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#121 「NADA」 2008-12-20 (Sat)

クリスマス! お正月より クリスマス!


 あれから何も進展がないままとうとうクリスマスイブの日がやってきてしまいました。偽Little Mustaphaは本物と同じように主要メンバーをブラック・ホールスタジオ(Little Mustaphaの部屋)に招待してクリスマスパーティーを開くことになったのですが、心配な主要メンバー達はLittle Mustaphaの部屋に行く前に別の場所に集まって話し合っていました。


ミドル・ムスタファ-----ホントにダイジョブなんですかねえ?相変わらずLittle Mustaphaの行方は解らないし。このままLittle Mustaphaの部屋に行ったら何かとてつもない事になりませんかね?

ニヒル・ムスタファ-----なんだよその言い方は。マイクロ・ムスタファじゃないんだから。

Dr.ムスタファ-----だがサンタからプレゼントをもらいたいのならLittle Mustaphaの部屋に行かなきゃダメだろう。

ニヒル・ムスタファ-----いっそのことプレゼントの届け先を別のところにしておけば良かったんだ。Little Mustaphaが戻ってこないからいけないんだ。

ミドル・ムスタファ-----でもLittle Mustaphaの部屋の方が確実だと言ったのはあなたですよ。

ニヒル・ムスタファ-----それは偽物のLittle Mustaphaがいる部屋とは違うLittle Mustaphaの部屋のことだよ。これまでちゃんとしたサンタが来たことはなかったけど、あの部屋に来るヘンなサンタ達は毎年本物のサンタに近づいて来ただろ?きっと今年こそは本物が来るはずなんだ。それなのに別の場所にしたらまた振り出しに戻る、ということになりかねないしね。

Dr.ムスタファ-----でもサンタの住所さえ間違えなければ大丈夫なんじゃないか?

ミドル・ムスタファ-----これまでの展開を考えるとそれじゃあダメな気がしますよ。ホントだったら最初のクリスマスパーティーの時点でボクらはプレゼントを貰えていたはずなんですから。

マイクロ・ムスタファ-----それよりも、あの偽物が誰なのかを調べた方が良いのではないでしょうか?

ミドル・ムスタファ-----あれ?あなたいたんですか?

マイクロ・ムスタファ-----いますよ!

ニヒル・ムスタファ-----なんだいないのか。

マイクロ・ムスタファ-----だからいるって!

Dr.ムスタファ-----いないなら、それは空耳かな。

マイクロ・ムスタファ-----ちょっと!それは前にもやったネタのリバイバルですよ!

ミドル・ムスタファ-----なんだ知ってたんですか。

マイクロ・ムスタファ-----どうでもいいですけど。もう私は自分がいることに気付かれないことに関して動揺したりしませんから、そんなネタは無駄ですよ。

ニヒル・ムスタファ-----まあ、そうだけど。それは最近キミがこういうパーティーとかに参加しないからいけないんだぜ。

マイクロ・ムスタファ-----なんでですか?

ミドル・ムスタファ-----なんというか、Little Mustaphaの部屋で起こるヘンな事件でヘンな気分にならずに済んでるからかね。

マイクロ・ムスタファ-----良く解りませんけど、私は自ら進んで危険な場所に行くほど大胆ではないんですよ。

Dr.ムスタファ-----虎穴に入らずんば虎児を得ず、という慎重さだな。

ミドル・ムスタファ-----惜しいですねえ…。

Dr.ムスタファ-----なにがだ?

ニヒル・ムスタファ-----惜しかったけど、間違いは間違いだな。なにしろ意味が解ってないかならな。

Dr.ムスタファ-----科学的には合ってると思うがな。

マイクロ・ムスタファ-----なんにしても間違っていますから気にするのはよしましょうよ。それよりも行くんですか?行かないんですか?そろそろ約束の時間ですよ。

ミドル・ムスタファ-----なんか、せっかく集まったのになんの結論も出ませんでしたねえ。どうしましょうか?

ニヒル・ムスタファ-----ここは行くしかないだろう。それにもしもサンタがLittle Mustaphaの部屋にやってきたらあの偽Little Mustaphaがオレ達のためのプレゼントを全部持っていくかも知れないぜ。

ミドル・ムスタファ-----それは大変な事ですね。それに。そんなことになったら来年からはプレゼントをリクエスト出来なくなりますね。同じプレゼントは二度リクエスト出来ないというルールも去年解りましたしね。

Dr.ムスタファ-----それじゃあ行くんだな。君子危うきに近寄らず、というやつだな。

ニヒル・ムスタファ-----もう面倒だから何も言わないぜ。

Dr.ムスタファ-----なにがだ?今のはこの状況にピッタリの言葉だと思うけどな。

一同(Dr.ムスタファ除く)-----違いますよ!

 ブラック・ホールスタジオ(Little Mustaphaの部屋)では偽Little Mustaphaが誰かと電話で話していました。そして、いつものようにそれはハンズフリーモードでした。電話の相手は陰鬱でイヤな感じのする声でした。


電話-----ということで、全ては計画通りということだ。くれぐれもミスのないようにするんだぞ。

偽Little Mustapha-----はい。それは大丈夫です。ボクだってLittle Mustapha's Black holeを正常で健全なサイトに戻さなければいけないのですから。

電話-----例の物は届いているだろうな。

偽Little Mustapha-----さっき届きました。ちゃんと人数分ありますよ。

電話-----そうか。でも、くれぐれも気を付けるんだ。おかしなことになりそうだったらキミの部屋のテレビをつければ解決法が見つかるかも知れないぞ。

偽Little Mustapha-----そうですか。解りました。

電話-----それでは、そろそろ彼らが来る頃だ。しっかり頼んだぞ。


 怪しい会話が終わったちょうどその時Little Mustaphaの部屋に呼び鈴が聞こえてきました。偽Little Mustaphaが玄関に行って鍵を開けると、そこには主要メンバーがぎこちない感じで中に入ってきました。


Dr.ムスタファ-----なんで今日は鍵が掛かってるんだ?

偽Little Mustapha-----鍵を掛けるのは当たり前ですよ。

Dr.ムスタファ-----でもいつもはそんなこと…

ニヒル・ムスタファ-----鍵はかけないと誰が入ってくるか解らないだろ。

Dr.ムスタファ-----まあ、そうだがな。

ミドル・ムスタファ-----それよりも、これはいったい何なんですか?御馳走が並んでいますよ!

偽Little Mustapha-----そうだよ。今日はクリスマスパーティーだからね。それじゃあ、飲み物を用意してくるからちょっと待ってて。


 偽Little Mustaphaが台所のほうへ行くと部屋に残ったメンバー達は小声で話し始めました。


ニヒル・ムスタファ-----いったいどういうことなんだ?

ミドル・ムスタファ-----どういうことでしょうかねえ。こんな豪華なパーティーは初めてですよ。

Dr.ムスタファ-----それに、あそこのアレはなんなんだ?


 Dr.ムスタファの指さした先にはきれいにラッピングされた箱が積んでありました。それはどう見てもクリスマスのプレゼントという感じで、誰が見てもワクワクしてしまうような楽しげな緑と赤の包装紙に包まれていました。思わず何かを期待してしまいそうな三人でしたが、マイクロ・ムスタファだけは怪訝な表情で部屋の中を見回していました。そこへ飲み物を持って偽Little Mustaphaが戻ってきました。

 偽Little Mustaphaはみんなの前に置いてあるグラスにワインを注いでいきました。この予期しない展開に戸惑っていましたが、メンバー達はワインの次がれたグラスを手に持ちました。そして偽Little Mustaphaの音頭で彼らがこれまでにないヘンなテンションであの言葉で乾杯しました。

「メリークリスマ〜ス!」

かなりぎこちない感じでしたが、そのかけ声でパーティーが始まりました。


ミドル・ムスタファ-----なんというか、今年のクリスマスはちょっと楽しいような気がしますねえ。

偽Little Mustapha-----そうですよ。クリスマスは楽しいものなんです。ところでマイクロ・ムスタファさんはどうして何も食べないのですか?それにマイクロ・ムスタファさんはこのあいだとずいぶん顔が違っているように見えますが。

ニヒル・ムスタファ-----そんなことはないだろ?きっとこのあいだはヘンな顔になってただけだぜ。へヘヘッ。

偽Little Mustapha-----それは面白いですねえ。アハハハ。

マイクロ・ムスタファ-----いや、そうではないんです。私はこの状況を見て私の書いた「終末の季節」という小説を思い出しました。

偽Little Mustapha-----マイクロ・ムスタファさんは小説家なんですか。

マイクロ・ムスタファ-----ええまあ。それで、その小説の中で人類は望んでいたもの全をて手に入れるんです。そしてその結果人類は滅びるのです。なぜなら人類の中には地球を消滅させるような核爆弾を望む人もいたのですから。

Dr.ムスタファ-----なんだかいつもの話と雰囲気が違うなあ。

ミドル・ムスタファ-----まあ、それはいいんじゃないですか。


 ミドル・ムスタファはマイクロ・ムスタファが遠回しに自分たちに警告を発していることに気付いて手に持っていた鶏の唐揚げを皿の上に戻しました。すると他のメンバー達もそれまで美味しそうに食べていた料理に手をのばさなくなりました。偽Little Mustaphaはこの様子が気に入らないようでした。

 ドコデモナイの荒野にある小さな小屋ではLittle Mustaphaとミニ・ムスタファがまだヘンな水割りを飲み続けていました。あれから何日もの間、二人は何もせずに黙って飲んでいたのです。その間に二人は何かを考えていたのか、そうでないのか、まったく分かりません。

 Little Mustaphaはふと思い出したように時計を見ました。

「そろそろ時間だね」

Little Mustaphaがそう言うと二人は立ち上がりました。


 今日はクリスマスイブ。Little Mustaphaが何日も歩き続けて辿り着いたこのドコデモナイの荒野からLittle Mustaphaの部屋に戻るにはまた何日も歩かないといけない、と思うかも知れませんが実はそうではありませんでした。Little Mustapha達が小屋から一歩足を踏み出すと、そこはLittle Mustaphaの部屋からさほど遠くない町の中でした。

 ドコデモナイの荒野のナンデモナイやナンニモナイから抜け出すのは簡単なのです。目的を持って一歩を踏み出すとそこには別の世界が現れるのです。Little Mustaphaとミニ・ムスタファはともにこの一歩のことを「無限の可能性を有限にする行為」ともよんでいました。

 とにかくLittle Mustaphaとミニ・ムスタファは一瞬にしていつもの町に戻ってきたのです。二人はLittle Mustaphaの部屋に向かって町を歩いていましたが、やがて彼らの前に何かが転がっているのを発見しました。それは吸血鬼に体中の血を吸い取られて干からびた死体でした。

「なんだか今年も…」

Little Mustaphaが言いかけたところで、彼らからさほど遠くないところから悲鳴が聞こえてきました。見るとそこでは不死身の怪力モンスターが通行人の頭を片手で潰していました。

「…凄いことになってるねえ」

「今年はいつも以上なんじゃないか?」

ミニ・ムスタファがそう言うと、二人は足下の干からびた死体と少し離れたところの新しいグチャッとした死体の横を通り過ぎてLittle Mustaphaの部屋へと歩いていきました。

 しばらく歩いていくと二人はデパートの前まで来ました。デパートの前には人気女子アナのウッチーこと内屁端(ウチヘバタ)アナがテレビカメラの前で興奮気味に喋っています。


ウチヘバタ-----ハイ、現場のウッチーです!みなさん、ここがどこだか分かりますかあ?…そうなんです。あの惨劇が再び!という感じで、またしてもゾンビのようなサンタがこのデパートに現れたということなんです!それでは目撃者の方にインタビューしてみたいと思いまあす!


内屁端アナがインタビューを開始した直後のことでした。閉鎖されていたデパートのドアがバーンという音とともに押し破られて中から大量のゾンビサンタが出てきました。この状況に盛り上がった内屁端アナはインタビューを中断してゾンビサンタのほうへ向かっていったのですが、そこでゾンビサンタに襲われたのは言うまでもありません。

「わあ、生で見るとすごいね」

Little Mustaphaが言いました。

「それと、生で見るとウッチーはそれほど美人じゃないんだな」

ミニ・ムスタファが言うとLittle Mustaphaはヘンな顔で彼を見ました。

「キミとボクは似てると思ってたけど、違うところも色々あるんだね」

「似ていたとしても、好みはそれまでの体験で色々変わるものだよ」

良くからない会話の後、また二人は黙って歩き始めました。


 それにしても、どうして二人はこれまでにモンスター達に襲われずに平気で歩いていられるのでしょうか?それはおそらく、彼らがドコデモナイの荒野で何日もの間飲み続けていたために、彼ら自身もモンスターのような外見になっていたからに違いありません。肌はボロボロで目の下には真っ黒なクマが出来ています。

 この後二人は狼男やフランケンシュタインや人間を抹殺しようとするロボット達の間をぬってLittle Mustaphaの部屋へと近づいて行きました。

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