Museum of Ludicrous

もはや思い出すことさえ出来ないという名のギャラリー

 "Ludicrous"の制作には苦労しかなかったと言っても過言ではないし、今のところその苦労は報われていないようである。苦労が何かの見返りのためにすることであるとすれば、私の苦労には意味がないし、最初からなかったも同然ということで、今のところ私が"Ludicrous"を作った時の記憶というのはほぼ消えてなくなっているのである。

 このような状況でインタビューをしたところで何も出てくるワケがないし、それ以前に制作から時間が経ちすぎているのである。そして、主な苦労の原因はミュージックビデオの制作であり、その苦労話は音楽のコーナーですることではないかも知れない。

 そこで、無理にインタビューをせずに、形として残っている創作の記憶 -----すなわちコンセプトアート(イタズラ書き)−−--- を掲載して、何かを思いだしてみようと思うのである。

発端

キモい静香ちゃんを描こう

全てはここから始まった。

作業の合間に描かれた「キモい静香ちゃん」というコンセプトの絵。すでにミュージックビデオに登場する主要メンバーが揃っているように見えるが、まだ彼らがミュージックビデオの登場人物になるとは思ってもいなかったのである。

バスタイムは必須

まだミュージックビデオの制作が決まる前、頭の中では「キモい静香ちゃん」に関するストーリーが勝手に繰り広げられていた。

彼女にはこんなシーンがつきものである。

この針金のような足も彼女のキモさの特徴である。

悪夢的に

編曲や編集作業の時に描かれる絵は、基本的に作品の雰囲気に合わせたものが描かれる。

それは、作品から受けた印象が現れたものであることもあれば、逆に作品のイメージを決めるために描かれることもある。

譜面のタイトルは"Intro"である。"Opening"としてアルバムの1曲目になる曲だが、あれはコミカルな悪夢である。

変化

犬キャラが犬のようでなくなっている。

犬のような耳がなくなっただけで、未知の生命体に見えるのだが。ここから宇宙から来たキャラという設定が生まれたかも知れない。

変化2

一番最初は上手く描けていたのに、だんだん「キモい静香ちゃん」でなくなってきた。

模索

「キモい静香ちゃん」の服がスズキ・ピヨニカさんの服に似ている。そして、未知の生命体となった犬キャラの頭にモジャモジャが描かれていたりもする。

この辺りから頭の中のストーリーは別のものに変わっていったようだ。

実現されたシーン

譜面のタイトルは仮のものであるが、最終的には"Waltz Blizzard"という曲名になった曲。

この雪のイメージはミュージックビデオに活かされている。

未知の生命体はアザラシっぽいので、この時は寒さには強いという設定にもなっていた。

新路線

"PiZZA BiZZARIA"とは宅配ピザがテーマの曲である。そうは聞こえなくてもこの曲からこの絵が描かれたのだから、少なくともピザ感はあるのである。

「キモい静香ちゃん」はピザが大好きなようだ。そして、ピザが届くと大喜びで両手を振り上げたのだが、その手が少年の顔面を直撃する。

ここまで主役の「キモい静香ちゃん」がヒドい目にあうという設定もあったのだが、これを描いてからは少年がヒドい目にあう方が面白うような気がしてきたのである。

MVを意識する

フードの付いたローブをまとった妖術使いのような姿。

最終的にはMVのための新しい登場人物が着ることになったが、この頃からMVの制作を考えるようになってきていた。

少年が襲われる?

ここでも登場人物が入れ替わってはいるが、このコンセプトはそのままMVで使われることになった。

まだストーリーも出来上がっていなかったのだが、いくつかのイメージだけはこのような感じで出来上がっていたのだ。

そしてストーリーはそのイメージをつなぎ合わせるところから作り始められた。

制作

 ミュージックビデオを作る事を決めたら準備が重要になる。長さは音楽の時間と一緒にしなければいけないし、内容もある程度音楽に合っていないといけない。場合によっては音楽のテンポや展開にピッタリ合わせることもあるのだから、適当に作ると余計に苦労することになるのだ。

 そして、いくつかの試作品を作って3Dソフトでやりたいことが出来そうだ、ということが解ると3Dで大道具、小道具を用意しなくてはならなくなった。

SF

「キモい静香ちゃん」のコンセプトからどのようにしてSFっぽいアニメになったのか?というと正確なところは覚えていないのだが、1曲目をアニメのオープニング風にすることが決まると、なぜかロボットアニメ風のイメージが生まれたので、その辺に原因があるかも知れない。

 3Dのモデリングには慣れていないので、なるべく単純な形になるようにデザインされたスペース・ファイターだが、滑らかな曲線を作るのもけっこう難しかったので、完成したものとは印象が違っている。

悪の勢力

何度も消しゴムで消した跡が見られるが悪の戦艦はようやく「悪」っぽくなってきた。

昆虫型宇宙人はボツである。

REF

「Really Evil Fighter」というのは後から適当につけられた名前のように思えるが、最初からこの名前で作られていたのである。

ロボット

ロボットを描くのは意外と難しい。

左上が一番最初に描かれたのだが、完全な手探り状態である。

右側二つが採用されたが、左の真ん中のロボットも似ているものが作られた。キャタピラのようなものはモデリングが難しいので、ロボットっぽい足に変更されている。

ピヨニック・エース等

紙に絵を描くとなぜか頭が大きくて足が短めになるのだが、気にしてはいけない。長く描き直した跡も見えるのだが、それでもまだ短めである。

ピヨニック・エースの乗る戦艦はかなり適当だが、最終的には上手く行ったと作者は自画自賛している。

ヘイロ

下絵と3Dでほぼ同じものが出来たのは珍しい。違っているのは名前に「5K」が付いているかどうかである。

「あけないでください」と書かれてある中には外付けモジュールを接続するための端子が付いているのかも知れない。詳しくはミュージックビデオを見て欲しい。

やっとMV制作開始

音楽部分はやる気がなくても数ヶ月で出来たのだが、音楽の完成のあとに決まったミュージックビデオの制作は準備だけで音楽部分と同じぐらいの時間を要してしまった。

そこには3DCGソフトのBlenderで何が出来るのかを知るための試作の時間なども含まれるが、そこからさらに一年かかるとは思ってもいなかった。

スコア?

始めは大まかな時間の区切りを決めて各シーンを作っていたのだが、効率が悪いことに気付いた。音楽に合わせるのなら楽譜に似たものを書いて、それに合わせてシーンを作れば上手く行く。

これを見ながら作れば、曲の中で必ずしも一定でないテンポに合わせたりすることも出来るし、同じ背景の別シーンを一気にまとめて作って、後で所定の場所に割り振ることも簡単になった。

だが見方は作った本人にしか解らない。

(タイトルが実際に公開されたものとビミョーに違うところも面白い。)

メモ

BlenderのややこしいNodeの設定などはメモしておくべきである。

これを書いたおかげで、ネットを検索する回数が減って数十分の節約になったはずだ。

絵コンテ

エンディングのクレジット風の「絵コンテ」の項目にはネタで「作ってない」と書かれていたが、厳密にはちょっとだけ作っている。

3DCGの作業では計画どおりに作業を進めることが多いので、途中で面白いアイディアが思い浮かんだりする事もないし、下手をするとやろうと思っていたことさえ忘れていることがある。

そういう事がないように、面白いアイディアはあらかじめ絵コンテ風のメモにしておくのである。

ハトペン

カリグラフィーペンを持っていたはずだが、どこにあるのか解らなくなっている。そういう時には、よりLudicrousな方法を選択する方が良い。

ハトの羽根で作った羽根ペンで、オープニングやジャケットに使われた文字が書かれたのである。

AからZまで作ってパソコンで使えるフォントにしようかと思ったが、面倒なのでやっていない。


(ホロッホー…!とハト君。「金輪際やらねえぜ」)