その時、モオルダアとスケアリーは・・・。
Little Mustaphaの家の前までやって来た二人は、家のドアが壊されているのを見つけて急いで家の前まで走ってきた。
「手遅れだったのかしら」
スケアリーが銃を取り出してからモオルダアに言った。モオルダアも彼のモデルガンを取り出して答えた。(どうしてスケアリーが本物の銃を持っていてモオルダアがモデルガンなのかは'the Peke Files'本編を読んでくれたまえ)
「さあ。彼らがどこかに避難してくれていればいいんだけど」
二人がゆっくりと家に近づくと、彼らの頭上がパッと明るくなった。二人が驚いて上を見上げると、Little Mustaphaの家の上空に老人が浮かんでいた。
「モオルダア。何ですのあれは。あの方は隠しているつもりでしょうけど、ここからでは丸見えですわ」
モオルダアがその老人を見ながら答えた。
「ああ、そうだねえ。見事な横チン。いや、下チンだな」
そう言っている間に光に包まれた老人は空高く舞い上がってそのうちに見えなくなってしまった。辺りには夜の静寂が戻ってきたようだった。二人は黙って銃とモデルガンをしまった。
「あれはいったい何なんですの?」
スケアリーが聞いた。モオルダアもなんだか良く解らなかったが、何か言わないといけない感じだ。
「あれはきっと本物のサンタかも知れないね。でも夜空に発行物体が現れてそれが瞬く間に消えてしまう時には、大抵ボクらの捜査は謎のまま終わるんだよ。あとはファンが勝手に想像するしかないんだよね」
「ファンって、いったい何のことですの?あたくし達のファンなんて今のところ一人もいませんのよ」
「ああ、そうなの?でも、まあいいじゃん。真実はどこにもないってことだよ」
明け方
マイクロ・ムスタファの部屋ではもう何も動いていません。静寂が辺りを支配しているようです。この静けさの中では、何者かの立てる寝息が良く聞こえてきます。先程まで悪魔が座っていた机ではマイクロ・ムスタファが顔を伏せて眠っていました。机に向かって何かをしているうちに疲れ切って眠ってしまったかのようです。
部屋は閉め切ってあったのですが、どこからか風が吹き込んできました。ゆっくりと静寂の中を進むその風は、マイクロ・ムスタファの髪に当たって幽かに彼の髪を揺らしました。
マイクロ・ムスタファはゆっくりと目を開けると、時計に目をやりました。
「あれ、もう朝になってる。私はLittle Mustaphaの部屋に行く予定だったのに。今回は私が主役にはずでしたが、いったい私は何をしていたんだ?」
マイクロ・ムスタファはまだ半分眠っているような目をこすりながら考えていました。
「確か、昨日私は新作を書くためにここに座ったんだ。それは確か、昼過ぎだったと思うのだが。それから私はどうなったのだろう?」
マイクロ・ムスタファは机の上にある原稿用紙を調べてみました。そこには「主役の季節」とタイトルだけ書かれていました。マイクロ・ムスタファはしばらく考え込んでいました。
「私はこのタイトルだけを考えると、疲れ切って眠ってしまったのか?それにしてもこの疲れ方は尋常じゃないな。きっとこれは次の作品の良いネタになるかも知れない。次は『疲労の季節』というのを書こう。それよりも、今の私にはもっと睡眠が必要なようだ。Little Mustaphaには起きてから連絡することにしよう。それにしても彼らはサンタには会えたのだろうか?まあ、今回は主役になるはずの私がいなかったのだから無理だったのだろう。もし私ぬきで彼らがサンタに会えるとしたら、その恐ろしさは何かとてつもない(未完)」
布団に潜り込んだマイクロ・ムスタファはここまで考えるとまた眠りについたようでした。
その頃Little Mustaphaの部屋では。
昨晩の出来事のためにブラックホールのメンバーは誰一人眠りにつくことが出来なかっ・・・、と思ったら、一同床に寝ころんでいびきをかきながら眠っています。どうやらあの事件の後、Little Mustaphaの提案で酒盛りが始まったらしく、結局いつものぐたぐた飲み会になってしまったようです。そこでは性懲りもなくどうすればサンタにプレゼントをもらえるのかが話し合われたとか、合われなかったとか。かなりの量を飲んだ彼らですから、目を覚ました時には昨晩の出来事が事実なのか夢の中の出来事なのか解らなくなっているでしょう。
そんな中、玄関で誰かが戸を叩く音が聞こえてきます。
「ごめんくださいまし!あたくしですのよ。ごめんくださいまし!あたくし、プリンセスなのよ〜」
Little Mustaphaはこのドアを叩く音に一瞬目を開けたが、目を覚ましたのは肉体だけで頭はいつまでも寝たままのようでした。彼は一度寝返りをうつと、またすぐに眠ってしまいました。
「ちょいと、みなさん。いらっしゃるんでしょ。昨夜、急に仕事が入ってしまって遅れましたけど、今年はみなさんの所にちゃんとやってきましたのよ。ちょいと!ごめんくださいまし!あたくしプリンセスなのよ〜」
中からは何の反応もない。
「もう、せっかくやって来たのに。失礼しちゃいますわ。こんなことならこんな薄汚い家には来ないでセレブの集まるパーティーに行けば良かったわ。もう来年は来てあげませんからね。プン!」
玄関の前にいた女性は怒って帰ってしまいました。それにしてもこの、プリンセスというのは・・・。まあ、それはどうでもいいか。
エフ・ビー・エルに提出されたモオルダアとスケアリーの報告書より
恐怖の殺人鬼の消息は依然つかめないままだが、クリスマスイブの夜以降に犯行は行われなかったようだ。だいたい、あんな恐怖の殺人鬼が出てくるなんて話はペケファイルではあり得ないのだが、まあ今回は特別出演ということでその辺は気にしても仕方がない。でもボクの優秀な捜査官の第六感がボクに伝えるところによれば、犯人はきっと来年も現れる。そんな気がしてならない。(Written by モオルダア)
まったく、気が滅入ってしまいますわ。あたくしがわざわざクリスマスパーティーをキャンセルまでして捜査をしたというのに、犯人の行方が解らないままなんていうのは許せませんわ。それから、あのサンタの国のような所っていうのは何なんですの?あんなことを書くから話の意味が解らなくなってしまうんですのよ。それに、今回は人が殺されすぎだと思いません?これじゃあ、また更に作者の人格が疑われるに違いありませんわ。あたくしは、作者様がそんなことばかり書いてこのサイトが削除されても知りませんからね。
あと、ペケファイルの本編が全然更新されなくなってしまいましたわね。きっと作者はあの話の続きを考えていないに決まっていますわ。もっと真面目にやってくださらないといけませんわ。
あたくしは来年のクリスマスに殺人鬼が現れたとしても、もう捜査にはいかないつもりですから。クリスマスにはセレブの集まるパーティーに出席しないといけないんですから。(Written by スケアリー)
報告書を読んでいたスキヤナー副長官は大きくため息をついた。
「どうして、今回はオールスターでお送りしますって書いてあったのに私が登場しなかったんだ?」
スキヤナーが前の壁のほうをむいたままつぶやいた。その疑問に後ろで答えるものがいた。
「そうだよねえ。私も不思議に思ってるんだよ。この私でさえ登場しなかったんだから」
声のするほうを見るとそこには、男が座っていて絶え間なく手に持ったウィスキーのボトルをラッパ飲みしていた。二人の目が合うとこのウィスキー男は不気味な微笑みを浮かべてから静かに立ち上がると、そのままドアを開けてどこかへ行ってしまった。