a Sunny Day,
the Darkest Night,
the Coldest Morning
And So On

気付くのに21年かかったワケではない。

About this Album

 あれからずっとより良いものを追求して来たはずなんだけど、行き詰まったと思って、20年前の自分の曲を聴いたらヒントが沢山あったという皮肉。
 色んな事を思い出した感じもあるから、当時は作られなかった残りを作ったりもして。ついでに20年前の曲を作り直したり。作り直したことで、全体的な技術というか、理屈で説明出来る部分の技術は向上しているというのも解ると思うけど。
 なんとなく、ずっと停滞していたものがここでちょっとだけ前進したという気がするよ。

Six Months of Glumness

 やることがなくてどうしようもない、ということがあって、その時に昔の自分の曲を聴いてみたんだけど。あまりにも自由にやっていて、それがけっこう面白いという事に気がついたんだよね。
 それで、こんな曲はどうやって作ったのか?と思って、昔のデータを開いてみたらそっちはさらに自由。
 今の環境で音を出したら、音が割れるような設定のローバスフィルターがかかってたり。でも、当時はそれが楽しかったし、今ではそんな楽しみはすっかり忘れてしまった、ということに気付いたりして。
 そうなってくると、今の制作環境で作り直したい、って事になってくるんだけど。
 幸いな事に、当時メインで使っていたSC-88 Proも現役で使えるし。シンセっぽい音はだいたい昔と同じ音になっているよ。もちろん、音が割れるような設定のところは修正したけど。
 この作り直し作業で色々と思い出したことで、他の曲もスムーズに作れたって感じがするよ。

Three Months of Unconsciousness

 Six Months of Glumness はそれぞれ4月から9月までがテーマになっている曲集なんだけど。せっかくだからその続きを作ったということ。Six Months... っぽいノリの曲を作りたかったんだけど、さすがに20年も経ってると、同じようには作れないって気もしたよ。
 それでも雰囲気というか、使う音色で少し似せる感じには出来たと思うけど。
 これはどうでも良い事だけど、今回12月まで作って、20年かけたこの曲集は完成と思ったら、まだ1〜3月を作ってないこと気付いたのは全部の作業が終わった後だったんだ。

Radio

 Six Months of Glumness を最初に収録したアルバムの "HWUWAH HWUWOO" の1曲目がラジオのノイズを使った曲だったから、今回も1曲目はそういうネタの曲になったよ。
 ネタって何だ?って感じだけど、こういう曲は基本的にネタというか、本編の前の寸劇コメディって感じで作ってるよ。
 今回は他の曲でもラジオのノイズを使っているけど。けっこう効果的だったと思うよ。最近のヘヴィーなメタルの曲って、盛り上がるうるさいところでは、良く聞くとギターとかベース以外にも謎のうるさい音が入ってたりするんだよね。そういう効果がラジオで出せるという気もする。
 そして、ラジオなら「謎のうるさい音」じゃなくて、ラジオ奏者の私がラジオを演奏しているって解るし。

五月

 五月は四月のオマケみたいな感じもあるけど。ゴールデンウィークのおかげで特別な月にもなっているよね。
 五月病というのもあるけど。

 今は梅雨の期間が曖昧になってる事が多くなってるけど。20何前はまだ6月は梅雨の月っていうイメージだったよね。

言語学者

 あの曲の原形になった譜面には仮のタイトルとして「Seeping」と書いてあったんだ。最初は本当にそんな単語があるのかすら知らなかったけど、適当に書いた綴りを辞書で調べてみると、その単語が存在していて。そのおかげで言語学者は染みこんでいってしまう事になったんだよね。

Heaviness is all

 どうして急にうるさいヘヴィーなパートを入れたりするんだ?って思う人もいるかも知れないけど。ボクにとってはアレが自然な流れなんだよ。だからいつヘヴィーになっても良いように常に備えておかないとね。
 今がヘヴィーならずっとヘヴィーだし、今じゃなければ後でヘヴィー。ヘヴィネスが肝心だよ。

まあまあな演奏

 クラシックギターの練習はずっと続けてたんだけど、なんだかマンネリになってしまって、あるところから全然上達しなくなってたんだよね。
 そんな中で、ちょっと前からピアノの練習も再開したんだけど。ギターをやってたおかげで指がけっこう上手く動くし、面白いからピアノで盛り上がってしまって。そうしたら、ピアノで使う筋肉が鍛えられた事によって、ギターで上手く弾けなかった箇所が弾けるようになったり。
 アレコレ手を出して中途半端になるのは良くないって事もあるけど、ボクの場合はアレコレやって、やっとまあまあな状態になるって事かもね。
 まあ、作曲がメインとか思っていても楽器の練習はしておかないとダメって事で、今回の演奏はまあまあだと思っているよ。
 あと久々にリコーダー型のコントローラでウィンドシンセしてみたんだけど。それもけっこう上手く弾けたのはなぜだか解らない。
 ダラブッカだけは酷い。

VL70-m

 "Six Months of Glumness" はVL70-mというシンセ音源を買ったから作られた感じもあるけど。音を合成するのではなくて、楽器自体を再現するという仕組みのVA音源を使ったシンセで、リコーダー型のコントローラで演奏することによって、現実不可能な構造の楽器もリアルに演奏できるとか。可能性が無限大って感じだったんだけど。
 その後はあまり発展してない感じで、この技術の名前は聞かなくなってしまったよね。
 考えてみると、昔良いと思っていたものはみんな本来とは違う方向に進んでいって、面白くないものだけが残っているとか、そんな気分だよね。面白くないけど、実用的だからそれが正しいってことなのだけど。
 なにか物足りないよね。

ずるずる女

 最近自分の書いた英語が通じるのか不安だから、ネットで翻訳してみたりするんだけど。Googleによると"the slithering woman" は「ずるずる女」ってことらしい。
 コンピューターはすでにDr. ムスタファを超えているね。

Art Work

 アルバムジャケットには写真でも絵でもない3Dグラフィックで最新な感じを出しているよ。
 何が最新なのか?っていうと、誰でもこのくらいのものが3Dで作れるような時代になったという意味での最新なんだけど。
 すごいパソコンと高価なソフトがないと3Dなんて出来ない時代があった事を考えると、良い時代になった気もするけど。
 でも、誰もがそれなりのものを作れるようになってしまうことによって、何か特別なものがその他大勢の中に埋もれて気付かれなくなってしまう、という事もあるかも知れないけど。
 なんだか常にやりたいことと出来ることに時間差があるような気がしてるから、余計な事ばかり書いてしまうよ。
 そして、あのアルバムジャケットに登場する楽器のようなものについて。
 頭の中にイメージはあったんだけど、どうやって再現するか考えたら難しいと気付いたんだよね。頭でイメージした段階では手書きの絵で再現されるはずだったんだけど、ボクの技術的に無理っぽいので、3Dでなんとか出来ないか?ということでやってみたら、イメージとはちょっと違ったけど、形にはなったとうことでアレになったよ。
 キメラという英語と同じ綴りでチメラという名前、という設定になってるけど。見てのとおりキメラな感じで、色んな楽器が混ざっている見た目なんだよね。アルバムの中で登場する楽器を合わせたものとも考えられるけど。
 なんで「チメラ」なのか?というと、なんとなく可愛いから、という事以外にはないけど。ちょっと呼び方が違ってた方がオリジナルな感じもあるし。後から考えた設定によると、「メラ」つながりで「チャルメラ」と同系統の楽器という説がある、という事になっているよ。
 残念なのは、ボクの右左が解らなくなる病によって、鍵盤の向きが最初のイメージとは逆になってるところなんだけど。本来の向きになると右手で鍵盤を弾いて、左でギターのネックっぽいところを押さえる、というそれっぽい演奏スタイルになるのに。

コレでいいんですか?

Little Mustapha-----ハハハハ!まんまと引っかかったな。
ミドル・ムスタファ-----なんですか、それは?
Little Mustapha-----なんでインタビューをやらないのか?って心配になってたんでしょ?
ミドル・ムスタファ-----まあ、そうかも知れませんが。久々に納得のいく出来って聞いてたもんで。インタビューも張り切ってるのかと思ったんですけど。そうでもないみたいですし。
Little Mustapha-----まあ、コレまでの作品が、言葉でアレコレ説明しないと不安になるような、そんな感じだったからね。それでインタビューも張り切ってたけど。今回は音が全てを語っているといっても過言ではないものが出来た気がするんだよ。
ミドル・ムスタファ-----それは大きく出ましたね。
Little Mustapha-----少なくともミキシングとマスタリングで滅茶苦茶になっていないからね。
ミドル・ムスタファ-----じゃあ、インタビューはなしなんですか?
Little Mustapha-----しないけど、それで楽が出来ると思ったら大間違いだよ。今回は音楽が大いに語っているからね。そこで音楽評論家という事になっているキミの出番ってことでね。ボクの音楽が語っている内容を言葉にしてもらいたいんだよ。
ミドル・ムスタファ-----エエッ?!
Little Mustapha-----もちろん一言二言とかじゃないよ。今回の作品はかなり雄弁であり、かつ詩的であるからね。だいぶ長い文章になると思うよ。でもそんなに難しい事じゃないよ。ボクがコレまで自分の音楽に足りない事を言葉で喋っていたのの逆をやれば良いんだから。
ミドル・ムスタファ-----つまり、適当でも良いって事ですか?
Little Mustapha-----適当じゃないよ。ボクがここで今回のアルバムについて書いてきた内容の足りないところを、キミが音楽から読み取って言葉にするってことだよ。音楽がキミにインタビューするって考えれば良いかもね。
ミドル・ムスタファ-----全然意味が解りませんけど。
Little Mustapha-----とにかく言葉にすれば良いんだよ。まあ時間はたっぷりあるからね。納得のいくものが書けるまで何日でもここに泊まっていけば良いよ。
ミドル・ムスタファ-----ホントにやるんですか…?
Little Mustapha-----つべこべ言わずに。それじゃ、音楽再生!

 このようにして、いつもとは違うけど、いつものように終わらない逆インタビューというのが始まったのです。しかし私は知っています。Little Mustaphaは地底人や地底世界の事を書いて欲しいに違いありません。自分の音楽が気に入っている時には特にそうなのです。創作によって何かが狂うということがあるのか解りませんが、Little Mustaphaは妄想と現実の区別が出来ないのです。
 しかし、それを逆に利用すれば私はすぐに帰ることが出来るはずです。
 地底人や地底世界を否定されればLittle Mustaphaは激怒して私を部屋から追い出すでしょう。
 この陽の当たることのないブラックホール・スタジオから。
 また私は暗い気持ちで出ていくことになるのです。

  2022年3月 ミドル・ムスタファ