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#037 「Black-holic Special ---Peke Santa---」 2004-12-11 (Sat)

今回は長編のため6ページにわけました。ゲッ、マジで!?

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(今回はなるべく始めての人にも解りやすく書いていますが、これまでの話を知るにはBlack-holic '#008','#004','#010','#022','#031'を読んでみましょう。今回の内容がより楽しめるかもしてません。)


恐怖のクリスマスが完結するのか?今回はけっこう長いですよ。それでも読むのか?読まないのか?しかも、始めてここを読む人はこれまでの話も読まなければいけない!?

 今年も彼らはサンタ待ち。これまでもあれこれ手を尽くしてサンタからプレゼントをもらおうとした彼らですが、なぜか上手くいきませんでした。でも今年は何かが違う?そして、何かが起きる?そんな感じです。まずは、マイクロ・ムスタファ全集を読んでみる。そこに何かが隠されているような。そんな感じでもあります。


マイクロ・ムスタファ全集より


ピエロの季節

 大屁端・比恵朗(オオヘバタ・ヒエロウ)少年は虎吉を前にして為すすべもなく立ちすくんでいた。

「なぜだ?なぜおまえは笑わない?」

虎吉は牙をむき出しにして、涙を流しながらただその恐ろしい道化を見つめるだけの大屁端少年に詰め寄った。

 大屁端少年には解っていた。誰もこの恐ろしい道化の虎吉を面白いなんて思っていないのだ。みんなは騙されている。もしかすると何か魔術のようなもので心を操られているのかも知れない。だからみんなはこの恐ろしい道化師のすることを笑って見ていられるのだ。

 何も言わずに怯えている大屁端を見て虎吉は次第に表情を変えていった。表情と言うよりはその顔自体が別のものに変わっていくようだった。真っ白い顔に赤い鼻。目の周りは黒く塗ってある、どこにでもいるピエロの顔が次第に恐ろしい悪魔の顔に変わっていくように思えたのだ。

 恐怖のために流れてくる涙をこらえることは出来なかったが、それでも彼は何をすべきかちゃんと解っていた。大屁端少年は今こそ彼の計画を実行に移すべきだと思った。この計画が上手くいけば、世界中で彼に騙されている哀れな人たちが何かとてつもない(未完)


非暴力の季節

 屁端谷・贋次(ヘバタヤ・ガンジ)はじっと独房の壁を見つめている。薄汚れた染みっぽいその壁には何もないのだが、贋次の目には様々な人間の顔がその壁に映っているように感じられた。

 その顔は彼が自由の身であった頃の記憶を彼に呼び起こさせた。「そう、確かに私は奇跡は起こさなかった。でも私のしたことは間違いではなかったのだ。今、あなた達がこうして私に語りかけてくれるように、私はいつまでも彼らに語りかけよう。そしていつの日か、彼らが理解してくれる時が来たら・・・」

 ここで贋次は独房の外の物音に気付いて考えるのをやめた。とうとうその時が来たようだ。贋次は覚悟を決めて看守が独房の扉を開けるのを待った。このまま刑が執行されれば、きっと何かとてつもない過ちが(未完)


探偵の季節

 屁端一・耕酢毛(ヘバタイチ・コウスケ)には何か考えがあるようだった。

「屁端一君。いったいどういうことなんだ?犯人が他にいるとでも言うのかね?」

怒百目鬼(ドドメキ)警部はハンケチで首の周りの汗を拭きながら屁端一に聞いた。

「いやあ、まだ断定は出来ないんですけどね。犯人があの美人三姉妹を殺害するためには、どうしてもつじつまが合わないところがあるんですよ」

「それじゃあ、犯人は誰だと言うんだね?」

「それはまだ解りませんが」

屁端一はこう言ってニコリと笑うと、いたずらっぽい目を輝かせて壁の方を指さした。怒百目鬼警部は背筋にどす黒い寒気を感じながら彼の指さした方をみるとそこには尺役伯爵(シャクヤクハクシャク)の肖像画が掛かっていた。

「ボクが気になっているのはこれなんですよ」

屁端一がその肖像画を見ながら話を続けた。

「この肖像画は尺役伯爵が尺役製薬の会長になった時に作らせたものですよね。その時にはあの美人三姉妹はまだこの世に存在していなかった。つまり生まれていなかったのです。それなのにどうして三姉妹はこの肖像画の背景に描かれた場所を知っていたのでしょうか?もちろん知るわけもありません。これは画家の想像で勝手に書かれた背景なのですから。つまりボクが言いたいのは、露天風呂に美人三姉妹が一緒に入れば、それはとてもグロテスクで、何かとてつもない(未完)


沈黙の季節

 山屁端・S・瀬賀留(ヤマヘバタ・スティーブン・セガル)は核弾頭を積んだまま暴走する列車に乗り込むことに成功した。このまま列車を止めることが出来なければ何かとてつもない(未完)

ミドル・ムスタファ-----何ですかこれは?


Little Mustapha-----これは「マイクロ・ムスタファ全集」だよ。彼はこれまで訳の解らないことが起きるたびに「これは私の書いた○○を読めば解決しますよ」とか言ってたでしょ。だからボクはそれがどんなものかを確かめるために、こっそりマイクロ・ムスタファの部屋に忍び込んで彼の書いた作品をコピーしてきたんだよ。


ニヒル・ムスタファ-----でも、これじゃ何が書いてあるのか全然わかんないぜ。


Little Mustapha-----そうなんだよね。でもどこを探してもこれより長いのは無かったんだ。これが彼の書いた全てってことだよね。このコピーの元になったものはちゃんと製本してあったんだよ。ビックリしちゃうよね。全集とか書いてあったけど、15ページしかなかったんだ。他の作品も全部未完なんだ。


Dr.ムスタファ-----これじゃあ、何にも解決しないなあ。いったいヤツは何を言いたかったんじゃ?


ニヒル・ムスタファ-----多分、自分の作った話を聞かせたかっただけじゃないのか?普通に話せばいいのに、ヤツはいつももったいぶって話そうとしないのさ。


ミドル・ムスタファ-----でもこれじゃあ、もったいぶってる意味がありませんよねえ。事件解決の鍵はどこにも見あたりませんよ。


Little Mustapha-----いやいや、それは違うと思うよ。確かに文章になっているのはこれだけだけど、ボクには彼がもっと沢山の情報を持っていると思えるんだよ。これはきっと夢みたいなものだよ。夢というのが無意識と有意識との間をつなぐものだというのが正しければの話だけどね。ここに書かれているのは、彼の無意識の中にあるほんの一部だということかも知れないよ。


ミドル・ムスタファ-----あなたの言っていることも良く解りませんよ。


Dr.ムスタファ-----いや、そんなこともないぞ。わしにはなんとなく理解できる。つまり、マイクロ・ムスタファの頭の中、というか無意識の中ではここにある話は全てちゃんとした話となっていて、普通の人間にも理解できる内容だということだな。


Little Mustapha-----まあ、だいたいそんなところかな。


ニヒル・ムスタファ-----だいたいなの?それにしても、どうしてキミは急にマイクロ・ムスタファ全集なんか持ち出してきたんだ?キミは今年も去年と同じ酒を持ってくるサンタをよぶつもりだったんじゃないのか?


Little Mustapha-----始めはそうだったんだけどね。あれからいろいろ考えてみたら、やっぱり本物をよばないといけない、という結論に達してね。だって、本物なら酒もアルト・サックスも、それから三十万のシンセとか百万のレスポールとか何でももらえるでしょ。だってボクはこれまでずっといい子にしていたんだから。だから、今回は本気でいこうと思ってね。


Dr.ムスタファ-----「いい子にしてた」って、キミはもうかなり前から大人なんだが。そこは解っているのかね?


Little Mustapha-----肉体的には大人でも精神は12歳だよ。


ミドル・ムスタファ-----12歳ですか?前は16歳って言ってましたけど、また若くなってませんか?


Little Mustapha-----まあ、そうかな。最終的には胎児に戻る予定なんだけど。


ニヒル・ムスタファ-----精神年齢が胎児並みって、ぜんぜん訳がわかんないよ。それよりも、話がそれてないか?このマイクロ・ムスタファ全集についてはどうなったんだ?


Little Mustapha-----ああ、そうだったね。つまり彼はボクらが知り得ないことでも知っているかも知れない、ということだよ。それはマイクロ・ムスタファ本人さえも気付いていないことなのかも知れないけどね。本当のサンタを呼べるのは、彼だけかも知れないよ。

 このように、ブラックホール・スタジオ(Little Mustaphaの部屋)では今年もなにやら陰謀の臭いがしております。そのころサンタの国では・・・


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