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#109 「UNWRITTEN」 2007-12-22 (Sat)

 クリスマス。どうしていつもクリスマス?


 薄暗いブラックホール・スタジオ(Little Mustaphaの部屋)で寝ていたLittle Mustaphaが目を覚ましました。ゆっくり起きあがりましたが彼の目はまだ半分寝ているようです。彼はズキズキする頭を押さえながら辺りを見回しました。どこか部屋の雰囲気が違っているような気がしましたが、二日酔いの時にそんな気分になるのは良く知っているので特に気にもしませんでした。

 Little Mustaphaが起きてゴソゴソと動き回っている気配に気付いたのか、他のメンバー達も目を覚ましました。未来サンタはもうとっくの昔に帰ってしまったようです。

Little Mustapha-----もう夕方だよ。

ミドル・ムスタファ-----ずいぶん長いこと眠ってしまいましたね。なんだか昨日はなにをしていたのか全然覚えてませんよ。

Little Mustapha-----ああいう飲み方はいけないって解ってるのになあ。なんだか未来サンタのテンションにつられてしまったよ。おかげでマンモス頭痛だよ。

ニヒル・ムスタファ-----結局、先生以外はまたさんざんな目にあったということだな。チクショー、サンタのヤツめ。

Dr.ムスタファ-----私だってこの頭痛には耐えられんよ。まあ反重力リアクターが手に入ったんだ。これでみんなが夢見ていた空飛ぶ乗り物ももうすぐに開発できるということなんだし、そのための犠牲だと思えば大したことはないだろ。

ミドル・ムスタファ-----ホントにそんなものが作れるんですか?まあ、いいですけど。それよりも、どうやら私達が寝ていた間に何かが起こっていたようですよ。見てください、あれを。


 ミドル・ムスタファはそう言うと留守番電話を指さしました。彼らが寝る前には何も問題のなかった留守番電話ですが、今は留守番電話にメッセージが記録されていることを示すランプが激しく点滅しています。


Little Mustapha-----なんだか、今日はやけに派手に点滅してるなあ。

ミドル・ムスタファ-----それ、聞くんですか?

Little Mustapha-----もうクリスマスもほとんど終わりだけどねえ。聞かないと点滅が消えないし。


 Little Mustaphaがメッセージの再生ボタンを押すといつものように留守番電話が再生を始めした。


留守番電話-----サンゼン・イッケン・ノ・メッセージガ・アリマス!

一同-----3001件!?

Little Mustapha-----おしいなあ。もう少しでピッタリ3000だったのに。

ミドル・ムスタファ-----そこじゃなくて量の多さに驚きましょうよ!

留守番電話-----ゴゴ・ゴジ・ゴジュウ・ゴ・フン。ピーッ!「ちょいと、あなた方はまたあたくしを招待せずにクリスマスパーティを開いているらしいわね!今年もクリスマス・スペシャルのラジオ番組がありますけど、それが終わった後は予定を開けてあるんですからね。それでもあたくしを招待しないのならきっとタイヘンな目に会いますわよ。覚悟しておきなさい!あたくしを招待したいのならあたくしのお屋敷に電話すれば良いことですから。あたくしのお屋敷の電話番号は666の…」ピーッ!メッセージ・オワリ。

Little Mustapha-----これ、プリンセス・ブラックホールだよね?タイヘンな目にあう、って言われても、もうクリスマスはほとんど終わりだしねえ…。

留守番電話-----ツギノ・メッセージ。ピーッ!「みなさん、まずいことになりましたよ。私は今年のクリスマスになにが起こるのか、ずっと考えていたのですが、恐ろしいモノを発見してしまいました。Director N.T.が復活してるんです。どうしてこれが恐ろしいことなのかは、私の書いた「復活の季節」が参考になると思うんです。「復活の季節」の中で主人公の股屁端(マタヘバタ)は自分の発明で何かとてつもない…(未完)」ピーッ。メッセージ・オワリ。

ミドル・ムスタファ-----これはマイクロ・ムスタファですね。また未完ですよ。

留守番電話-----ツギノ・メッセージ。ピーッ!「フッフッフッ。Little Mustapha's Black holeの諸君。久しぶりだねえ。今年こそはキミ達に想像を絶する恐怖を味わってもらえそうだねえ…。おい、ちょっと!寝てるのか?おい、起きろ!起きて想像を絶する恐怖を味わうのだ!」ピーッ!メッセージ・オワリ。


 ここでLittle Mustaphaが再生を止めました。なぜって、このまま3001件分も書いてたら大変ですから。


Little Mustapha-----ということで、3001件中の3件までを聞いたわけだけど、どうしましょうか?

ミドル・ムスタファ-----どうしましょうか?って言われても、なんとも言えませんけど。

Little Mustapha-----そうだよねえ。本来なら何かが起きてたかも知れないのに、ボクらが寝ていたからおかしな事になってしまったようだね。

ミドル・ムスタファ-----それに、例の謎のメッセージもありましたね。「想像を絶する恐怖」というやつです。

Dr.ムスタファ-----それから、マイクロ・ムスタファはDirector N.T.がどうのこうのとか言ってたぞ。あれは一体何なんだ?

Little Mustapha-----ああ、あれなら多分ボクのイタズラのせいだと思うけどね。

ミドル・ムスタファ-----なんですかそれは?

Little Mustapha-----みんなは「裏Black-holic」というのを知ってる?

ニヒル・ムスタファ-----それはRestHouseでやってたへんなやつだろ?

Little Mustapha-----ヘンなやつ、ってこともないけど。遊びでやってた「Black-holic特別編」のことだよ。そこで、記事を書いたのがDrector N.T.ととれるような書き方をしてみたんだ。それで、マイクロ・ムスタファはあんなことを言ってるんじゃないかな?

ミドル・ムスタファ-----でも、どうしてDirector N.T.が復活すると恐ろしいことなんでしょうねえ?

Little Mustapha-----さあねえ。それよりも残りの2998件のメッセージはどうする?

Dr.ムスタファ-----もう少し聞いてみたらどうなんだ?Director N.T.のことも少しは解るんじゃないのか?

ニヒル・ムスタファ-----そんなことはどうでも良いと思うけどね。

Little Mustapha-----まあ、少しだけ聞いてみようよ。


留守番電話-----ピーッ!

「みなさん、今年は大丈夫だったみたいですねえ。それよりもニュース見ましたか?あの人工知能、実はDirector N.T.がプログラムしたって話があるんですよ。私はますます「復活の季節」に登場する…(未完)」

ピーッ。ツギノ・メッセージ。ピーッ!

「みなさん、あれはやっぱり恐ろしいモノです。どうやらDirector N.T.が適当に書いたコンピューターのプログラムが偶然にも人工知能を作るのに必要だったけど誰にも書けなかったコードだった、ということなんです。ですから、今年もクリスマスのパーティーは危険ですよ。「復活の季節」ではプレゼント欲しさにクリスマスのパーティーへ出かけた主人公が何かとてつもない…(未完)」

ピーッ、ツギノ・メッセージ。ピーッ!

「ちょいと、あなた達はまたあたくしを招待しないおつもりなんですの?あたくしは毎年スケジュールを調整してパーティーに参加できるようにしているっていうのに。ヒドイ話ですわ!これを聞いたらあたくしのところに連絡するんですのよ!あたくしのお屋敷の電話番号は666の…」

ピーッ!ツギノ・メッセージ。ピーッ!

「フッフッフッ。今年も性懲りもなく集まって…。おい、おまえ達はまだ寝ているのか!?おい起きろ!起きろー!」

ピーッ!


Little Mustapha-----なんだかおかしな感じだぞ。


留守番電話-----ツギノ・メッセージ。ピーッ!

「みなさん。今年も私はパーティには行きません。最近では人工知能をもったロボット達が人間を襲っているというニュースもやっていましたし、そんな感じだからきっとあなた達のところにも、恐ろしいロボット・サンタがやってくるのかも知れません。気を付けてください。私の書いた「電脳の季節」の中で主人公の是路屁端(ゼロヘバタ)は自分の作ったプログラムでなにかとてつもない…(未完)」

ピーッ!ツギノ・メッセージ。ピーッ!

「ちょいと!どういうことなんですの。今年もまたあたくしを招待しないおつもりなんですの?それにLittle Mustapha様はヒドイですわ!あたくしの新曲はいつになったら出来るんですの?もう2年も新曲が出来ていないじゃありませんか。このままだとあたくしはホントに他に移籍しますからね。もしもあたくしにいろいろ謝罪したい気持ちがあって、それからあたくしをクリスマスのパーティーに招待したいというのなら、すぐにあたくしのところに連絡するんですのよ!あたくしのお屋敷の電話番号は666の…」

ピーッ!


Little Mustapha-----ボクはこのあいだ新曲を作ったばかりだよねえ?

ミドル・ムスタファ-----そうですねえ。それにマイクロ・ムスタファのほうも急に話が進展している感じだし。

Little Mustapha-----なんだかイヤな感じだなあ。


 怪しい留守番電話のメッセージをきいて妙な雰囲気になっていると、不意に部屋のドアが開いて誰かが入ってきました。


誰か-----いやあ、なんだか長いこと寝てしまったようだなあ…。

一同(「誰か」除く)-----アッ、ニコラス刑事さん!

ミドル・ムスタファ-----いつの間に来てたんですか?

ニコラス刑事-----結構早くに来てたんだぞ。今年は特に事件もなかったしヒマだったから、ちょっとここによってみたんだけどね。来てみたらみんなぐっすり眠ってるんだからなあ。それで、そのまま帰るのもなんだし、ということでそこにあった酒を飲んでみたんだが。それはヒドイ酒だねえ。途中でトイレに行ったところまでは覚えてるんだが、戻る途中に眠くなってそのまま眠ってしまったらしい。

Little Mustapha-----勝手に上がり込んで勝手に酒までのんで。図々しいなあ。

ニコラス刑事-----まあ、いつものことなんだから良いじゃないか。それにしてもその酒はなんだ?なんだか飲んだら急に楽しくなっていろいろ叫んでいたような気もするなあ。マンモスとかなんとか。

ミドル・ムスタファ-----それよりもニコラス刑事さん。昨日はホントに事件はなかったんですか?もしかするとボクらは今すごく厄介な状況に陥っているような気もするんですけど。

ニコラス刑事-----昨日は平和な一日だったぞ。なんだかテレビでは人工知能がどうのこうのって騒いでいたけどな。それだって良いことなんだろ?

ニヒル・ムスタファ-----そうかも知れないけど、その「昨日」っていうのはもしかすると「昨日」じゃないかも知れないのさ。

ニコラス刑事-----なんだそれは?昨日は昨日だろ?

Little Mustapha-----そうなんだけどねえ。まあ、ここは世間でなにが起きているのか知るためにテレビをつけてみるっていうのはどうかな?

ニヒル・ムスタファ-----映ればの話だけどな。


 Little Mustaphaがテレビをつけたのですが、テレビの画面は真っ暗なままです。


Little Mustapha-----映らないね。

Dr.ムスタファ-----アナログチューナーだからいけないんじゃないか?

ミドル・ムスタファ-----ホントならアナログチューナーだって大丈夫なはずですよ。映らなくなるのはもっと先のはずですから。

ニコラス刑事-----それなら、私のケータイで試してみたらどうだ?ワンセグチューナーだからね。


 ニコラス刑事は得意げにケータイを取り出してテレビを見られるようにしました。そこには一応なにかが映ってはいたのですが、ノイズがひどくてなにが映っているのか解りません。


ニコラス刑事-----あれ、おかしいなあ?ここは電波が悪いんじゃないのか?

Little Mustapha-----それは違うと思うよ。それじゃあ、試しにラジオを聞いてみる?どんな時でもプリンセス・ブラックホールの謎のFM局はやっているはずだよ。

ミドル・ムスタファ-----そうですね。これまでも何度かクリスマスには聞いてきましたもんね。プリンセス・ブラックホールのラジオ番組を。


 Little Mustaphaが立ち上がってラジカセを持ってきました。電源を入れてラジオのチューナーを一番低い周波数に合わせるとかすかにプリンセス・ブラックホールの声が聞こえてきました。いや、正確にはプリンセス・ブラックホールのような声です。


ラジオ-----「トイウコトデ・コトシモ・ミナサマハ・アンニュイデ・コケティッシュナ…」


Little Mustapha-----なんでロボット・ヴォイスなんだろう?

ミドル・ムスタファ-----カタカナだらけで聞きづらいですねえ。

Dr.ムスタファ-----そう言う時には、このロボット・ヴォイス・トランスレーターを使えば便利だぞ。

ミドル・ムスタファ-----なんですかそれは。

ニヒル・ムスタファ-----またヘンな発明を用意してたのか?

Dr.ムスタファ-----いや、そうじゃないんだよ。気付いたらこれがポケットの中に入っていたんだよ。

Little Mustapha-----不思議なポケットだなあ。そのポケットを叩いたらもっとなにかが出てくるんじゃないの?

ニヒル・ムスタファ-----なんだよそれは!?

ミドル・ムスタファ-----どうでも良いけど、そのロボット・ヴォイス・トランスレーターを試してみましょうよ。

Dr.ムスタファ-----うん、そうだな。


 Dr.ムスタファがロボット・ヴォイス・トランスレーターのスイッチを入れると、カタカナだらけで解りづらかったラジオの音が普通になりました。


ラジオ-----「それでは、今年もみなさまがステキなクリスマスイブを過ごせるように、ステキな曲を紹介いたしますわ!曲は今年発表された「アンドロイドなプリンセス!」ですのよ!


ニコラス刑事-----これは一体どういうことだ?

ミドル・ムスタファ-----ボクらにも良く解らないのですが、とりあえず今までのことをまとめてみませんか?

Little Mustapha-----そうだね。もうなんとなく解ってはいるんだけど、そうしてみたほうがいいかもね。

ミドル・ムスタファ-----まず、ボクらが目覚めると留守番電話には3001件のメッセージが残されていました。そして、その内容から判断すると、それは一晩の間に録音されたものではない可能性がある。それからテレビが映らなくなって、ラジオではロボット・ヴォイスのプリンセス・ブラックホールがDJをしている。そしてなぜかDr.ムスタファのポケットに不思議な翻訳機が入っていた。そういうことです。

ニコラス刑事-----つまり、私らは何日も眠っていたということか?

ニヒル・ムスタファ-----何日っていう単位なら嬉しいけどな。きっと「何年も」だぜ。


 ここでラジオでかかっていたヘンテコな曲が終わって再びロボット・ヴォイスのプリンセス・ブラックホールが話し始めました。


ラジオ-----ステキな曲でしたわね!さて、この辺で今年のクリスマススペシャル番組の前半は終わりですのよ。でも心配なさらないでくださいな。10分間のローカルニュースの後は引き続きあたくしプリンセス・ブラックホールがお送りするクリスマススペシャル番組の後半ですのよ!3007年のクリスマスイブをみなさまがあたくしと一緒にアンニュイデゴージャスに過ごせるように張り切ってまいりますのよ!それでは、しばらくの間、お別れですわ、アデュー!


ミドル・ムスタファ-----ちょっと、今の聞きましたか?

Little Mustapha-----3007年って言ってたよねえ?

ニコラス刑事-----まさか、そんなことはないだろ。いくらなんでも1000年も眠ってるわけにはいかんだろ?

Dr.ムスタファ-----それはわからんぞ。もしかするとそこにある「サンタの国のサンタの酒」というのは厳密に成分を分析してみないといけないかも知れないぞ。

ニヒル・ムスタファ-----先生が分析してもなにも解決しないよ。

Dr.ムスタファ-----なにを言っているんだ。なぜかは知らないが私は不思議に翻訳機だって持ってるんだからな。この酒の分析だってなぜか上手くいってしまうはずだ!

Little Mustapha-----その怒り方は良く解らないけど。その翻訳機は作者の都合でポケットに入れられたんだと思うよ。それよりも、ホントにボクらは1000年も眠っていたのかなあ?

Dr.ムスタファ-----仮死状態で眠っていたと考えたら可能かも知れないぞ。

ニヒル・ムスタファ-----それだけで説明がつくとは思えないけど。それにここにある家具や家電だって1000年間も同じ状態だとは…


ラジオ-----みなさま!ローカルニュースの途中ですがここでグローバルなニュースが入ってきたのでローカルニュースを中断してお伝えしますわ!テレビで見た方もいるかも知れませんが、みなさまタイヘンなことになりましたのよ!なんと、これまで絶滅していたと思われていた人類がまだ生きている可能性があるんですのよ。先程からこのラジオ局のある周辺の生命探知機から人間のものと思われる反応が検出されているんですの。これはとっても恐ろしいことですわ!もしもみなさまが人間に出会ったとしても、近づいたりせずにすぐに警察に連絡してくださいな!危うく地球を滅ぼしかけた人類ですから、そんなものに関わってはいけませんわ!未来警察が駆けつけて人間どもを始末してくれるはずですから。それではいったんローカルニュースに戻りますわ。クリスマス・スペシャル番組の後半はそのあとですから楽しみに待っていてくださいな!


Little Mustapha-----みなさま。ちょっとまずいことになってるんじゃございません?

ミドル・ムスタファ-----こんな時にふざけないでくださいよ。

Dr.ムスタファ-----でも今の臨時ニュースで我々が仮死状態だったということは推測できるな。。

ニヒル・ムスタファ-----そんなことよりも、どうするんだよ。どうやらこの1000年後の世界はロボットが支配している解りやすいSF的世界らしいぜ。しかも人間は敵みたいだぜ!

 今年も結局はグタグタでオシマイになると思われたプレゼント獲得作戦ですが、思わぬ展開になってしまったようです。きっと未来のロボットの未来技術を使えばLittle Mustapha達はたちはすぐに見つかってしまうでしょう。今年も大ピンチになってしまったLittle Mustapha's Black holeの主要メンバーとついでにニコラス刑事。果たして彼らは助かるのでしょうか?


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