「歌と劇:プロフェシー」

12. さびれたデパートの外階段

モオルダア、ばあや入場


モオルダア : べつに、さっきのところでも良かったのに、どうしてこんなところに来るんですか?

ばあや : それはこの国のヘンな習慣のせいでな。どうして灰皿がこんな場所にあるのか理解できかねる。

ばあや、タバコに火を点ける

モオルダア : なんだ、タバコが吸いたかったんですか。それだったらさっきの場所でもよかったのに。どうせ誰もいなかったから。

ばあや : それはそうかも知れませぬが、姫様に見られては困りますもんで。ワタスの国ではタバコなんぞを吸っているところを見られたら、誰でもこのばあやを悪魔とか鬼だとかいうのでございますよ。

モオルダア : それだったら、やめたら良いんじゃないですか?

ばあや : いつでもやめられるように練習はしておりますがな。

モオルダア : 練習?…それよりも、陰謀っていうのはどうなったんですか?まさかタバコを吸うのにボクを一緒に連れてきたってワケじゃないでしょ?

ばあや : おう、そうだった。ワタスはワタスのお仕えしているエニホエアという国のドコデーモス王様の娘様のアティラーノン姫が生まれなすった時からずっと姫様のお世話をしておるのでございますが、その姫様が今たいへんな危機に直面しているというような気配を感じ取ったばあやめがこうしてお願いをしにわざわざあなた様を頼っているのでございます。

モオルダア : 何を言っているのか解りませぬが?

ばあや : あのずる賢い予言者が何かを企んでおるようなのでございます。

モオルダア : その予言者というのは王様と一緒に来たという予言者ですか。

ばあや : さようでございます。その予言者が島の伝説を利用して姫様やドコデーモス王様を己の意のままにしようとしているのでございます。

モオルダア : あっ、解った!その予言者は王家の人たちをここに集めて暗殺しようと企んでいるんだな。そしてその仕事をするのは「角が迷路になっている羊団」というわけだ!

ばあや : それは違いますな。

モオルダア : 違うの?

ばあや : とにかく予言者には気を付けるのです。予言者をくい止めぬ限り、姫様、いやエニホエア王国には必ずや災いが降り注ぐであろう!

モオルダア : なんだか大げさですねえ。でもボクはその予言者という人を見たことがないのですけど、どんな人なんですか?

ばあや : それならあそこを見るがいい。

モオルダア : ああ、あの人か。顔はわかんないけど、いかにも予言者っぽい格好だね。

ばあや : それでは行くのだ!エニホエア王国の行く末はおまえ達、優秀なエフ・ビー・エルにかかっているのだ。さあ行くのだ!

モオルダア : えっ?…まあ、行きますけど。ばあやさんはどうするんですか?

ばあや : まだタバコがこんなに残っているんだ。最後まで吸ってから姫様のところへ向かうから心配なさるな。

モオルダア : ああ、そうですか。それじゃあ、行きますね。予言者に注意ですね。

モオルダア退場


ばあや : おお。吸う度に短くなっていくこのタバコのようにワタスの精神がすり減っていくようだ。何としてでも姫様を守りたいのだが、あの予言者相手ではどうすることもできない。あんなエフ・ビー・エルにまかせて良いものか。…いや、島の伝説は予言者にも変えることは出来ないのだ。ワタスはやることはやったのだ。どんなに知恵を使おうとも、エニホエアの神々は伝説を信じる者を救ってくださるのだ!


ばあや[歌] : モクモク、煙の中に

     未来を映し出す

     島の伝説

     ワクワク、するのもいいが

     炎に包まれたら最後

     麗しの姫を救う伝説


ばあや退場