今回のBlack-holicは#084「ボツ」、#085「今週のデジタルリマスター」、#086「預言」を読んでいないと意味が解りません。(読んでいても良く解りませんが。)ざっと目を通しおいてください。
「うわーっ!」
Little Mustaphaを始めとするLittle Mustapha's Black holeの主要メンバーは突然部屋に現れた訪問者を前にして「うわーっ!」という解りやすい驚きの声をあげた。訪問者もその驚きの声に多少ビックリしたようだったが、なにくわぬ顔で話し始めた。
「ああ、ごめんなさい。ビックリさせちゃいましたか?玄関に鍵がかかっていなかったもので勝手に入ってきてしまいました」
そういわれてもLittle Mustaphaたちにはなんの説明にもなっていない。
「そうじゃなくて、あなた誰なんですか?」
ミドル・ムスタファが聞くと訪問者が答えた。
「見れば解るでしょう?私はセミです。まあ人間的な呼び方で言うと恐怖のセミ男ですかねえ」
「まあ、納得といえば納得かなあ」
そうLittle Mustaphaが言うのも無理はない。彼らの前に現れたのは訪問者が自分で言うとおりセミのような男だったのである。
ミドル・ムスタファ-----それでセミ男さんは何しに来たんですか?
セミ男-----なんか、外にいてもつまんなくて。一生懸命鳴いてるのに全然カノジョできないし。
ニヒル・ムスタファ-----ああ、解るなあ、その気持ち。せっかく格好良く鳴いてるのに、よってくるのは変なのばっかなんだよなあ。
Dr.ムスタファ-----なんでキミがそんなことを理解するんだ?
Little Mustapha-----それは、ニヒル・ムスタファが最近一生懸命ギターを弾けるように練習していることと関連してると思うけどね。
ミドル・ムスタファ-----ああ、そうですね。女性にもてると思ってギターを練習してるって前に言ってましたからね。
ニヒル・ムスタファ-----そんなことは言ってねえよ。それにギターは女にもてるために始めたワケじゃないしね。そんなことしなくてもオレの携帯のメモリーは若い女の子たちの電話番号で凄いことになってるんだぜ。
一同(ニヒル・ムスタファ除く)-----ええっ!?本当に!
ミドル・ムスタファ----- …でもよく考えたらあなたは携帯持ってないんじゃないですか?
セミ男-----アハハハハ。なんだか面白いですねえ。ここは。
Little Mustapha-----ああ、セミ男さん。なんだかニヒル・ムスタファのせいであなたのことをすっかり忘れていましたよ。それで、セミ男さん。あなたは人間なんですか?それともセミなんですか?
セミ男-----おい、キミ!その質問は人権問題に発展するようなビミョーな発言だぞ。
ミドル・ムスタファ-----ということは、いろいろとフカ〜イ事情のある「人間」ということですね?
セミ男-----そういうことでもないんだけどねえ。自分ではセミだと思ってるけど、もしかして人間としてもやっていけるんじゃないかと思ってね。
Dr.ムスタファ-----それだったら「人権問題」ではなくて「セミ権問題」という方がよかったんじゃないかね?
ニヒル・ムスタファ-----そんなことはどうでもいいでしょ。
ミドル・ムスタファ-----そうですねえ。それよりも、セミ男さんが外で鳴いて呼び寄せようとしていたカノジョって人間の女性なんですか?それともメスのセミなんですか?
セミ男-----何言ってるんですか?人間もセミもダメですよ。それにメスのセミって。あんなちっちゃいものと、どうやって交尾しろって言うんですか!
Little Mustapha-----交尾って、なんだか生々しいなあ。でもセミ男さんのカノジョは何なんですか。人間でもセミでもないものなんでしょ?
セミ男-----そんなの「セミ女」に決まってるじゃないですか。まあ私の理想はちょっと細身のモデルっぽいセミ女ですけど。エビチャンゼミと優ゼミのどっちかって言ったら、優ゼミですけどね。
(ニヒル・ムスタファ-----そんなところまで聞いてないよ!)
ミドル・ムスタファ-----セミ女ですか?
Dr.ムスタファ-----そんなのどこにもいないだろう?
セミ男-----なんでそんなこと言うんですか!私は地中にいる七年間ずっとセミ女のことを考えてムラムラしてたんですよ!
Little Mustapha-----まあまあ、そう興奮しなくても。エビチャンOLも優OLも、セミっぽい感じがするしねえ。
ミドル・ムスタファ-----しませんよ!
マイクロ・ムスタファ-----ちょっと待ってください、みなさん!
一同(マイクロ・ムスタファとセミ男除く)-----なんだ、キミいたの?
マイクロ・ムスタファ-----いたの?って。この話は前回の続きなんですから、もうみなさんは私がいることを知っているはずですよ。
Little Mustapha-----そんなこと言うとワケが解らなくなるから、続きをどうぞ。
マイクロ・ムスタファ-----ああ、そうですか。ところで、みなさんは気付きませんか?さっき私たちが読んだ、誰が書いたのか解らない謎の原稿のことです。
Dr.ムスタファ-----あれとなんの関係があるっていうんだ?
マイクロ・ムスタファ-----セミ男さん。もしかしてあなたは元々この辺の住人ではないのではないですか?
セミ男-----おっ!影の薄い人はよく気付きますねえ。そうなんですよ。ボクは地上に出てすぐに変な男に捕まえられたんですよ。捕まって箱の中に入れられて、私はそのまま気を失ってしまったのですが、気付くと知らない場所で目が覚めたんです。それはここと違って、整理された研究室のような部屋でした。
Little Mustapha-----ここと違ってとは失礼な。これでも出来る限り整理はしてるぞ。
Dr.ムスタファ-----そんなことはどうでもいいだろ。
マイクロ・ムスタファ-----それで、その場所から逃げ出して来たんですね?
セミ男-----逃げ出した、というよりは普通に外に出てきたという感じだけど。その部屋には男が二人倒れていてねえ。たぶんその二人がボクを捕まえた人間だと思うんだけど。ボクが箱から抜け出しても全然気付かないから、そのままにして出てきてしまったんですよ。あの二人、もしかすると死んでるかも知れないよ。
マイクロ・ムスタファ-----それは興味深い。何て言うか…
一同(マイクロ・ムスタファとセミ男除く)-----ミステリーですねー!!
なんだか知らないが一同が妙に盛り上がってしまったところで、第2の訪問者がやって来た。その訪問者もまた鍵の開いたドアから勝手にLittle Mustaphaの部屋に入ってくるようだ。
訪問者がLittle Mustaphaの部屋のドアを開けて中を見回すとセミ男の姿が飛び込んできた。それを見て訪問者は慌てた様子で言った。
「出たな!セミ男!おとなしくお縄をちょうだいしろ!」
部屋にいたLittle Mustaphaたちは驚いて訪問者の方を見たが、一瞬の間を空けた直後。彼らは一斉に笑い始めた!
一同-----ワハハハハ!
ニヒル・ムスタファ-----オイオイ。また変なのがやって来たぜ。
ミドル・ムスタファ-----そうですねえ。「お縄をちょうだいしろ!」だって。
Dr.ムスタファ-----いったい最後にここへ来たのは誰なんだ?鍵をかけてこないから、こんなことになるんだぞ。
Little Mustapha-----最後にやって来たのは先生じゃないですか?
ミドル・ムスタファ-----違いますよ。さっきあなたがタバコ買いにいったじゃないですか。
Little Mustapha-----ああ、そうだっけ?まあいいか。ところでおじさん誰?
ニヒル・ムスタファ-----もう忘れちゃったのかよ。キミはなんにも覚えてないんだなあ。
ミドル・ムスタファ-----去年のクリスマスにここへ来たニコラス刑事さんですよ。
Dr.ムスタファ-----ああ、そうか!
ニヒル・ムスタファ-----先生も忘れてたのかよ!
ニコラス刑事----- …あのー。いいですかねえ?
Little Mustapha-----ああ、これは失礼。いきなり変なこと言うから、もうワケわかんないですね。
Dr.ムスタファ-----なんだその「ワケわかんない」ってのは。そっちの方こそワケわかんないぞ。
一同(ニコラス刑事除く)-----ワハハハハ!
ニコラス刑事----- あのー!
ミドル・ムスタファ-----みなさん、ニコラス刑事さんがなんか言うことがあるみたいですよ。
ニコラス刑事-----いいですか?喋っても。そこにいる恐怖のセミ男を逮捕しに来たんだけど。
Little Mustapha-----ええっ、そうなんですか?!それはミステリーですよ。容疑はなんですか?
ニヒル・ムスタファ-----もしかして不法侵入か?
Dr.ムスタファ-----それだったらニコラスさんだって捕まっちまうぞ!
ミドル・ムスタファ-----不法入国じゃないですか?
Little Mustapha-----それはないでしょ。無理矢理、連れてこられたんだし。まあ、あるとすれば不法滞在じゃないかなあ?
マイクロ・ムスタファ-----ちょっとみなさん。待ってください。せっかくミステリーが進展しようとしている時にみなさん喋りすぎですよ。
ニコラス刑事-----もう喋っていいか?そのセミ男にかけられた容疑は「セミ泥棒」だよ。
一同(ニコラス刑事除く)-----セミ泥棒!?
一同が解りやすい驚き方で驚いていた。その中には容疑をかけられたセミ男もいる。セミ泥棒など、セミ男はまったく身に覚えがない。困惑した様子でニコラス刑事を見つめていた。
ニコラス刑事-----セミ男君。私の想像していたとおり、やっぱりキミはセミっぽいねえ。キミを見つけるまでの二日間。今、思い返すとこの二日という長い時間が遠い昔のことに思えてくるよ。
Little Mustapha-----二日って…
ニコラス刑事-----さあ、セミ男君。キミをセミ泥棒の容疑で逮捕する!
セミ男-----ちょっと、まってよ!私はセミなんか盗ってませんよ。
ニコラス刑事-----とぼけるんじゃない!
ミドル・ムスタファ-----あの、ニコラス刑事さん。セミ男さんは別にとぼけてるワケではないと思いますよ。
Little Mustapha-----そうだね。セミ男さんはセミ女好きのムラムラ男だから、セミなんか盗んでる暇はないと思うよ。
ニコラス刑事-----ええ、そうなの?!じゃあ、犯人は誰だ?もしかしてキミか?Little Mustapha君。
Little Mustapha-----何でボクなんだよ!だいたいどうしてニコラス刑事さんはセミ男さんを犯人だと思ったんですか?
ニコラス刑事-----あらゆる証拠の断片をつなぎ合わせていくと、犯人がセミ男であることは明白な事実となってジグソーパズル!
ニヒル・ムスタファ-----なんか上手くごまかそうとしてないか?
ミドル・ムスタファ-----そうですよ。それにジグソーパズルって何なんですか?
ニコラス刑事-----いやあねえ。私もこんなセミ盗難事件なんかの捜査は面倒だからね。適当に片付けたかったんだよ。そんな時にたまたま怪しい研究をしている学者というのにであってね。その人にいろいろ話を聞いてると、犯人はセミ男に違いない!っていうからさあ。
Dr.ムスタファ-----私はそんなことを言ってないぞ!
ニヒル・ムスタファ-----怪しい学者は先生だけじゃないよ。
マイクロ・ムスタファ-----それよりも、怪しいのはその学者の方なのではないでしょうか。
ミドル・ムスタファ-----そうですねえ。ニコラス刑事さんに適当なウソをつくなんて。ちょっと怪しいですよ。
ニコラス刑事-----それもそうだなあ。じゃあ、そういうことでセミ男君。キミの容疑は晴れたから、まあ自由にやりたまえ。
セミ男-----そうなんですか?!なんだか驚いて損しましたよ。でももしかすると、その学者ってボクを捕まえた人たちじゃありませんか?
ミドル・ムスタファ-----そういえばそうですよ。ニコラス刑事さん。セミ泥棒なんかよりもっと凄いミステリーがあるんですよ。
ニコラス刑事-----なに?!それはどういうことだ?
Little Mustapha-----セミ男さんは優ゼミが好きなんですよ!
ニヒル・ムスタファ-----それは関係ないだろ!
ミドル・ムスタファ-----そうじゃなくて、セミ男さんが押し込まれていた箱から出てくると、そこは謎の研究室で、しかも二人の男が倒れていた。ということです。
ニコラス刑事-----それはミステリーだなあ。
ミドル・ムスタファ-----ミステリーでしょ?
Little Mustapha-----なんだか盛り上がってきたから、酒でも飲もうか?
ニヒル・ムスタファ-----なんでだよ。
Little Mustapha-----せっかくみんな集まってるんだし。たまにはいいじゃん。
ミドル・ムスタファ-----たまには、っていつも飲んでばかりですよ。
Little Mustapha-----まあまあ、気にしない。もう酒は用意してあるから。ウィスキーを安く手に入れることが出来てねえ。今日はみんなウィスキーだよ。氷も水もないけどね。
というわけで、なぜか(というか、やはり)今回も酒盛りが始まってしまいました。こんなにダラダラしていて良いのでしょうか。現実世界ではもうセミの季節は終わりかけているというのに、このセミにまつわる怪しいミステリーはまだ終わりそうにありません。私も予期しなかった大作になってしまいそうです。(なるべく次回で終わらせないと。)このBlack-holicはあくまで特集コーナーなのですが、このままでは怪しいミステリー連載コーナーになってしまいます。
それでは、いろんな意味で思わぬ展開のセミシリーズ。次回も何かが起こるのか?それとも酔いつぶれて終わるのか?真面目に読んでる人がいるかいないか知りませんが、きっと驚くべき展開で何がなんだか解らない「ぽかーん」とした結末が待っているでしょう。乞うご期待!