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#037 「Black-holic Special ---Peke Santa---」 2004-12-11 (Sat)

今回は長編のため6ページにわけました。ゲッ、マジで!?


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 話は戻って数日前。サンタの国のようなところの、サンタの家のようなところにエフ・ビー・エルの二人の捜査官がやって来ました。家にはサンタのおじさんのような人の姿はなく、変わりに数人の警察官が家の中をくまなく調べている。

サンタの国のようなところのサンタの家のようなところ


 家に入ったモオルダアとスケアリーは、部屋に積み上げられている大量の封筒を見て目を丸くした。あまりに手紙が多いために、部屋の床はほとんど見えない。

「ちょいと、モオルダア。サンタ様への手紙ってこんなに沢山あるんですの?」

「いやあ、これはまだ一部だと思うけどね。他の部屋を探せばまだ沢山あるはずだよ。世界中にはまだ夢見る心を忘れない子供達が沢山いると言うことだね」

「あなたが、そんなことを言うと嘘っぽいからやめてくださらないかしら?それにしても犯人はサンタ様への手紙を盗んでどうするおつもりだったのかしら?特に中身を読んだような形跡もありませんし。やっぱり犯人はちょっと異常な方なのかしら?」

 この部屋にある手紙はどれも封を切っていなかった。モオルダアにもどうして犯人がこの大量の手紙を盗んだのかが良く解らなかった。これはクリスマスだけじゃなくて、正月まで忙しくなってしまいそうだ。でもモオルダアは正月に仕事なんてまっぴらだと思っていたので、何とか手掛かりを見つけたかった。そこで彼は何も考えずに自分の足下にある手紙の山を崩してみた。すると崩れた下から、乱雑に開けられた封筒が彼の目に入ってきた。

「スケアリー。やっぱり犯人には目的があったのかも知れないよ」

モオルダアは拾い上げた封筒をスケアリーに手渡した。

「あらいやだ。あたくし、こんな風に乱雑に封筒を開ける人って許せませんのよ。それよりもこの手紙、差出人はLittle Mustaphaとなっていますわよ。これってもしかして、あなたがいつも言っている、宇宙人とか地底人とかと関係している方の名前じゃありませんの?」

「さあ、それはどうだろう。それはこのサイト自体の大きな矛盾でね、the Peke Files本編に登場するLittle Mustaphaと別のところのLittle Mustaphaっていうのは別人ってことになってるんだよ。しかも本編を書いている作者がLittle Mustaphaなんだから、訳が解らないよねえ。でもこの話題を続けてたら話が進まないから、それを気にするのはやめた方がいいんじゃないか?」

「何言ってるのか全然解りませんわ。それよりも、この封筒の中身はどこにあるんでしょうか?犯人が持って逃げたのかしら?」

「それも考えられるし、もしかするとこの大量の手紙の中のどこかに紛れ込んでると言うことも考えられるね。なんだか大変な作業になりそうだ」

スケアリーはこの手紙の海の中から問題の封筒の中身を探すと聞いて、明らかに面倒だという目をしていたが、モオルダアがなんだかやる気満々なようなので付き合うしかないようだ。


 二時間後、モオルダアはまだ手紙を掻き分けていた。スケアリーはもう飽きてしまったようで、家の外で紙コップに入ったホットコーヒーを飲んでいる。変わりに部屋には一人の警官がいてモオルダアを手伝っていた。

「ねえ、モオルダアさん。いったいその手紙には何が書かれているんですか?」

警官が積み上げられた手紙の向こうからモオルダアに聞いた。

「ボクにもまだ解らないけど。犯人はどうしてもその手紙が必要だったに違いないよ。今ボクらが探しているのは封筒から出された紙の方だから少しは見つけやすいけど、犯人は他の手紙と同じような封筒に入っているものを、この中から見つけださなきゃいけなかったんだからね。きっとボクらより何倍も大変な作業をしたことになるね。まあ、運良く一番上に目的のものがあったなんてことがない限りね。それだけのことをしてまで手に入れたかったものだから、きっと何かすごい情報が・・・あっ、あったぞ!」

 モオルダアは手紙を拾い上げてその中身を読んだ。読み終わると、彼は首をかしげて考え込んでしまった。

「何が書いてあるんですか?」

警官が好奇心丸出しでモオルダアに聞いた。モオルダアは何も答えなかった。変わりにスケアリーを呼んできてくれと警官に頼んだ。警官は手紙の内容が気になって仕方がないのだが、モオルダアの様子から察すれば大したことも書いてなさそうだ。警官は部屋から出てスケアリーを呼びにいった。

 スケアリーは彼女を呼びにいった警官と一緒に部屋に入ってきた。やっぱり警官は手紙の内容が気になるらしい。スケアリーは手にドーナツを持っていた。モオルダアはそれを彼女が自分のために持ってきてくれたのだと思い手を差し出して受け取ろうとしたが、それよりも先にスケアリーは持っていたドーナツを自分の口へ運んだ。モオルダアの差し出した手は行き場を失って右往左往。

「モオルダア、どういたしましたの?なんだか様子が変ですわよ」

「いやあ、何て言うか・・・疲れちゃって。へへっ。それよりもキミはさっきから飲んだり食べたりばっかりで、そんなことをしてたら、また・・・」

モオルダアはここまで言ったが、スケアリーがムッとしているのに気付いて、話題を手紙のことに変えた。

「例の手紙だけどねえ、ちょっと読んでくれないか?」

モオルダアがスケアリーに手紙を渡すと彼女の後ろにいた警官がそれを覗き込んだ。警官はスケアリーの肩越しに手紙を読んだが、思っていたほど面白いことは書かれていなかった。何だ、ガッカリ。といった感じで警官は部屋を出ていった。しかし、スケアリーは多少の興味を持ったようだ。手紙には次のように書かれていた。


サンタのおじさんへ。

ボク達は今年もいい子にしていました。つきましてはボク達の望みの物をクリスマスの日にプレゼントしていただきたく、お手紙を差し上げた次第でございます。

ボク達の欲しいのは以下の通りです。


ミドル・ムスタファ:牛の背中から取り出した謎の金属で出来たオモチャ。

ニヒル・ムスタファ:モオルダアが持っているのと同じモデルガン。

マイクロ・ムスタファ:スケアリーがジョギングの時に来ていた汗つきシャツ。(洗ってないやつ)

Little Mustapha:スキヤナー副長官のCD。(あと出来ればウィスキー男の飲んでいるのと同じウィスキー。もっと出来ればアルトサックス)

Dr.ムスタファ:エイリアンの胎児。


それではサンタのおじさん、今年こそよろしくお願いします。


Little Mustaphaより。ブラックホールから愛を込めて。


 変な内容だが、そんなところは気にしていられない。手紙には彼らのことが書かれてあるのだ。

「ちょいとモオルダア。なんなんですのこれは?この手紙を書いた人はどうしてあたくし達の調査した事件のことを知っているんですの?それに、あたくしの汗つきシャツが欲しいなんて。これは完全に異常者ですわ」

「まあ、それはそうだけど。ボクらの捜査の内容は完全に秘密になっている訳じゃないからね。どこかのUFOとかを扱っているマニアックな雑誌では、ボクらの記事を真面目に書いている人がいるかも知れないからね。この手紙を書いたLittle Mustaphaが捜査の内容を知っていたとしてもおかしくはないんだが」

モオルダアはスケアリーとは違うところに注目しているようだ。

「ボクが気になっているのは、最後の『エイリアンの胎児』というところだよ。こんな物はこれまでの捜査では登場しなかったよね」

モオルダアの少女的第六感が何かを彼に伝えようとしているようだ。

 スケアリーはモオルダアがまた訳の解らないことを言うというのが解っていたが、とりあえず否定するのは彼が何かを言った後にしよう、ということにした。

「ボクが思うに、この手紙を書いたLittle Mustaphaは何か重要なことを知っているんだよ。しかも、その多くがボクらが関わってきた事件に関連しているんだ。そして、それらを自分の元に集めて何かをしようとしている」

「何かって何ですの?もっと具体的におっしゃってくださらないと、何のことだか解りませんわ」

「例えば、実験とか?まあ、何でもいいか。でも、それをLittle Mustaphaが手に入れることをどうしても阻止したい人間がいるんだよ。それが、今回の手紙紛失事件の犯人ということだね。サンタがこの手紙を読んで、彼らの望む物をプレゼントする前に手紙を盗んでここまで運んできたに違いない。これだけのことが出来るのはきっと国家的組織がからんでいるのかも知れない。犯人は今頃Little Mustaphaを消すために行動を開始しているも知れないよ。ボクらも急がないと。Little Mustaphaが暗殺されたら、ボクらは重要な情報を手に入れる機会を失うことになるからね」

スケアリーはモオルダアの話を聞いていたが、途中からあきれてしまってほとんど聞いていなかった。

「モオルダア。あなたはどうしていつもそんなことばっかりおっしゃるのかしら?仮にこの手紙をサンタ様が読んだとして、サンタ様はエイリアンの胎児とかあたくしのシャツとかをこの手紙の人たちにプレゼントすることが出来るとでも思っていらっしゃるの?」

「だって、本物のサンタなんだぜ。彼に出来ないことはないよ」

モオルダアが得意げに答えた。

「確かに公認のサンタというのはいますけども。サンタといってもあれはただの人ですのよ。」

こんなことを説明するのも面倒だったが、スケアリーはモオルダアの間違いを訂正しようとしていた。それでもモオルダアは聞こうとしない。

「サンタが人なのは当たり前だよ。サンタは神様じゃなくって聖人なんだから。それにねえ、スケアリー」

ここで、モオルダアはニヤニヤし始めた。

「もし、この捜査で本物のサンタを見つけられたら、ボクらにもプレゼントの山だぜ。欲しい物は何でもプレゼントしてもらえるんだぜ」

「あら、そうですの。それはちょっと良さそうですわね」

あらまあ。否定するのかと思ったら、スケアリーまで乗り気になってしまいました。でもスケアリーには一つ聞きたいことがあった。

「それより、モオルダア。あたくし達のいるこの『サンタの国のようなところ』って、いったいどこなんですの?外にはトナカイではない、トナカイのような変な生き物もいますし、まったく気分が悪くなりますわ」

「そんなところを気にし始めたらきりがないよ。ここはサンタの国ではないサンタの国のようなところだよ」

そうです。変なところ気にされると話が終わってしまいます。あぶないところでした。


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