「HANAKO」

1. 五年前・千葉県郊外・怪しい研究所

 「キミ、人間の意志というのはどこに宿っていると思うかね?」

白衣を着た科学者らしき男が助手らしき男に話しかけた。

「それは、博士、脳に決まっているでしょう」

「そう言いきれるか?あの子の脳には何にもなかったはずだ。意志は私たちの手で与えてやるはずだったろう」

「そうですけど博士、あれはまだ試作品の段階ですから、私たちが気付かないミスがあったのかも知れませんよ」

この二人の怪しい会話が交わされているこの怪しい研究所の研究室には、チューブでつながれた大小様々なフラスコや試験管やビーカーが雑然と並べられている。その中には赤、青、黄色といったこれまた怪しい色の付いた液体が入っている。さらにその液体はぶくぶくと泡立ち、割れる泡からは煙が出て、これでもかと念を押したような怪しさを醸し出している。この薄暗い研究室で二人の怪しい会話はまだ続く。

「私はねえ、人の意志というのは脳以外の細胞の一つ一つに宿っていると思うんだよ。たとえばトカゲのしっぽを見れば解るだろ。あれは体から切り離されても動き続けてる。それは、切り離されたしっぽにも意志があって、何とか逃げようともがき続けているんじゃないかと思うんだが」

「博士、本当にそんなこといってるんですか?もしトカゲが意志といわれるほどのものを持つほど高等な動物ならともかく、トカゲというのはほとんど刺激に対する反応だけで動いているんですよ。しっぽが動くのも外界からの刺激にしっぽの筋肉が反応してるだけじゃないですか?」

「刺激に反応しているのは私ら人間だって変わらないだろ。ただし人間の場合、外界からの刺激には思考というフィルターを通してから反応が行われるわけだが。この思考というのも刺激がなければ機能しない。つまり人間がものを考えるのは外界からの刺激があるからなんだよ。そして、刺激というのは体のどの部分でも受けることが出来る。それが神経を伝わって脳に送られ、脳からその刺激に対する反応が返される。そのやりとりの過程で刺激と反応は体中を通っていて各細胞はそこで何が起こっているのかを知るわけだ。刺激に対する反応を意志というなら、各細胞も意志を持ちうると言えるんじゃないのか?」

「詭弁じみてますけどねえ。ボクには良く解りませんよ」

科学者風の男はしばらく黙って何か考えてからまた口を開いた。

「臓器移植で拒絶反応が出ることがあるだろう。あれはきっと移植される側と臓器を提供した人間の意志の不一致によって起きてると言えるな。細胞同士で意見が合わないんだ。もしその二人が一緒に話をしたとしたら絶対に意見が分かれると思うよ」

この話を聞いた助手らしき男はしかめ面をしていたが、なんとか口元だけでは笑って見せた。

「博士、それは冗談なんですか?まあ、どっちにしても僕等の専門はそんな事じゃないんですから」

二人は黙って研究を再開した。アブクをたてているカラフルな液体が何なのかは知らないが、きっと怪しいことを研究しているに決まっている。そして、そんな研究はほとんど成果をあげることなどないのだ。科学者らしき男はそんな研究も熱心に続けているのだが、助手の方はもうだいぶ飽きているようだ。先ほどから何度も時計に目をやっては早く帰りたいような感じである。何度も同じ失敗ばかり繰り返す実験装置を見飽きてしまった助手は、装置から目を離して部屋の中を眺めていた。彼は部屋の扉の外に小さな女の子の姿を見つけた。女の子はガラス張りの扉に両手を当てて二人の様子を見ている。助手はその姿を見ると、にこっと笑ってその女の子に手を振った。女の子はそれを見ると嬉しそうに笑いながら廊下を逃げるように走っていった。

「いいなあ、子供は・・・」

「おい、キミ。ちゃんと記録をとってないとダメじゃないか!」

「ああ、すいません博士。それにしてもこんな実験が成功するんですかねえ。人間が一生かかって消費するエネルギーなんて。いっそのことプルトニウムとか使ったらどうなんです?」

「馬鹿なことをいうな。それにあの子を見れば解るだろう。我々の仕事はもうすぐ完成するんだ。ほら、次の実験に取りかかるからちゃんと記録をとるんだ」

科学者はそう言うと、ビーカーを取り上げて中の青い液体をフラスコの中に注いだ。フラスコに注がれた青い液体はゴム管を伝わって緑の液体の入った隣のフラスコに流れていく。緑の液体は青い液体と反応して黄色に変わった。その黄色い液体がまた隣のフラスコへと流れていく。

 この様子を見ていた二人の顔色が変わった。

「博士!すごいですよ!」

「解ってる。黙ってみていろ!」

二人は流れる液体を期待を込めて見守っている。

 隣のフラスコには赤い液体が入っている。ゴム管の中をゆっくりと流れていく黄色い液体の様子が、蛍光灯の光を通してよく見える。黄色い液体が徐々に赤い液体の入ったフラスコに近づいて行き、最初の一滴が赤い液体の中に落ちていった。そして、二つの液体が合わさった瞬間、それは大爆発を起こした。

ボッカーン!

2. 現在・F.B.l.(エフ・ビー・エル)ペケファイルの部屋

 モルダアは浮かない顔をして、自分の鞄の中身を整理している。普段からあまりぱっとしない表情なのだが、今日はいつにもまして、表情が暗い。鞄の整理はする必要はないのにやっている。モルダアはただこの部屋から出たくないがために、何かをしているふりをしているのだ。「あーあ、今日は部屋で寝てれば良かった。日曜だっていうのに出勤したあげくにこんなことになるなんて」彼の頭の中では先ほどから何度もこのフレーズが繰り返されている。

 そんな中、バタンと大きな音を立てて部屋の扉が開いたと思うとスケアリーが入ってきた。

「ちょいとモルダア!まだこんなところにいらしたの?早くしないとみなさまお待ちかねですのよ」

「今回はきみ一人で行ってくれないなかなあ。ボクはなんだか気分が悪いんだ」

「あらいやだ。あなたは少女の変死体と聞いておじけづいてるんじゃございません?でも大丈夫ですのよ。調べてみたら、変死体じゃなくて『変な』死体、らしいですわよ」

モルダアは死体が怖いのである。本当に、これでよく捜査官なんかになれたものである。

「変な死体?それってどんなふうなの?」

「さあ、知りませんわ。でもきっととっても変なんだと思いますわ」

変死体ではなく変な死体。これを聞いてなぜかモルダアは興味を示し始めた。死体は怖いが変な死体なら見てみたい、ということなのだろうか。

 二人は少女の「変な」死体が発見された現場へ向かった。

3. 事件現場・都内・普通の小学校

 モルダアとスケアリーは事件現場の小学校に着くまでに何人もの警察官を見た。小学校で死体が発見されたとあっては、警察も付近の住人も神経質にならざるを得ない。二人を乗せた車が警官たちの間をすり抜けていく。

「犯人はやっぱり異常者かしら?」

スケアリーがモルダアに聞いた。

「さあね。それにまだ殺人と決まった訳じゃないだろ。何しろ変な死体というくらいだから」

「なんだかあなたにまともな質問をすると、損をした気分になりますわ」

「それ、どういう事?」

「どうでもいいですわ。それよりも、あたくしは今回の事件の内容が気になりますわ。少女の死体が出てくるなんて、きっとエログロな内容に決まっていますわ。そりゃ、あなたのような人にはお似合いかも知れませんけど、あたくしのイメージが心配ですわ。それに、そんなものを文章にして発表したらきっと作者様の人格も疑われてしまうかも知れませんわ」

「作者とかいう言葉を出すとまた前回みたいに夢だったことになっちゃうぞ。それに、僕等が呼ばれるぐらいの事件だから、普通の異常者は出てこないよ。つまり異常すぎてどこが異常なのか解らないような異常者がね」

お二人さん、心配してくれてありがとう。でも今回はちゃんと話は考えてあるから大丈夫。

 モルダアとスケアリーが到着したのは、ちょうどシートにくるまれた遺体が運び出される時だった。スケアリーはこれを見ると、死体を運んでいる二人の警官に駆け寄って行った。

「ちょいと、困りますわ。あたくしたちが到着する前に死体を動かすなんて。いったいどなたの指図ですの?」

警官は少し驚いていたが、一人の警官がスケアリーに言った。

「何ですかあなた方は?ここは立ち入り禁止ですよ」

「我々はF.B.l.の優秀な捜査官。モルダアとスケアリーだ」

代わりにモルダアが答える。これを聞いた警官の一人は、何か嫌なことを思い出したような表情をして「ああ」とつぶやいてからこう続けた。

「誰でもいいですけど、もう検分は十分にやりましたし、何しろ臭いんですよ。この遺体」

なるほど、確かにこの辺りには先ほどから何かが臭っている。

「そんな理由で、あたくしが到着する前に遺体を発見現場から動かすのは許せませんわ!」

スケアリーは死体の横たわる薄暗い事件現場を見てみたかったに違いない。一方、モルダアは遺体が運び出されてほっとしているようだ。これで、遺体を見なくてすむ。

「まあ、いいじゃないか。重要なのは遺体だけじゃないんだから」

モルダアの言葉を聞いた警官は、モルダアを話のわかる人だと勘違いしたらしい。

「すいませんねえ、F.B.l.のお二人さん。でもここで良ければ遺体を見ていってください」

警官は遺体の乗った担架をおろして、シートをめくった。スケアリーは興味深そうに担架を覗き込んだ。モルダアもそうするしかほかにない。遺体を怖がっているなんてこの警官に知られたら、優秀な捜査官の面目丸潰れ。しかし、モルダアはこういう時の対策はちゃんと考えてある。顔は担架の方に向けられていたが、目線は全く違う方を向いている。二人はそれそれ違うものを見ているはずなのに、二人ともほぼ同時に驚きの声を漏らした。

「この遺体は本当に人間の遺体なんですの?これではなんて言うか・・・」

「人形みたいでしょ」警官が後を続けた。「私も何度か遺体は見たことがありますけど、こんなきれいなのは初めてですよ。傷もなければ、腐敗も始まっていない。それに顔色も生きている人間と変わらない。死亡時刻と気温を考えたらあり得ないことですよ」

 二人のこの会話はモルダアには少しも届いていない。モルダアの視線は一点に釘付けになったまま動かない。モルダアはいったい何を見て驚いたのだろうか?モルダアの視線をたどっていくとそこには一人の女性がいる。というより女性の胸が、とてつもなく巨大な胸がモルダアの視線の先にあった。モルダアの様子がおかしいことに気付いたスケアリーもモルダアの見ている方を見た。

「まあ!凄い!」

さすがのスケアリーもその女性の胸の大きさに驚いたようだ。

「あの女性は誰ですか?」

モルダアが警官に聞いた。

「ああ、あの人。凄いでしょ?あの人は死体の第一発見者で名前は谷間多・溶子(タニマダ・ヨウコ)というらしいです。以前この学校で教師をしていたらしいんですがね。なんでも昔が懐かしくなって、たまたまここに来てみたら死体を見つけたとか言うことですよ」

「へえ、タニマさんですか」

「いやいや、タニマダですよ」

「それより、現場はどこですの?」

「女子トイレですよ」

警官は遺体にシーツをかぶせて運んでいった。タニマダ先生のおかげでモルダアはとりあえず遺体を直視するという危機を乗り越えた。

4. 女子トイレ

 「おかしいなあ」

この死体発見現場に入ってきた時からモルダアはこの言葉を繰り返している。

「いったい何がおかしいというんですの?」

「ここ、トイレだよねえ。だけど、なんだかおかしいんだよ」

モルダアの少女的第六感が働きだしたのだろうか?いやいや、そうではない。モルダアはトイレなのにアサガオが並んでいないことをおかしいと言っているのだ。確かに男子トイレに慣れている人にとっては女子トイレの光景はどこかおかしな印象を与えるものである。そんなことはどうでもいいのだが・・・。

「あたくしが見た限りでは、特に変わった様子はありませんわ」

スケアリーが中を見渡してから口を開いた。死体のあった場所にはテープが貼ってあり発見された時の死体の輪郭をかたどってある。死体は一番奥の個室から体半分を出した形で横たわっていたようだ。

 モルダアは何も言わずに女子トイレの中を歩き回って窓や床を調べていた。

「ちょっと、あなた達は何ですか!?ここは立ち入り禁止ですよ」

女子トイレにスーツを着た刑事風の男が入ってきた。かなり苛立っているようである。

「あら、失礼いたしましたわ。あたくしたちはF.B.l.のスケアリーと変態モルダアですのよ」

「ああ」

この男も何か嫌なことを思い出したような表情で言った。

「本当はあなた達の力など借りたくなかったのですけどねえ。上の命令だから。それで犯人は誰なんです?あんた達のことだからもう解ったんだろう?」

この刑事風の男はかなり挑戦的な態度で二人に言った。

「まだ、事件と決まった訳じゃありませんよ」モルダアが答える。

「死体の様子からも、ここの状況からみても、あの少女が誰かに殺されたとは思えないんだ」

「あなた、死体なんか見ていらっしゃらなかったじゃないの。良くそんなことが言えますわ」

「死体の様子はキミ達が実況してくれたじゃないか。それに、ここを見てみろよ。刑事さん、昨日はこの辺も雨が降っていましたよねえ?」

「まあ、そうだが、それがどうした」

刑事風の男はいたって無愛想である。モルダアは後を続ける。

「ここには一人の足跡しかないんだ」

トイレの床には泥で汚れた靴で付けたと思われる足跡があった。それは大人の足跡としては小さすぎ、明らかにあの少女のものである。足跡はトイレの入り口からまっすぐに死体が横たわっていた場所まで続いている。

「つまり、少女はここまで歩いてきた、ということになるよねえ。もし犯人と一緒に来てここで殺されたと言うんなら、どうして犯人だけ下駄箱で靴を脱いだんだ?ということになる。或いはここにやってきた少女を犯人が待ち伏せして殺害したということも考えられるけど、それでもおかしいことがあるんだ。学校に入る時には上履きに履き替えるというのは小学生なら誰でも知っているはずなのに、泥の付いた靴の足跡があるというのはどういうことなんだろう。なんだか解らないことがたくさんですよ」

モルダアはそう言いながら辺りを見回して、他に何か怪しいところはないか調べているようだった。

「ところであの少女の持ち物とかはなかったの?」

モルダアが刑事風の男に聞いた。

「帽子とランドセルがあったけど、今鑑識で調べてるとこだよ。きっと今頃犯人断定の手掛かりを見つけているところだろうけど」

この刑事風の男はモルダアの言うことをまるで信じていない。それにしても、モルダアは意外と鋭い推理をしているようだ。やはり、少女的第六感が働いているのだろうか?

「それと、もう一つ解らないことがあるんですけどねえ。どうしてここにはアサガオが並んでないんだろう?スケアリーは気にならなかった?」

やっぱりダメみたいだ。

5. 校庭

「タニマダさん。我々はF.B.l.の者ですが、少しお話を聞かせてもらえませんか?」

モルダアに呼び止められたタニマダ先生は、F.B.l.と聞いても何のことだか良く解らなかったが、モルダアが手帳を手に持って見せているのできっと警察の関係者だろうと思って、二人の質問に答えることにした。私もF.B.l.って何なのか未だに解らないのだが、そのうち明らかになるでしょう。どうして、最初に決めておかないんだ、という感じですが面倒なことは後回しです。それよりも話を続けましょう。

「タニマダさん。どうしてあなたはここに来たんですか?」

「さっきも警察の方に話しましたけど、私は以前ここで教師をしていたんです。私が教師になって最初に来たのがこの学校なんです。それに家も近くにあるので休日にはよくこの学校に遊びに来るんです」

こんな質問はもう何度となく警察に聞かれているのだがタニマダ先生はモルダアの質問少しも腹を立てずに答えている。小学校の教師というのは子供のする意味のない質問に答えるのには慣れているのである。この場合も同じだったのであろう。

「そうですか。でもどうしてトイレに入ったんですか?」

「トイレに入るのに特別な理由が必要なんですか?」

これにはタニマダ先生もちょっとムッとした。それにしてもモルダアはどうしてこんな質問をするのだろうか?きっとモルダアは今何も考えていない。モルダアの視線は、タニマダ先生に声をかけて彼女が振り向いた時からずっと彼女の巨大な胸に釘付けになっているのである。タニマダ先生の胸は、どちらかというとやせている部類に入る彼女の体つきには全く不釣り合いな感じである。その胸はブラウスのボタンを上から二つあけて着ていてもまだ苦しそうにして、三つ目のボタンをはじき飛ばしそうな勢いである。こんな胸を見てモルダアは何も考えられるはずはない。スケアリーはそんなモルダアの様子を眉間にしわを寄せて見ていたが、モルダアの思考が停止していると解るとモルダアの代わりにタニマダ先生に質問をした。

「あの少女が誰だか解りませんでした?この学校に勤務していらしたなら、もしかして顔を知っていませんでした?」

「さあ・・・私がいたのは五年前ですし。私が担任をしていたクラスの生徒ならともかく、それ以外の生徒のことまではよく覚えてないんです。それにあの子、特徴のない感じだったでしょう。亡くなった方にこんなことを言うのは良くないことかも知れませんが。なんて言うか、どこにでもいる顔っていうのかしら」

どこにでもいる顔と言ったらタニマダ先生も負けてはいない。その胸を除けばタニマダ先生はどこにでもいる人なのである。こういうのは良くないかも知れませんが、少しも可愛くないし、美人でもないのである。

「そうですか。良く解りました」

スケアリーのした質問への答えなのにモルダアが対応している。視線はまだタニマダ先生の胸に注がれている。

「それでは、後でまた何か聞かれるかも知れませんから、この後は警察の指示に従うようにしてください」

モルダアはまるでタニマダ先生の胸に話しているように見える。スケアリーはこのモルダアの態度が気に入らないようである。モルダアはスケアリーに対しては一度もこのような反応は示さなかったのだから、タニマダ先生に少なからず嫉妬心を覚えているのかも知れない。

「モルダア。話は人の目を見てするものですわよ」

タニマダ先生がいなくなるとスケアリーがモルダアに言った。

「ボクは変な好奇心であの胸を見ていたんじゃないよ。あれは生物学的な興味からだよ。それにボクは胸には特にこだわっていないんだ」

生物学的な興味とは何とも微妙な返事である。私がエッチなビデオを見るのは生物学的な興味からだ、と言ってもあなたは信じます?まあ、とっさの言い訳としては上出来な感じです。

「まあ、どうでもいいですけど、あたくしはあの少女の変な死体を切り刻んできますから、このへんで失礼いたしますわ」

こういうとスケアリーは二人が乗ってきた車に一人で乗って死体の運ばれた病院へと向かっていった。車が無くなって、モルダアは身動きがとれなくなったことに気付いた。

「どうしよう?・・・まあいいか。特にすることもないし」

モルダアは何かを考えるふりをしながら校庭をぶらぶら歩くことにした。