あと5日
「昔、あるところにたいそう机の好きな男がおったそうな」
机の神様が楽しそうに話し始めた。それにしても「昔、あるところに」とはなんともうさんくさい。そんな私の考えに気付いているのか、いないのか解らないが、机の神様は話し続ける。
「その男、朝起きてから夜眠るまで一時も机から離れることが出来ないほどに机を愛していたそうな。仕事をするのも、食事をするのも、いつもその机でした。そして暇さえあれば机に覆い被さって頬ずりしていたそうな」
その男は明らかに机フェチだ。話がよからぬ方へ進んでしまうと、ここに書けなくなってしまう。私の心配をよそに、ここで話は早くも展開するようだ。
「そんなある日のことです。事件が起きました」
机の神様はここで少し声を強めて私の方を凝視した。私がちゃんと聞いているかどうか確かめているのでしょうか?ちゃんと聞いていないことがバレてしまったら、きっと机の神様の念力を持ち出すに決まってる。恐ろしいので私はちゃんと聞いているフリをすることにした。