holicRSSFeed

#121 「NADA」 2008-12-20 (Sat)

クリスマス まだつづくのか クリスマス


 おそらく偽Little Mustaphaがいなくなったためでしょう。テレビには先ほどの落ち着いたニュース番組ではなくて、いつものスタジオにいつものキャスターが映し出されました。


スタジオのキャスター-----これまでウッチーをはじめ何人もの人気女子アナが地獄のような現場へ向かいそのまま行方が解らなくなってしまいました。しかし報道機関としてはこのまま現地からの中継を諦めるわけにはいきません。現場には最後の手段として入新井アナウンス学園の学生さんが向かっております。それでは早速、現場の入新屁端(イリアラヘバタ)さんを呼んでみましょう。イリアラヘバタさん。そちらはどのような状況になっているのでしょうか?

イリアラヘバタ-----…えっ、ちょっとマジで、ムリだから。…ていうか、いきなりそんなの知らないし…

スタジオのキャスター-----イリアラヘバタさん?そちらの状況を伝えていただきたいのですが?

イリアラヘバタ-----…だからコンタクトしてないから、そこになんか書いてあっても読めねーっつうの!

スタジオのキャスター-----…ええと。まだ準備が出来ていないようですね。それではここで予定を変更して激安グルメコーナーです。「空から百万円が降ってきたら一万食!?驚きの百円ランチ!」です。


 Little Mustaphaはここでとりあえずテレビを消しました。メンバー達はイヤなものを見てしまった、という感じでLittle Mustaphaのほうを見ました。


Little Mustapha-----今のじゃあんまり解らないと思うけどね。今日は外ではこの世の終わりみたいな大混乱なんだよ。

Dr.ムスタファ-----それはおかしくないか?さっきテレビを見た時には子供達が平和な感じで賛美歌を歌っていたぞ。

ニヒル・ムスタファ-----あれは、おそらく本物のテレビ中継じゃないぜ。きっとヤラセだよ。

ミドル・ムスタファ-----そうですよね。その後にテレビをつけた時にはゾンビ化したウッチーが出てきたじゃないですか。

Dr.ムスタファ-----ああ、そうだったか。それはまるで「一を見て十を見ず」という感じだな。

ニヒル・ムスタファ-----そんなことわざはないけどな。でもなんとなく「一を見て八を見ず」という感じだった気もするけどな。

ミドル・ムスタファ-----それはちょっと上手いこといいますね。

一同(Dr.ムスタファ除く)-----アハハハハ!

マイクロ・ムスタファ-----ところで、そこの電話のランプが点滅してるのって、留守番電話のメッセージじゃないですか?

Little Mustapha-----ん!?キミは誰だ?

マイクロ・ムスタファ-----マイクロ・ムスタファです!

Little Mustapha-----ああ、なんだ。めずらしく自然な感じで発言するから解らなかったよ。

マイクロ・ムスタファ-----もう、そんなことはどうでもイイですよ。

Little Mustapha-----まあ、小さなネタは挟んでいかないとね。そんなことをしてると話が長くなるから面倒なんだけどね。

ミドル・ムスタファ-----なんですかそれは?それよりもメッセージは聞くんですか?

Little Mustapha-----聞かないと話は進まないんじゃないかな。ここは敢えて聞かないという手もあるかも知れないけど、やっぱり気になるので聞いてみようか。


留守番電話-----ゴゴ・シチ・ジ・シチ・ジュ・ップン。ピー!「ちょいと!どういうことですの?偽者はどうなったんですの?もしかしてあの偽者はあたくしをパーティーに呼ばないために雇われたとかじゃないでしょうね?あたくしは今年もラジオでクリスマスの特別企画をやっていますけど、その後の予定は空けてあるんですのよ!それなのにあなた達はあんな変な偽者を電話に出させたりして、しかもあの偽者はあたくしにほとんどセクハラみたいなことばかり聞いてきたんですのよ!寝る時には枕をどの方角に向けるか?なんて聞かれてあたくしはホントにあなた方を訴えようとしているんですからね。あなた方があたくしに申し訳ないことをしたと思っていて、あたくしに謝罪して、それからあたくしをクリスマスパーティーに招待したいのなら今すぐにあたくしの連絡するんですのよ!あたくしのお屋敷の電話番号は666の…」ピー!メッセイジ・オワーリ!


Little Mustapha-----予想に反してプリンセス・ブラックホールからのメッセージでございましたが。

ニヒル・ムスタファ-----それよりも、どうして寝る時の枕の方角を聞くとセクハラなんだ?

Little Mustapha-----そんなことは知らないよ。

ミドル・ムスタファ-----それより、その留守番電話も今日はヘンですよね。七時七十分って言ってませんでした?

Little Mustapha-----でもそれは八時十分のことだからいいんじゃない?

ミドル・ムスタファ-----いいんですか?!

Little Mustapha-----気にしだしたらキリがないからね。とにかく今のメッセージを聞いてボクらがするべきことは何なのか?ということだけど。謝罪の電話をしようにも電話番号が解らないし、何を謝罪していいのか解らないから、つまりするべきことはラジオを聞くことなのかなあ?

ミドル・ムスタファ-----それが正しいのか解りませんが、テレビをつけてもグルメコーナーだし、聞いてみますか。


 Little Mustaphaはラジカセを持ってきてアナログ式のチューナーを一番低い周波数に合わせてみました。するといつものように雑音に混ざって謎のミニFM曲からの放送が聞こえてきました。そこではプリンセス・ブラックホールのステキなシングル曲が流れていました。

 一曲終わって、次はプリンセス・ブラックホールが世の中の異常事態に関して臨時ニュースとかを伝えると思われたのですが、すぐに別のステキなシングル曲が流れはじめました。そしてその後も、同じことが繰り返されました。


Little Mustapha-----なんかいつまで経ってもステキなトークが始まらないね。

Dr.ムスタファ-----なんか問題が発生してるんじゃないか?

Little Mustapha-----それはなんだか心配だなあ。

ミドル・ムスタファ-----でも放送は続いてるんだから、別に大丈夫なんじゃないですか?

Little Mustapha-----キミはまだ外で何が起きているか知らないからそんなことを言っていられるんだよ。


 そう言ってLittle Mustaphaはまたテレビをつけました。つけた時には街の映像だったのですが、それはすぐにスタジオに切り替わりました。


スタジオのキャスター-----以上、急遽ピンチヒッターとして登場してくれた女子アナネームPBさんのリポートでした。CMに続きましてグルメコーナーの後編をお届けします。


ミドル・ムスタファ-----これって、もしかしてプリンセス・ブラックホールがラジオのスタジオを抜け出してテレビに出てたってことでしょうか?

Little Mustapha-----なんかそんな感じもするけどね。そんなことはどうでも良いんだよ。ボクはテレビやラジオで外がどれほど酷いことになっているのかをみんなに知ってもらいたかったのに、これじゃあ何にも伝わらないじゃん。

Dr.ムスタファ-----まあ、いつもよりさらにおかしなことになっていることは解るがな。

Little Mustapha-----それが解るなら、まあいいか。

 楽しいはずのクリスマス。しかし、街には怪物達があふれかえり、楽しげに歩く人間の姿はどこにも見当たりませんでした。今年のクリスマスはどうなってしまうのでしょうか?Little Mustapha達の元には彼らのリクエストしたプレゼントを持ったサンタはやって来るのでしょうか?

 あれから何も進展がないままLittle Mustapha達はいつものようにダラダラと飲み続け、ダラダラとした話をしていました。そして、いつものようにDr.ムスタファのスケベな発明の話と間違ったことわざが出てきたところで、Little Mustaphaがラジカセのスイッチを入れました。ラジカセからはプリンセス・ブラックホールの声が聞こえてきました。


ラジカセ-----「ただ今の曲はあたくしの最新シングル"ウィークリー・プリンセス"でしたのよ。一週間後にはステキなニューイヤーを迎えるはずなのですが、あたくしはみなさまとハッピー・ニューイヤーのご挨拶が出来るか心配ですわ。先程からお伝えしているとおり、街ではおかしなことが起きているんですの。ゾンビに人間が食べられてしまったり、不死身の殺人鬼がうろついていたり、吸血鬼がいたりして。ですからみなさまは外出を極力控えてくださいな。きっとあたくしのクリスマス特別企画を楽しみにしていた方達は家の中にいるでしょうし、無事だとは思いますけれど。好奇心で外に出てみたりしてはいけませんわよ。それから怪しい人がやってきてもドアを開けて中に招き入れたりも禁物ですわ」


Little Mustapha-----これでやっと街の様子が分かってもらえたかな?

ミドル・ムスタファ-----まあ、聞かないでもだいたい解ってましたけどね。

マイクロ・ムスタファ-----ちょっと待ってください!マイクロ・ムスタファが喋ります!

ニヒル・ムスタファ-----なんだそれ?

マイクロ・ムスタファ-----だってこう言わないと「キミいたのか!?」って言われてしまいますから。

Little Mustapha-----もう飽きたから、やらないつもりだったんだけどね。それで何だって言うの?

マイクロ・ムスタファ-----今年もいつものようにおかしなことが起きているんですが、これまでとは何かが違うとは思いませんか?

Dr.ムスタファ-----まあ、偽のLittle Mustaphaが出てきたりしたけどな。

マイクロ・ムスタファ-----それだけではありません。外で人間を襲っているのはこれまでに出てきた怪物ばかりだということに気付きませんか?私はこれによって何かとてつもない…

Little Mustapha-----多分、今年で最終回なんじゃないかな?それで、これまでの怪物と最終決戦ということなんじゃない?

一同(Little Mustapha除く)-----エーー!?

Little Mustapha-----いやいや、ウソだよ。サンタにプレゼントを貰うまでは最終回には出来ないからね。でもミニ・ムスタファがなんとなく言ってたけど、ボクとミニ・ムスタファが一緒に登場したことが問題なんじゃないか?みたいなことを言っていたような、いないような感じだったよ。

ミドル・ムスタファ-----何でそんなに曖昧なんですか?

Little Mustapha-----だって、ボクらにもハッキリしたことは解らないからね。それが解ったら始めからこんな面倒なことにはならないんだから。でも、なんというかボクとミニ・ムスタファは水と油というか、表と裏というか、右と左というか、アッチとコッチというか、一緒にいてはいけない関係なんだと思うんだけどね。それはともかく、ボクらはここで本物のサンタが来ることを信じて待つしかないんじゃない?

マイクロ・ムスタファ-----私はなんだか嫌な予感がします。


 最後のマイクロ・ムスタファの発言をLittle Mustapha達が聞いていたかは知りませんが、Little Mustapha達は今、別のことに気をとられていました。先程からLittle Mustaphaの部屋へ向かって何かが廊下を歩いてくる音がしていたのです。それは何か重たいものを引きずっているようにゆっくりと、歩くたびに全身の力を入れ直しているかのような足音でした。


ミドル・ムスタファ-----まさかゾンビサンタじゃないですか?

Little Mustapha-----それはないと思うけどね。それに、もしゾンビサンタでもボクらはもうすでにゾンビサンタがボクらを人間と認識出来る以上の酔い方をしているからダイジョブなんだなぁ!

ニヒル・ムスタファ-----その喋り方はなんか腹が立つからやめてくれよ!


 緊張感があるのかないのか解らない感じでLittle Mustapha達は部屋の扉を見守っていました。するとドアが開いてこう言いました。

「いやあ、遅れてすまんね。忘年会と重なってしまったもんだから」

そこにいたのはニコラス刑事でした。彼はサンタの格好をしている人を倒れないように抱きかかえていました。


ニヒル・ムスタファ-----「遅れてすまん」とか言っても、オレ達は呼んでないぜ。

ニコラス刑事-----まあ、そうかたいことは言わずに。毎年きてるんだから、今年も良いだろうということだよ。忘年会で飲み過ぎたから、家に帰るのが面倒になってね。それでよく考えたらここのほうが家よりも近いということが解ったから。

ミドル・ムスタファ-----それよりも、そのサンタみたいな人は誰ですか?寝てるんですか?

ニコラス刑事-----ああ、この人はねえ、この家の前に倒れてたから助けてあげたんだよ。警察の人間としてはその辺は放っておけないだろ。

ニヒル・ムスタファ-----まさかゾンビサンタじゃないだろうな?


 ニヒル・ムスタファが言うとサンタの格好をした人は顔を上げてしわがれた弱々しい声で話し始めました。

「私はゾンビなんかじゃない。正真正銘のサンタだ。キミ達の元へプレゼントを届けにきたのだが、怪力の殺人鬼にプレゼントを盗まれたり吸血鬼に噛み付かれたり、ゾンビに食べられそうになったりして…。こんな酷いクリスマスは初めてだ。だが心配せずともよいぞ。私は本物のサンタクロースだからゾンビに襲われてもヘンなものに感染してゾンビになったりはしないからな。オッホッホッホッ!」

今にも気を失いそうなサンタでしたが、最後にサンタらしい笑いを付け加えたところが少し痛々しい感じでした。

 ニコラス刑事はサンタを抱えたまま部屋の中に入ると、部屋の真ん中にサンタを寝かせました。Little Mustapha達は納得したかどうか解らないようなヘンな表情でサンタを見つめていました。


ミドル・ムスタファ-----なんだかプレゼントの入った袋を持ってなくて、気を失っているサンタさんは普通の人に見えてしまいますねえ。

ニヒル・ムスタファ-----それよりもニコラス刑事さんはどうしてこんなところにサンタさんを寝かせたんだよ。こんな重病人みたいなサンタさんを囲んで飲んでいたら、なんだかミョーな気分になるぜ。

ニコラス刑事-----だって、人が寝られるスペースはそこしかなかったんだから、しかたがないだろ。

Dr.ムスタファ-----ここは我々のプレゼントのために用意してあったスペースなんだがな。

Little Mustapha-----でもプレゼントの代わりに本物のサンタさんが寝てるんだったらそれでいいんじゃない?

ミドル・ムスタファ-----それでいいかどうかは知りませんが、そのサンタはホントに本物なんですか?

Little Mustapha-----わかんないけど、さっきは自分で本物のサンタだ、って言ってたし。それに寝ているから起きるまでは何も聞けないからね。まあ、ここはとりあえず寝ているサンタさんを肴に飲むしかないでしょ。

ミドル・ムスタファ-----というか、寝ているサンタさんじゃ肴になりませんよ!

Little Mustapha-----それもそうだけどね。でも他に何もないし、外に買い物に行くのは危険みたいだし。とにかく何かが起きるまでは飲んでいた方が良い、ということはこれまでの経験上わかっていることだしね。なんていうか「飲まなきゃやってられない」ということだね。

次のページへ