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#190 「悪魔デバイス」 2020-08-29 (Sat)

 太古の昔から悪魔は存在していたと考える人も多くいる。そしてその悪魔と交信し、その力を借りようとしたり、さらには悪魔自身を操ろうと考える人もいたのである。それは不可能に思えるのだが、ある装置を使えば可能であるというウワサがまことしやかに語られることもあった。

 我々は独自の調査によってそのウワサの出所を確かめ、そしてどこまでが真実なのかを知ることが出来たのである。それだけでなく、その悪魔と交信するための装置の構造が記された古文書を極秘に入手し、その内容を解析し、さらには製作することに成功したのだ。

 ここにその装置の詳細を記すことにする。

 悪魔との対話は人間にとって危険極まりないものである。それは悪魔の持っている力があまりにも強大であるからである。しかし、その力を我が物に出来ればどんなことでも可能になるのではないか?と考えるのも人間の欲深さである。

 ヨーロッパから中国を経て日本へ入ってきたといわれているその古文書には、悪魔と対話し、そしてその力を操ることが出来る装置、その名も「悪魔デバイス」というものが登場する。書かれたのは13世紀後半であると考える人もいれば、もっと古いものだと考える人もいる。いずれにしても、人類の文化に悪魔という概念が登場してから、このような事を考える人は少なからずいたのであろう。


 我々は幸運にもとある宗教学者の協力を得ることができた。その人物は古文書の写しを保管しているというのである。そして、決して人物の詳細を明かさないことを条件に、その写しの閲覧を許可してくれたのだ。


 その古文書の内容は膨大なものであったため、我々は学者の許可を得て、マイクロフィルムに古文書の写しを撮影して持ち帰ることにした。

 古文書を読んでいくと、その内容のほとんどが呪術じみた儀式に関する記述であることが解った。やはり悪魔デバイスなどというものは存在しないのかと、半分諦めかけていたのだが読み返していくうちに我々は興味深い発見をしたのである。

 古文書に書かれている儀式に使われる道具には具体的な名前で説明されているものの他に、名前の付けられていない道具が登場するのである。例えば「声帯を模した霊的な箱」といった具合である。こういった記述のされ方をしている道具を抜き出していくと、それらは全て現代では身近にある道具の説明とも考えられたのだ。

 先に例に挙げた「声帯を模した霊的な箱」とは電気を使って音を出すスピーカーの事だと考えられる。それらは全て、古文書が書かれた時代には存在しなかった道具であり、それ故に名前で記されることがなかったのである。

 この古文書は未来に発明される道具を予言しているとも言えるのだが、果たしてそれが真実なのか。

 それを確かめてみるためには、実際に悪魔デバイスを製作してみるしかないようだ。

 装置を作ることは簡単ではなかった。まず文章で説明されている道具や素材が何であるのかを解明する必要がある。そして、それが解ってからも長い時間をかけて必要な素材を集めなければいけなかった。時には密林の中を流れる大河を探索しなければ見つからないようなものを探すこともあったほどである。


 約半年かけて全ての素材が集まった。さらにその素材を加工するための道具も揃えたのだが、悪魔デバイスの製作は簡単ではない。木材を採寸して切り分けたりする作業は、少しでも間違えば悪魔デバイスはその機能を発揮できなくなるのである。

 一日に一つの工程だけしか進まないような事も多かったが、時間をかけてなるべく古文書の設計図のとおりになるようにしなければならなかった。

 そして、とうとう完成したのである。

悪魔デバイスに関する説明

外観は上の写真のようになっている。悪魔の意志は映像と音声によって伝えられる。手前のレバーやボタンは降霊術に使われるウィジャボードのようなものと考えたら良いだろう。


スイッチを入れたところ。完成直後はまだ何も映らなかった。

調整を繰り返したあと、このようなものが映し出された。

解りづらいが、これは古文書の中で「虎(Tiger)」と呼ばれていたものの映像である。ここでもまだ悪魔的なものは感じられない。

しかも、HTML5には未対応なようだ。


完成はしたものの装置は悪魔デバイスとして機能していないのだが、製作の過程でなにか不備があったのだろうか?

更なる調整が必要なようだ。

ここで別の機能も見ていくことにする。

これはこちらの意志を悪魔に伝えるものである。中央の回路で意志を電気エネルギーに変換して送信するようになっている。

これを使えば悪魔を操ることさえ出来るとされているが、実際にはその行為自体が悪魔の意志によってなされているとも考えられる。いずれにしても危険な装置であることに間違いはない。


スイッチ類とツマミ。映像と音声の機能は独立して使用できるようになっている。そして、音声機能は複数の入力に対応している。途中で切り替えれば複数の悪魔と対話できるのだ。


内部はこのようになっている。

中にいる悪魔の自由を奪うという目的で、複雑にワイヤーが絡み合っているのだ。


動力の供給はACアダプター付きのハブである。使わなくなったUSB2.0である。


この穴は悪魔が出入りするためのものといわれているが、運ぶ時に手を入れる場所ともいわれている。


上手く動かない原因はこの穴のせいかも知れない。悪魔端子にアクセスするための場所だったが、深く考えずにやったために、タダの醜い穴となってしまった。

最終形態

ここまでの説明では、まだ完全な状態の悪魔デバイスではないということだったのだが、写真の撮影をしてから更なる調整を繰り返したのだ。その結果、ついに本当の意味での悪魔デバイスが完成したのだ。


これが画面に映った悪魔の姿である。

悪魔デバイスに付けられているレバーと同じようなものが画面に映っているのは、何か意味があるのか。

これはもしかすると、全てが悪魔の意図したことであったということを示しているのかも知れない。我々が古文書を手に入れ、そして実際に悪魔デバイスを作ったこと。それらは我々が自らの意志でしたことではなく、悪魔が我々を操ってさせたことなのだ。そういうメッセージがあのレバーには込められているとも考えられるのだ。

もしそうなら、悪魔はこの悪魔デバイスを作らせることにより、現代に蘇ろうとしているのではないだろうか。

我々のしたことは果たして正しかったのだろうか。


いずれにしても、悪魔デバイスは完成してしまったのだ。

画面とコントローラの位置のせいで、使うと首が痛くなるなど、早くも悪魔の意志を感じることもあり、また、置く場所がないという、呪いとも思えるような問題も発生している。

しかし、映像が映り、音が鳴る悪魔デバイスである。それだけで終わるようなことは決してないであろう。

 ちなみに、例の古文書であるが、手元に置いておくことが危険であり、また悪用される可能性もあると判断したので、復元不可能な状態にしてから破棄されている。

 また我々は悪魔デバイスの製作に関するいかなる質問も受け付けるつもりはない。


 以上が悪魔デバイスに関する詳細である。

 ということで、せっかく変なものを作ったので大特集されたのでした。

 実際にはガラクタからガラクタを作ったようなものですが、実はそうでないのが悪魔デバイスです。あとで何かが起こるかも知れないですし、次回はそういう事かも知れません。

 お楽しみに。