暑いと思ってるでしょ?暑いですからね。ムシムシすると思ってるでしょ?ムシムシしてますからね。でも、そんなことはウソで、誰かにそう思わされているだけだったとしたら?
そんなことに気付いても、どっちみち思ってしまっているのだから、暑くてムシムシしていることには変わりはないですよね。
もう何回目の夏なんだよ!というぐらい夏を過ごしてきましたが、何度夏になってもアチ〜…とか言ってしまうし、思ってしまうのです。それに、コンビニとかスーパーが異常なまでに低温なのも、外に出てからの暑さを強調することになっていたりもしますけど。ブラックホール・スタジオ(私の部屋)はエアコンを入れても余裕で30℃越えますけどね。
そんな感じで、今回は「ブラックホール・スタジオが暑い自慢」と思いきや違うので、ちょっとベランダに出てみますね。もちろん望遠耳は持って出ますよ。
[登場人物についてはなんとなくCASTの「近所の人達」など参照。]
[登場人物についてはGlossary参照。]
「なあ、知ってる?」
「知らないよ」
「そうだよな」
「ああ、困ったなぁ」
「あら、あなた?今日は居眠りしないんですのね」
「だって、こんな状況じゃ居眠りも出来ないだろ」
「そうね。うっかり寝言で変なことでも言ったら、それはタイヘンですからね。あなた」
「ん!?別にそんな心配はしてないけどな。いったいキミは何を言ってるんだ?」
「みなさん、私が誰だか解りますかぁ?…そうなんです。二代目ウッチーを襲名した新ウッチーでぇす!二代目を襲名したものの、去年のクリスマスにリボンを付けた巨大なネコに食べられるというアクシデントにより行方不明になっておりました。……ええ、そうなんです。厳密に言うとまだ行方不明なのです!しかし、新ウッチーのリポーターとしての勘と、一緒に行方不明になっているスタッフたちの努力により我々が現在、違う次元にいることが解ったのでぇす!そこで、今回は私の独断で緊急特番として番組内で私達を救出して欲しいのです!………スポンサーの意見よりも、人気女子アナの救出だと思いまぁす!……もう代役がいるなんて、そんなことは許されません。それではここでどうすれば私達を救出することが出来るのか、説明してみたいと思いまぁす!黄色いページです!視聴者のみなさん。黄色いページを集めてください!そしてここに持ってくるのでぇす!」
「なあ、知ってる?」
「知らないよ」
「そうじゃなくてさ。今なんか聞こえなかった?人の声が」
「そんなこと言っても、俺たち以外に誰もいないんだから空耳じゃないか?」
「まあ、そうかな。あっ、ここだ。ようやく着いたようだな」
「ホントだ。意外と普通なんだな?」
「まあ、そうだけどな。流行ってるって事だしダイジョブだよ」
「そうだな。これで、今年こそはイケてる夏だな」
「あら○○の奥さん!」
「あら、××の奥さん!ホントにねえもう」
「ホントに」
「最近はアパートが多くて道の掃除をする人もいなくなってタイヘンよね」
「ホントにねえ。でも順番でやることになってるんじゃないの?」
「そんなの建て前だけなのよ。ちゃんと規則にして罰則がないと誰もやらないのよ」
「ホントにねえ」
「それに、これ見てちょうだいよ。こんな大きな紙切れが捨ててあったのよ。どうせそこのアパートの人が出かけるついでにゴミをうちの前に捨てていったのよ。こんなに何枚も。ホントに」
「あらやだ。何なのそれ?そんなものはそのアパートの前に捨てておけばイイのよ。ホントに」
「そうもいかないからウチで処分しますけどね。ホントに、困ったものだわね」
「ホントに。それじゃあね」
「ホントに、それじゃ」
「ザ・ガードマンさん。肩に力が入っていますよ。そんなことでは長い時間は持ちませんわよ。ンフフフフ…」
「あぁ、マダム。お帰りなさいませ」
「アタシが帰って来たのだから、ここの警備はもうオシマイでよろしいわよ」
「はい、マダム」
「それでは次の仕事に移ってもらいましょうか」
「はい、マダム。なんなりと」
「ちょっと探して欲しいものがあるのよ。ンフフフフ…」
「はい、マダム」
「いらっしゃいませなう。ご注文はお決まりでしょうかなう?」
「え?あ、まあ。じゃあ、ボクはこのナウギ丼の並」
「じゃあ、ボクも同じのね」
「ナウギ丼の特上を二つなう」
「いやいや、特上じゃなくて並ですよ」
「ナウギ丼特上二つ!」
「あら、行ってしまいましたよ」
「しかも、なうっていちいち付けなくてもなあ」
「でもナウギだから仕方ないだろ。それよりも、これ見てみろよ!『並』が700円で『特上』が8000円って書いてあるぞ!」
「なんだよそれ!そんな大金持ってないよ」
「というよりも、これはほとんど詐欺だぞ」
「すいませーん!さっきの注文取り消してください!」
「…」
「あれ?無反応な?」
「うん。これは、料理が出てくる前に逃げた方が良いんじゃないか?」
「そうだな、誰もいないみたいだし。まだ料理が出てきてないなら食い逃げにはならないしな」
「なあ、今店の方に誰か来てなかったか?」
「あら、あなた。やっぱり起きていらっしゃるのね」
「だから、今は居眠りしている場合じゃないからね」
「あら、そうですの。きっと焦燥と苛立ちの夏がやって来たのね」
「なんだそれ?なんか、さっきからキミは怒ってるのか?」
「どうかしら?あなたがそう思っているのなら、そうかも知れませんよ。ウフッ…」
「良く解らないなあ。それよりさ、知ってるだろ。むこうの通りに『ナウギ屋』が出来たって」
「それが、どうかなさいました?」
「いや、だから。けっこう流行っているって話だし、ウチのウフギはどうなるのか?って思って、それでいてもたってもいられないって感じなんだけど」
「ホントにそうなのかしら?」
「なにが?」
「ソワソワしているのは他に理由があるはずよ。ウフギとナウギは裏と表。裏に人が来れば表にもやって来るもの。あなたならそれが解ると思っていたのに…」
「なんのことか、意味が解らないけどなあ…」
「ちょっと、そこのお巡りさん!」
「ああ、これは○○の奥さん。私はお巡りさんではなくてザ・ガードマンだ!」
「そんなのどうでも良いのよ。ちょっとこれ見てよ!こんなに紙切れが捨ててあって。これじゃあほとんど不法投棄じゃない。もうホントに」
「おや、これは黄色いページのようですね」
「色なんてどうでもイイのよ!どうせこういうことをするのは、その辺のアパートの一人暮らしの若者なんだから、あなたちょっと捕まえてきてちょうだいよ」
「そんなことを言っても、私はザ・ガードマンですし。それに、誰を捕まえたら良いのか…。そんなことよりも私は今、赤いページを探しているんです」
「何なのよそれ?」
「いや、気にしないでください」
「そんなこと言われるとよけい気になるわよ、ホントに」
「ムフフフッ…」
「部長、どうしたんですか?どう考えても気付いて欲しそうな笑い声を出したりして」
「ムフフフッ。解ったか?」
「解りますよ。いつものことですし」
「いつもって言っても、キミは最近入社してきたばかりじゃないか?」
「まあ、そうですけど。それよりも、何なんですか?」
「キミ、知ってたか?このルーズリーフっていうのは、ルーズリーフ用のものなら無地のやつも罫線のあるやつも、表になっているやつも、同じバインダーで使えるんだぞ」
「なんですか?」
「いや…。なんですか、じゃなくて。この一冊のバインダーの中にいろんなページがあるんだよ」
「まあ、そうですけど」
「ええ?!そんな反応なのか?」
「いや。もっと驚いた方が良かったですか?」
「別に、驚いてないのを知っていて驚かれてもなあ」
「そうですよねえ。それよりも、さっきの大量のアレは何に使うんですか?」
「ああ、あれか。よく知らないが。どうやら新しいプロジェクトと関係してるらしいけどな」
「なあ、知ってる?」
「知らないよ」
「そうじゃなくてさ。オレ、最近本読んでんだぜ」
「へえ」
「へえ、じゃなくて。その本がすごいんだよ。あの楽天的な社長の書いた楽天的な本なんだけど、それ読んでたらなんか大金持ちになれるような感じなんだよな」
「ホントか?」
「ホントだよ。あの社長が書いてんだぜ」
「それで、なんて書いてあったんだ?」
「さあ」
「さあ、って?!」
「だって、まだ最初の5ページしか読んでないからね」
「それじゃあ、大金持ちにはまだ遠いな」
「まあ、そうだけど。だけどさ、適当にぱらぱらめくってたら、途中に緑のページがまぎれてたんだよね。それで、もしかするとこれはアタリなんじゃないかと思ってさ
「それ、どうしたの?」
「そのページをちぎって、買った本屋に持って行ったらさ…」
「まさか…」
「そうなんだよ!もう一冊同じ本がもらえたんだよね!」
「あなた!」
「ウワァ!…なんだキミか」
「やっぱり、そうなのね!やっぱり、アタシなんか『なんだ』なのね」
「いや、そうじゃなくて。居眠りしてたもんだから…」
「そうじゃないのよ、あなた。あなた…」
「どうしたんだ?」
「あなた、やっぱり黒猫亭に入りびたっているって…、あれは本当だったのね。そんなに黒猫亭のマダムが良いのね」
「誰が、そんなことを?それに、ボクはいつだってここにいて…」
「そんなのは全部言い訳。夕立の前の湿った空気が全て教えてくれたのよ。あなた…。あなた…」
「えぇ、なんで?!」
「おい、オマエ!オマエが望遠耳か?…そうだな、その望遠耳は明らかに望遠耳という意味において望遠耳以外ではないからな」
「またですか?!」
「また、ってなんだ?私がここに来たのは初めてだが」
「そうじゃなくて、ボクはここで望遠耳を使って聞くのが役目だから、話の中に登場しちゃいけないんですよ」
「まあ、それは知ってるがな。でも、聞いたところによると望遠耳の人は最大限活用すると便利だ、ってことだからな」
「それって、ノグソさんとか、ガブリエルさんの事ですか?ということは、あなたも季節を変えたりする人の仲間ですか?だったら、暑いから夏を早めに終わらせて欲しいんですけど」
「なんだそれ?季節はそう簡単には変わらんよ。それに夏が嫌いなんて、キミも珍しいな」
「だって暑いじゃん!」
「怒らなくても良いだろ」
「怒ってないですけど。それよりも、なんの用ですか?」
「ああ、そうだった。キミは最近おかしいと思わないか?」
「ボクは昔からこんなだから別におかしくなんかなってませんよ」
「そうじゃなくて、この街全体の話だよ」
「この街全体も昔からこんなだから…」
「そうじゃなくて。なんというか去年の事件以来、この辺では何かが常に間違っているんだよ」
「事件ってどの事件か知りませんけど、ボクの意見では世の中は常に何かが間違っていますよ」
「なんだ、キミは哲学者か?!」
「違いますけど」
「だったら余計な事は言うな!」
「スイマセン」
「ハイ、こちらは現場のウッチーです!番組の途中ですが、ここで重大なお知らせがありまぁす!すでに黄色いページを見付けた方もいるかも知れませんが、私達が仕入れた情報によりますと、別の色のページを集めている人がいるようなのです。でも騙されてはいけません。集めるべきなのは黄色いページです!黄色いページを持ってくるのでえす!そして、たった今、人気女子アナとしての独断で、黄色いページを持ってきた方から抽選で10名様に素敵なプレゼントを用意したいと思います!…スポンサーなんて関係ありません!私が助かるのと、スポンサーがいなくなるのではどちらが痛手だと思いますかぁ?…そんなのは嘘っぱちです!私がいてこそ、スポンサーが付き、私がいてこそ番組が成り立つのです!それでは、ここでCMです!」
「おい、望遠耳!なんで私達の会話は途中で途切れるんだ?」
「だって、ここでの会話って、いつも長くなるからバランスが悪くなるんですよ」
「なんだそれは?」
「それよりも、あなたは誰なんですか?『夏の使い』とかそういう人とも違うみたいですし。まあ、いきなりこのベランダにやって来るのだからちょっと特殊な人ということは確かですよね」
「おお、解ってきたじゃないか!」
「そこは解っても、あなたが誰かは解りませんが」
「まあ、そうだな。私は…何て言うか…世の中の全体的な事をな…その間違いがないように、というか、上手くつながるように管理している…まあ、言ってみれば神様的な存在でもあるのだが、私がホントに神様か?ということになると、それはまた全然違う話で、まあ…そのぉ…何かの番人とでも言おうかな」
「全然解りませんけど」
「まあ、そうだろうな。今回は問題がちょっと複雑だからな。前回みたいに『夏の使い』みたいな単純な肩書きにはならないんだよ」
「そうですか。でも名前はあるんでしょ?」
「あるけど、ない」
「さては、うっかり恥ずかしい名前をつけたんでしょ?」
「キミ!今月は良くやってくれたね。今月は給料の他に特別ボーナスとしてキミに『つま先』をあげよう!」
「ホントっすか!?」
「ホントだとも。キミはつま先をなくしてずいぶん苦労していたみたいだね」
「そうなんすよ。去年ヘンなバアちゃんにつま先をかじられてからビーサンが履けないんすよ。つま先がないとビーサンが履けないし、ビーサン履かないと全然夏じゃないって感じだし」
「ただ、このつま先だけではダメなんだが」
「なんでっすか?」
「このつま先をキミの足に付けて、ちゃんとしたつま先として機能させるのには臭いページが必要なんだがね。それが見付かればすぐにでもキミのつま先は復活するぞ」
「そうっすか。じゃあ、その臭いページがあれば良いんすね?」
「そうだ。キミが臭いページを見付けたらすぐに私のところにもってくるんだ。多ければ多いほど良いぞ」
「マジ、余裕っす」
「そうかね。では頼んだぞ」
「あら、どうなさったの?ザ・ガードマンさん。赤いページは見付かりましたか?」
「はい、マダム。私も全力で探しているのですが、今のところはこれだけで…」
「…」
「…あの、すいません。…こればかりは私の力不足としか…」
「白いページを血に染めてみたら赤いページになるかしら」
「ハッ!?それはまさか?」
「ンフフ…。ウソですよ、ガードマンさん。ザ・ガードマン。あなたにそんなことは出来ませんね」
「ハッ、ハイ…」
「なあ、頼むから泣くのはやめてくれよ。キミの言っていることは全部キミの思い込みなんだから…」
「あなた!…あなたは本当にそんなふうに思っていらっしゃるんですの?」
「なにが?」
「これが全部あたしの思い込みだというのなら、そこにある赤いページはなんだと言うんですの?」
「あれ!?なんだこれ?赤い紙だね」
「あなた…。あなた…………」
「ちょっと…、キミ…。だからもう泣くのはやめて…」
「泣いてなんかいません」
「でも、泣いてるじゃないか」
「これは涙ではないの。これは闇の彼方からこぼれた一滴の光…」
「…また、そんなのか」
「ということでな、全てをまるく収めるには白いページを集めないといけないんだが」
「白いページって?自由帳ならあったような気もしますけど。もしあったら持って行きますか?」
「なんだそれは?私の言っているのは無地のノートの事ではないんだよ。とにかく、この辺で何かページを集めているとか、そんな話は聞かないか?」
「それなら望遠耳なんて使わなくても聞こえてきそうなぐらい聞こえていますけどね。でも今のところ白いページは出てきてないかな?」
「本当か?だからおかしな事ばかり起きるんだよ。それで?」
「それで?といってもねえ。今のところ黄色と赤と、緑が出たらアタリみたいなのとか、ルーズリーフの話もあったっけな。あとあれだ!臭いページ」
「臭いって?!…まあいいか。そうか。よくぞ教えてくれた。それでは私は行かなければ。このままでは世の中が大変なことになるぞ」
「…行くって、どこに行くんだ?」
「はい、こちら社長のウッチーです!人気女子アナというのは過去の話ですから勘違いしないでくださあい!それでどんなご用件でしょうか?…そんなものはありません。この会社はリコールを取り扱っている会社でえす!…そんなことを言っても、ないものはないのですから。もしもそれをリコールしたいのなら話を聞いてもイイですが。…だったら始めから電話なんかかけて来ないでくださあい!」
「どうしたんですか?部長」
「いや、なんだか嫌な感じがしてね」
「なんですかそれ?今の電話ですか?」
「まあ、そうなんだが。あの声はどこかで聞いたことがあるような」
「それは、なんていうか…。それよりもこの紙の束はどうするんですかね?なんに使うか解らないし、こんなもの買っても経費の無駄にしかならないし。リコールとかで持って行ってくれませんかね?」
「り、リコール!?」
「リコールがどうかしましたか?」
「い…いや。なんでもないが、キミはリコールの意味を知ってるのか?」
「あんま知らないですけどね」
「なあ、知ってる?」
「知らないけど。なんだよ。ニヤニヤして気持ち悪いな」
「でも、これがニヤニヤせずにいられますか?」
「知らないよ」
「それだからダメなんだよ。いつでも何かを知ろうと思う心を忘れてはいけないんだな」
「なんだよそれ?」
「店長!」
「ん?!何?」
「なんかこの本、こんなに大量に届いているんですけど、良いんですか?」
「この本って、どれよ?」
「この楽天的なナントカってやつですけど」
「ああ、それね。それなら大丈夫みたいよ。むこうが勝手に送ってきたやつだし。すぐにハケるから」
「ハケるって、どういうことですか?」
「知らないけど、むこうがそう言ってるんだからそうに決まってるでしょ」
「なんのことだか全然解りませんけどね」
「それじゃあ、みなさん。今日から夏休みですが事故などにはくれぐれも気をつけるんですよ。それから家でゲームばかりしてないで、外で体を動かさないといけませんよ」
「やってまーす!」
「よろしい。では今日はここまで!」
「やって来まーす!」
「だからなんだよ?」
「まあ、そう慌てなさんな、って」
「別に慌ててないけどさ」
「まあ、聞きなさいよ。ここに、さっき印刷屋さんからわけてもらった緑の紙があるけど、この紙をこうやって本のサイズに切ってみると」
「緑の紙が本のサイズになったね」
「だろ!?」
「それで?」
「それでじゃないよ!この緑の紙を本屋さんに持って行ったら本屋さんはアタリページだと思って、あの本をもらうことが出来るんだぞ!」
「おお!…それってスゴいのか?」
「何言ってんだよ!アタリの緑ページはこの楽天的な本の数冊にしかないんだぞ。それが、この緑の紙切れと交換できるってことは、どれだけ儲かるとおもうんだ?」
「おお!…そうか!つまり本のサイズに切り取った緑の紙が、実際の本と交換できてしまうってことか!」
「そうだよ。ボクらは大量の本を手に入れることが出来るんだな。まあ同じ本を何冊も読んでも意味がないけど、手に入れた本をあのチェーン店とかに売ったらどうなると思う?」
「お前、なんか頭良くなったんじゃないか?それともその本のおかげか?」
「何言ってんだよ。オレは前から頭脳明晰なんだよ」
「ハイ!こちら現場の新人女子アナ、横屁端(ヨコヘバタ)です!みなさん、ここがどこだか解りますか?…そうなんです。私は現在、行方不明の人気女子アナ、ウッチーこと内屁端(ウチヘバタ)アナの声だけが聞こえてくるという街にやって来ているのです。…はい、表情が硬いですか?そんな事は関係ありません。私は現在、キュートでチャーミングな新人女子アナから一気に人気女子アナの座を奪おうと、このチャンスに賭けているのです。…はい、そうですが、そんなことは関係ありません!今のところ内屁端アナの声などは聞こえてきませんが、ひとまずこの街の住人達から事情を聞いてみたいと思います」
「ハイ、こちら現場のウッチーです!先程、私の代わりに新人女子アナがリポートをしているとの情報を聞きつけて再び登場しています。みなさん、ここがどこだか解りますかぁ?そうなんです。私はスタッフ達と一緒にいまだにこの異次元空間に閉じ込められているのです。一刻も早く黄色いページを集めてここから脱出を試みたいのですが、どうやら、ここでさらに悪いニュースが入ってきたようです。なんと私達が黄色いページを集めているのを知っているのか、いないのか、どこかの会社が大量の緑のページを発注したとのことです。みなさん、緑ではありません。黄色です!黄色のページを集めてここにもってくるのです!」
「あれ、□□部長、どうしたんですか?」
「ああ、キミか。キミ、辞職願の書き方は知ってるか?」
「なんですか急に?!」
「知っているのか、知らないのか?」
「えぇ?!…まあ、だいたいは知ってますけど」
「それならば早く用意しておいた方が良いぞ。辞職願と辞職届を一緒にな」
「なんですかそれ?まさかこの会社が…」
「私も会社を辞めるのにもう疲れているんだがね。また、ということだな」
「また、って?」
「それはどうでもイイがな。あの大量の紙の使い道を知ってるか?」
「さあ?」
「知ればキミだって辞職願ならびに辞職届を同時に書きたくもなるさ。ああ、悪いが私は先に辞めさせてもらうよ。いいかね?もしも乗っている船の船底に穴を見付けたら、キミはそれを手でふさぎ続けるのか?それとも船を見捨てるのか。そういうことだよ。ではまた会おう!」
「ちょっと、部長!?」
「ハイ!現場の横屁端です。ただ今、先程の街に住む子供達が夏休み中でハイテンションになっている現場に遭遇したのでさっそくインタビューしてみたいと思います!…キミはこの街に住んでるのかな?」
「やってまーす!」
「そうなんだ。それで、この街で何か不思議な声とか聞かなかったかな?お姉さんと同じような感じの声だったはずだけど」
「やってませーん!」
「それじゃあ、誰かがそういう声を聞いたとか言ってなかったかな?」
「ええと。去年はカブトムシだけを飼ってたんですが、今年はカブトムシとクワガタを同じカゴで飼っていたら、クワガタがカブトムシの首をちょん切って、すごいなぁ、と思いました!」
「…そ、そうなんだぁ!…以上、現場から横屁端が…」
「ハイ、こちら現場のウッチーでぇす!ちょっと、そこの新人女子アナは何を考えているのでしょうか?なんと、新人のぶんざいで人気女子アナとしてリポートが務まるとでも思っているようです!」
「あっ!その声はウッチー先輩!」
「失踪事件に便乗して人気女子アナの座を奪おうとするような人から『先輩』とか呼ばれたくありません!」
「でも、それはとんだ勘違いです。確かに新人女子アナとして上昇志向は欠かせないものです。しかし、これはあくまでも局の決めた方針に従ったまでです」
「それはいったいどういうことですかぁ?」
「実を言いますと、ウッチー先輩が失踪する以前から局の上層部の方では、最近のウッチー先輩は独善的であり、そしてあまりにも性急に事を進ませようとする傾向がある、ということで要注意人物としてマークされていたのです」
「そんなことはありませぇん!…それよりも、そんなことを言ってダイジョブなんですかぁ?」
「今はスタジオにお返ししたのでマイクは切ってあります」
「でも、こちらの中継は続いています!」
「異次元空間からの中継はカットしたので問題ないのです」
「良く解りませんが、もしもまだ先輩である私を慕う気持ちがあるのなら、行動で示して欲しいと思いまぁす!さもなければ、私がそちらの世界に戻れた時にあなたの女子アナとしての未来はないと思ってくださぁい!」
「ハッ、ハイ。解りました」
「それでは、私に変わって黄色いページをもってくるように住民達に呼びかけてくださぁい!」
「でも、中継はどうなるんですか?そんなことを勝手にしたらスポンサーが…」
「そんなことは関係ありません!」
「ハッ、ハイ。解りました…」
「あなた…」
「ゥウウウン…」
「あなた…!」
「ウワァ!…ああ、キミか」
「フフフゥッ…!」
「なんだ?いつもと笑い方が…」
「そうかしら?もしかしてアタシの笑い方まで忘れてしまったのかしら?」
「何を言っているんだ?」
「彼らがやって来たらあなたはどうするなう?」
「なう?」
「あなたの目の前にいるのはだれなう?」
「…えっ?」
「…あなた…」
「キミはいったい…」
「だれなう?」
「いや…なんだか」
「ナウギかしら?」
「えぇ…!?」
「マダム。…スイマセン。まだ赤いページはこれだけしか…」
「あら、そうでしたの。でも心配しなくて大丈夫よ。ザ・ガードマンさん。彼らがやって来ます」
「彼ら…ですか?」
「何か質問があるのなら聞いても良いのよ、ザ・ガードマンさん」
「あの、私には最初から何が何だか解らない状態でして。それでも、ザ・ガードマンとしては黒猫亭のマダムの言うことならなんでも聞くべきかと思い、こうやって…」
「ンフフフフ…。良いわ、教えてあげますよ。地獄の門が開いて異形の者が血を求めてやって来るのよ!ンフフフフ…。ンフフフフ…」
「……??」
「ああ、困ったなあ。さっき望遠耳のところに行ったけど、結局なんにも解らなかったしな。もう一回行ったら何か新しい展開とかあるかも知れないが、なんかあそこに行くとダラダラしてしまうし…。というより、このニオイはなんだ?これは…このニオイは…何でもいいが臭すぎるのだが。…ン!この建物だな。あぁ、ダメだ。この臭すぎるニオイは耐えられん。とりあえずここは予定を変更してこのニオイをなんとかしなければ」
「なあ、知ってる?」
「何が?」
「何がじゃなくってさ。テレビ見てたらさ、昔スゴイ頭の良いお坊さんのことやってたんだよ」
「へえ…」
「なんだよ、その反応は!?探求心というものがないのか、キミには?」
「だって、頭の良いお坊さんって肩書きは、何だか胡散臭いし」
「そういう考えは良くないぜ。そのテレビでやってた一休みさんっていうのは、絵の中の虎は捕まえられないって事を人に教えることが出来たんだぜ!」
「ヒトヤスミさん!?」
「うん。…というか、名前よりもこの逸話に驚かないのか?」
「いや、なんか違うところで驚いてしまったけど。ホントにヒトヤスミさんだったか?」
「そうだぜ」
「そうだぜ、なら仕方ないかな」
「ちょっと!あなたなんなのよ、こんな時間に帰ってきて。まさか…」
「まあ、そのまさかだけどね。また会社を辞めてきたよ」
「また船底に穴ですか?もうそんなことはどうでも良いわよ!それよりも、この紙切れはいったい何だって言うのよ!」
「そんなの、私に言われても知らないがな」
「あなたが言ってませんでした?今年の夏はこういう黄色いページが役に立つって」
「まあ、それは夏が始まる前の事だろう?いざ夏が始まってみたら、そんなものはどうでも良くなってしまうんだよね。それに私とその紙切れとは関係ないが。なんだそれは?」
「知らないけど、家の前に積んであったのよ。私はあなたが取りよせたと思ってとっておいたのに。ホントにもう」
「おい、お前。そこで何をやっているのだ?」
「なんだお前は。勝手に人の敷地に入り込んでその態度は?」
「ここがどこであろうと私には関係ない。それよりも、このニオイだ。このニオイはいったい何なのだ?これではマトモになるべきものもマトモにならなくなるぞ」
「これは臭いページのエキスだよ」
「なんだそれは?!」
「騙されやすい若者に偽のつま先を渡したら喜んで臭いページをもってきてくれたんでな。それに、この暑さだ。臭いページはさらに臭くなるというワケだよ」
「それは…。なんというか説明になっていないと思うがな。それにしても、どうしてこのアタリにはこういうおかしな物を作る人間が良く現れるんだ?」
「おかしな物だと?何てことを言うんだ。これこそ偉大なる科学だと思わないかね?これで世の中から貧困という言葉は消えるんだぞ!」
「なんで?!」
「このニオイは古本屋のあのニオイ。もちろん大きなチェーン店のようなところではなくて、商店街のスミとかにひっそりたたずむ感じの古本屋だがな。あのカビ臭いというか、なんというか、説明の出来ないあのニオイだよ。私は子供の頃あのニオイを嗅いでしばらく動けないぐらい気分が悪くなったこともあるんだがな」
「どうしてそんな物を集めるんだ?」
「ニオイ自体はそれほど問題じゃないのだよ。小さな古本屋がどうしていつまでも利益を上げてつぶれないで存在できるのか?全ては臭いページがあるためなんだよ。見たまえ!この臭いページのエキスに私のポケットの中に入っている千円札を近づけてみるぞ。…どうだ!みたか!今この千円札がこの臭いページエキスの方へ近づこうとして、ひとりでに動いただろ!どうだ!?見なかったか!?」
「…(どうやら私が思っていたよりも、このあたりで起きている現象は深刻なようだ。この自称科学者は完全におかしくなっているようだし。もしかすると、これもどこかに原因があるのかも知れない。この臭いページは後回しにして、とにかく白いページを見付けるのが先決のようだ)…」
「なんか、言われたとおりに釘でつま先を打ち付けたのに、血ばっか出て全然ダメだな。…まあ、ないよりはいいけどな…」
「なあ、知ってる?」
「知らないよ」
「じゃなくてさ。さっきの印刷屋さんシャッターしまってるよ」
「ホントだ。せっかく緑の紙をもらいに来たのにな」
「でも、店じまいには早くないか?まだ4時にもなってないぜ」
「そうだな。…ちょっとそこの若者に聞いてみようか」
「ちょっと、そこの足から血を流したままビーサンを履いてるキミ」
「なんすか?」
「この印刷屋さんっていつもこんなに早く閉まるのか?」
「知らねえっすけど、もう紙がないみたいな、そんな感じ?」
「聞かれても知らないけど。紙がなくなったってこと?」
「そうっすよ。実はオレもここで紙を買っていったんすよね」
「なんでちょっと偉そうなんだ?」
「その紙を使って臭いページにしたら。つま先の他にボーナスで5万円ももらったんすよ!マジで。親戚が古本屋だから紙を大量に仕入れて古本屋の倉庫にしまっておけば臭いページになるんすよ。マジで」
「マジでって、なんのことだか解らないけど、キミはまだ若いな。ボクらは緑のページで大儲け…」
「おい、余計な事は言うなよ」
「そうだった。それで、この印刷屋さんはいつ開くのか知ってる?」
「知らねえっす。ていうか、緑のページならこのあいだアッチの会社が全部買っていったって感じ?」
「え?!」
「別にオレが聞いたわけじゃねえっすけど…」
「なにが?」
「良くわかんないっす…」
「オレ達もだよ」
「ハイ、こちら現場の横屁端です!みなさま、ここがどこだか解りますでしょうか?…そうなんです。私はついに行方不明になっていた人気女子アナのウッチーこと内屁端アナとコンタクトをとることが出来たのです。そして、ウワサどおり内屁端アナは黄色いページを要求していたということです。そこで、将来有望な新人女子アナである私が独断で決めたことですが、黄色いページを持ってきた方にはもれなくその量に見合うだけの賞金として五円玉を差し上げたいと思うのです!…そんなことは知りません!…それはスポンサーが払えば良いことです!以上、現場から横屁端がお伝えしました!」
「ハイ、こちらウッチーでえす!」
「あっ、ウッチー先輩」
「黄色いページの方はうまくいってますかぁ?」
「ハイ。ただ今賞金の事を大々的にお知らせしたのですぐに集まると思います!」
「しかし、ここで気をぬいてはいけません。なんとウワサによると大量の緑のページがリコールされるということなのです!」
「リコールとはなんですか?」
「それは知りません。でも大問題だと思いまぁす!」
「では、どうすれば良いのでしょうか?」
「それはこちらで考えてあるので大丈夫でぇす!とにかく横屁端アナは黄色いページを集めてください。必要な血は我々の方で確保したいと思いまぁす!」
「血とはどういうことでしょうか?」
「それはまだナイショです!」
「なたあ!」
「…?」
「なたあったら!」
「…ねえ、キミはきっと疲れているんだよ。なたあって『あなた』のことだろ?」
「まあ、あなたったら!?」
「あれ?!違うのか?」
「ウフギとナウギは違うのよ、あなた!ウフギがナウギ化したら、それはフウギ。あなたがナウギ化したら『なあた』なう!」
「?!」
「黄色に赤はオレンジかしら?」
「…まあ、ね」
「緑に赤ならどうなるの?」
「さあ…」
「あなたが臭いとどうなるの?アタシが白いとどうなるの?ウフギはナウギになるのかしら?」
「…解らないけど…」
「オイ、望遠耳!ダイジョブか?だいぶ疲れているみたいだが」
「ああ、ややこしい人。なんかこんな炎天下で望遠耳じゃ疲れますけどね。それより、あなただって疲れてる感じですよ」
「まあ、知ってるだろうが、ものすごい臭いニオイを嗅いでしまったからな。それに今回はなんのことだかさっぱりだ」
「あなたがそれを言ったらどうにもならなくなりますよ」
「そうなんだが、なにか新しい情報はないかね?」
「今のところ緑のページが優勢ですかね。マスコミの力を使えば黄色いページの逆点もありそうですけど。あとは黒猫亭のマダムが赤いページを集めてるみたいですけど。あのマダムは何だか今回怪しい…」
「なに?黒猫亭のマダム!?それは大変だ!」
「何がですか?」
「全てはマダムが仕組んだ事かもしれないぞ」
「なんで?」
「なんでって言われても、説明は面倒だが。とにかくキミは危ないから部屋の中に戻りなさい!…と思ったけど望遠耳は役立つから、やっぱりここにいなさい!それでは、また後でな」
「えっ?!ちょっと…」
「う〜ん、良いぞ!臭いぞ!臭いページだ!臭いページだぁぁああ!!」
「あ〜あ。なんか今年もダメな夏になる予感がしないか?」
「そんな感じだよな。なんだかんだいって、結局駅前の居酒屋だしな。アタリページの儲け話のところまでギラギラした感じだったんだけどな」
「だいたい、なんで緑の紙が大量に買われたりしたんだろうな?」
「そうだな。しかも、買った店が紙屋じゃなくて印刷屋というのも意味が解らないし」
「それより、紙屋ってどんな店だ?」
「そういえば紙の専門店とか見たことないな」
「まあ、紙がいっぱいおいてあるんだろうけどな」
「それは、なんか当たり前すぎるな」
「でも、他に考えられないだろ?」
「そうだけど…。あれ?あのテレビでやってる中継ってこの辺じゃないか?」
「あ、ホントだ。確かあのニュースの前のリポーターって去年から失踪してんだよな」
「ハイ、ということで、我々の元にはまだこれだけしか黄色いページが集まっていません。もっとたくさん集めないと内屁端アナを救出することは出来ないのです。あなたの、ほんの少しの優しさが内屁端アナを救うのです。黄色いページを見付けたら是非とも我々のところへ届けてください。そして、これは新人でありながらも有能な女子アナの独断でありますが、今から黄色いページを持ってきてくれた方には、これまでの賞金5円から一気に値が上がって1ページ五万円!五万円!を差し上げたいと思います!みなさま、このチャンスをお見逃しなく!五万円ですよ!」
「オイ、聞いたか?!」
「五万円はでかいぞ。楽天的な本を古本屋に売るなんてバカげてたな。始めから黄色いページを探してたら良かったんだ!」
「良し、そうと決まったらこんな居酒屋に用はないぞ。もう一本生ビール飲んだら行くぞ」
「まだ飲むのかよ!?」
「黒猫亭のマダムがどうしてこんな所に?」
「あら?あなたこそどうしてこんな所に?」
「フン。面白い事をいうじゃないか。マダムがここにいるのなら私が来たっておかしくないのは知っているだろう」
「そうかしら?私だって好きでやって来たのではありませんよ。ンフフフフ…」
「私にウソをついても意味はないぞ。この辺りのおかしな現象は全てマダムのしわざだな。いったい赤いページを集めて何をしようというのだ?」
「あら、人聞きの悪い事を。私は何も好きこのんでこんな所に来たりしませんよ。去年のおかしな事件のせいで、こんなことになってしまって。でも私にだって人を助けたい気持ちぐらいありますよ。ンフフフフ…。だから赤いページを集めたら、この世界に必要な人はこちらに戻ってくることが出来るのよ。ンフフフフ…」
「何を言っているのか良く解らないが、これ以上状況が悪化すればもう世界がどうなるか解らないぞ」
「もう、世界なんてどうでもイイじゃないですか。ンフフフフ…。あなたにはそうはいかないかしら?でもあなたが白いペ−ジで全てをまるく収めようとしても、問題が片付いたことにはならないのよ」
「それは、どういうことだ?」
「この世界は常に何かが間違ってるとか。そう言ったのはあなたじゃありませんでした?」
「ん?!…それは私じゃなくて、望遠耳の男だが…。まあいいか」
「この街を元どおりにしたいのなら、私に協力すべきだと思いますよ」
「そうはいかないぞ。まあ、マダムがそうしたいならそうすればいい。私は私のやり方でやらせてもらうからな。さらばだ!」
「強情な人だこと…」
「ハイ、こちら現場のウッチーです!そちらの準備はよろしいでしょうか?」
「あっ、ウッチー先輩。準備とはいったいなんでしょうか?」
「我々にはもっと血が必要なのでえす!」
「先程から血というキーワードが出てくるようですが、それはいったい何なんですかあ?」
「それは、私と共にこちらの世界に迷い込んだ照明担当のスタッフが気付いたことなのですが、緑に赤を混ぜると黄色になる!ということなのです。そちらでは黄色いページの回収が進んでいないようですが、緑のページならたくさんあるという話です。それなら緑のページを血に染めれば良いのです!」
「先輩…。ウッチー先輩、そんなことをしても大丈夫なんですかあ?」
「大丈夫に決まっています。私達はそちらに帰らなければいけないのです。それには血が必要なのです。血です。もっと血を!もっと!」
「…」
「ではここで地獄の扉を開きたいと思いまあす!」
「なあ、なんか臭くないか?」
「うん。なんかさっきから気になってたけど。そんなことより黄色いページを見付けるんだろ」
「そうだけどさ。いくら探しても見付かりそうにないじゃん」
「公衆電話も少なくなってるしな」
「なんで公衆電話なんだ?」
「だって、イエローページとか」
「えっ?まさか黄色いページってそのことだったのか?」
「違うと思うけどね」
「なんだ、違うのかよ」
「まあ、イエローページがあったら、黄色いページだぞ!って言い張って大金が手に入るかも知れないしな」
「それは無理だと思うけどな」
「まあ、そうだな」
「あなぅた!」
「うわぁ!…なんだ?今、あなぅた、って言った?」
「言ってませんわよ。それよりも、どうせまた居眠りをしていたんでしょ。だけど、そんなことはなかったってことも知ってますよ。あなぇた!…あなた!!」
「なんだ?どうしたんだ?」
「ナウギ屋さんは大繁盛ね」
「そうだよ。キミはナウギ屋が繁盛すればウチも儲かる、みたいなことを言ってなかったか?」
「そうかも知れませんわね。もしもアタシが本当にアタシだとしたら」
「何を言ってるんだ?キミはキミじゃないのか?」
「あなたが黒猫亭に入りびたっている間に、アタシは別のアタシになってしまうのよ」
「何を言ってるのか解らないけど、ボクは黒猫亭なんかには…」
「あなた!」
「なんだ?!」
「あすこをご覧になって」
「アスコ?!」
「そうよあなた。今回は何かが違うと思ったらこれをまだ言っていなかったのよ、あなぁた。あすこをご覧になって!」
「そ、それは、いつものように望遠耳のベランダのことかな?」
「ウスススス…」
「それは…、笑ったのか?」
「ウスススス…。あなぉた、ったら…。ウスススス…」
「笑ってるんだよね?」
「あの空の向こうからはもう何もやって来ないと思っているのでしょ?」
「いや、また何かがやって来るんじゃないのか?なんとかの夏とか。夏のなんとかとか。秋のなんとかとか」
「やめなさいな、強がりなんて」
「いやいや…」
「アタシの見た未来。それは暗黒の世界よ」
「なんで??」
「オイ、大変なことになったぞ!」
「なによ、あなた。あなたがまた何も考えずに会社を辞めてきたこと以上に大変なことがあるの?」
「そんな皮肉はイイから。お前、この間の黄色いページはどうなった?」
「何よ、黄色いページって?」
「この前家の前にあったあれだよ」
「ああ、あれね。どうせ必要ないんだからと思って捨てようと思ってたけど、あの研究所の人がいたでしょ?あの人が黄色い感じの紙ならなんでも買い取るって言ってたから売っちゃったわよ」
「売ったって?!」
「そうよ。十枚で5円っていうから。タダで手に入った物でそれだけ貰えるならオイシイ話だわよね。でもあの研究所に行ったら○○の奥さんもいたのよ。もうあの人、裏で何考えてるかワカンナイからいやなのよね。あの人、私を見て何て言ったと思うの?」
「知らないけど」
「あらいやだ、ホントに!ですって」
「それはどういう意味だ?」
「意味なんかないわよ、ホントに」
「…いや、それより黄色いページはもうないのか?」
「ないわよ!」
「そうか。それは困ったなあ」
「やってまーす!」
「やってませーん!」
「やってまーす!」
「やってませーん!」
「し、しまった…。あの声は…」
「なあ、知ってる?」
「知らないよ」
「そうじゃなくてさ。なんで探してるものって見付からないんだろうな?」
「そうじゃなくて、見付からないから探してるんじゃないのか?」
「そうじゃなくてさ。探しても見付からないものっていうのは、普段は良く見ている物なんだよ。例えばさ、家電製品の保証書とかさ。引き出しを開けると大抵入ってるんだけど、いざその製品が壊れたって時に引き出しを開けても入ってないんだよ」
「なんだそれ?怪談話?」
「怪談話は去年やっただろ。そうじゃなくて、そういうことは良くあることなんだよ」
「まあな。でもオレは保証書とか使った事ないからわかんないけどな」
「そうじゃないけど、例えが悪かったか?それじゃあ、特に日曜大工が趣味じゃない人の家にあるドライバーとか。そういう物も、いざ使おうという時になると見付からないんだよな」
「ああ、でもプラスドライバーはあったりするんだよね。プラスとマイナスがセットだったはずなのに、マイナスは前に使った時に別のところにしまってたりして、それでプラスしかないとかな」
「なんか説明が長いけど、多分そういうことでもなくて、まあいいか。とにかく黄色いページなんかどこにもなさそうだな」
「そうだけどな。一枚五万円じゃな。見付けたらみんな持っていくだろ。それより、五万円も出したらあのテレビ局はダイジョブなのか?」
「オレに聞かれてもわかんないけど」
「ウッチー先輩?…ウッチー先輩!」
「ハイ、こちら現場のウッチーです!…というかてめえ、血はどうなったんだよ?こら!」
「あの、それよりも何やらこちらで大変な事が起き始めているのですが。これはウッチー先輩の仕業なのでしょうか?」
「人気女子アナ目指してんだったらそのぐらいわかんだろ?もっと血をくださぁい!もっと、もっと血を…」
「ハイ、こちら初代人気女子アナで、今では美人女社長のウッチーです!あなたはいったい誰ですかぁ?この会社はリコール以外は扱っていません!」
「そんなことはどうでも良いのだがな。この大量の緑のページはいったい何なんだ?」
「それはこの会社にリコールされてきた緑のページです!」
「つまり、この緑のページを作ったのはキミの会社ということか?」
「何を言っているのか解りません!」
「えっ!?というか私の方が解らない感じだが。キミはリコールの意味を知っているのか?」
「リコールはうちの会社が扱っていまぁす!」
「ん!?…まあいいか。それで、この緑のページはいったいどうするつもりなんだ?」
「リコールされたものですから、どうにもなりません」
「えぇ!?というか、この会社はどうやって儲けているんだ?」
「リコールを扱っている会社です」
「…もうイイや。とにかくこの緑のページは私が良いと言うまで誰にも渡してはならんぞ!」
「私は社長なので私に命令しないでくださぁい!」
「そうじゃなくて…。まあいいか。この緑のページは時間が経てば経つほど高く売れるから…そう言うことなら解るだろ?」
「つまり、誰にも渡してはいけない、ということですね?」
「そうだ。私が良いと言うまでな」
「でも社長はウッチーですからそれは私が決めるのです!」
「…もういい!…まったく、何なんだこの辺の人間達は!」
「なあ、知ってる?」
「知ってるよ…。というかこれはやばくないか?」
「去年は老婆だったけど、今年はコッチか」
「というか、黄色いページはひとまず諦めるしかなさそうだな」
「…うん」
「ハイ、こちらスタジオとウッチー先輩の間で板挟みの横屁端です!みなさん、大変なことになりました!この光景をご覧ください!…そうなんです。子供達です。どこからとなく現れた子供達が通行人を襲って血を吸っているのです!これは恐らくウッチー先輩の仕業と思われますが…。それは違います。私は妄想で報道を行うようなことはいたしません。ウッチー先輩は確かに言っていたのです。地獄の門とかアレとかソレとか。そういうことに違いないのです!それでは、ここで私が吸血子供達にインタビューをしてみたいと思います!」
「やってまーす!」
「やってませーん!」
「やってまーす!」
「やってませーん!」
「おい、望遠耳!」
「あ、多分ヘンな名前の人」
「何だ、その呼び方は。まあ名前はナイショだがな。それよりも何かないのか?このままじゃ全てがイロイロとタイヘンだぞ!」
「そんなことを言われても。どこに問題があるのかボクにはさっぱりですよ。そんなことよりも白いページを見付けたら全てはまるく収まるんじゃないですか?」
「ホントに、これだからな。そんな単純なことではないのだよ。これだけ緑や赤や黄色があふれていたら白いページどころではない、というのはキミに解らないのか?」
「解りませんよ!」
「…ああ、そうか。まあソレは仕方ないな。とにかく白いページに関する情報は何かないのか?」
「今のところないです」
「そうだよなあ。だいたい解ってはいたんだが」
「それよりも、白いページがないと何がいけないんですか?というより、なんで紙じゃなくてページなんですか?どっちにしろ何も書かれてないんでしょ?」
「いや、それは重要な違いだぞ。ページというからにはそれぞれのページごとに役割というか意味みたいなのがあるんだ。タダの紙を寄せ集めても本にはならない…というか、そんな感じだ」
「良く解りませんが」
「そうだと思った」
「おいキミ、ダイジョブか?」
「ああ、お巡りさん。マジヤバいっす」
「お巡りさんじゃなくて、ザ・ガードマンだ!」
「どうでもイイッすけどね。なんかつま先を足の先に釘で打ち付けてたら血がマジでヤバい感じで出てきてたんすけど、そしたらヘンな子供達がきて、血を全部飲んでったんすよ」
「それでキミは骨と皮だけみたいなことになっているんだな」
「マジで。ていうかお巡りさんなら子供達を捕まえてオレの血返してもらってきてくださいよ」
「だから私はお巡りさんじゃなくて…まあいいか。それより救急車呼ぼうか?」
「なんでっすか?」
「なんでって!?そんな感じだし」
「別につま先はちゃんとなったし、もう血も出てないからダイジョブですよ。血が出てないなら出血多量にもならないし」
「というか…。まあ、キミは放っておいてもダイジョブそうだな。私はなんとかして赤いページを見付けないといけないからいくけど、携帯とか持ってるんだろ?やばくなったら救急車とか呼んだ方がいいぞ」
「マジで?」
「だから、なんで我々の会話は途中で途切れるんだ?」
「だから、ダラダラするから。他で別の会話が始まっちゃうんですよ」
「…うーん。まあ、それなら仕方ないかな。とにかく地獄の子供達がやって来たのだから、なおさら白いページが必要なんだよ。キミはまた『何でですか?』というと思うがな」
「ナンデヤネン!」
「…」
「あれ!?こういうのは嫌いですか?」
「私よりも、キミが嫌いなんじゃないのか?」
「あら、バレてるのはなぜだ?」
「私を誰だと思っているんだ?関西風にしたら何でも面白いという勘違いが嫌いな関東人は望遠耳を持てないんだよ」
「へえ、そうなんですか?」
「そんなことよりも白いページの説明をしても良いかな?」
「ああ、そうだった。なんか暑すぎてボーッとしてるから、どうでも良くなってしまうけど。ここは聞いておいた方がね」
「そうなんだよ。本当は白いページは別の目的で使うことになっていたんだが、今は地獄から子供達がやって来ているしな。今ヤツらは血を飲むことに夢中になっているから、まあ気がすむまでこの辺の人間の血を吸い続けるだろう」
「それって、どれくらいですか?」
「さあな。生き残れたらラッキーなぐらいじゃないか。かなり深刻だぞ」
「それはヤバイですね」
「そうならないために白いページなんだ。子供達に白いページを与えるとどうなると思う?」
「さあ…」
「というか、考える気がないだろ?」
「そうともいいますが」
「まあいい。子供達に白いページを与えると夢中になって絵を描き始めるんだよ。中には絵ではなくて○×ゲームなどを始める子供もいるがな。その辺はこの世界の子供と一緒なんだ」
「それじゃあ、そのスキにナントカするということですか?」
「まあ、そうだな」
「…というか、思ったのですが。あなたはそんな説明をするためにここでダラダラしていないで、早く白いページを見付けに行った方が良いと思うんですが」
「ぁああ!…も〜っ。ホントだな。…ならば、さらばだ!」
「ハイ、こちら内屁端です!」
「あっ、ウッチー先輩!これはいったいどういうことなのでしょうか?」
「そんなことは気にしてはいけませぇん!それより新人女子アナとして先輩からの命令に従う準備は出来ていますかぁ?」
「は、はい。ウッチー先輩のいうことならなんでも」
「それでは、これから元祖人気女子アナの内屁端社長が経営する会社に行って緑のページを持ってきてください!大量なのでそこにいる役立たずのスタッフ達も一緒に連れて行ってください!」
「緑のページですか?」
「そうです。緑のページを血に染めるのでぇす!それから、緑のページはリコールで引き取ると言うと話がスムーズに進むと思います!」
「解りました…」
「以上、現場からウッチーでした!」
「やってまーす!」
「やってませーん!」
「やってまーす!」
「やってませーん!」
「ぁぁぁぁぁあなた!…ぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁああぁああなた!!」
「うわぁ!」
「ツピピピピ!驚いたのかしら、あなた?」
「いやぁ、驚いたというか、なんか恐い夢を見ていたような…」
「もうあなたが良い夢を見ることなんか出来ないの知ってるでしょ?あなた」
「え!?」
「あなたはアタシの何でしたの?あなたはアタシの何にあるの?そしてあなたはアタシの何なう?」
「なう?」
「ウフギなの?ナウギなの?ナウギなの?ウフギなの?」
「いや、キミはキミじゃないのか?」
「だからあなたってそうなのね」
「何が?」
「入道雲の入道が必ずしも坊主頭ではないと、誰が言い切れるんですの?」
「え!?」
「あたし、あなたはあたしではないかも知れないと思っているのですよ。あなたぅ」
「ちょっと…!全然意味が…」
「ツピピピピピピィ!」
「はい、こちら現場の横屁端です。みなさん、ここがどこだか解りますでしょうか?…そうなのです。ただ今私は緑のページを引き取るべく元祖人気女子アナ・ウッチーこと初代内屁端さんが社長をしている会社にやって来ているのです。それではさっそく交渉をしてみたいと思います。内屁端社長、大量の緑の紙が必要なのですが譲っていただけないでしょうか?」
「はい、こちらはリコールを扱っている会社の美人女社長のウッチーです。どうして大量の緑の紙が必要なんですかぁ?」
「それは、二代目人気女子アナであるところのウッチー先輩を救うためです」
「私の後を継いだ内屁端アナですね。彼女に何があったのですかぁ?」
「はい。内屁端アナは異次元の世界に迷い込んだまま半年以上ほったらかしになっているのです!」
「それはタイヘンだと思います!」
「では、緑のページを譲っていただけるでしょうか?」
「それは、リコールということですかぁ?」
「ええと、…そういうことです」
「しかし、会社としてはタダで譲るというのは問題があると思います。この会社はリコールを扱っている会社なのですから、さらに問題です」
「では黄色いページ提供者のために用意しておいた5円と交換というのはどうでしょうか?」
「それはつまり、このタダでリコールした緑のページが5円になるということですね?」
「すごい儲けだと思います!」
「解りました!商談成立です」
「おぉ、臭いぞ!臭いぞ!良いぞ、臭いぞ。臭いページだ。これで世界が救われる!これで世界は変わるのだぁ!」
「はい、こちら現場の横屁端です。ただ今、まことにチョロい感じで内屁端社長を丸め込んで、なんと5円で緑のページを手に入れることに成功いたしました!」
「はい、こちら異次元の内屁端です。新人女子アナにしては良くやったと思いまぁす!それではさっそく計画を実行して欲しいのです」
「ハイ、ウッチー先輩。いったいどのようにすればイイのでしょうか?」
「そちらに送り込んだ地獄の子供達が集めた血でその緑の血を染めるのです!」
「ハイ、解りました。ちょうど今、良い具合に子供達が集まってきました。ではさっそく子供達の集めた血を使ってみたいと思います!」
「ああ、何てことを!やめろ!やめるんだ!」
「それでは血で緑のページを染めてみたいと思います」
「そんなことをしたらどうなるのか…、ああ、もうダメだ…」
「これはいったいどういうことでしょうか?なんと、緑のページに血をかけても黄色くなりません!ウッチー先輩、これはどういうことですか?」
「そんなことは知りません!緑と赤で黄色になるはずです」
「でも、これは黄色にはほど遠い、汚い色です」
「当たり前だ。どうしてそれで黄色くなると思ったんだ?」
「あなたは誰ですか?」
「私は…名前はナイショだが。キミは何てことをしてくれたんだ」
「それは、いったいどういうことでしょうか?ナイショさん。あなたはこの緑のページが黄色くならなかった理由を知っているんですか?」
「知っているもなにも、絵の具で試してみたら良かろう。もう私はこんな所にいるのはたくさんだ。何が起こっても知らないからな。さらばだ!」
「行ってしまいました。いったいこの汚いページはどうすれば良いのでしょうか?…あっ!ただ今、こちらで変化が起きている模様です。汚いページを見た地獄の子供達が怒り狂っているようです!そして、なんと、今まさにスタッフの一人が子供達に喰われています!ご覧いただけますでしょうか?大量の血が流れ、内臓が引き裂かれ、そして、見てください。子供達は骨まで噛み砕いているのです。凄まじい勢いで、今、スタッフの一人がたいらげられました!そして、まだ物足りないと行った感じで、今度はこちらに向かってきます!それではここで私が彼らにインタビューを試みて見たいと思います!」
「あぁた!…あ〜ぁたっ!!」
「うわぁ!…なんかものすごい夢を…」
「プルルルゥ!アァタァ!」
「アァタァって?」
「地獄を知っていますの?あなた」
「なにが?」
「アタシの地獄は、あなたの知っている地獄よりもずっと地獄…」
「恐いことを言わないでくれよ」
「休む間もなく、永遠に続く苦しみ。地獄。地獄!あなたも地獄の炎に焼かれるの。ウフウウゥフッ…」
「だから、恐いって…」
「何度目覚めても、そこは地獄なのよ、あなた…。あぁた!…あ〜ぁたっ!!ァァアァアアアアアア!」
「キャァァアアア!みなさん、ご覧いただけますでしょうか?ただ今私は地獄の子供達に食べられているのです。見てください!食いちぎられた私の足に子供達が群がっているのです。そして、私の足を食べ終わった子供達がまた私の方へと向かってきます!ここで子供達に感想を聞いてみましょう?みんな、私の足はどうでしたかぁ?」
「やってまーす!」
「ちょっと、お巡りさん!」
「あ、これは××の奥さん。私はお巡りさんじゃなくてザ・ガードマンだ」
「そんなことはどうでも良いのよ。なんかヘンな子供達がうろついてて△△さんとこの家族はみんな食べられちゃったのよ!あんたお巡りさんなんだから、行って捕まえてきなさいよ!」
「ですから私はザ・ガードマンですし。それに今はこの赤いページを使って任務を果たさないといけないのです」
「なによ、まったく。ホントにアレなんだからもう!」
「おい、望遠耳!」
「あれ、なんで戻ってきたんですか?」
「悪いが私はここで帰らせもらうぞ。もうすでに収集がつかない状態にまで事態は悪化しているようだしな。それに何よりも、私はここに来て人間というのが嫌いになったようだ。あんな感じじゃ私が今ここを救わなくてもいずれ滅びるんだ。強欲で自分勝手で、それでいて無知だし無力だし。そんなヤツらを助ける意味があると思うか?」
「…」
「あ、スマン。キミも人間だったな。じゃあ、キミ以外の人間はみんな嫌いだ、ということでどうだ?」
「……」
「じゃあ、解ったよ。キミとここをここまで読んでくれた読者も例外ということで」
「別に、そんな妥協点は探さないで良いですけど。あなたが助けてくれなかったらどうなるんですか?」
「そんなモノは自分で考えたら良いんだよ。どっちにしろキミ達が招いた災いだろ。言ってみれば私はボランティアみたいなもんだし、それで命まで危険にさらすようなマネは出来ないんだよな。だから悪いが、私はこの辺で失礼させてもらうぞ」
「あっ、待って!最後に一つだけ。あなたの名前ってもしかして『ナイショさん』というのがオチですか?」
「違うぞ」
「なんだ、違うのか」
「それではさらばだ!」
「さようなら…。というか、これはダイジョブなのか?」
「おお、子供達よ!どうしたのだそんなに目の色変えて。…そうか!そんなにこの臭いページの完成が嬉しいのか!」
「やってまーす!」
「キミ達には明るい未来が待っているんだ。そうだ、キミ達この臭いページを持って家に帰りなさい。そしてお父さんやお母さんにこの臭いページの凄さを教えてあげるのだ!」
「やってまーす!」
「そうか!それは素晴らしい」
「やってまーす!」
「おい、そんなに慌てるんじゃない。…おい、噛むのはやめなさい!こら、お前達!…痛いっ!…こら!…うわぁ!」
「こら、子供達!人を食べるのはやめなさい!」
「はい、こちらは現場の横屁端です。私は今子供達に体を食べられて、ほとんど頭だけという状態でレポートを続けています。…はい、そうなんです。これも女子アナとしての使命がそうさせているに違いありません。ただ今、こちらでは警察官のような格好をした人がやってきて、子供達を制止しようと試みているようです」
「子供達よ。必要なのはこの赤いページではないのか?人を食べるのはやめてこの赤いページを持っていきなさい!」
「こちら現場の横屁端です。あの人は恐らく警備員の方だと思われますが、赤いページを差し出すと子供達がそれをおとなしく受け取っていきます。そしてそのページを口に付けて、そして、あたかも血を吸っているかのようにその赤い色を飲み込んでいるようです。そして、みなさん。ご覧いただけますでしょうか?赤いページから赤い色が吸い取られるとそれは白いページに変わっていくようです。白いページを手にした子供達は先程までの凶暴性を完全になくして、おとなしくその白いページを見つめています。…あっ!そして、ただ今子供達が一斉にどこかへ向かって歩き始めました!その向かう先には…みなさん。ご覧になれますでしょうか?道路に出来た陽炎のようなところを子供達が通ると、その姿が何かに吸い込まれていくように消えていくのです!……ウソなんかじゃありません!中継のモニタで確認できないのでしょうか?カメラさん!もっと近くで決定的瞬間を捕らえてください!」
「やってまーす!」
「ああ、やっと噛み付くのをやめたな。…おい、ところで子供達よ、どこへ行くんだ?私の大事な臭いページを持って…。子供達が消えていくぞ!…やめるんだ!おい、子供達よ!私の臭いページを返すんだ!」
「ハイ、こちら現場のウッチーです!」
「あ、ウッチー先輩!」
「おや?今の声はどこから聞こえたのでしょうか?確か今の声は新人女子アナの横屁端アナの声だったような気もしますが」
「ここです。ウッチー先輩の足下です!」
「あっ、これはどういうことでしょうか?なんと横屁端アナが顔だけになってしまいました!いったい何があったんですかぁ?」
「それよりも、ウッチー先輩がどうやって帰ってこられたのか教えてくださぁい!」
「てめえ、新人女子アナのくせにその口の利き方は100年ハエえんだよ!」
「あっ、スイマセン。でも今回の活躍で私もそれなりに認められたと思うのですが」
「でも顔だけじゃ次回に登場の機会があるかわかりません」
「そうですが。それよりも、どうやって帰って来たのか教えてくれませんか?」
「そこまで言うのなら教えますが。こちらの世界に送り込んだ血を吸う子供達が予定よりも早く帰ってきたのですが、その時に出来た時空の裂け目が大人でも通れるサイズになっていたので、我々も帰ってくることが出来たのでぇす!」
「…そんな単純なことだったのですか?!それはもしかすると、白いページの影響でしょうか?」
「解りません!でもあなたの今の状況は単純ではないようです。どうして顔だけで生きていられるんですかぁ?」
「上昇志向があればなんでも可能なのでぇす!」
「その根性が気に入りません!残念ながら私はまだ人気女子アナの座を渡すつもりはありません。ですから、この頭だけの新人女子アナを次第に小さくなりつつある時空の裂け目に放り投げてやりたいと思いまぁす!」
「ちょっと、ウッチー先輩!…キャァァアアアアア!!」
「ハイ、こちら現場のウッチーです!これで全てが元どおりに…おや?あれは何でしょうか?そしてこのニオイは何でしょうか?…どうやら向こうから泣きながらやって来る子供達が原因のようです!ここでさっそく復活したウッチーがインタビューしてみたいと思いまぁす!」
「ウワァァン…」
「どうして泣いてるのかな?」
「臭ぁいよ!」
「何が臭いのかな?」
「ウワァァン…」
「おい、てめえら、なんでちゃんとインタビューに答えねえんだよ!」
「ウワァァン…」
「…どうやら、とても臭いことがあったようですね。子供達が消えつつある時空の裂け目から消えていってしまいました。以上、現場から人気女子アナのウッチーこと内屁端がお伝えしました!」
「店長。この大量の楽天的な本ですけど…」
「ああ、それどうするかな。どっちにしろそんなに血だらけになってしまったしな。引き取ってもらっても捨てるしかないだろうし。どうせなならあの古本屋のチェーン店に売ってみたらどうだろう?どうせタダでもらったんだし」
「そんなことしてダイジョブなんですか?」
「まあ、どうだかわかんないが。私もあの店のヘヴィーユーザーだし、多分いくらかは儲けられると思うぞ」
「ピュルルルルル!」
「ウワァ!」
「また居眠りですの?」
「キミ…」
「解ってるのかしら?ウフフッ!」
「…?」
「居眠りなんか一度もしていなかった。そうじゃございません?あなた」
「なんだそれは?」
「ピュルルルルル!」
「ウワァ!!」
「ほら、やっぱり。あなたは何度でも寝るし、あたしは何度でも起こすことができるの。ウフフッ…」
「これはいったい…どういうことだ?」
「ウフッ…。あなたったら。自分がどこにいるのか解ってないのね」
「いや、ボクはこうしてここで…」
「ピュルルルルル!」
「ウワァァ!!」
「ピュルルルルル!!」
「ウワァァ!!!やめてくれ」
「ピュルルルルル!!ピュルルルルル!!」
「やめるんだ!」
「ピュルルルルル!!」
「ンフフフフ…。どういうことだか、全然解っていないようね。ンフフフフ…。そうなんでしょ、望遠耳さん。これで全てが丸く収まったのか、そうでないのか。そんなことはどうでも良いことかも知れませんね。それにあの方も戻ってきましたし、残念ながら私は一度元の世界に戻らなくてはいけなくなりそうです。でもすぐに戻ってくることにしますよ。この夏の地獄は素敵ですものね。それにこちらはまだまだ楽しい世界のようですから。ンフフフフ…。それから、その望遠耳も大事にするんですよ、望遠耳さん。ンフフフフ…。それじゃ、また」
ということで、なんだこれ?ですが。去年のクリスマスネタでリボンを付けたネコに食べられて、そのままになっていた人気女子アナのウッチーこと内屁端アナをこの世界に戻すのにどれだけ苦労したんだ!という話です。苦労というのは、話の中のことではなくて私自身の苦労ですけど。
かなりマニアックなのですが「○色のページを集める」というのはMYSTというゲームが元ネタなのですが。そのゲームでは間違ったページを集めてしまうとバッドエンディングなのです。(ネタバレだけどまあいいか。)
それで、この話はバッドエンディングなのか、それ以外か、ということですけど。私にも良くわかんないです。とにかく内屁端アナは戻ってきましたし、横屁端アナがどうなったのかとかも気になりますし、黒猫亭のマダムとかも謎めいているので、この話の続きはけっこう書けそうですし、クリスマスとかその他のミソロジーにも関連してきそうな今回でした。
それでは次回は凄いことにならない普通の特集が良いけど、下手をすると「開設記念パーティー」のネタとかになるかも知れません。
「ちょっと、そこのお巡りさん!」
「ハッ!?…ここはどこだ?…あれ?あなたは○○の奥さん。私はお巡りさんじゃなくてザ・ガードマンだが。…私はいったいここで何を?」
「どうでもイイけど、掃除の邪魔だからどっか行きなさいよ。ホントに」
「ああ、スイマセン」