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#121 「NADA」 2008-12-20 (Sat)

クリスマス 何がなんだか わからない


 それからLittle Mustapha達は再びダラダラと飲み始めて、今はサンタのお腹の上に冷蔵庫の隅に見つかったSPAMを炒めたスパム炒めを盛ったお皿がのっています。彼らは部屋の真ん中で寝ているサンタさんをテーブル代わりにしているようです。


Dr.ムスタファ-----…ということでねえ、女性に変身して女風呂に入るには少し問題があるんだよ。

ニコラス刑事-----なんだ、そうなのか。女性に変身するクスリがお湯と化学反応を起こすとは残念だ。

ニヒル・ムスタファ-----なんだよ、その女性に変身するクスリっていうのは!?

Dr.ムスタファ-----理論的には可能なんだがな。

ニヒル・ムスタファ-----どこがどう理論的なんだよ!

ニコラス刑事-----まあそれはどうでも良いじゃないか。それにしても科学の話っていうのは夢があって良いよなあ。

ミドル・ムスタファ-----あなた達はいっつもスケベな妄想をしているだけじゃないですか。

Little Mustapha-----ボクはクスリの力に頼らずに女性に変身出来るけどね。

ニコラス刑事-----本当か!?

ニヒル・ムスタファ-----ウソに決まってるだろ。

Little Mustapha-----そういうことを言っていると、ニヒル・ムスタファには女性に変身する方法を教えないからね。ボクなんかしょっちゅう女風呂に入ってるからね。それから女性の中にも男性に変身出来る人がいて、時々男風呂に入ってきていることも知ってるよ。

Dr.ムスタファ-----本当か?

ミドル・ムスタファ-----ウソだと思いますよ。それにしても、何でそんなウソを言うんですか?

Little Mustapha-----なんていうか、そろそろ驚くべき展開にならないといけないと思ってね。

ニヒル・ムスタファ-----女性に変身したって誰も驚かないぜ。


 その時、寝ていたサンタさんがむっくりと起きあがりました。その拍子にお腹の上のお皿がひっくり返って落ちたスパム炒めの油が床にシミを作りました。


ミドル・ムスタファ-----ああ、ちょっと。急に起きあがらないでくださいよ。

Little Mustapha-----まあ、良いじゃん。話が進みそうだし。

サンタさん-----あ〜、よく寝た。ゾンビに噛まれるとどうにも眠くなっていかん。…それよりも、ここはどこだ?キミ達は誰だ?

Little Mustapha-----覚えてないの?さっき自分で色々説明してたのに。ボクらにプレゼントを届けようとしたのに袋を盗まれたとか、そんなことを言ってましたよ。

サンタさん-----ああ、そう言えばそうだった。一度寝てしまうとその前のことは忘れてしまうんだよね。何せ今日は一日で世界中の子供達にプレゼントを配って回らなければいけないんだからね。オーッホッホッホ!その大変さがお前達にはわかっているのか?

ミドル・ムスタファ-----ちょっと、笑った後にそんな風に怒らないでくださいよ。

サンタさん-----そんなこと言っても、キミ達が子供じゃないのにプレゼントをリクエストしたことに気付いてちょっと腹が立ったんだよ。オーッホッホッホ!

Little Mustapha-----なんか、いちいち笑うと怒ってるのかどうか良くわかんないけど。

サンタさん-----それはどうでも良いんだが、私が世界中の子供達にプレゼントを配るのがどれほどの重労働かわかっているのか?地球の自転に負けない速さで夜から夜へと移動しながら、子供達のいる部屋に忍び込んでプレゼントを置いてくるためには、キミ達が想像しないような速さで行動しないと出来ないことなんだよ。オーッホッホッホ!そのために、私はサンタの酒の力を借りているんだ。不可能を可能にするサンタの酒は昔から改良を重ね続けて、今やアルコール度数101%だぞ!オーッホッホッホ!

Dr.ムスタファ-----何でサンタの酒を飲むと速く動けるようになるんだ?

サンタさん-----それは良く知らないけどな。でも去年まではアルコール度数が45%までしかなかったサンタの酒が、去年のクリスマスが終わった後に驚くべきことが起きてついに100%を超すことが出来たんだよ。オーッホッホッホ!

ニヒル・ムスタファ-----そう言えば去年きた未来サンタはアルコール度数300%のサンタの酒だったな。

サンタさん-----ほう、それは興味深い。実は、去年のクリスマスが終わった次の日に私がサンタの国のサンタの家に帰ると、そこに不思議なメモが置いてあったんだ。それはどう考えても私の字なのだが、私はそんなものを書いた覚えはないし、それに、そこに書かれていることは私にはほとんど理解出来ないことだったんだ。でも、そのメモを解読することによって私はついにサンタの酒のアルコール度数を100%以上にすることに成功したのだよ。オーッホッホッホ!

ミドル・ムスタファ-----興味深い話ですが、その話はそのくらいにしませんか?タイムトラベルの話をすると収集がつかなくなりますから。

サンタさん-----ん?!なんのことだか良く解らないが。まあ、イヤならやめるがな。

Little Mustapha-----それよりも、こんなところで寝てて大丈夫なの?もうすぐ浮かれ立つ夜がサンタさんを追い越してしまって、世界はガッカリの朝を迎えなくてはいけなくなってしまうよ。

ニヒル・ムスタファ-----なんでそんなにビミョーな詩みたいな話し方なんだよ!

サンタさん-----まあ、そうかも知れないが、プレゼントの袋を盗まれてしまってはしかたがない。プレゼントは全然配ってないんだがな。でも世の中不景気だってことだし、その辺のせいにすれば子供達も納得するだろう。オーッホッホッホ!

ミドル・ムスタファ-----サンタさんがそんなことで良いんですか?

マイクロ・ムスタファ-----それよりも、みなさんは気になりませんか?

サンタさん-----あれ、キミは誰だ?

マイクロ・ムスタファ-----ちょっと…、もう!

Little Mustapha-----サンタさん。それはちょっと酷いネタですよ。

サンタさん-----ネタとかは解らないが、その人はいつの間にここにやってきたんだ?

マイクロ・ムスタファ-----さっきからずっといますよ!それよりも、そこの電話が気になりませんかッ!

ミドル・ムスタファ-----サンタさんのせいでマイクロ・ムスタファが本気で怒りそうですよ。

ニヒル・ムスタファ-----滅多に怒らない人が怒るほど恐いことはないからな。

マイクロ・ムスタファ-----もう、どうでも良いですけど、留守番電話のメッセージは聞くんですか?聞かないんですか?

Little Mustapha-----あっ、ホントだ。いつの間にか留守番電話にメッセージが…。

ニコラス刑事-----メッセージがあるなら聞かないわけにはいかないな。


留守番電話-----ゴゴ・クジ・ジュッ・プン・ピー!「フッフッフッフッ…。Little Mustapha's Black holeの諸君。今年も盛り上がっているようだね。偽Little Mustaphaを送り込む計画は失敗したが、そのおかげでおもしろいことを思いついたんだよ。キミ達が最も恐れていることは何か私は知っている。そこにいるプレゼントをくれそうな偽サンタを抹殺すれば、キミ達はどうなってしまうだろうねえ?偽者を抹殺する方法はさっきキミ達が見せてくれたな。同じことを私もやってみようじゃないか…。そこのサンタを名乗る者よ、お前はどうしてそんな派手な赤い衣装を着ているんだ?それは人間が決め付けているサンタの姿だ。本物のサンタはそんな服は着ないんだ。しかし、お前はそんな服を着て、リクエストがあれば誰彼かまわずプレゼントを配っている。それは本物のサンタのすることではない。お前は何者だ?…そうだ、お前は偽者なのだ。そしてこの私こそ本物のサンタなのだよ。フッフッフッフッ…」メッセージ・ワオリ!


サンタさん-----ま、まさか今の声は…


 サンタさんはそう言って顔を真っ青にしました。そして「ぅぅぅぅぅ…」というヘンなうなり声を上げるとサンタさんの顔はどんどんふくらんでいきました。まるで先ほどDirector N.T.の顔が破裂した時のようです。Little Mustapha達は驚いてその様子を見ていました。

 サンタさんの顔がこれ以上ふくらみそうにないという意味においてパンパンになったところでサンタさんが口を開けると、そこから空気が抜けたようになって、サンタさんの顔は元に戻りました。


サンタさん-----どうだ?驚いただろう。オーッホッホッホ!

Little Mustapha-----まあ、驚いたといえば驚いたかな。でも、みんなは覚えてるかどうか知らないけど、前にも似たようなメッセージがあったんだよね。その時も「本物は私でそこのサンタは偽者だ」みたいなことを言ってたんだけど、その時に何もなかったんだから、今回も何も起きないとは思っていたけどね。

ミドル・ムスタファ-----ああ、そう言えばそんなこともありましたね。でも、その時のサンタさんと今日のサンタさんは違う人ですよね?

サンタさん-----何のことだか解らないがな。

ニヒル・ムスタファ-----サンタさんは毎回違う顔だからどれがホンモノなのか解らないぜ。

サンタさん-----本物はこの私だ!顔をふくらます芸が出来るのは私ぐらいしかいないんだよ。オーッホッホッホ!

Little Mustapha-----顔がふくらんだだけじゃ本物とは思えないけどね。

Dr.ムスタファ-----それじゃあ電話の声は誰なんだ?メッセージによれば本物はあの声の主だぞ。

Little Mustapha-----でもあの声は自信たっぷりだったけどね。でもあれがホントに本物のサンタさんだとしたら、ここにいるサンタさんは消滅してたはずだよね。なんか、今回はそういうルールみたいだから。

ニコラス刑事-----私には何のことだかさっぱりわからんよ。

マイクロ・ムスタファ-----つまりこういうことです。…ダイジョブですね。

Little Mustapha-----ダイジョブって何が?

マイクロ・ムスタファ-----いや、またあのネタをやるのかと思ったもので…。つまり、こういうことです。あの声の主は自分が本物のサンタだと思いこんでいるのです。そして、今頃はここにいるサンタさんが消滅しなかったことに驚いているに違いありません。しかし、これで安心してはいけません。今日は二回も計画が失敗して、あの声の主はそうとう腹が立っていることでしょう。そして、これから先…いや、それは今日かも知れない。外にはたくさんの怪物達が歩き回っているのですから。このままこの状況を放っておけば何かとてつもない…

Little Mustapha-----まあ、いつもどおりと言えばいつもどおりな感じだね。

ミドル・ムスタファ-----そうかも知れませんねえ。

サンタさん-----しかし、私はあの声に聞き覚えがあるのだがな。これは少し面倒なことになりそうだぞ。オーッホッホッホ!

ニヒル・ムスタファ-----そこで笑うこともないだろ。

サンタさん-----それはどうでも良いことだよ。私はしばらく旅に出ることにするよ。戻ってくるのは再来年かな。

ミドル・ムスタファ-----それじゃあ、プレゼントはどうなるんですか?

サンタさん-----まだ頼りないが、見習いをやっている私の孫にまかせるとしよう。

Little Mustapha-----それって、一昨年ここにきたあのサンタの孫娘さんのこと?でも今年は一緒じゃないの?

サンタさん-----スノーボードをやって足を捻挫したとか言ってたな。今年はお休みなんだ。オーッホッホッホ!

Little Mustapha-----ということは、来年はプレゼントも貰えるし、セクシーサンタにも会えるかも知れないってこと?

一同(サンタさん除く)-----やったー!

サンタさん-----オーッホッホッホ!それはないぞ。

Little Mustapha-----なんで?

サンタさん-----大事な孫娘をこんな薄汚く散らかった男だらけの部屋に行かせるワケがないだろう。オーッホッホッホ!キミ達のところには代わりにトナカイが来ると思うぞ。オーッホッホッホ!

一同(サンタさん除く)-----ガーン…。

サンタさん-----それでは私はそろそろ行かなくては。…そうだ、今夜のこの部屋は危険だからこれを置いていこう。

ミドル・ムスタファ-----その小瓶は、もしかしてサンタの国のサンタの酒ですか?

サンタさん-----いかにも。101%だから気を付けるんだぞ。オーッホッホッホ!

Little Mustapha-----でもなんか、そのサンタの酒を飲むとヘンなことが起きそうでやなんだけどなあ。

サンタさん-----外にいる怪物達が一斉にこの部屋に入ってきても良いというのなら飲まなくてもいいがな。サンタの酒は不可能を可能にするんだよ。オーッホッホッホ!それではさらばだ!オーッホッホッホ!



 サンタさんは窓の外に現れた空飛ぶソリに乗って空の彼方へ消えていくのかと思いましたが、普通に立ち上がって玄関から出ていきました。

「アレはホントにサンタさんだったのでしょうか?」

ミドル・ムスタファが聞くと窓から外を見ていたLittle Mustaphaが答えます。


Little Mustapha-----さあね。歩いて駅のほうに行っちゃったけど。それよりも、ちょっとした問題が発生してるんだよね。

Dr.ムスタファ-----まさか千年後にタイムスリップしてるんじゃないだろうな?

ニヒル・ムスタファ-----何で去年のネタが出てくるんだよ。

Little Mustapha-----そうじゃなくて、家の周りに大量の怪物達が集結していて、おそらくボクらを狙っているような気がするんだよね。さっきボクの顔を見てヘンなうなり声を上げてたし。

ミドル・ムスタファ-----それはマズイですねえ。

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