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#038 「Black-holic Special ---Peke Santa---(後編)」 2004-12-18 (Sat)

後半は更に長いため9ページにわけました。付き合いきれんわ!


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事件現場


 モオルダアとスケアリーがパトカーの後部座席に座っているサンタの恰好をした男に声をかけた。

「サンタさん。我々はエフ・ビー・エルのモオルダアとスケアリーです。少しお話を聞かせてもらいたいのですが」

モオルダアがサンタの恰好をした男に声をかけると、男はニコニコしながら二人の方を見た。

「なんだねキミ達は。警察じゃないのか?わしは何もしていないんだよ。頼むから放してくれんかのう?今年はわしの仕事が少なくて暇だから、この公園で暇つぶししてただけなんじゃよ。それなのに警察はわしを犯人扱いじゃ」

「そりゃあ、本物の銃を持っていれば捕まるのは当たり前ですのよ。それよりもあなた、その付け髭はとったらどうなんですの?」

スケアリーはこのサンタの恰好をした男を疑っているようだ。しかし、モオルダアはそうでもない。

「スケアリー、これは付け髭じゃなくて本物の髭だよ」

そういうとモオルダアは男のもじゃもじゃ生えた髭をぐいと引っ張った。

「こら、若僧!何をする。わしの大事な髭を!」

サンタの恰好をした男がモオルダアを怒鳴りつけた。モオルダアはビックリしてつかんでいた髭を放した。

「ああ、これは失礼。あなたはこんな髭まではやして、もしかしてプロのサンタさんですか?」

「サンタにプロもアマチュアもない。あるのは本物と偽物だけじゃ」

「どうでもいいですけど、あなたはどうして銃なんか持っていたんですの?これだけでも十分に犯罪ですから、あなたは相当の刑罰を受けることになりますわ。それにここで三十人を殺したのがあなたということなら、あなたは死ぬまで刑務所ということですわよ」

クリスマスだというのに仕事にかり出されたスケアリーはかなりカリカリしているようだ。誰でもいいから犯人にして早く帰りたい。そんな感じだ。

「お嬢さん。この銃は護身用に持っているんじゃよ。二年前のクリスマスに変なやつらに襲われてね。それ以来、いつでも銃は持ち歩いているんじゃよ。それよりも、キミ達はわしの見たことを聞きに来たんじゃないのか?」

そうでした。このサンタのおじさんは容疑者になる前は目撃者だったのですから。

「そうですよ。サンタさん。あなたが見たことを教えてください。ここの公園で何があったんですか?」

「ほう、キミはわしのことをサンタと呼んでくれるんじゃな。けっこうなことだ。それじゃあ、話してやるとするかな。・・・」


 わしは今年も子供達にプレゼントを配るためにはるばるやってきたんじゃが、何しろ今年は渡すプレゼントがたったの一つしかなかったんじゃ。ゆっくり来たつもりだったんじゃが、それでも着くのが早すぎてしまってな。それでこの公園で暇つぶしということになったんだ。わしの他にも若いもんが沢山いたね。それにしても最近の若いもんというのはクリスマスだというのにベタベタ、ベタベタ。いつの間にかクリスマスは子供達のものから大人のものになっちまったのかいなあ?まあ、そんなことはどうでもいいかのう。

 それで、わしが特に何をするでもなくベンチに座ってボーっとしてるとな、わしの座っているベンチから芝生を挟んだ反対側のベンチのほうから悲鳴が聞こえてきたんじゃ。悲鳴といってもそれはすぐに止んでしまったがな。アッという間にその悲鳴をあげた人は殺されちまったようだ。

 わしが見るとそこには、まあ二メートル以上はありそうな大男の姿があったんじゃよ。おかしなことにな、その大男はわしと同じような恰好をしてたんじゃ。それは、こんな風に赤と白の生地で作られた服をな。

 大男は最初に悲鳴が聞こえた場所から隣のベンチに移ったんじゃ。そこには若い男女がいたんじゃが、さっき隣のベンチで起こったことを見て、すっかり怯えていたようでね。二人ともガタガタ震えながら動けなかったようなんじゃ。腰が抜けたというのはああいう状態なんじゃな。二人は大男が自分たちの前にやって来るのをじっと見守っていた。

 大男は二人の前に来るとなんだか訳の解らないことを聞いてたなあ。たしか「ここにLittle Mustaphaはいるか?」とか、そんなことを聞いておった。大男を前にした二人はその質問を聞いていたのか、怖くて何も解らなかったのか知らないが黙って大男のほうを見ていたんじゃ。すると、大男は顔色一つ変えずに腕を上げると男のほうの髪の毛をつかんで男の頭を引き抜いちまったんじゃ。それから、隣の女に向かってこういったんじゃ。「なぜだ、なぜ笑わない?」ってな。女が黙っていると大男は引き抜いた男の頭で女のほうを殴ったんじゃ。それで女のほうも倒れたきり動かなくなっちまった。

 それからは、公園は大パニックじゃったよ。公園のベンチでちちくりあっていた男女達は、この恐ろしい大男に気付いて公園中を逃げ回っていたんじゃがな、大男はまるでそいつらがどこに逃げるかを知っているかのようにヤツらの先に待ちかまえているんじゃ。それからはさっきと同じじゃよ。大男が「ここにLittle Mustaphaはいるのか?」と聞いて、答えられない相手を次々に殺していったんじゃ。そりゃあ、恐ろしい光景じゃったよ。


 サンタの恰好をした男はこのように話していたが、モオルダアには一つ腑に落ちないことがあった。

「どうして、あなただけ助かったんですか?もしかして、女の人といちゃついてなかったから助かったの?」

モオルダアが言っているのはどっかの映画にでてきた「ホラー映画のセオリー」だ。

「なんだ、若僧。キミはわしのことをサンタさんと呼ぶから解っていたのかと思ったけどな。わしは本物のサンタなのじゃよ。サンタは普通の人間と違うからあんな殺人マシーンと化した大男なんかに殺されないんじゃ」

「えっ、ホントに。あなたがサンタさんなんですか?」

モオルダアが驚いているとスケアリーがモオルダアを引っ張ってパトカーから遠ざけた。

「ちょいと、モオルダア。あんな怪しい方の言うことを信じるんですの?あんなのB級ホラーを見すぎた人の作り話ですわ」

「おっ、キミはあの話を聞いてB級ホラーだと思ったのか?キミもけっこうなホラー好きじゃないか。・・・まあ、話自体はそんな感じではあるけどね。でも、この事件現場の状況から判断すると、ここではB級ホラーのような殺人事件が起きたとしか思えないんだけどね」

「確かにそうですけども、これを見てくださらない?」

スケアリーはサンタの恰好をした男の持っていた白い袋からモンチッチの人形を取り出した。

「なんだこれ?これが今年の唯一のプレゼント?なんでこんなものを?ボクだったら迷わずPSPだけどね」

「そうでございましょう?今時、クリスマスのプレゼントにモンチッチはありませんわ。あたくしが思うにあのサンタの恰好をした男は妄想癖があるんですわ。きっと自分のことをサンタクロースだと思いこんで・・・」

「でも、さっきの話までも妄想だとは言えないだろう?」

スケアリーはモオルダアに反論する代わりに、サンタの所へ行って質問をした。

「ちょいとあなた。このモンチッチですけど、これは誰にプレゼントするつもりでしたの?」

「ああ、それか。それは吉男君へのプレゼントじゃ。本当はPSPが欲しいとか書いてあったんじゃがのう。わしの考えではPSPなんてものは子供には有害なものじゃからな。モンチッチにしたわけだよ。オーホッホッ」

サンタの恰好をした男はなぜかここでサンタ笑いをあげた。スケアリーはあきれて振り返った。

「モオルダア、これはあなたへのプレゼントみたいですわ」

そういうとスケアリーはモオルダアにモンチッチを渡してスタスタとパトカーのそばから離れていった。そのあとをモオルダアがモンチッチを手にして追いかける。

「ねえ、スケアリー。いったいどうしたんだ?」

スケアリーは始め何も答えなかったが、モオルダアがしつこく聞いていると彼に言った。

「あたくし本当に腹が立ってきましたから、あたくしが犯人を捕まえてしまいますわ。きっとここの殺人犯とサンタの手紙を盗んだ犯人は同一人物に違いありませんから」

スケアリーは何に腹を立てているのか、モオルダアにはまったく解らなかったが、多分スケアリーは早く帰りたいだけのようだ。

「捕まえるって、いったい誰を捕まえるんだ?」

「あの大男に決まってるでしょ。あなたもそれがお望みなんでしょ?ジェイソンみたいな大男を追いかけるのが」

「それは、それで面白いけどね。ボクはあのサンタが何かもっと重要なことを知っているような気がするんだよ」

「それなら、あなたはあのサンタとホラー話で盛り上がっていればいいんですわ。あたくしは、あたくしのやり方で事件を片づけてしまいますから」

スケアリーは車に乗り込むとどこかへ行ってしまった。まさか帰っちゃったのか?モオルダアは少し不安になっていた。


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