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#130 「ソリティア」 2009-12-19 (Sat)

クリスマス ジングルベルと サンタさん


 今年も何がなんでもやって来るクリスマス。そして、ブラックホール・スタジオ(Little Mustaphaの部屋)では何がなんでも何かが起きないといけません。しかし、今年は何かが違います。前回のLittle Mustapha's Black hole開設記念パーティーで主要メンバーのうちミドル・ムスタファ、ニヒル・ムスタファ、Dr.ムスタファが今年のクリスマスパーティーには不参加ということが明らかになりました。そして、なぜかマイクロ・ムスタファは別の次元へ迷い込んでしまって参加できそうにありません。つまり、今年はLittle Mustaphaしかここにいないのです。


*登場人物の詳細はCAST参照

 夕方、Little Mustaphaは部屋に入ってくるとつまらなそうにテレビを見たり、パソコンでインターネットをやったりしていました。ここでこの部屋にパソコンがあることを書くのは初めてだから、もしかすると今年はパソコンが何か重要な役割を果たすのではないか?と密かに期待しましたが、パソコンをいじっていても彼がいつも見ているホームページが表示されて、いつも通りエラーがでて、いつも通り急に動作が遅くなるとブラウザがクラッシュしました。

 Little Mustaphaはため息をついてから、パソコンの前を離れると留守番電話の方へ行って、何か変なメッセージが残されていないか確認しました。特に期待はしていませんでしたが、留守番電話にメッセージが残されていることを示すランプは点滅していませんでした。

「今日はまだメッセージは残されていませんね」

電話の前で肩を落としていたLittle Mustaphaは突然背後から声がしたので慌てて振り返りました。振り返ってもそこには誰もいません。「あれ?もしかして幻聴まで聞こえるようになっちゃったのかな?」と思って電話の前を離れようとすると、またどこからともなく声が聞こえてきました。

「でも、私は今年も何かとてつもない…」

Little Mustaphaは驚いてウワァ!と言いながらもう一度振り返りました。そこにはやっぱり誰もいないのですが、あの声は確かにマイクロ・ムスタファの声でした。

「ちょっと!ビックリするじゃんか。何で隠れたりするんだ?というか、キミはこっちの世界に戻ってこられたのか?」

「隠れているわけではありません。私はまだ隣の次元にいるのですけれど。でもこっちに来てからイロイロと考察して解ったのです。それでこうやって意識だけを元の世界に戻すことに成功したんです」

Little Mustaphaは霊と会話をしているような気がして少し寒気がしました。

 Little Mustaphaは何が起きているのか全然理解できていませんでしたが、マイクロ・ムスタファはどうやって意識だけをこの部屋に送ることが出来たのか説明を始めました。


マイクロ・ムスタファ-----私はまず始めにこの世界、つまりあなたが今いる次元や私の今いる次元を含めた世界がどのような構造になっているのか考えたのです。私の書いた「多次元の季節」で主人公の多次元屁端(タジモトヘバタ)はこの世界の構造を利用して、何かとてつもない…

Little Mustapha-----いや、その小説はイイから、どうしてキミの声だけが聞こえてくるのか説明して欲しいんだけど。

マイクロ・ムスタファ-----ああ、そうですね。あなたのいる次元と私のいる次元は凄く近くにあるのです。近くというかほとんど同じ場所にあるといっても間違いではないかも知れません。例えばテレビを考えてください。

Little Mustapha-----まさか、キミのいるのはテレビの中の世界とか言い出さないよね?

マイクロ・ムスタファ-----そうではありません。例えばの話です。テレビは遠くから見ればそこに映像が映っているように見えますが、その画面に映っているのは小さな光の点の集まりです。そして、その点の間にはほんの小さなものですが隙間がありますよね。


そう言われるとLittle Mustaphaはテレビをつけて、顔を画面のすぐそばに近づけてテレビを見ていました。


Little Mustapha-----昔はこれやると怒られたけど、なんかこうやってテレビ見るのってなんか楽しいんだよね。キミにいわれて子供の頃の密かな楽しみを思い出してしまったよ。

マイクロ・ムスタファ-----そんなことはどうでも良いんですが。

Little Mustapha-----ああ、そうだっけ。

マイクロ・ムスタファ-----つまり、テレビの画面の何もない小さな隙間に今私のいる世界があるんです。

Little Mustapha-----それじゃあ、やっぱりキミはテレビの中にいるってことになるけど。

マイクロ・ムスタファ-----そうじゃなくて、これは例えばの話です。この世界も凄く細かい部分まで拡大したらそのテレビにあるような何もない空間があって、そこに別の次元があるのかも知れないのです。

Little Mustapha-----まあ、解るような解らないような感じだけど。でもどうしてそれが解ると意識だけをこっちに送ることが出来るんだ?

マイクロ・ムスタファ-----普段は行くことの出来ないその何もない隙間に入れば良いのです。この世界が細かい点の集まりで構成されているのなら、我々はその点を最小の単位として移動したりしているのだと思うのです。ですから我々自身は簡単に別の次元に迷い込んだりはしないのですが、意識だけならそれが出来ると思ったんです。それで試してみたら最小の単位よりも半分だけ動くことが出来てそちらの次元に入り込めたんです。

Little Mustapha-----なんだか全然わかんないけど。でもボクも最小単位よりも少なく移動できたら別の次元に行ってしまうということだよね?

マイクロ・ムスタファ-----私の仮説ではそうなりますけど。やめた方が良いですよ。ここは本当に恐ろしい場所です。

Little Mustapha-----そうなの?というか、恐ろしい所なら良く1ヶ月以上もそんなところにいられたね。

マイクロ・ムスタファ-----部屋の中なら安全ですからね。私は孤独には慣れていますし。

Little Mustapha-----それよりも、気になってきたんだけど。キミはあれからずっとボクの部屋にいたのか?まさか黙って意識だけでこっちにやって来て、ボクのヤバい秘密とか覗き見して楽しんでたとか、まさかそんなことはしてないよね?

マイクロ・ムスタファ-----それはないですから安心してください。私の思索の場は私の部屋ですから。ちょっと危険ですが無理して部屋に帰って、そして今日も危険を冒してここにやって来たのです。

Little Mustapha-----なら良いんだけど。それよりも恐ろしいって、あのリボンを付けたネコとかいうやつ?

マイクロ・ムスタファ-----そうなんです。でも今日ここに来る時には一度も襲われませんでした。

Little Mustapha-----へえ。まあとにかく意識だけでもマイクロ・ムスタファがいるのだから、いつものように飲み始めないとね。多分後からニコラス刑事が来るし。プレゼントはサンタじゃなくて陰鬱なトナカイが持ってくることになってるし。

マイクロ・ムスタファ-----あの、一つ聞いて良いですか?

Little Mustapha-----今日はキミしかいないから一つじゃなくてイロイロ聞いて良いけどね。

マイクロ・ムスタファ-----プレゼントのリクエストですけど…。私の分のリクエストも書いてくれましたか?

Little Mustapha-----それは心配しなくて良いよ。裏切り者の三人は別だけどね。今年はボクとキミだけメリークリスマスだな。でもプレゼントを貰えたとしても、キミが戻ってこられないと意味がないけど。…でも、最小単位の半分だけ動かせば良いんだっけ?良くわかんないけどプレゼントを貰ったらほんの少しだけ細かく動かしてみるから、そうしたらキミのところにプレゼントがいくかも知れないね。

マイクロ・ムスタファ-----…ええ、まあ…そうですね。

 その頃、Little Mustaphaの部屋には行かないことにした三人がミニ・ムスタファの部屋へやって来ていました。ミニ・ムスタファの部屋といっても、そこに行くのは初めてだったので三人ともそこがホントにミニ・ムスタファの部屋かどうかは解らない感じでした。


ニヒル・ムスタファ-----なんか、ここってアレだよな。

ミドル・ムスタファ-----そうですね。ここはLittle Mustaphaの部屋にそっくりです。

Dr.ムスタファ-----それよりも、ミニ・ムスタファというのはどこにいるんだ?今年はここに来れば楽しいことが起こるから、って言ってたのに。これは全然そんな雰囲気じゃないしな。だいたいミニ・ムスタファがいないんじゃ話にならないがな。

ミドル・ムスタファ-----そうですよね。でも、期待はしても良いと思いますよ。ミニ・ムスタファという人がどういう人なのかは知りませんが、彼はLittle Mustaphaの裏側の部分という感じになっていませんでしたか?去年までLittle Mustaphaの部屋に行ってサンタからクリスマスのプレゼントを貰おうとして失敗していたのだから、ここにいれば必ずプレゼントが貰えるような気がしませんか?

ニヒル・ムスタファ-----まあ、前向きに考えればそうなるけどな。あまりにもLittle Mustaphaの部屋にそっくりなここにいるとそんな気分にはなれそうにもないぜ。

Dr.ムスタファ-----そういうことなら、いつものように飲んでたらなんとかなるんじゃないか?

ミドル・ムスタファ-----でも、ここはLittle Mustaphaの部屋じゃなくてミニ・ムスタファの部屋なんですよ。勝手に酒を飲んでたりしたら良くないんじゃないですか?

Dr.ムスタファ-----そうだが、Little Mustaphaもミニ・ムスタファも同じように玄関に鍵もかけずにこうやってわしらを迎え入れているのだし、その辺も同じように考えて良いんじゃないのか?たで喰う虫も好きずきと言うしな。

ニヒル・ムスタファ-----何でそこでそんなことわざが出てくるんだ?

ミドル・ムスタファ-----まあ、ここは納得しておきましょうよ。とにかく私は台所へ行って酒を探してきますね。


 Little Mustaphaの部屋とそっくりなのにミニ・ムスタファの部屋なので、どうしていいのか解らない感じの三人でしたが、ミドル・ムスタファが台所に行くとそこにはいつものように安物のウィスキーがあったのでミドル・ムスタファはそれを持って部屋に戻りました。


ミドル・ムスタファ-----なんか、いつも飲んでるコレがありましたよ。

ニヒル・ムスタファ-----あれ?ミニ・ムスタファもLittle Mustaphaと同じウィスキーを飲んでるんだな。

Dr.ムスタファ-----まあ、どうでもいいから、とりあえず乾杯しようじゃないか。

ミドル・ムスタファ-----そうですね。ミニ・ムスタファはまだ来ないみたいですが、今年はついに私達が欲しかったプレゼントが貰えるのですから、とりあえず乾杯ですね。

ニヒル・ムスタファ-----なんかヘンだけど、これで大丈夫だよな。

ミドル・ムスタファ-----細かいことを気にしているとおかしなことになるからやめましょうよ。とにかく乾杯しましょう。じゃあ良いですか?せーの…

ここにいる三人-----メリー・クリスマース!


 なぜか、Little Mustaphaの部屋にそっくりなミニ・ムスタファの部屋で勝手にクリスマスパーティーが始まってしまいました。三人ともここにいれば今年こそは望んでいたプレゼントを貰えると思っていたのですが、心のどこかでは何かが変だということを各人が感じていたことは否めませんが。

 ブラックホール・スタジオ(Little Mustaphaの部屋)でもクリスマスパーティーが始まろうとしていましたが、Little Mustaphaが部屋に持ってきた酒を見てマイクロ・ムスタファはちょっと納得のいかない感じでした。


マイクロ・ムスタファ-----あの、ちょっとイイですか?

Little Mustapha-----イイですよ。

マイクロ・ムスタファ-----これは気にすべきことかどうか迷うことではありますけど、それっていつものお酒と違いますよね?

Little Mustapha-----ああ、これね。でも今年は裏切り者の三人が来ないことは解っていたし、こんなふうにキミが意識だけで参加するとは思っていなかったからね。一人で飲むと思っていたから、いつもとは違う高級ワインなんだな。

マイクロ・ムスタファ-----それは何だかずるいですよね?

Little Mustapha-----ずるいとかいわれてもね。五人で飲んだらこんなワインはアッという間になくなってしまうからね。1500円もしたんだぜ!

マイクロ・ムスタファ-----1500円じゃ、それほど高級とは思えませんが。

Little Mustapha-----でもアルコール度数換算だといつもの十倍ぐらい高級だけどね。というか、キミのいる次元には酒はあるの?…まあ、なくてもボクは一人で飲んでしまうけど。

マイクロ・ムスタファ-----一応あることはありますけど。コッチのあなたの部屋にはあなたはいないのですが、酒だけはあなたの部屋と同じで沢山おいてあります。

Little Mustapha-----そうなのか。なんか良くわかんないけど、今年は次元の壁を越えたインター次元クリスマス飲み会ということで乾杯だな。それじゃあグラスの準備はよろしいでしょうか?

マイクロ・ムスタファ-----ええ、イイですよ。なんかこっちにもそのワインと同じモノがあったからそれを注いでみましたけど。

Little Mustapha-----あれ?!そうなの?まあいいか。じゃあ、とにかく乾杯するけどね。せーの…

Little Mustaphaとマイクロ・ムスタファ-----メリー・クリスマース!

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