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#084 「ボツ」 2006-08-05 (Sat)

Little Mustapha-----うわーっ!うわーっ!

Little Mustapha-----・・・。

Little Mustapha-----うわーっ!うわーっ!うわーっ!


(ブラックホールのメンバーが入ってくる)


ミドル・ムスタファ-----いったいどうしたんですか?

Dr.ムスタファ-----何が起こってるのかまったく理解できないぞ。

ニヒル・ムスタファ-----そうだぜ。「うわーっ!」って書いてあるだけなんだから、どんな状況でどんな「うわーっ!」って言ってるのか、全然わかんないよ。

Little Mustapha-----ああ、そういえばそうだったね。これはあれだよ。作家が自分の書いた原稿を丸めて捨てたり、破ったりする時の感じの「うわーっ!」なんだよ。

ミドル・ムスタファ-----作家は「うわーっ!」って言わないでしょう?

Little Mustapha-----えっ?そうなの?そんなことないでしょ。

Dr.ムスタファ-----それじゃあ、作家先生に聞いてみたらどうだ?


(一同、辺りを見回してマイクロ・ムスタファ(自称作家)を探すが、姿が見えない)


ミドル・ムスタファ-----あれ?今日も気付かないだけかと思ったけど、彼はまだ来てないみたいですねえ。

ニヒル・ムスタファ-----これじゃあ埒があかないぜ。

Little Mustapha-----きっと今頃、自分の部屋で小説を書きながら「うわーっ!」って言ってるはずだよ。

Dr.ムスタファ-----そんなことはないだろう。

ニヒル・ムスタファ-----もうどうでもいいよ。それよりキミは何をそんなに悩んでいるんだ?

Little Mustapha-----そうだよ。それを聞いてくれたおかげでやっと本題に入れるねえ。実は最近、いろんなものがボツになることが多くてさあ。もう何て言うか、やりきれない、というか。

ミドル・ムスタファ-----なんだか、らしくないですねえ。ボツって何がボツなんですか?

Little Mustapha-----全部言っていたらきりがないけどねえ。例えばここに掲載する予定の原稿でボツになったのがもうすでに三つ。

ニヒル・ムスタファ-----三つって、そんなに多くないじゃないか。

Little Mustapha-----ホントだ。ボクも言ってから気付いたよ。でも1年以上かけて作ってきた「Mysled」をボツにしたのは結構精神的にダメージが大きいんだよ。

ミドル・ムスタファ-----なんだ、そんなことですか。でも一応「ボツバージョン」というのが公開されているじゃないですか。アレはアレでいいんじゃないですか。

Dr.ムスタファ-----そうだぞ。アレだって黙ってれば、もとからああいうものだったと思う人もいるかも知れないし。

ニヒル・ムスタファ-----出来の悪い完全版よりは、ちゃんとしたところだけのボツ版でいいんじゃないのか?

Little Mustapha-----そうか、それならいいかな。それじゃあもう一つの問題に入ろうか?

ニヒル・ムスタファ-----まだ問題があるのか?

Little Mustapha-----まあ、たいしたことじゃないけどね。変な原稿が見つかったんだよ。ここに掲載するために書き始めたものらしいんだけど、自分でも書いた記憶がないんだよ。

ミドル・ムスタファ-----ちょっとミステリーですねえ。

Dr.ムスタファ-----こんな時にマイクロ・ムスタファがいたら大変だったぞ。ガハハハ!

ニヒル・ムスタファ-----それで、どんな内容なんだ。

Little Mustapha-----これだよ。ちょっと読んでみてよ。

(謎の原稿の内容)

 「完璧だ…」野原健作教授はいびつにゆがんだ頭蓋骨を自分の目の前に掲げてつぶやいた。「でかしたぞ、ハレホルへ少年!」そう言って、彼の今持っている頭蓋骨を持ってここへやって来た少年にいくらかの現金を手渡した。少年は無表情でその現金を受け取ると、野原教授のテントから出ていった。

 ここは、どこか暑い国のジャングル。野原教授はこの頭蓋骨を求めてここへやって来たのだ。幻の生き物が存在することを確かめるために。

「おい、助手君!」

「なんですか教授」

野原教授が呼ぶと別のテントから出来の悪そうな助手が出てきた。ここに来るまではそれほどダメな助手ではなかったのだが、このジャングルへやって来るとすぐに体調を崩し、何日も熱にうなされているのだ。彼、補佐田助手、正確には補佐田助手助手は今さっき起きたような顔でテントから顔を出したのだが、教授の手にしている物を見ると顔色が一変した。

「あっ、教授。それはもしかして」

「そうだよ助手君。とうとう見付けたよ」

「でも、どうやって見付けたんですか?」

「なに、ここではキミがいなくても労働力はすぐに手に入るんだよ。地元の子供達はお金がもらえるとなると、素直に私の手伝いをしてくれるんだ。たかだか五円玉一枚のためにね」

五円とはひどい。補佐田君は少しあっけにとられていたが、自分の役目を地元の子供が代わりにやっているというところは少し納得がいかなかった。これでも日本にいる時には立派に教授の助手の役目を果たしていたのだから。

「教授。頭蓋骨が見付かったからといって、まだ生存が確認された訳じゃないでしょ。今回の調査の目的は…」

「解っているよ。生け捕りにするまで、私は日本に帰るつもりはないよ。もしキミが元気なら、今すぐにも探索に出かけたいのだがねえ」

野原教授は補佐田君の心中を察したのか、挑発するように話している。

「もちろん行きますよ。こんな原因不明の熱病なんか、体を動かした方が直りやすいんですよ。補佐田助手、人を手助けすることが何よりの生き甲斐ですから」

「今のキミを見たらキミにその名前を付けたご両親もさぞかし喜ぶだろうな」

(未完)

Little Mustapha-----どう思う?

ミドル・ムスタファ-----どう思う?と言われてもねえ。

ニヒル・ムスタファ-----まあ、キミの考えそうな話ではあるけどねえ。このあと話はどうなるんだ?

Little Mustapha-----それが解ってたらみんなに聞いたりなんかしないよ。

Dr.ムスタファ-----こんな書き出しなのに結末は考えなかったのか?

Little Mustapha-----そうじゃなくて、結末はおろか、なんでこんなことを書いたのかすら思い出せないんだ。半年近く前のことだけど、これだけ謎めいた書き出しだし。自分で書くなら絶対に結末まで考えていたはずなんだよ。

ミドル・ムスタファ-----つまり「すっかり忘れた」ということですか?

Little Mustapha-----いやいや。それならいいんだけどねえ。もしかするともっと恐ろしいことが起きているのかも知れないよ。

ミドル・ムスタファ-----というと?

Little Mustapha-----これを書いたのはボクではないかも知れない。

Dr.ムスタファ-----未完だからマイクロ・ムスタファが書いたってことか?

ニヒル・ムスタファ-----先生は単純だなあ。それじゃあ全然面白くないじゃないか。

Dr.ムスタファ-----何を言うんだねキミは。私は事実に基づいた科学的な意見を述べたまでだよ。

ニヒル・ムスタファ-----先生はいつも事実を無視してないか?

Dr.ムスタファ-----なんだと!

ミドル・ムスタファ-----まあ、まあ。ここは落ち着いて行きましょうよ。こういう謎めいた問題を放っておくと、あとで恐ろしいことが起きたりしますから。

ニヒル・ムスタファ-----恐怖のサンタが来たりとか?

Dr.ムスタファ-----それはイヤだなあ。


(その時突然マイクロ・ムスタファが駆け込んでくる)

マイクロ・ムスタファ-----うわーっ!

Dr.ムスタファ-----なんだ?!殺人サンタか?

マイクロ・ムスタファ-----違いますよ。猛犬に襲われそうになったんですよ。いつからここには猛犬がいるんですか?

Little Mustapha-----ここにイヌなんかいないよ。そんなことより、さっきキミ「うわーっ!」って言わなかった?…ってことは、やっぱり作家は「うわーっ!」って言うじゃないか!

ニヒル・ムスタファ-----さっきの「うわーっ!」は猛犬に襲われた「うわーっ!」だろ?

ミドル・ムスタファ-----そうですねえ。仕事が進まない時の「うわーっ!」じゃないから、作家だから「うわーっ!」ということではありませんね。

マイクロ・ムスタファ-----なんですか、みなさん?「うわーっ」って言ってばかりで。

Little Mustapha-----まあ、それは気にしないで。

マイクロ・ムスタファ-----ああ、そうですか。それよりもここに猛犬はいないんですか?

Little Mustapha-----いませんが?

Dr.ムスタファ-----キミは幻覚でも見たんじゃないのか?

マイクロ・ムスタファ-----まさか、私が幻覚なんて。それにあんなリアルなのは幻覚なんかじゃありませんよ。

ミドル・ムスタファ-----でも、だれも猛犬なんて見ませんでしたよ。やっぱり幻覚でしょう。まあ幻覚ではないにしても、思いこみみたいなものですよ。

マイクロ・ムスタファ-----そうかなあ?

Dr.ムスタファ-----ところで、念のために聞くがねえ。キミはLittle Mustaphaのふりをして原稿を書いたりしてないか?

マイクロ・ムスタファ-----私がですか?そんなことするわけないじゃないですか。だいたいLittle Mustaphaの名をかたることのメリットがありませんよ。

ミドル・ムスタファ-----まあ、それはそうですねえ。

Little Mustapha-----「それはそうですねえ」って、キミも失礼だなあ。まあ、いいか。それより、ダラダラしてきたから、これまでのことをまとめてみようか。まず、作家は「うわーっ!」と言う。それから謎の原稿を書いたのはマイクロ・ムスタファではない。ということだね。

ニヒル・ムスタファ-----ちょっとまてよ。作家は「うわーっ!」って言うかどうかはまだ解らないぜ。

Dr.ムスタファ-----でも事実に基づいて言えば、さっきは「うわーっ!」って言ってたぞ。

ミドル・ムスタファ-----そりゃ、誰だって猛犬に襲われたら「うわーっ!」って言うでしょう。

Little Mustapha-----そんなことより、みんな。ちょっとあれ見てよ!

一同-----うわーっ!


(なんだか良く解らないこの話は次回に続く?)