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#121 「NADA」 2008-12-20 (Sat)

 ジングルベルってなんだっけ?クリスマスってなんだろう?


 今年も何故かやって来てしまうクリスマスシーズン。そして、彼らだけが時間から取り残されない限り彼らのところにもクリスマスはやって来るのです。そして、今年の彼らはクリスマスを前にしたこの時期に、いつもとは違う感じでそわそわしなくてはならなくなりました。

 それは10月31日の「Little Mustapha's Black hole仮の開設記念日パーティー」での出来事でした。ブラック・ホールスタジオ(Little Mustaphaの部屋)にLittle MustaphaそっくりだけどLittle Mustaphaではない何者かが現れてブラック・ホールスタジオに居座ってしまったのです。そして本物のLittle Mustaphaはその後、ウィスキーのボトルとミネラルウォーターの入ったペットボトルを抱えてどこかへと行ってしまったのです。

 あれからブラック・ホールスタジオは、Little Mustaphaは、そして残された主要メンバー達はどうなってしまったのでしょうか?


*登場人物の詳細はCAST参照

 Little Mustaphaはあれからウィスキーとミネラルウォーターを交互に飲みながら歩き続けました。何日も何日も歩き続け、いつしか彼はドコデモナイの荒野をさまよっていました。ドコデモナイの荒野にはナンデモナイとナンニモナイがどこまでも広がっていて、そこはまるで死者の国のようでした。

 さらにドコデモナイの荒野を歩き続けると遥か彼方にナンデモナイとナンニモナイ以外の物がLittle Mustaphaの視界に入ってきました。酔っ払っているLittle Mustaphaは特に驚きも喜びもしないでそこに現れた物の方へフラフラと歩いていきました。

 ドコデモナイの荒野はいつでも夜みたいに空は真っ暗です。そしていくつかの星が見えても、それはあまり美しいものではありませんでした。そして空は夜なのに、なんにもない砂漠みたいな地面はいつでも薄暗い蛍光灯に照らされているみたいにこのドコデモナイの荒野を浮かび上がらせています。

 ドコデモナイの荒野では全てが輝きを失って、全てが干からびた植物のようにもろく色褪せています。Little Mustaphaの足音は誰かに聞かれる前にその音を失ってしまい、彼の歩く後にはなんでもない砂のような地面の上に付けられる足跡だけが残されていきます。その足跡もなんでもない風が吹くと砂が崩れて消されてしまい、そこにはナンニモナイだけが残るのでした。

 Little Mustaphaがドコデモナイの荒野の果てに現れた何かに向かって歩いていると、それは次第にその姿を明らかにしていきました。彼がそれを見付けて歩き出してから三日ほど経っているでしょうか?なにしろこのドコデモナイの荒野はいつでも夜なので、どれだけ時間が経ったのか解らなくなるのです。歩いていくうちに少しずつ大きく見えてくるそれはいつしかおんぼろな小屋のように見えてきました。そしてさらに歩いていくと、それはやっぱりおんぼろな小屋だったのです。

 Little Mustaphaはやっとのことでその小屋の前に辿り着きました。それはLittle Mustaphaがその小屋を小屋だと解らないぐらいの大きさで見付けた時から一週間が経った日のことでした。かれはボトルに残っている最後の一口のウィスキーを飲み込んでから、オエッという顔をしてペットボトルの水を飲みました。その水もそれが最後の一口でした。それから、Little Mustaphaは小屋の扉をノックしようと右手の甲のある方を前に向けて顔の横に上げました。するとその時、彼がノックしようとした扉が開きました。

 Little Mustaphaは扉を開けた人と目を合わせました。それから幽かに笑みを浮かべて「やあ!」と言いました。扉を開けた人はしばらく懐かしそうにLittle Mustaphaの顔を眺めてから「やっぱり来たね」と言ってLittle Mustaphaを小屋の中へ招き入れました。

 Little Mustaphaが小屋の中に入って扉を閉めるとドコデモナイの荒野には再び永遠に続く静寂が訪れました。

 その頃、偽のLittle Mustaphaがいるためブラック・ホールスタジオ(Little Mustaphaの部屋)には集まれない主要メンバー達は仕方なくド○ールコーヒーで緊急会議を開いていました。今回はマイクロ・ムスタファも来ていますが、彼が来ていることに他のメンバーが気付いているかは知りません。


ミドル・ムスタファ-----それは困りましたねえ。それじゃあ、あれから誰もLittle Mustaphaには連絡がとれていないんですね。

ニヒル・ムスタファ-----偽のLittle Mustaphaからはしょっちゅう電話がかかってくるけどな。サイトの更新に必要なパスワードを教えろって言われても、そんなものオレが知ってるワケないのに。

ミドル・ムスタファ-----それは私も一緒です。だいたいLittle Mustaphaは滅多なことで電話はかけませんからね。

Dr.ムスタファ-----それはつまり今Little Mustaphaの部屋にいるLittle Mustaphaは偽物ってことか?

ニヒル・ムスタファ-----ちょっと先生!今さら気付いたのかよ!

Dr.ムスタファ-----いや、薄々気付いてはいたんだがな。

ミドル・ムスタファ-----何度も言っているように、アレは偽のLittle Mustaphaですからね。まさかパスワードを教えたりはしてないですよね?

Dr.ムスタファ-----教えるもなにも、私はパスワードなんか知らんからな。一年経ってまた一年、ということだな。

ニヒル・ムスタファ-----今の発言に関しては何も言わないぜ。

ミドル・ムスタファ-----でも、それじゃあんまりですから解説してみますけど。本当は「一難去ってまた一難」というこの場で使うには間違ったことわざをさらに間違えて「一年経ってまた一年」と言ってしまった、ということですね。

ニヒル・ムスタファ-----解説したって特に面白くないぜ。それよりもどうするんだよ。今年のサンタへのリクエストの手紙はオレが責任者にされてんだぜ。これまでの経験でサンタの住所はほぼ確実だということは解ってるけど、ホントに手紙を出していいのか?このままLittle Mustaphaが帰ってこなかったら、なんだかまたヘンなことになりそうな気がするんだけどな。

ミドル・ムスタファ-----そうですね。本物のサンタがやって来ても、あの偽物のLittle Mustaphaが原因で今年もプレゼントは無し、とか。そんなのはもうコリゴリですよ。

Dr.ムスタファ-----だったらLittle Mustaphaを探せば良いじゃないか。

ニヒル・ムスタファ-----見つからないからこうやって集まってるんだぜ。

Dr.ムスタファ-----なんだ、そうなのか。

ミドル・ムスタファ-----今気付いたんですか?

Dr.ムスタファ-----いや、知ってたけどな。念のためだよ。

ニヒル・ムスタファ-----何に念を押してるんだよ?

マイクロ・ムスタファ-----みなさん、ちょっと待ってください!

ミドル・ムスタファ-----あれ?今何か言いました?

ニヒル・ムスタファ-----いや、言ってないぞ。

Dr.ムスタファ-----私も。

ミドル・ムスタファ-----なんだ、空耳か。

マイクロ・ムスタファ-----ちょっと、いい加減にそれはやめてくださいよ!私は私が死人みたいな気がしてくるから、そんなネタはやめてください!

ミドル・ムスタファ-----ああ、これは失礼しました。でも久しぶりだからちょっと大げさにしないといけないと思って。

マイクロ・ムスタファ-----そんなことはどうでもいいですけど。この事態について考えていたら私は以前に私の書いた「不在の季節」という小説を思い出しました。その小説の中で主人公の井留須屁端(イルスヘバタ)は他人になりすまして他人の家で生活をはじめることによって…

一同(マイクロ・ムスタファ除く)-----何かとてつもない!

マイクロ・ムスタファ-----ちょっと、そこは私が言うことになっていたでしょ。その後にあなた方が話を遮るのがルールだったはずですよ!

ニヒル・ムスタファ-----そんなルールは誰も決めてないのさ。

Dr.ムスタファ-----それよりも、イルスヘバタっていうのは苗字なのか、それともフルネームなのか?

ミドル・ムスタファ-----そこは気にしなくても良いと思いますけどね。とにかくサンタへの手紙を書くか書かないかを決めましょう。

ニヒル・ムスタファ-----そうだな。それじゃここは多数決で。サンタへの手紙を出した方が良いと思う人は挙手!…はい。満場一致でサンタへの手紙を出すことに決定いたしました。

マイクロ・ムスタファ-----ちょっと!私は手を上げてませんよ!

Dr.ムスタファ-----いずれにしても多数決で決定だよ。

マイクロ・ムスタファ-----そうじゃなくて、Little Mustaphaのことは心配じゃないんですか?


 Little Mustaphaがいてもいなくても、何を話しているか解らなくなる主要メンバーですが、どうやら今年もサンタへプレゼントのリクエストの手紙を送るようです。マイクロ・ムスタファは納得がいかないようでしたが、手紙を書く時にはちゃんと自分のリクエストも書き加えてもらったようです。

 ドコデモナイの荒野の小屋の中に入るとそこでは外と違って少しだけ生気が感じられました。小屋の中にいた男はLittle Mustaphaの座っている前の机の上に、ナンデモナイ原料から作ったウィスキーのボトルとナンニモナイ場所に湧き出ている水の入ったペットボトルを置きました。そして嬉しいことにコップも用意されていました。Little Mustaphaは嬉しそうにウィスキーの水割りを作って飲みました。

「どうしてこうも違うんだろうねえ?ストレートのウィスキーと水を交互に飲むのと、最初から水で割って飲むのではまったく違うよね」

小屋の中にいた男は軽く微笑んでからLittle Mustaphaと同じように水割りを作って飲み始めました。

「私はずっとキミのことを監視していたんだ。だからキミが水割りの方が好きだということもちゃんと知っていたんだよ」

「調子にのるとガブガブしてしまうから困るんだけどね。そんなことよりも、ここに来たワケを話さないといけないよね」

Little Mustaphaはそう言いましたが、ここにいる男はもうすでに彼が来たワケを知っているはずだと思っていました。そして予想どおり彼は知っていました。

「例の偽物の件だね。私は彼があんな風になるとは思っていなかったけどね。彼を放っておけばきっとそのうちLittle Mustapha's Black holeは乗っ取られてしまうだろうね。私がするよりも先にね。私が乗っ取ろうとするサイトが何者かの手によってつまらない一般的なサイトに変わってしまっては困るからね」

「そうなんだよねえ。あの偽物は厄介だよ。自分がDirector N.T.だということを忘れてホントにボクだと思いこんでるんだ」

どうやら今Little Mustaphaの部屋にいる偽Little Mustaphaの正体はDirector N.T.だったようです。しかし、どうしてLittle Mustaphaはそれを知りながら気付かないふりをしていたのでしょうか?そして、彼が話しているこの小屋の男はいったい誰なのでしょうか?

「私がキミのLittle Mustapha's Black holeを乗っ取ろうとしているのを知っていて、それでもキミは私のところにやって来て助けを求めているんだから、協力すればそれなりのことはしてくれるんだろ?」

「まあ、そうなんだよねえ。色々考えてもみたけど、今回だけはあらゆる偶然に頼って問題解決が出来そうにないからね。協力して欲しいんだよ。とりあえずキミのコーナーを復活されることで手を打たないか?Mini Mustapha's Mini Mini Blackhole で寂しくなったSideShowを盛り上げて欲しいんだよ」

なんと、この小屋にいたのは長い間Little Mustapha's Black holeから姿を消していたミニ・ムスタファだったのです。Little Mustapha's Black holeを乗っ取ろうと密かに自分のコーナーを作っていたミニ・ムスタファはサイトのバージョンアップとともにいなくなっていたのでした。彼はその後ドコデモナイの荒野をさまよい続けこの小屋を見付けると、ここでずっとLittle Mustapha's Black holeを監視していたのでした。そして乗っ取りのチャンスをうかがっていたのです。

「それだけでは協力は出来ないな」

ミニ・ムスタファがそう言うとLittle Mustaphaは少し慌てました。

「それだけじゃダメなの?主役の座は渡さないからね」

そう言うと思っていたミニ・ムスタファは怪しい微笑みを浮かべて言いました。

「それはまたいつかにするとして、もう一人復活させて欲しい人がいるんだよね」

ミニ・ムスタファが言うと、隣の部屋へとつづく扉が開きました。灯りの点いていない隣の部屋は真っ暗で、そこには誰もいないと思われました。しかし、扉の向こうに見える暗闇から影だけが彼らのいる明るい部屋にヌゥっと入ってきました。その影は部屋の灯りに照らされてその姿をあきらかにしました。

「やあ!ボクはブラック・ホール君なんだなぁ!」

Little Mustaphaは思わず口に入れたウィスキーの水割りを吹き出しました。誕生してすぐに行方不明になっていたブラック・ホール君がいきなり現れたのですから無理もありません。

「どうしてキミがここに?!」

Little Mustaphaが驚いているとミニ・ムスタファが説明をはじめました。

「私がここに来る途中に多摩川で溺れているブラック・ホール君を見付けて助けてあげたんだよ。そして、お互いの境遇に共感しあった私達はこの小屋で一緒に復活の日を待っていたんだ。ブラック・ホール君はブログがやりたいって言ってるよ」

「それはちょっと困るんだけどね。ブログとなるとボクにかかる負担が色々とね…」

Little Mustaphaがあきらかに動揺しているのを見てミニ・ムスタファは少し嬉しそうでした。

「冗談に気付かないところは相変わらずだな。ブラック・ホール君が私のコーナーでアシスタントとして登場しても問題ないのならキミに協力しても良いのだが」

Little Mustaphaは少し安心しました。

「なんだ、それなら大丈夫だよ。これまでだってブラック・ホール君ナシでやってきたんだからね。それじゃあ、そろそろ偽Little Mustaphaのことについて話そうか…」


 Little Mustaphaに対して深い恨みを抱いていたはずのミニ・ムスタファですが、ここで彼らは一時的に協力関係になったようです。もしかすると彼らの間にそれ以上のものがあるのかも知れませんが。

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