我が社の総力を結集してライバルは潰していかないと。キミ。どんな手を使ってもかまわないから、我々の計画を邪魔する奴等は排除してしまいなさい」

「はい部長。まかせてください。そうくると思ってもう手は考えてありますよ」

「そうか、それは感心。すぐにでも取りかかってくれたまえ」

「はい部長。でも今日はこれからソウテイ・ガイの集まりがありますから…」

「そうなのか。それじゃあ、なるべく早くな」

「キター!…。こんな感じか?」

「いやあ、なんか違うなあ。もっと『ター』をのばしたほうがいいんじゃないのか?」

「キターーーー!これはどうだ?」

「まだ違うなあ。手の角度が。もっと広げる感じで」

「またそれかよ。もう手の角度はオッケーだったんじゃないのか?」

「でも言葉と一緒だと違う感じなんだよ」

「じゃあ、これはどうだ?…。キターーーーーッ!」

「うーん。なんか違うよな。キミ、目が死んでるもん」

「目が死んでるって、これはどうにもならないよ。生まれた時からずっとこんなんだから」

「やっぱり実写で絵文字を再現するのは不可能なんじゃないか?ボクらに『デンキ・ガイ』は無理だよ。やっぱり最初の計画どおり『チカ・ガイ』にしようよ」

「やっぱりそうするしかないのかなあ…」

「ふーっ。どうやら上手く逃げられたらしいな。いったいあの若者達は何なんだ?意外といい人かと思いきや、予想どおりのツッパリだったり。…まあいいか。とりあえずこの『脳が0%になるジュース』を飲んでみよう。…うわっ!なんだこれは。シンナーじゃないか!これじゃあ脳が0%になって当然…」

「ちょっと、お巡りさん!」

「ん?何ですか奥さん。私は警察官ではなくてザ・ガードマンです」

「どっちでもいいわよ。それより最近このへんに変な集団がいっぱい集まってきて気味が悪いのよ。なんとかしてちょうだいよ」

「そんなことを言われても、私は集団にはちょっと弱いザ・ガードマンですから…」

「何だっていいから。あなた警察みたいな恰好してるから大丈夫よ。ちょっと行って追っ払ってきてよ。頼んだわよ!」

「…あらま。行ってしまった。しかし、ザ・ガードマンとしてはいいところを見せないといけないかな?」

「はい、町内会のみなさん集まりましたか?それでは会議を始めたいと思います。以前から議論されている『商店街を渋谷並みに活性化させよう計画』ですが、今月から試験的に商店街に有志の若者達をたむろさせてみました。彼ら『ショウテン・ガイ』がうろつくことによって我々の商店街はより魅力的なものになるに違いありません」

「ちょっと待ってください。それはいいんですけど、住民からは不安の声があがっています。どうやら『ショウテン・ガイ』に触発された様々な『ガイ』達がこの町内に集まっているという噂です」

「ほう、それはいいことじゃないか。人が増えればそれだけ商店街も潤う訳だし」

「何を言ってるんですか。このあいだなんか槍を持った背の高い人の集団が△△の商店を襲撃して、大変な被害がでてるんですよ」

「おっ、それはもしかして『ヤリ・ガイ』か?」

「いや、マサイ族だと思いますよ」

「ジャンボ!おいジャンボ!」

「はいはい、何ですか親方」

「あれがなくなっちまったよ。どうしてくれるんだよ」

「どうするもなにも、また仕入れればいいんじゃないですか?」

「何言ってるんだよ。あれはなかなか手に入らねえんだよ」

「そうなんですか!?それは知らなかった。そんなに貴重なものなんて。それよりあれって何に使うものなんですか?」

「おめえにはまだわからねえよ。どっちにしろあれがないとオレはナイスガイになれねえんだよ」

「ナイスガイ??…あっ、そういえば…」

「そういえばなんだよ、ジャンボ」

「さっき親方の元奥さんが来た時なんですけどねえ、あれを置いてある部屋の扉が開いてたんですよ。その時はボクが閉め忘れてたんだとばっかり思ってたんですけどねえ。もしかすると、元奥さんがこっそりあれを持ち出してたとかいうことは…」

「なに!?なんでそれを早く言わねえんだ!あいつはそういう女なんだよ。ちくしょう。あいつはオレから何もかも奪ってしまう気だな」

「あなた…」

「…」

「あなた!」

「…」

「あなたってば!」

「うわあ!…なんだキミか」

「もう。なんだ、じゃありませんわ」

「ああ、ゴメンゴメン。また変な夢を見ていたみたいだよ」

「それよりもあなた。あすこをご覧になって」

「ああ、あの望遠耳の人はまだ色々聞いているんだねえ」

「そうじゃありませんのよ。あのかた、あたくしの『何か』についてあなたよりも先に気付いてしまったようですわよ。さっきからそわそわして様子が変なんですのよ」

「エッ!?あんな遠くからでもわかるのか?なんでボクにはわからないんだ?」

「ウフフッ。あなたって相変わらずお馬鹿さんなのね。秘密が多ければ多いほど夫婦生活は楽しくなるって知りませんの?」

「…知りませんよ。だいたいキミはボクにどんな隠し事を…」

「ウフフフッ。それだからあなたって可愛いんですのよ。でも今回はそろそろ終わりみたい。あの望遠耳のかたは最近ネタを小出しにするようになってしまったから、ここで今回は終わりみたいですのよ」

「えっ、こんなところで終わっちゃうの?」

「そうでしょ。盛り上がってるのかどうかわからないところで終わってしまうのですよ。罪なかたですわ。あのかたも。でも寒い中ああして望遠耳を使って色々聞いていらっしゃるんだから、その辺も認めてあげないとあのかたが気の毒ですわよ」

「…うーん。まあそうかなあ…」

「まあ、あなたったら」

To be continued ...