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#141 「Prediction」 2011-09-19 (Mon)

「ウフッ…。あなた…。あなた…!」

「ん?!なんだ?」

「あなた、また居眠りして」

「いやあ、なんだか最近暑くて寝付きが悪くてね」

「でも夜よりも暑い昼間は居眠りですか?あなた」

「…そういうことではない、と思うけど」

「もう、あなたったら!…それよりも、あなた。あすこをご覧になって」

「アスコ?…ああ、またあのベランダの人か、久しぶりだな。また望遠耳か?」

「なんであなたはそういつもワンパターンなのかしら?もっと良くみてくださいよ、あなた。あなたにはあのイスと机が見えないの?」

「ああ、そういうことか。最近はよっぽどベランダが好きになったみたいだな」

「そんなことよりも、あなた!」

「なんだ?」

「あすこのあの方、何を食べているのかしらね?」

「さあ、なんだろう?アイスキャンディーかな?」

「まあ、あなたったら!またなんですか?」

「何が?」

「どうして棒がついている食べ物がみんなアイスキャンディーになってしまうんですか?」

「だって、この暑さだし…」

「棒についてたらキリタンポっていう発想はどうして出てこないんですの?」

「それは流石にないとおもうけど。ここからじゃ見えないし、見えないものはどうしようも…」

「わかりました。それじゃあこうしましょう。もしも食べているのがアイスキャンディーなら右手を、キリタンポなら左手を上げてもらいましょうよ。あの方、また望遠耳を使っていらっしゃるから」

「なんだ、やっぱり望遠耳じゃないか…」

 部屋の中が暑すぎてベランダで過ごす時間が増えたものの、何かが物足りないと思っていたら望遠耳を使うのを忘れていたのです。iPadなどというベランダに適した玩具を手に入れてしまったので、望遠耳で街中の会話を立ち聞きするというプレシャスな時間を無駄にしてしまうところでした。しかし、さすがはウフギ屋の女将。私が望遠耳を使っていることにすぐに気づいたようです。


 今年も街では何かが起きているのか、いないのか?ここはひとまずiPadをしまってベランダでゆっくりすることにしましょう。そして、いつものように街で交わされる会話を聞いてみることにしましょう。アメリカンドッグを食べながら。

「なあ、知ってる?」

「知らないよ」

「そうじゃなくてさ。昔、グローバリゼーションって流行ってて、オレ達もグローバリゼーションしてただろ?」

「そうだっけ?」

「そうだっけ?って。なんにも覚えてないんだな」

「昔のことは忘れた、ってやつだよ」

「そんなやつは知らないけど。まあ7年前じゃ仕方ないかな。」

「ああ、あれか!」

「そうだよ。あのグローバリゼーションだけどさ。最近知ったんだけど、本当のグローバリゼーションっていうのキムチ鍋だっていうウワサを聞いたんだよね」

「なんだよそれ?それじゃあ全然グローバリゼーションじゃないだろ。グローバリゼーションって言うのはハンバーガーとかパスタとか、そういうことじゃないのか?」

「そんなこと言ってもな。偉い人が言ってたんだし、多分そういうことだよ。それに、もし本当だとしたら、オレ達はとっくの昔にグローバリゼーションしてたってことだしな」

「まあ、そう考えたらそうだな。つまりオレ達は昔からイケてた、ってことだな」

「そういうこと」

「あーあ…、ヒマだなあ。ヒマというよりも、やる気がないのかな。こうしてザ・ガードマンとしてガードマンのコスプレをしていても警官に間違えられるだけだし。それに、こう暑いのにこの格好はきついしなあ。なんか、もっと住民を危険から守る!とかそんな格好いいガードマンだと思われたら良いんだけどなあ…。もしくは…。もしくは、黒猫亭のマダムが戻ってきてくれるのなら…」

「ちょっと、あんた!」

「ああ、これは○○の奥さん」

「ああ、じゃないわよ。まったく警官のクセに何を一人でブツブツ言っているのよ、気持ち悪い」

「いや、いつも言っているように私は警官じゃなくてザ・ガードマンですし…」

「そんなことは良いから、あなた警官みたいな格好してるんだから、早くアレをなんとかしなさいよ」

「アレってなんですか?」

「アレはアレに決まってるじゃないのよ!そこら中にいっぱいあるでしょ?解らないの?ホントにもう…」

「私にはなんのことだかさっぱり…」

「ヨーシ!元気な子供達。みんな集まったか?」

集まってまーす!

「ヨーシ!元気でよろしい!それじゃあいつものアレ始めるぞ!」

「先生。熱血先生!どうしていつもラジオ体操なんですか?」

「ラジオ体操は体操の王様だ!ラジオ体操を毎日やっていれば恐いもの無しだぞ!解ったか?」

解ってまーす!

「ヨーシ!それじゃあ、腕を前から大きく上げて背伸びの運動から!イッチニイサンシー!」

ゴーロクシチハチ!

「オイラはイカしたスケーター!オイラはイカしたスケーター!ゴメンナサイヨ!ゴメンナサイヨ!オイラのスケボー横切るよ!」

「アタイはイカしたスケーター!アタイはイカしたスケーター!スイマセンデス!スイマセンデス!アタイのスケボー横切るよ!」


「おっと、危ねぇな!なんだアレは?」

「なあ、知ってる?」

「知らないよ!」

「そうじゃなくてさ。オレ達って昔からイケてた、ってことはさっき解っただろ?」

「そうだよ」

「だけどさ、そのわりにはイケてる感じがしなくなかったか?」

「いや、そんなことはないだろ。イケてたんだから、それはイケてたってことだろ?」

「それはそうだけど、イケてるならなんでいつもこんなふうに二人でダラダラしてるのか?というところが変なんだよ。もっと、イカした仲間とつるんでイケてることしたりして…」

「あっ!」

「なんだよ,急に?」

「今なんかイカした感じのカップルが通り過ぎなかったか?」

「ホントか?」

「多分ホントだよ」

「はい、こちら初代人気女子アナであり今では会社社長をやっているウッチーです!どんなご用件ですかあ?…。2代目人気女子アナのウッチーが極悪非道であることに関しての苦情は受け付けていません!この会社はリコールを扱っている会社です。社長のウッチーが精を出して集めたリコールが大量にあるのですが、ただ今在庫が多すぎて会社中がリコールだらけなのです。それで我が社のリコールを買い取ってくれる信頼出来るパートナーと、リコールを運搬するため若干名の社員の募集をしていまーす。…。ですから、アナウンサーのウッチーに関する苦情はテレビ局に電話してさーい。では、電話を切りますね。…このク○野郎!」

「ちょっと、△△の奥さん!」

「あら○○の奥さんどうしたのよ?警察沙汰?!」

「そうなのよ。この人、警官のクセになんにもしてくれないんだから、ホントにアレよねえ!」

「ホントにねえ」

「いや、私は警官ではなくてザ・ガードマン…」

「それはどうでもイイのよ。さっきからアレをなんとかしろって言ってるのに、なんにもしてくれないんだから」

「だからアレってなんですか?」

「あなた、これだけ沢山あるのに解らないっていうの?ホントにメガネでも作ってきた方が良いんじゃないの?ねえ、○○の奥さん」

「ホントにねえ。△△の奥さん」

「ホントにねえ。それじゃあまた」

「それじゃあ。もうホントに」

「ああ、うちの会社もそろそろ終わりかなぁ…」

「えっ?なんですか、□□部長?」

「いや、独り言だから気にしないで」

「気にしないで、って言われても会社が終わるとか聞こえちゃったら気になって仕方がないですよ!」

「なんだ聞こえてたのか」

「聞こえてたのか、って。けっこう聞こえるように言ってましたけど」

「まあ、それなら仕方ないな。まあ私も毎年のことでイヤになっているんだがね。そろそろ辞職願とか退職願とか書いた方がイイのかな?って思ってるんだよね」

「それ、どういうことですか?」

「なんとなく、嫌な予感なんだけど。この時期になると私の勤めている会社は問題を起こすことになるんだよ。去年も、その前も。さらにその前はどうだったか覚えてないがな」

「なんですか、それは?今のところそんなおかしなウワサは聞きませんし。おかしいと言えば、どうして去年の秋に入って来たのに□□部長が部長なのか?ってところですけど。引き抜かれてやってきたワケじゃなくて、普通に転職してきたということですが」

「まあ、それはそれでね。ヒラから始めても良いんだが、どうせ一年も経たずに転職だからね。それに□□と言ったら部長!って感じだしね」

「意味が解りませんけど。そんなことよりも早く仕事を片付けないと」

「そうだよね。ところで、この会社って何をしている会社なの?」

「ええ!?」

「ちょっと、△△の奥さん!」

「あら、××の奥さん」

「ちょっと聞きました?この間のアレですけど。ホントにイヤになっちゃうわよねえ」

「ねえ、ホントに」

「それが、アレだっていうじゃない?それにこの間のなんて□□さんとこの奥さんがね、アレなんてなんでもないって感じで」

「あらそうなの?困っちゃうわよねー。でもほら、□□さんところって、旦那さんがアレでしょ?だからアレなのよ」

「そうよねえ。ホントにうちじゃなくて良かったわよ」

「ホントにねえ。それに…、あら!□□の奥さん!」

「あら、どうしたのよ二人そろって」

「ちょっと買い物の途中で偶然会ったものだから。ホントに。あらいやだ、もうこんな時間!それじゃあまた」

「それじゃあ。ホントにねえ」

「それよりも××の奥さん。知ってます?最近アレで子供たちがいじめられたりするって話」

「あら、そうなの。ホントにねえ」

「うちも子供には良く注意しているけど、何しろアレじゃねえ」

「ねえ、ホントに。なんでもアレらしいわよ。○○さんの奥さんなんて何も考えてないでしょう?ああいう人が無神経なことを平気で言うからねえ。ホントにねえ」

「もう、ホントに。あらいやだ、こんな時間じゃない。それじゃあまた」

「ええホントに。それじゃあまた」

「あなた…。あなた…!」

「ん?!なんだ?」

「ウフッ…。可愛い寝顔だこと」

「いや、今は寝てなかったぞ」

「ウフッ!あなたったら、そうじゃありませんよ。あなたじゃなくてアレの寝顔の事ですよ」

「あれって?望遠耳の人?」

「違いますよ。アレはアレですよあなた。見えないって言うの?あなた。もう、もっとしっかりしてくださいな。あなたったら!」

「アレって…。何?」

「ホントに、強情だこと!」

「ええ?!怒ったの?」

「怒ってませんよ!」

「怒ってるし…」

「あっ、□□部長!」

「なんだ?」

「そういえばさっき電話があったんですけど、山盛さんから。例のリコールの引き取りの件、どうするのか?って。山盛さんもいきなり変な話持ってきて人任せだしなあ。困りますよねえ」

「なんだそれ?リコールの引き取りって?」

「えっ?この前山盛さんから聞いたでしょう。リコールで提携したいところがあるって」

「リコールで提携ってなんだそれ?」

「困りますよ□□部長。ホントに忘れてるんですか?」

「そんなことを言ってもな、この会社が何を扱っているかも良く解ってないんだし。とにかくそのリコールってなんなんだ?というよりも、他の会社と提携とかそういうことはもっと上の人間が決める事じゃないのか?」

「今さら何を言ってるんですか?この会社で偉い人は社長を除いたら部長なんですよ」

「そ、そうなのか?…やっぱりそろそろ辞職願とか…。まあいいか」

「なんですか?」

「いや、気にしないで。とにかく、そのリコールというのを検討してみないとな」

「なあ、知ってる?」

「知らないよ」

「そうじゃなくて、さっきのキムチ鍋の話あっただろ?」

「あったっけ?」

「もう忘れたのかよ!」

「まあね」

「まあね、って。そんなにクールな感じで言われても困るけどさ。イケてるキムチ鍋の事だよ」

「ああ、あれね。それよりもキムチ鍋ってチゲ鍋のことか?とも思ったけど。それとこれは違うのかなあ?」

「そんなことはどうでも良いけどさ。さっき言ってたキムチ鍋って、もしかするとオレ達の食べてたキムチ鍋とは違ってたかも知れないんだよね」

「それって、どういうこと?それは聞き捨てなりませんよ」

「そうだろ?オレ達の食べていたキムチ鍋っていうのはいつもの駅前の居酒屋のキムチ鍋だったけど、ホントにイケてるグローバリゼーションなのは本格的キムチ鍋だと思うんだよね」

「ええ?!そうなの?というか、その本格的キムチ鍋ってどこで食べたら良いんだよ。オレ達にはいつもの駅前居酒屋しかないんだけど」

「まあ、そう言うなよ。電車で30分たらずで本格的キムチ鍋の店には行けると思うんだが」

「なんだ。じゃあ安心だ」

「そうだろ。いつでもグローバリゼーションでイケてるオレ達になれるってことだしな」

「それで、行くの?その店」

「まあ、どうしようかな?って感じだけど」

「そうだよな。電車で30分って意外と長いしな。別に今日グローバリゼーションしなくたって良いんだし」

「それに、オレ達が今目指しているのは?」

「ワイルドで…、セクシーな…、イケてる…、オレタチ!!」

「だよな!」

「ということで、グローバリゼーションとかはひとまず忘れて目的地へ急ぎましょう!」

「そうしましょう!」

「ビートゥギャザー♪ビートゥギャザー♪…」

「あの、すいません。ちょっとうるさいんで歌うのやめてくれませんか?」

「何言ってんだよ!お前に聴かせてるワケじゃないんだから、聴かなけりゃ良いんだよ!」

「ええ!?…そういう事じゃないですけど。聴いてなくても聞こえてくるし…」

「うっせーよ。聴きたくないなら聴かなければ良いんだ、って言ってんだろ!ビートゥギャザー♪ビートゥギャザー♪…」

「はい、こちらは人気女子アナのウッチーです!みなさん、ここがどこだか解りますかぁ?…。大ハズレです!私が今いるのは、空前のラジオ体操ブームが訪れている児童公園でーす!それでは早速、子供達にラジオ体操を教えている教師の方に話を聞いてみたいと思いまぁす!」


「イッチニーサンシー!」

ゴーロクシチハチ!

「あの、お取り込み中のところすいません!私は人気女子アナのウッチーこと内屁端ですが、あなたがラジオ体操ブームの火付け役ということでよろしかったでしょうか?」

「なに?なにを言っているのか解らないが、あんたにはラジオ体操をする気があるのか?」

「ウッチーは人気女子アナなのでラジオ体操なんかしませーん!」

「ならば邪魔をするな!子供達にはラジオ体操が必要なんだ!それじゃあもう一回いくぞ!イッチニーサンシー!」

ゴーロクシチハチ!

「いいぞ、その調子だ!」

はい!熱血先生!


「みなさん、ご覧いただけたでしょうか?このように炎天下の中であの教師は子供達にラジオ体操を強要しているのです。見てください。あの子供達の汗を。熱中症の危険性が騒がれているにもかかわらず、あのようにラジオ体操をさせて良いのでしょうか。そして、アレの危険もあるというのに。ウッチーは心が痛んでこれ以上リポートを続ける事が出来ません。ここでいったんスタジオにお返しします」


「…今の泣きそうな演技、良い感じじゃなかった?だろ?…」

「あなた…。あなた…」

「ん?!なんだ?」

「あなた、今日はすぐに起きるのね」

「じゃなくて、今は寝てないし」

「まあ!アタシが呼んだ時に寝ていないあなたなんて。もう、嫌いよ!」

「ええ?!」

「ウフッ…!冗談ですよ、あなた」

「なんだ」

「それよりもあすこの方、なんにも気付いていないのね」

「あすこ、って。あのベランダの望遠耳の人か?気付いてないって何が?ボク達があの人を見てるって事?」

「そうじゃないわよ、あなた。まさか、あなたも気付いてないっておっしゃるの?」

「…さっきからなんの事か解らないけど」

「ちょっと!あなた!あたな!なあた!なんで気付かないんですか、あたな!!」

「…なんか、キミ変じゃないか?!」

「おい、望遠耳!」

「ウワッ!ビックリした。なんか怪しい展開だと思ったら、また何かの使いですか?」

「なんのことだか解らないが?」

「ああ、あなたは初めて登場だから解らないですね。説明すると、これはボクが望遠耳で街のいたるところで交わされている会話を立ち聞きする、(というか、今回はベンチに座ってるから座り聞きする)というのがコンセプトだから本当はボクが登場しちゃいけないんですよ。それなのに、最近はここに変なナントカの使いがやって来て話がややこしくなるんですけど」

「変とはなんだ!それに心の中のつぶやきは括弧でくくっても私には聞こえておるぞ」

「ああ、すいません。でも変ですよ。なんの前触れもなく、いきなり現れて。心臓が止まりそうでしたよ」

「止まったこともないのに、なんで止まりそうって解るんだ?」

「でた、屁理屈」

「まあ、それはどうでも良いのだよ。キミが気付かないのも当たり前。私が誰だか解っているのかね?」

「解るはずないですよ」

「私は、全ての嫌な感じの使い。ジメジメしてベタベタでドロドロで、そして目に見えない恐怖の使い」

「ええ?!去年までみたいに季節の変わり目みたいな感じじゃないの?しかも、なんか不吉だけど」

「なんだ、季節の変わり目って?」

「なんかノグソさんとか、ガブリエルさんとか。あと名前の解らない人もいましたけど。そういう人達とは別の感じの人、というか使いなんですか?」

「言っている事が良く解らんが、だいたいそんなところだろうな。まあ全員似たようなものだがな」

「それより、なんていうか目に見えない恐怖って、今時そんな表現は問題ありそうなんですけど。いったい何しに来たんですか?」

「ただこの辺りで嫌な感じの事が起きそうだからこうしてやって来たのだがな。そこで偶然望遠耳を見付けたからな。望遠耳があればイロイロと情報が収集できて便利だし」

「嫌な感じの事、って。それが起きたとしてあなたは事態を収拾してくれるんですか?」

「まあ、起きたことにもよるがな。まあ、しばらくは様子をみることにするよ。ここにいると気になるだろうから、また見えない感じに戻っておくがな。もしかすると今日は忙しくなるかもしれないな。ではまた」

「あれ?!消えちゃった」

「ということで、ここがもしかしてイケてる店じゃないのか?」

「そのようだね。なんというか、アメリカ西海岸をイメージさせるロゴといい、この輸入盤CDみたいなニオイといい」

「ついにオレ達もイケてる感じになることが出来る、って事に違いないな」

「そうだな。それじゃあ、早速入ってみるけど…」

「おい、ちょっと待てよ。そんな簡単に入って良いのか?やっと見付けたイケてる店だぜ」

「そんなこと言っても、他にすることがあるのか?」

「あるのか、ないのか?って言ったら、なんていうか、これまでのダメだった店の事を振り返るとか…」

「そんなことを言っても、これまでオレ達が行っていた店なんか覚えてないだろ?」

「まあ、そうだけどな」

「それじゃあ、入ってみようぜ」

「そうだな」


「いらっしゃいませぇ!(…ビートゥギャザー♪ビートゥギャザー♪)」

「ウワァ!なんだあれ?!」

「そんなこと、知らないよ!というか、ここはひとまず…」

「退散するしかないな!」

「それじゃ、せーの…」

すいません!間違えましたぁ!

「イッチニーサンシー!」

ゴーロクシチハチ!

「ヨーシ!最後は深呼吸だ!スー…!」

ハー…!

「スー…!」

ハー…!

「ヨーシ!子供達。いい汗をかいたか?」

はい!熱血先生

「汗をかいたらどうすればイイか知っているか?」

水分の補給でーす!

「良く出来た。でもそれだけじゃないぞ。汗をかくと水分以外にも失われるものがあるぞ。だからナトリウムさん。カルシウムさん。マグネシウムさんも捕る必要があるぞ」

「熱血先生!どうして『さん』をつけるんですか?」

「当たり前だ!大事な栄養を呼び捨てに出来るか。彼らも人間と同じく懸賞に応募したらプレゼントが貰えるんだぞ!わかったか?」

解りました!

「ヨーシ!それから疲れたらクエン酸さんやアミノ酸さんも良いぞ」

「熱血先生!どうして『さんさん』なんですか?」

「最初と次の『さん』は別だからこれで良いんだ!解りづらいのならクエン君さん、アミノ君さんでも良いと思うぞ!解ったか?」

はい解りました熱血先生!

「よろしい!それでは今日はここまで!」

さようなら!熱血先生!

「ちょっと○○の奥さん!」

「あら、××奥さんじゃない、どうしたの?」

「どうしたのじゃないわよ、まったく。困っちゃうわよ。さっき△△さんの家の前を通ったらね、アレが大勢家の前にいて…。気味が悪くて走って逃げて来ちゃったわよ!ホントに」

「ホントにねえ…。△△さんのところって、意外とそういうのに無頓着でしょ?!だからアレがアレでも全然気にしないし…。困るわよねえ!」

「ホントにねえ!」

「ホントに」

「それじゃあ、また」

「それじゃあ」

「さっきのはヤバかったな」

「あの店だろ?ヤバかったよ。完全にいってたもんな」

「実際にイケてるのと、イケてると思っているのではあんなにも違うのか?という感じだけど」

「イケてると思っている人がいくら集まっても、イケてる集団にはならないということか」

「そういうことだろうな」

「それじゃあ、オレ達はどうなるんだ?」

「イケてる感じになりたいのに、実はイケてたって事も判明したけど、それでもまだイケてる感じを追い求めている…」

「それって、つまり?!」

「もしかすると、オレ達はやっぱりイケてるんじゃないか?って結論が導き出せる法則が導き出せて来たりしないか?」

「フフフフ…!ちょっとさ、これから海水浴とか行かね?」

「なんで今さら海なんか。そろそろクラゲの時期だぜ」

「そうじゃなくてさ。オレ達イケてるかも知れないんだぜ」

「ああ!ってことは…」

「何か良いことあるかも知れないだろ?!」

「そうかも知れないな!」

「今から快速に乗れば3時には着くぞ」

「よし!じゃあ、久々の小走りで駅に向かうか」

「そうだな」

「おーい…。…。おーい…。おーい!…望遠耳君!!」

「ウワァ。なんですか?ちょっとずつ声が大きくなってるのに、何が聞こえているのか解らなくなってビックリしましたよ!あなたは、なんか嫌な事の使い、って事でしたけど。姿は見せないのですか?」

「いや、見せているぞ。キミのすぐ後ろに」

「ウワッ!なんでそんな意外なところに現れるんですか?壁と椅子の隙間は10㎝もないのに。」

「でも、さっき心臓が止まるとか言ってたから、けっこう気を使ったんだが」

「気を使われてもいきなりベランダに人がいたりするとビックリしますけどね。まあ、あなたは人ではないのかも知れませんが。今度から現れる前にメールとかしてくれたら良いとも思いますけど」

「それじゃあ、まるで人間みたいじゃないか。まあキミを驚かせるのは悪いと思うが、我々が人間みたいな事をするとか…って。ウププププッ!笑いが止まりませぬ!ウププププッ!ウププププッ!」

「なんか、腹の立つ笑い方ですね」

「ああ、失礼。その点に関しては良く注意されるんだがね。直しようがないし」

「それよりも、また出てきたって事は何か起きてるんですか?どうもこの近所ではおかしな事が起きているようなんですが」

「それほどでもないだろ。今私が現れたのは別の要件があったからなんだが。どうやらキミにメッセージを届けたい人がいるようなんだが」

「メッセージって?!どうやって?」

「さあ、それは解らないが。私は『全ての嫌な感じの使い』としてそれを感じとってしまったから、キミに教えておこうと思ってね」

「そういうのって、事前に知っておくのが良いのか、知らない方が良いのか、という事だとビミョーに…」

「シッ!…耳を澄ましたら聞こえてくるぞ」

「なにがですか?」


「ちょっとアンタ!」

「ウワッ!ビックリした!それに、なんでそんな大音量なんですか?」

「そんなことはどうでも良いのよ!久々に出てきたんだから人の話を聞きなさいよ!」

「あっ!その声は聞き覚えがあるぞ!あの恐怖の占い師カズコだな」

「当たり前じゃないのよ!ちょっと良いこと思いついたから出てきたのよ!」

「というか出てこなくて良いですよ。私はあなたのせいでほぼ全ての占い師が嫌いになりましたし。本気で占いの話をする人がいたりすると、機嫌が悪くなってなんとなく雰囲気が悪くなったりするし。だいたい正月早々あなたを見てから、なんか嫌な感じだと思ったら、今年はこれですからね」

「それはお前が私の占いを信じなかったからだよ。それにお前は私の本を一冊も買ってないじゃないか!」

「本って、どこに売ってるんですか?有名な方のカズコとあなたは違う人なんでしょ?」

「どっちが有名かは関係ない!本を買う気がないのなら出演料ぐらいは出しなさいよ」

「なんですかそれ?」

「ギャラは出るのか?って聞いてんのよ!」

「出るわけないじゃないですか。勝手に出てきたくせに」

「なら仕方ないわね、神々に言いつけてやるから」

「また適当な…」

「あんた達はみんな死ぬのよ!みんな死ぬ!フハハハハ!みんな死ぬのだぁ!!!フハハハハ…」


「…というかペニーワイズみたいだったけど」

「メッセージはどうだったかな?」

「聞いたけど、あなたはカズコの使いなんですか?」

「なんだそれは?」

「違うんですか?というか、全ての嫌な感じというのはどういうことなのか?とか。その辺も気になるし。見えない恐怖とかも。さらにはカズコまで久々に出てきちゃったし」

「どうやらキミも嫌な感じになってきたようだから、私もここに来た甲斐があるという事だな。この結末は全てが解決するか、しない時。或いは全てが手遅れになったその後にスッキリしない答えが明かされる事もあるだろう」

「何を言っているのか解りませんが」

「まあ、解らないとこは気にしないのが一番だよ。それじゃあ、また消えるがな」

「ああ、ちょっと…!」

「クレジットカード作ってみたんだけど」

「それって、カードローンのカードじゃね?」

「えっ、なにそれ?」

「あれ、電車止まってる」

「なんだよ、せっかく盛り上がって海に行こうと思ったのに。運転再開の見通しが立たないとか書いてあるぜ」

「今から行ってもギリギリなのに、電車が止まってたら動いたとしても着く頃にはみんな帰り出す時間だな」

「せっかくイケてると思ったのに、これじゃあ全然イケてないし」

「だいたい何かしようと思ったら電車が止まってるとか、これ自体がイケてないんじゃないか?」

「それにズボンの中がムレムレだよ」

「なんだよムレムレって?」

「海で着替えるの面倒だから海パンをズボンの下にはいてきたんだけど」

「なんだよそれ!小学生かよ。しかもムレる海パンって、体育の時にはくようなやつか?」

「そうだけど。それ以外に海パンってあるのか?」

「いや…。…まあいいか」

「キキーッ!…ガッチャーン!」

「ゴメンナサイヨ!ゴメンナサイヨ!」

「スイマセンデス!スイマセンデス!」

「ウッチーのリコール会社へようこそ!私は社長のウッチーでーす!」

「ああ、どうも。私が先程電話した□□ですが。始めまして…」

「それでは早速、商談に入りたいと思いますが、あなたは我が社と提携してリコールをする気があるのですか?」

「いや…。そんなことをいきなり言われても困りますが。最初にあなたと話をした山盛という者とも連絡がとれない状態でして。まずはそのリコールというものについて説明していただかないと、こちらとしてもなんともいたしかねるのですが…」

「あなたにはビジネスをする気があるのですか?でも大事な商談なので説明することにしまーす。それではこちらに来てください」

「ああ、はい…」

「あっ…!△△の奥さん、大丈夫ですか?」

「何言ってんのよ。あんた警察なんだからあいつら捕まえなさいよ!」

「私は警察じゃなくてザ・ガードマンですが…」

「そんなことはどうでも良いのよ。私が自転車乗ってたらあの若い二人がバーって飛び出してきて、ビーってなって転倒事故なのに、あいつらどっか行っちゃったのよ。これひき逃げでしょ?罪は重たいわよ!ホントにもう。あいつら私がどうなってもおかまいなしでしょ!ホントに。どうでもイイから早くアイツら捕まえてきなさいよ」

「それよりも△△の奥さん、ケガはないですか?」

「そんなの知らないわよ。とにかく追いかけて捕まえなさいよ!あんた警官なんでしょ!」

「いや…。まあいいか。悪者は捕まえなければいけないからな」

「あなーた…!あなーた…」

「ウーン…」

「あなーた…!あなーた…!白い広がりあなーた!!」

「ウワッ!」

「あなた、また居眠りして」

「いや、そうだけど。なんかスゴい懐かしい気分でうなされていたような…」

「それはどうでもイイですわよ。あなーた」

「あなーた?」

「あなたはいつだって、そうやって意地悪するのね」

「なにが?」

「ウフッ…。そうしている間にお店の方にたくさん来ていたお客さんもみんな帰って行ってしまいましたよ」

「エエッ?!なんで起こしてくれないんだ?」

「ウフッ…。ウフフフッ…。そんなのウソだって、なんで解らないの、あなーた?」

「だから、あなーた、って?」

「夏が終わったら何が始まるか知っていますか、あなーた?」

「それは秋に決まっているだろ」

「それだからお店には人が来ないのですね」

「どういうこと?」

「これから来るのは恐怖の季節ですよ。あなーた。それは気付かないうちにすぐ近くに忍び寄っている。まるで居眠り中の夕立のように」

「なんの例えなのか解らないけど…」

「あなーた…!あなーた…!」

「ええ!?」

「こっ、これはいったい…!」

「これがウッチーが最近集めたリコールです」

「リコールって、これは…」

「何か問題がありますかぁ?」

「いや…、これはそれどころでは…」

「おい、望遠耳!」

「ウワァ!」

「なんだ、今度は前から現れたのに、これでもビックリするんだな」

「そうじゃなくて。唐突すぎるから」

「人間というのは良く解らないな」

「それよりも、何が起きているのか全然解らないのですが。あなたには何が起きているのか解ってるんですか?だいたい私の望遠耳が便利とか言っておきながら、どこかに消えてるんじゃ意味が無いとも思いますが」

「いや、キミが望遠耳を使っている間は私にも会話の内容は聞こえている、と思っていれば聞こえているような気分になれるしな」

「それって、聞こえてないって事じゃないですか?」

「断言はできないだろ?」

「もう意味が解りませんけど。でもまた恐ろしいことが起きたりするんですか?この展開は」

「また、って。これまでも何か恐ろしいことが起きたのか?」

「なんか忘れてきましたけど、アブラ粘土とか高速に動く老婆とか、あと恐怖の子供達が出てきたこともあったけど」

「今回はそんなことはないから安心したまえ。なにしろ私は目に見えない恐怖の使い」

「その目に見えない恐怖というのが、最近ではけっこう問題なのですが」

「そうなのか?人間というはいつからそんなふうになったんだ?」

「いつから?って、昔からだと思いますが。例えばどんなことが目に見えない恐怖なんですか?」

「面倒な質問をするやつだな。まあ、望遠耳に免じて一例を挙げるとするが。例えば旅行で乗り物に乗って遠くまでやって来たとするな。その時にふと気になったりすること。それは『あれ?!家の玄関のカギかけてきたっけ?』とか。そういうのは目に見えない恐怖の典型かな」

「えぇ?!そういうことだったんですか?ボクはもっと他のアレのことを想像してたんですけど。ちょっと、最近はその辺に神経質になりすぎてたかな?」

「アレって、なんだ?」

「いや、それは人間的な事ですから、気になさらなくても」

「なんだそれは?まあ、気にするなと言うなら気にしないがな。ああ、いかん!こうしている間にもイロイロと問題が発生しているようだから。私はまた消えるから。後はヨロシク」

「ヨロシク、って。何をすればいいんだ?!…まあイイか」

「はい、こちらは新人女子アナの横パンこと横屁端です!みなさん、ここがどこだか解りますかぁ?…そうなんです!それは大ハズレです。今私がいるのは、最近話題になっている『いい歳こいて公道でスケボーかよ…!フヒュヒュヒュ…!フヒュヒュヒュ…!』が良く現れる場所なのです。…はい。そんなことは解りません。私が将来有望な新人女子アナとしての勘を働かせてやって来たのだからいないわけは…。あっ!みなさん見てください!あそこに話題のスケーター達がやって来たようです。それではこれから突撃インタビューしてみたいと思いま〜す!…あの、すいませーん!……(ガッチャーン!)ギャー!」

「ゴメンナサイヨ!ゴメンナサイヨ!」

「スイマセンデス!スイマセンデス!」


「おい!まて。そこのキミ達!△△の奥さんだけじゃなくて、首が後ろ前のアナウンサーまで。いくら私でもこれは許さないぞ。私はザ・ガードマンだがお前達を捕まえて警察に引き渡してやる!待てぇ!」

「すいませーん!」

「(…はーい、ただいま…)」

「さっきからあればっかりだな」

「ホントだよ。だいたいなんでこんなに人が少ないんだ?」

「そうだよな。いつもなら客も店員ももっと沢山いるのに」

「客が少なかったら店員も少なくて済むと思うけど。オレ達がここに入ってもう20分も経ってるのに、おしぼりすら出てこないぜ」

「まさか一人でやってるのか?駅前の良くある居酒屋で?」

「さあ、それは知らないけど。…すいませーん!」

「(…はーい、ただいま…)」

「またこれだ」

「この人達…いや、彼らは人間なのですか?」

「そうでーす」

「それで…、いったいどうしてこんな事が。生きているんですか?この人達は」

「もちろん生きています。特別に仕入れた大事なリコールですから」

「リコールってこの巨大な瓶詰めみたいになった人間達の事だったんですか?」

「そうじゃありません!以前はおかしな機械もリコールでしたが、最近はこれがリコールなのです!」

「言っている意味が良く解りませんが。問題は無いんですか?その、法律とか…」

「ウッチーは裏ルートなんて使いません!ちゃんと正規のルートでリコールしています!おかしな事言うとタダじゃおかねぇぞ!てめぇ」

「いや…。すいません。でも人間が仮死状態みたいな感じで透明なカプセルに入れられているとか。…なんていうか…」

「だから、問題は無いって言ってんだろ!」

「あっ、はい」

「あなた…」

「ウーン…」

「あなた…!」

「ウウウ…」

「あなーた!」

「ウワッ!ああ、ビックリした」

「またうなされていましたわね」

「何だか怖い夢だったけど」

「大丈夫ですよ、あなた。恐怖は終わることはありませんよ」

「どういうこと?」

「ウフッ…!あなたったら、知らないフリなんていけませんよ」

「なんだ?あのベランダか?何も変わったところはないようだが」

「何も変わっていなくても、全ては恐怖に覆い尽くされているんですよ」

「なんでそんな怖いことを言うんだ?」

「ほら、あなただってそうやって。もう取り返しが付きませんよ、あなた」

「なにが?!」

「恐怖の季節は誰にも気付かれないうちにやって来て、いつまでも続くのよ。ウフッ…。ウフフフッ!永遠に。ウフフフフッ!」

「…?!」

「おい待て!ハァハァ…。待つんだ!…ハァハァ…。こんなに全力で走っているのに、なかなか追い付かない。スケボーだったら人間の足でも負けるはずはないのだが。ハァハァ…」

「およしなさいな!ザ・ガードマンさん」

「はっ!あなたは黒猫亭のマダム」

「あなたは彼らに追い付けない。どんなに速く走ろうとも」

「どういうことですか?マダム」

「彼らは時代遅れになるという見えない恐怖から必死で逃げているのです」

「時代遅れになるという見えない恐怖、ですか?」

「そう。あなたはそんなものから逃げる必要はない。あなたは時代の流れとは関係のないところで生きていますから。オホホホホ…!」

「まあ、確かにいつでもガードマンの格好をしているし。流行とか気にしたことはありませんが」

「でしたら、あんな人達を追いかけるのはおよしなさいな」

「しかし、彼らを放っておくのは危険かと…」

「大丈夫ですよ。彼らもそのうち気付くはず。どこへ逃げようとも結局は同じ場所をグルグルと回っているだけだということを」

「そうですか。…ところでマダムはどうしてここへ?」

「オホホホホ…!こんなに早く戻ってくる事になるとは、私も思っていませんでしたよ。オホホホホ…!あなたも忙しくなるわよ。解っているわね?」

「はい、マダム」

「それじゃあ、行きましょうか」

「はい、マダム!」

「あーあ。もう帰っちゃおうか?」

「そうだよな。いくら駅前の安い居酒屋といっても、このサービスの悪さには…」

「お待たせいたしました!こちらがおしぼりと、お通しと、恐らくこれで間違いないだろう、という事で生ビールを二つ、注文される前に持ってきてみましたが、どうでしょう?」

「どうでしょう、って言われても。最近はハイボールも流行っているというのに生ビールというのはかなり危険な賭とも思うけど」

「そんなことはどうでもいいぜ。まあ、ハイボールが流行ってもやっぱり基本は生ビールだし。それよりも、今日は何でこんなに時間がかかるんですか?もう店に入ってから30分も経ってますよ」

「申し訳ありません。実はなぜか社員もアルバイトも全員無断欠勤で。実を言うと、今日は私一人で厨房から接客から何から何までやっている次第で」

「それじゃあ、料理とか頼んでもなかなか出てこない、ってこと?」

「いや、最大限の努力はしておりますが。なにしろ店員が私一人という状況ですし。鍋とかなら材料を突っ込んでここで温めるだけなので、比較的早くお出しできるかと思いますが」

「それは、なんとなくイケてない感じがするからいいや。それよりもなんで店員がみんな無断欠勤なの?それに今日は駅前にも人が少ない気がするけど」

「それは…その…なんていうか…」

「なんだそれ?なんかワケありな喋り方だし」

「ああ、すいません。実を言いますと、最近駅前で妙なビラを配っている人がいまして。イケてる店がどうのこうのって書いてあるビラだったんですが。それが原因なんじゃないか?って思っているんですが。みんなその店が気になっていたみたいですし。それよりも、あなた達。ここでバイトする気はありませんか?」

「なんでいきなり?!まあ、人がいなくて困っているのは解るけど」

「そうですけど。このままじゃ私も身が持ちませんし。皿洗いぐらいなら簡単だし出来るでしょ?バイトのダメ人間達だって皿洗いぐらいならちゃんと出来てたし」

「ちょっと、イケてるはずのオレ達に向かってダメ人間とは、どういうこと?」

「しかもバイトは全員ダメ人間か?」

「あっ、失礼。もう忙しすぎて、ワケが解らなくて。それで食べ物はキムチ鍋でよろしかったでしょうか?」

「違うよ!」

「望遠耳!」

「ウワッ!」

「これでも驚くのか?もしかして私の登場の仕方が悪いんじゃなくて、キミが臆病なだけじゃないか?」

「そんなことはどうでもイイですけど。どこにいるんですか?」

「ここだよ。今回は屋上から現れてみたんだが」

「屋上?!…ああ、そこ屋上じゃなくて屋根ですよ。まあ、平らだから屋上みたいなものですが。アンテナとかあるから降りてくださいよ」

「ああ、そうか。それじゃあ降りるけど」

「それで、なんですか?街では何かおかしな事が起きているようですし。あなたが出てきたということは何か問題が発生しているということですか。何かの使いさん」

「何かの使い、って。もう少し格好いい呼び方を考えてもらいたいんだが。確かにこれは思っていた以上に恐ろしい事が起きているようだな。それにさっき黒猫亭のマダムとか出てこなかったか?」

「出てきましたよ。あの人も良く解らない感じで。最近登場するようになったんですけど」

「何を気楽な事を言っているんだ。まずは彼女を止めないと大変な事になるからな。やっぱり今日は忙しくなりそうだ。それで、黒猫亭のマダムはどこにいるか知っているか?」

「ボクが知ってるわけないですよ。望遠耳は音を聴く道具で位置までは解らない、って前にも言った気がしますが。まあ、だいたいで良いなら、声はアッチの方から聞こえてきましたよ」

「そうか。では、アッチに行ってみるか。またな」

「はあ」

「ちょっと、××の奥さん!」

「あら○○の奥さん」

「ちょっと知ってる?△△さんのところの高校生の甥がいるでしょ?」

「あらやだ、あの人甥なんていたの?!」

「そりゃ甥ぐらいいる人はいるわよ。それでね、その甥が行方不明になっているって、さっき△△さんの家の前に本物の警察が来ててね。アレよねえ」

「あらやだ。ホントにねえ。高校生ぐらいになると子供は何するか解ったもんじゃないものねえ」

「なんでも、最近駅前でやってるアレが関わってるんじゃないか?って。私は思ってるんだけど。ねえホントに」

「ねえホントに。あらやだ、もうこんな時間!それじゃまた」

「それじゃあ。ホントにねえ」

「彼らが生きている事はわかりましたが…。これを我々にどうしろと?」

「ですから、それぞれの得意分野をそれぞれが受け持てば良いのでーす」

「得意分野?」

「そうでーす。このリコールを捕獲する会社からウッチーの会社がリコールを回収するので、さらにあなた方はそれを多くの方に売れるように販路を開拓して欲しいのです」

「販路と言っても…。彼らを売ってどうするのですか?」

「まだ解らないのですか?あなたもリコールされちゃいますよ!」

「いや、それは勘弁ですが…」

「彼らは新しいエネルギー資源なので−す!」

「それはいったい…!?」

「まずは見本をお見せしたいと思いまーす。彼らは特定の音楽を聞くと眠りから覚めるようになっているのです。それではミュージック・スタート!」

(ビートゥギャザー!ビートゥギャザー!…)


「あっ、なんかチョーイカしてる曲が流れてるんすけど…。なんすかこれ?っていうか、ここ何処?って感じっすけど…。あれ、なんか体動かしたくてたまんないっす。ちょっとここから出して欲しいっす。マジで」


「ミュージック・ストップ!…こういうことです。解りましたかあ?」

「いや、なんのことだかまったく…」

「なあ、知ってる?」

「知らないよ」

「そうじゃなくてさ。なんでこんなにスケボー流行ってるんだ?」

「ホントだ。これまではたまに駅前広場にいるくらいだったのに。公道にまで、スゴい数だな」

「さっきのイカしたカップルもここから来たのかな?」

「イカしたカップルって、スケボーカップルのことだったのか?」

「そうだよ」

「そうだよ、って。スケボーってあんまりイカしてないだろ」

「なんでだよ」

「なんて言うか、オレ達運動神経ないだろ」

「まあな。さらにバランス感覚は皆無」

「つまり目指すところが間違っていたって事じゃないか?」

「いや、スケボーじゃなくても、アメリカっぽい事をしたらイカしてるかも知れないぜ」

「そんなことだから、さっきのビートゥギャザー!みたいな事になるんだよ」

「ああ、あの店な。アレにはたまげましたわ」

「なんだよ、たまげました、って。そういう言葉遣いからしてイケてないと思うけどね」

「じゃあ、なんて言えば良いんだ?」

「なんていうか、チョーたまげたみたいな、みたいな?」

「それのどこがイカしてるんだよ」

「まあ、例えばの話だし」

「ぁなた!ぁぁあなた!ぁぁぁあなた!ぁぁぁああなた!」

「うわぁ!」

「また居眠りなんかして!」

「いや、そうだけど。なんか電子音の目覚ましみたいな感じで起こされた感じだけど」

「ウフッ…!だったら良かったんじゃないですか、あなた」

「まあ、スヌーズ機能が付いてたらならゆっくり目覚める感じがして良いけどな。でも、まどろんでいる間に見ている夢が悪夢だとスヌーズ機能も厄介なんだがな」

「それって、どういう意味なの?あなた。それって、こういうことかしら?あなた。ぁなた!ぁぁあなた!ぁぁぁあなた!ぁぁぁああなた!」

「ウワーッ!」

「はい、こちら現場の人気ナンバーワン女子アナのウッチーこと内屁端です。ただ今予定を変更してウッチーが緊急リポートをお届けしているのですが、消息が不明になっている新人女子アナの横パンこと横屁端アナに関する情報は未だに入っておりません。そして、見てください。この街は異常な数のスケボー人間達であふれかえっています。…あっ、そして今ちょうど男性の方がスケボー人間に向かって何かを言っているようです。かなり緊張が高まっている様子ですが、ここはウッチーが突撃取材してみたいと思いまーす!」


「おい、お前達!そんな危険物で遊んではいかんぞ!それになんだ。お前達子供かと思ったらいい大人じゃないか」

「ああ、どうもスイマセン。でもちゃんと謝ってますし、ボク達運動神経抜群だから転んだりしないし、安全ですよ」

「そんなことはどうでも良いんだ!危険だからそういうものが禁止されているのがわからんのか?」

「知りませんでスイマセン。それじゃあボクらはこの辺で。スイマセンさようなら!」

「おい、待てこの!」


「すいませーん!私は人気女子アナのウッチーですが、少しお話を聞かせてもらえるでしょうか?」

「あ、アンタはさっきのリポーターか?」

「そう言うあなたはラジオ体操の熱血先生ですね。子供達に危険な運動をさせる非常識な教師という事ですが、どう思われますかあ?」

「何を言っているのか解らないが、ラジオ体操が危険なら、この状況はどうなんだ?さっきからスケボーに乗った者達が行ったり来たり。これでは子供達が安心して道を歩くことも出来ないじゃないか」

「これは彼らの文化として認めてあげるべきだと思いまーす」

「人を危険にさらしたり迷惑をかける文化が何処にあるんだ?文化というのはな、ラジオ体操みたいに普遍の価値を持ったものなのだよ!ラジオ体操!汗をかく!ナトリウムさん!カルシウムさん!マグネシウムさん!…そういうことだよ」

「難しい話はわかりませーん!それではウッチーは横パンの捜索を続けたいと思いまーす」

「解りましたか、ザ・ガードマンさん。私達にはもっとダメ人間が必要なのです」

「しかし、どうして人間がそんなに必要なんですか?」

「オホホホホ。あなたは普通の人間ですからそう思うかも知れませんね。でもあなた方が直面している問題ぐらいは解っていますわね?エネルギー資源の問題。後しばらくは大丈夫なんて思っていると、すぐにその時は来てしまいますからね」

「それはなんとなく、テレビとかでもやってましたし」

「だったら、もっと人間が必要な事ぐらいは解りますね。彼らは人間であるが故に二酸化炭素を吐き出しても問題にはならないわね。ですから一番理想的なエネルギー資源なのです。それに居ても居なくても変わらないようなダメ人間ならエネルギー資源として消費されて行くのが、唯一人間として役に立つ方法だと思うでしょ?さらに無駄な人間が人間としての活動をやめてエネルギー資源となれば人間が必要とするエネルギーの量も自ずと減っていくのです」

「しかし…。それは…。私は人間として私と同じ人間がそのような事に利用されるのが…」

「あなた、優しいのね」

「いや、そういうことではなくて…」

「私はあなたのそういうところが好き…」

「マダム…」

「では、やってくれますね」

「はい、マダム」

「それで、彼らがどういうふうにエネルギー資源になるって言うんだ?」

「いい加減に理解してください!ホントにリコールされたいんですか?」

「いや、すいません。でも、どうにもピンと来ないので。彼らを売るとしたらどういうところに売ればいいのか解らないですし」

「彼らは巨大電気車輪を作っている会社に売ればイイと思います!」

「何ですかそれは?巨大電気車輪?!」

「そうです。彼らが巨大電気車輪に入ったら、特定の音楽をかければ彼らは走り出します。そうするとその力で巨大電気車輪がいつまでも回り続けるという仕組みになっています。ハムスターのアレの巨大なヤツだと思ってください」

「つまりそれがタービンになっていて、発電が出来ると?」

「専門用語で煙に巻こうとするのはやめてください!」

「いやいや。そうじゃなくて…」

「そうじゃないなら何ですか?」

「つまり、その車輪を回して電気を作るという事ですか?」

「やっと解ったのですか?そのとおりです!解ったのならウッチーの会社と提携するかしないか決めてください!」

「そうはいっても、私の一存では決められない事ですから…、一度会社に戻って検討おば」

「では、返事は今日中にお願いします。事態は急を要しますから」

「ええ?!今日ですか?」

「無理ならあなたの会社ごとリコールされますよ」

「そ、そんな。…解りましたよ。出来るだけ早く返事が出来るようにしてみますが」

「ああ、困ったなあ。アッチの方とか言うから来てみたけど、コレじゃあ何処に誰がいるのか全く解らないぞ。人間の世界なんて狭いものだと思っていたのだが、そうでもなかったようだな。それに、何というかこの家の多さといい。もうワケが解らないな。とにかく早く黒猫亭を見付けないといけないのだが。遠くのものを見るための望遠目というものがあればいいのだがな。…ああ、ちょっとそこの台車に乗ってる人。黒猫亭ってこの辺にあるはずだけど、知らないかな?」

「すいませんが台車じゃなくてスケボーですよ。すいませんが失礼しますよ」

「あら、行ってしまったし。礼儀正しいようで無礼なのだが。コレは何とも言えないミョーな気分だな。…おっといけない。私が見えない恐怖に取り憑かれるところだったぞ。急がねば。この見えない恐怖は私をも取り込む力を持っているのかも知れない」

「おい、山盛君!…山盛君!こんな所にいたのか。いったいキミはこれまで何処にいたんだ?キミがいい加減な商談を持って来るから、大変な…」

「…」

「おい、山盛君、大丈夫か?」

「……」

「ウワァッ。これは大変だあ!」


「もしもし、私だ。□□だ。キミに忠告しておくが、今すぐに辞職願と退職願を書いておくんだ。いいか。船底に穴を見付けたらその船から逃げるのか、それともその穴を自分の手でふさぐのか…。えっ?そういうことじゃなくて、うちの会社はすぐにヤバい事になるぞ。さっき山盛と偶然会ったんだが…。えっ?急成長間違いなし、って何が?…うちの会社が?なんで?…新しいエネルギー資源の取り引きって、それがヤバいんだって!…えっ?もう契約した、って?でも私がそれを…えっ?社長が直接?!ああ…もうダメだ。スマンが私は一人で逃げるぞ。私の机の引き出しに辞職願と退職願が入っているから社長に渡しておいてくれ。キミも給料が上がるって喜ぶ前に、その給料を使う時が来るのか、考えた方が良いぞ。じゃあな」

「う〜ん。サンドウィッチ。美味しいなあ…」

「はい、こちら現場の人気女子アナ、ウッチーこと内屁端です。依然行方が解らない後輩の横パンこと横屁端アナを探しているのですが、新たな情報が入っていきました。接触事故による負傷にも関わらず女子アナ根性を見せて別の現場へリポートに行った事が解ったのです。情報によると横屁端アナは住民の失踪事件を追っていたようですが。それはちょうどこの辺りのはずなのです。最近になって急に人気が出たイケてるお店がカギになる、ということだったようです。しかし、何処にあるのか正確な事は解っていません。あっ、ちょうど警察の方が来たのでウッチーが話を聞いてみたいと思います!お巡りさん、すいませーん。この辺りに謎の失踪事件に関わっている店があると聞いたのですが、どうでしょうか?」

「何のことだか解らないが、私はお巡りさんではなくてザ・ガードマン」

「そんなことはどうでもイイのです。知っているのか、知らないのか、どのようになっているのでしょうか?」

「それどういう質問なのか解りませんが。私は今それどころではない…」

「キャー!…危ねえなこの野郎!どこ見ていやがんだよ!」

「スイマセンデス。スイマセンデス!」

「ゴメンナサイヨ!ゴメンナサイヨ!」

「おい待て。謝ってすむなら警察いらねえんだよ。おい、待ちやがれ!女子アナなめんじゃねえぞ!コラ!!そこのスケボー、待て!」

「…ああ、行ってしまったが。まあいいか。こんな事をしていないで早くエネルギー資源を集めてこなくては」

「おい、望遠耳くん」

「なんですか?」

「あれ、今回はビックリしないのか?」

「そろそろ来ると思っていましたから」

「なんだガッカリだな。それよりも黒猫亭なんてどこにもないんだが、どうなってるんだ?」

「どうなってる、って言われても。でも、もしかすると最近流行っている店というのがそうなんじゃないですか?駅前でビラを配っているという話も出てきましたけど」

「それは怪しい話だな。でも多分それは別の場所だと思うぞ。黒猫亭には滅多に人が入ることは出来ないってことだし。しかし、困ったな。このままじゃ何も出来ないまま終わりの時が来てしまうが」

「何ですか、終わりって?」

「いや、気にするな」

「気になりますよ」

「キミに話しても解らんよ」

「そうですか。まあいいか。それよりもあなたがさっき言ってた『望遠目』ですけど」

「なに!?まさか持ってるのか?」

「持ってるとか、そういうことよりも、それって望遠鏡のことじゃね?とか思ってしまったのですが」

「なんだそれ?遠くの音を聞くのが『望遠耳』なら、遠くのものを見るのは『望遠目』だろ?なんだよ望遠鏡って」

「そんなことを言われても、どっちかというと望遠耳よりも望遠鏡の方が先にあって、そこから望遠耳という発想という感じですしね。とにかく、双眼鏡で良かったら持ってますけど」

「そうなのか?さすが望遠耳の男だな」

「はい、これ」

「全然目の形をしてないが、まあいいか。…なんだこれ?これって物が大きく見えるだけじゃないか?」

「そうですけど、物が大きく見えるってことは遠くの物が見えるということの別の言い方でもありますけど」

「何だか解らないが、コレじゃあ黒猫亭は見つからないだろ?黒猫亭のマダムは黒猫亭に隠れているんだぞ。それなのに、物が大きく見えるだけじゃ見つかるわけがない」

「それはそうかも知れませんが。これってボクが悪いんですか?」

「いや。なんというか人間の技術力を信じた私が間違っていたかな。キミを責めるつもりはないがな」

「責められても困りますけど」

「そんなことよりも、とにかくその流行りの店とやらを探してみるか。何かつながりがありそうな感じはするからな」

「それじゃあ、頑張って」

「頑張って、って。キミは自分も危険な状態だって気付いてないのか?」

「そうなんですか?」

「そうなんですか?って。いったい何のための望遠耳なんだ?コレだから人間ってのは…。まあいいか。それじゃあ行ってくるからな。あばよ」

「あばよ、って…」

「おい、大変な事になったぞ!」

「何ですか、あなた。こんな早くに帰って来て。まさかあなた、また会社辞めたの?」

「いや、今回だけは辞めて正解に違いないんだ。それに、こんな所には住んでいられないぞ。とにかくここから少しでも遠くに行った方がいいな」

「なに言ってんのよ。今年は夏の旅行もナシだったくせに。それにあの子の学校もあるし」

「まあ、そうだが。それとこれは話が別だよ。それであいつどこに行った?」

「またラジオ体操に行ってますよ」

「なに?こんな危険な状況で外に出したのか?」

「危険って、何が危険なのよ」

「何にも解ってないんだな。もういい。あの子を探してくるから、逃げる準備をしておくんだぞ」

「ちょっと、あなた」

「おっと危ない」

「それにしても、このスケボーの多さは何なんだ?」

「そうだな。これだけ多いとスケボーやっててもイケてるのかどうか?ってことは解らなくなってくるな」

「それに、ヤツらはどこに向かっているんだろう?」

「別にどこかに行くためにスケボーやってるワケじゃないだろ?移動の手段だったら自転車の方が安全だし速いし」

「それもそうか。ってことは、やっぱり彼らもイケてる感じになりたいからスケボーに乗ってるのか?」

「それは解らないな。さっきも言ったけど、こんなに大勢じゃイケてるのかどうかも解らないし」

「じゃあ、なんでスケボーなんて乗ってるんだ?」

「そんなことを聞かれても…。あれ?!」

「なに?」

「いや、あれって…テレビのニュースに出てる女子アナじゃない?」

「あっ、ホントだ。なんかこの辺りって女子アナが良く現れるんだな」

「というか、なんか様子が変だけど」

「ホントだな。なんというか夢遊病みたいだし。…あっ、危ない!」

「ウワッ…!」

「スイマセンデス!スイマセンデス!」

「ちょっと、これは大変ですよ。というかスケボー、止まらずに行ってしまったけど」

「それよりも、あのアナウンサー、スケボーとぶつかってグチャってなったけど…」

「なんか、体がバラバラになってる、ってどういうこと?」

「そんなのオレに聞かれても知らないよ」

「でも、どんなに貧弱な人でも、スケボーの人とぶつかったぐらいじゃバラバラにはならないと思うけど」

「ということはつまり…」

「どういうことだ?」

「知らないよ!」

「社長。これ□□部長からですけど。辞職願と退職願ですが」

「なんだ?□□が辞めるって?一体何を考えてるんだ?」

「そうですよね。これから大企業になろうという我が社を辞めるなんて。でももう決めちゃったみたいですし、もったいないですよね。…ところで社長。このプロジェクトが上手くいったらですね、当然その給与とか賞与とか…」

「まったくキミもせっかちな男だな。ガッハッハ。もちろん我が社が大企業になったあかつきには、それなりの報酬が支払われることになるから、心配するな。まずはリコール会社との話を詰めないといけないからな。それに□□の分もキミには頑張ってもらわないといけないから」

「もちろんです。それに二人分の働きをすればそれなりの報酬ということでよろしいですよね」

「ガッハッハ。面白い男だなキミは。ガッハッハッハ」

「アハハハハ…」

「うわ、なんだこれ?人間がバラバラになっているぞ。…しかも、この頭だけは普通に生きているようだが、いったいどうなっているんだ?」

「ブツブツ言ってないで助けてくださーい!」

「うわ、喋った!」

「人間が喋るのは当たり前です!」

「でも頭だけでは…」

「有能な新人女子アナならそのくらい出来て当然なのです。それに頭だけになるのは慣れっこでーす!」

「しかし、いったいどうしてこんな事に?体の方はバラバラになっているぞ」

「それが良く解らないのです。たしか事件の取材で変な店に行ったのですが、そこで取材をしているうちに意識が無くなって、気付いたらこのザマです」

「ザマ、って。つまりキミは意識の無いままここにやって来たというのだな」

「そのようです。そして胴体と頭が切り離された事によって正気を取り戻したと思われます」

「うーむ。それは何とも怪しいぞ。まさか黒猫亭のマダムが関わっているなんてことは…。キミ、もっと他に覚えている事はないかね?」

「質問は私がします!新人女子アナに質問するとは何事ですか!?」

「なんだそれは?私は目に見えない恐怖の使いだぞ!」

「だったら新人女子アナの方が位が上です!」

「何だその態度は!?ならばどうすれば良いのだ?」

「ですから私が質問をすればイイのです。リポーターの新人女子アナが質問してあなたが答える。それが健全な人間の在り方だと思います!」

「どうでもイイが。そんなことを言い合っている場合では…」

「それでは質問します。あなたはこの私に何か質問があるとしてそれはどのような質問なのですか?」

「だから他にもっと覚えている事はないのか?という質問だが」

「その質問に私が答えて欲しいと思っているのですか?」

「そうだが」

「では、その質問の答えがイエスだと思いますか?」

「そうあって欲しいが」

「確かに答えはイエスですが、その答えの内容が『他に覚えている事は何もない』というものだったらどうしますか?」

「もうイイ!そのバラバラの体は他の誰かに何とかしてもらうんだな」

「あれ?」

「どうした?」

「なんか踏んづけたんだけど…。なんだ、ジダンダだ」

「なんだ、ジダンダか」

「よーし!集まったな」

集まってまーす

「夕方も元気でよろしい!それでは夕方のラジオ体操を始めるぞ!夕方はラジオ体操第二だぞ。それじゃあ行くぞ!まずは全身を揺する運動から!イッチニーサンシー!」

ゴーロクシチハチ!

「よーし!その調子だ」

「あなたあたなあなたあなたあたなあなたあなたなたああなたあたなあなた!!」

「うわぁぁああ!」

「ちょっと○○の奥さん。ホントにこれひどいわよねえ」

「ホントにねえ。絶対あれのせいに違いないわよ。ねえホントに」

「ホントにねえ」

「キャッホー!」

「はい、こちらは人気女子アナウッチーこと内屁端です!みなさんあちらをご覧ください。…そうなんです、大行列です。何十人、いや何百人という数の人間が行列をつくってどこかへ向かっているようです。そして、聞こえますでしょうか。聞き覚えあのある曲がかすかに流れています。これはあの行列と関係があるのでしょうか?それではここでウッチーがもっとあの行列に近づいてみようと思いまあす!」

「(ビートゥギャザー!ビートゥギャザー!…)」

「なんだあの音楽は?この旋律は…いや、旋律とは関係ない空気の振動の中におかしなものを感じるぞ。私は見えない恐怖の使いだから大丈夫だが、人間には有害じゃないのかな?…おい、そこの駅員さん」

「私ですか?!私は駅員じゃなくてザ・ガードマンです。そんな間違われ方は初めてですが」

「それはどうでもイイが、どうしてそんな音楽を流しているんだ?」

「それはあなたに話す必要はありません。さようなら」

「待て、そうはいかんぞ。私にはちゃんと解っている。黒猫亭のマダムだな、そんなことを人間にさせるのは」

「はっ?!なぜマダムのことを?」

「そんなに解りやすく動揺したらバレバレだが。どうしてキミは黒猫亭のマダムに加担するのだ」

「人類のためです。あの人はどうすれば我々が生き残れるのかちゃんと解っているから」

「キミは周りが見えてないのか?キミのせいで多くの人間がゾンビ状態で大行進してるぞ」

「それは、仕方がないことです。人類を救うためには少なからず犠牲が必要なのです」

「それは違うな。黒猫亭のマダムの言うことを聞いていたら人類は滅びるんだよ。どうでもイイから黒猫亭のマダムの居場所を教えるんだ」

「残念ですが教えられません。というよりも、マダムはあなたのような人に計画を妨害されないように、私にも居場所を教えてませんから」

「そうなのか、困ったことになったな」

「再び現場からウッチーです。ただ今大行列の中に突撃取材を試みようと思ったのですが、どうしたことでしょうか。あの歌を聞いていると手足が言うことを聞かなくなり、ウッチー自身もこうして大行列に加わって歩くという事態になっています。これは何かに体を操られているとしか思えないのですが、人気女子アナとして意識だけはしっかり持って中継を続けていきたいと思います。それでは隣を歩いている方にインタビューしてみたいと思います。今このように列になって行進しているのですが、どうでしょうか?」

「…」

「どうやら完全に意識が無いようです。それではもう一人の方にもお話をうかがってみましょう。あなたはどうしてこのような事になったと思われますか?」

「…」

「この方も意識が無いようです。この状態はゾンビ、或いはドローンとでも表現しましょうか、意識が無いまま何かに操られてどこかへ向かっていると考えられます。そして、どういうワケかこの大行列の中を歩いていると腐敗臭のようなものが漂ってきます。これが原因で彼らは意識がないのか、或いは彼らから発せられているニオイなのかも知れません。それでは依然としてウッチーは体の自由を奪われている状態なので、大行列のリポートを続けたいと思いまあす!」

「イッチニーサンシー!」

ゴーロクシチハチ!

「先生!熱血先生!」

「どうした?」

「熱血先生。向こうからスケボー集団がやって来ます」

「なに?本当か!?しかし子供達よ、うろたえてはいけないぞ。ラジオ体操をしているキミ達に恐いものはナシだ。あんなスケボーなどラジオ体操第三、第四で追い返すぞ!」

はい、熱血先生!

「よーし、それじゃあ行くぞ。イッチニーサンシー!」

「ゴーロクシチハチ!」


「スイマセンデス!スイマセンデス!道を開けてくれませんか?」

「うるさい!お前達のために道を開ける気はない」

「スイマセンデス!スイマセンデス!通してください」

「断る!…イッチニーサンシー!」

ゴーロクシチハチ!

「スイマセンデス!みなさんここはUターンです。スイマセンデス!Uターンして他の道から行きましょう。スイマセン」

「それは一体どういうことですか?巨大電気車輪というのはまだ開発されてないんですか?」

「いや、それほど難しい事ではないので開発はすぐに出来るはずですが。なにしろ前例のないことなので…」

「そんなことは許されません。これから大量のエネルギー資源がここでリコールになるのですから、待っている時間はありません。明日までに何とかしないとこの契約はなかったことにしますよ」

「ええ!?そんな。解りました、明日までになんとか」

「はい、こちらはまたしても頭だけになってしまった新人女子アナの横パンこと横屁端です。先程恐ろしいことを思い出したような気がしたのですが、それどころではなくなっているので忘れてしまいました。みなさん、あちらをご覧ください。向こうからスケボーに乗った集団が向かって来ます。そして反対側からは不気味な人間達の大行列がやって来ます。しかもウッチー先輩も行列に加わっているようです。それではここでウッチー先輩にバトンタッチしたいと思います。ウッチー先輩!」

「はい、こちらウッチーでーす。頭だけになった横屁端アナの発見をお知らせする予定が、それどころではなくなっているようです。ここからもスケボー集団を確認できます。そして、この大行列もスケボー集団もいっこうに止まる様子がないのですが。いったいどうなるのか。CMを挟んで引き続き実況中継しまーす」

「はい。もしもし。…あっ社長、どうしたんですか?…えっ?マズいって何がです?…えー、そんな事言われても。…はい。いや、ボクもそう思ってたんですけど、あれ実はカードローンのカードだったんですよ。…はい…はい。でも、なんでボクが会社のために借金しないといけないんですか?…エエッ?!というか社長。社長!…あれぇ、切れちゃった。まいったな。やっぱりオレも会社辞めておけば良かった」

「これは一体どういうことだ?なんであのスケボー集団はこっちに向かってくるんだ?マダムのためにも、ここは私が体を張ってエネルギー資源を守らなければ」

「ああ、やっと見付けたぞ!ここが黒猫亭に違いない」

「あら、遅かったじゃないの」

「自分から出てくるとは、さすがは黒猫亭のマダム。しかし、どうしてこのような事をするのだ?」

「オホホホホ!あなたこれが間違っていると思っているの?」

「あたりまえだ。こんな事をしても何も良くならないだろ」

「そうかしら?私はいつでも世のため人のためを思っているのに。でもあなた方がそう言うのならやめた方が良いのかしら?オホホホホ!でももう手遅れみたい、もう少し早く来てくれたら良かったのに。それでは私は行くところがありますから、ごきげんよう。オホホホホ!」

「ま、待て!…あれ?消えた」

「おい、テメーら!人の肉片踏んでんじゃねえぞ、コラ!頭だけだからって女子アナなめんじゃねえぞスケボー野郎ども!おい、コラ!」

「はい、こちらウッチーです!CM中に私達とスケボー集団の距離は衝突寸前になっています!そして、ご覧ください!今警察のような人がスケボー集団を制止しようと飛び出したのですが、あえなくはじき飛ばされました。そして、依然として行進を続ける私達のところへ突っ込んでくるようです!どうやら、これ以上リポートを続けるのは困難になってきたので、スケボー集団に肉片を踏まれてブチ切れている横パンに再びバトンタッチしたいと思います!」

「はい、ここからは頭だけになった横屁端がリポートいたします。そう言っている間に、なんと行列の先頭とスケボー集団の先頭が激突しました。キャー!…みなさん解りましたでしょうか。思わず悲鳴をあげてしまいましたが、衝突によってものすごい轟音が発せられました。これは一体どういうことなのでしょうか?あっ、そして、また次から次へと衝突が起こるようです。ものすごい音がしています。そして、音がすると同時に目が眩むような閃光が発生しています。その閃光のために衝突の場所で何が起きているのか確認できないのですが、どうやら行列の人間達は私と同様に衝突で体がバラバラになってしまっているようです。しかし、おかしな事に光が消えた後に行列の人間もスケボー集団の人間もその場所からいなくなっているように思えます。どうなっているのか解りませんが、このまま様子をうかがおうと思います。それではCMです」

「なあ知ってる?」

「知らないよ」

「そうじゃなくてさ。あそこ」

「うわっ、なんだアレ?花火?」

「なんであんな低いところで花火なんだよ」

「それもそうだけど。あれって、さっき通った道の方だな」

「行ってみ…」

「ああ、キミ達!すまないがここら辺でラジオ体操している子供達を見なかったか?」

「いや、見てませんが」

「そうか、こまったなあ。キミ達も早くここから逃げた方が良いぞ?」

「何でですか?」

「理由を説明するのは面倒なんだが…ウワッ!というか、アレはなんだ?花火か?」

「いや、違うと思いますが」

「もうダメだ。キミ達も早く逃げるんだ。乗ってる船の底に穴を見付けたらどうするのか?って事だからな。それじゃあ」

「ああ、行っちゃったけど」

「どうする?」

「どうする、って。今日は家飲みに決めたんだから、早く買い物に行かないと」

「まあ、そうだな」

「はい、再び横屁端です。みなさんご覧ください!CM中も続いていた衝突により閃光が次第に増していき、そしてしばらくすると大きな一つの閃光の真ん中に小さな黒い部分が出来たのです。それが次第に巨大化していき、今ではトンネルの入り口のように大きく口を開けているのです。そして、衝突した行列の人間とスケボー集団の人間はその穴の中に吸い込まれて行くようです。これを見ていると何か忌まわしい記憶が甦ってくるような気がするのですが、一体何なのでしょうか?しかし、ここは気をしっかり持ってリポートを続けたいと思います」

「ザ・ガードマンさん」

「あっ、マダム。申し訳ありません。私のせいで貴重なエネルギー資源がこんなことに…」

「気にしなくて良いのよ。全て計画通りですから。オホホホホ!」

「マダム、それは一体…」

「あなたを騙したのは悪かったわね。でも人間のためという事は変わらないのよ。許してねザ・ガードマンさん」

「でも、この状況はどうすれば」

「放っておけばすぐに収まりますよ。それよりも私はもう行かなくてはいけません。よろしかったら、あなたも一緒に来たらどうかしら?」

「マダム…。でも私は…」

「オホホホホ!意気地無しだこと。でも、あなたにはまだここでやってもらう事がありますからね。それではごきげんよう」

「あっ、マダム…」

「こちら横屁端です。みなさん大変な事が判明しました!あの黒い穴ですが、あれは異次元世界への扉に違いありません。どうしてそうなるのかと言いますと、先程あの穴の向こうにあのおぞましい姿を見てしまったのです。そう、あのリボンを付けたネコの姿です。そして、それと同時に横屁端の失われた記憶が甦ったのです。そうなのです。私は長い間異次元世界に閉じ込められて、そしてその時に私は私をそこに閉じ込めた内屁端アナに復讐を誓ったのでした。(#138 「横屁端の詩(うた)」 )しかし、どういうワケか記憶がなくなってそれ以来私は良く出来た後輩として今日までやってきましたが、今全てを思い出しました。そして今こそ復讐の時が来たのかも知れません。見てください!体の自由を奪われた内屁端アナが次第に穴の方へ近づいて行きます。そしてスケボー集団の人間と衝突してあの穴に吸い込まれて行くに違いありません!なんていい気味なんでしょうか」


「はい、こちら行列の中のウッチーです。こちらの状況に変化があったのでお知らせしたいと思います。意志とは関係なく穴に向かって歩いていたウッチーですが、次第に手足に力が入るようになってきました。どうやらあの穴には意識を失った人だけが吸い込まれて行くようです。それでは復讐とかほざいている生意気な新人女子アナにお返ししたいと思いまーす」


「おい、どうなってんだよ。なんでアイツだけ動けるようになってるんだ?って。…し、失礼しました。ただいま、自由になった内屁端アナがこちらに向かってくるようです」


「みなさんご覧いただけますでしょうか?大行列とスケボー集団達もあらかた穴の中に吸い込まれて、あの穴も次第に小さくなっていますが、ここでウッチーから提案があります。後輩の横屁端アナにあの穴の中の様子をリポートしてもらいたいのですが。それでは横屁端アナ、準備はいいですか?」

「おい、なんだよ。やめろって言ってんだろ!てめぇ」

「女子アナのくせにそんな言葉遣いは許されませんよ。それではこの横屁端アナの頭をあの穴の中に投げ入れたいと思いまーす!せーの…それっ!…見事ストライクです!そして、良いタイミングで穴が閉じて、そしてここでは何事もなかったかのように、いつもの静かな住宅街に戻ったようです」

「あなた…。あなた…!」

「ん?!なんだ?」

「また居眠りなんかして。風邪をひいてしまいますよ」

「ああ、なんだか最近急に涼しくなってきたからな」

「平和であり、物悲しくもあり。秋が近づいていますね、あなた」

「ずいぶんとおセンチなんだな」

「まあ、おセンチだなんて。あなたこそおかしな感じですよ。ウフッ…。それよりあなた、今晩は何にいたしましょうか?」

「うーん、そうだな。キミが作る物なら何でもいいよ」

「ウフフッ、あなたったら。これじゃあ今日の夕食は今日あなたが見た悪夢よりも何倍も恐ろしいものになるわね」

「…えっ?!」

「まだまだ終わっていませんわよ。ウフフフッ…。あなーた!あにーた!ぁあなーぁた!!」

「ウワァ!」

「望遠耳くん」

「ああ、やっぱり戻ってきましたか」

「今回もダメだったよ」

「アイツは話を聞かないですからね」

「アイツってだれだ?」

「いや、流れ的に出てきたフレーズなんで気にしないで。それよりも、何がどうなったんですか?」

「なんというか、あれだな。多くの人間が異次元世界に消えていって、その先で何が起きているのかは想像にまかせるということだが。でも最後に投げ入れられたあの頭が何かを変えるのかも知れないがな。まあ、今のところあの頭は新たな復讐の炎を心の奥底でメラメラと燃やしているだけだが。上手くいけば面白い話になるかも知れないな」

「別に面白くなくてもイイですが。消えていった人間達はどうなるんですか?あのリボンを付けたネコに食べられるとか?」

「だから、そこは想像にまかせるということだから」

「そうですか。というか、目に見えない恐怖の使いさんは、出てきたけど結局何も出来てないんじゃないですか?」

「まあ、そういうことは言うなよ。私がいなかったら何が起きているのか解らなかっただろ?だから何も出来てないという事ではないんだがな。それよりも、そろそろガブリエルがこちらに向かっているはずだから、私はそろそろ帰らないとな」

「ガブリエルって、秋の使いですか?」

「そうだが」

「やっぱりみんな仲間なんじゃないですか。でも、なんでガブリエルさんが来ると帰らないといけないんですか?何か決まりでもあるんですか?」

「いや。そうじゃなくて、私はヤツに借りたビデオを返してないから、ヤツには会いたくないんだよ。そういう事だから、じゃあな。またいつかやって来るかも知れないがな」

「ああ…。まあ、さようなら…。というかビデオってなんだ?!」

 ということで、何が起きたのか解らないままでもありますが、そろそろ望遠耳をしまう時間になったようです。

 最後はやっぱりという感じで異次元世界が登場してしまいましたが、再び閉じ込められた横屁端アナや恐怖の「リボンを付けたネコ」など、いろんな要素が出てきてさらにBlack-holicミソロジーを書くのが大変になってくるという事でもありますが、この先の展開に乞うご期待!ということでよろしかったでしょうか?


 それよりも、もうすぐ大変な季節になりますし、次回はアニバーサリーな内容になるかも知れませんが、最近調子が良いのでその前に普通の大特集も書かれるかも知れないとか、適当に。お楽しみに?!