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#160 「Endgame」 2014-12-24 (Wed)

 マイクロ・ムスタファの発言に一同が驚いたあとに部屋にはミョーな静けさが訪れました。この静けさが、プレゼントがないことをさらに強調するかのようでもあります。マイクロ・ムスタファがもったいぶってなかなか話し始めないから。


Little Mustapha-----それで、なんでしょうか?マイクロ・ムスタファ君。

マイクロ・ムスタファ-----ああ、すいません。まだ考えがまとまっていなかったものですから。今の電話での会話を聞いていたら、私は心の底にどす黒い不安を覚えてしまいました。それが何なのか?ということですが。

ミドル・ムスタファ-----また何かとてつもない事が起こるとか言い出さないでしょうね?もう恐ろしい思いはしたくないですよ。

マイクロ・ムスタファ-----いや、残念ながら「ない」とは言えないような気がします。これまでの事を思い出して見てください。私達が危険な目にあったのはあの謎の声の仕業であることは変わりなかったですが、いなくなったのは謎の声の主だけなんです。別の次元からやって来たと思われるリボンをつけたネコなどは、この世の…あるいは別の次元のどこかに存在しているはずです。

ニヒル・ムスタファ-----それが今日やって来るっていうのか?

マイクロ・ムスタファ-----今日はないと思いますが。ただし、いつ危険な目に遭うか解りませんから、用心はしておかないといけないと思うんです。

Little Mustapha-----そんなに複雑に考えなくても大丈夫だよ。サンタが見つかったらそれでダイジョブなんだし。きっとサンタは次元と次元を行ったり来たりで迷子になってるんだよ。だからもしかしたら、異次元への扉にもなっているボクの家のトイレの扉からひょっこり現れるかも知れない。もしくは、困ったサンタが色んな次元の人と会話できるその電話機に電話をかけてくるかも知れないし。そうなったらボクが犬サンタ君に「サンタさんいたよ」って連絡したらそれで見事解決!って算段だよ。

マイクロ・ムスタファ-----そう簡単にいくでしょうか?

サンタ-----ハッハッハー!Little Mustapha君。あんまり楽観するのも良くないぞ。

Little Mustapha-----ここで異次元サンタさんの興味深い意見だけど。どういうこと?


 ここでサンタさん、呼吸を止めて一秒、サンタさん真剣な目をしたので、部屋に緊張が走りました。

サンタ-----キミ達は私がここへやって来た時に大喜びだったのは覚えているかね。

ミドル・ムスタファ-----そういえばそうでしたね。ボクらの方が大喜びだったから印象が薄れていますけど。

サンタ-----ハッハッハー!そうだったか。まあ、それは良いんじゃ。実を言うとな、私の次元にいた人間はある日突然、ほとんど消えていなくなってしまったんじゃ。

Little Mustapha-----消えたって、どういうこと?

サンタ-----さあな。サンタが人間に会いに行くのは一年に一回だから、いつどういう事が起きたのか解らないんじゃが。あの年はプレゼントリクエストの手紙がほとんど来なくてな。それで心配して見に行ってみたら、かつて街だった場所が一面がれきの山。たまに見かける雑草以外には生きているものはどこにもいないという状況じゃったんじゃ。

ニヒル・ムスタファ-----まさか人間が滅びたってことか?

サンタ-----私も心配したが、そうではなかったんじゃ。街で何が起きたのかは解らないが、住めなくなった街を捨て、雨風が防げる場所を見つけてはそこに集まってきた人達が協力して小さな集落を作っていたんじゃ。ただし、元々いた人間の数からすると、そこにいる人間は少なすぎたがな。

Dr. ムスタファ-----それはどうにも恐ろしい話だな。なんというか、最終戦争でも起きたような話だぞ。

サンタ-----ハッハッハー!私も一瞬そう思ったんじゃがね。戦争が起きたら私のところにも連絡が来るんじゃよ。戦争なんか始めたらサンタからのプレゼントもなにもないからな。ハッハッハー!

Little Mustapha-----じゃあ、何が起きたんだろう?

サンタ-----私も長いこと生きていて、長いこと人間が破壊を繰り返すのを見てきたんじゃが、それは私の見たことのないやり方だったようじゃ。つまり、人間の社会を破壊したのは人間ではないって事じゃな。私も人間がいなければ何もすることがないし、暇になってしまうからの。原因を探ろうと方々訪ねて回ったんじゃ。すると、各地にこれまでに見たこともないような巨大な施設があるのを見つけたんじゃ。恐らく消えたと思われる人間達はその中に連れて行かれたんじゃな。

ミドル・ムスタファ-----それは何の施設なんですか?

サンタ-----さあな。どうもそこへ近づいたり中を見ることは危険なようなんじゃ。なにせ人間の作ったものではないしな。それに私はタダのサンタじゃ。そういう危険なことをする能力というのは持ち合わせていないのじゃよ。ハッハッハー!

Little Mustapha-----そうか。これまでのサンタさんはサンタさんのフリをしていただけだから、リボンを付けたネコを追い払ったりも出来たってことか。

サンタ-----そういうことじゃ。ハッハッハー!サンタって言うのは基本的にはタダの老いぼれじゃよ。ハッハッハー!

マイクロ・ムスタファ-----そういう事態はサンタ…いや、これまでサンタだった彼らには報告しているのですか?

サンタ-----もちろんだよ。それに実を言うと、そういう報告が他にも何件かあるって事だったぞ。ハッハッハー!

ニヒル・ムスタファ-----すると、サンタさんがいた次元とは別の次元でも街が消えて沢山の人間が施設に連れて行かれたってことか。

マイクロ・ムスタファ-----サンタさんはこの次元でもそういうことが起こりうると言うのですか?

サンタ-----さあな。しかし、気をつけないといけないぞ。いつ何が起こるか。我々にも解らないことが人間に解るはずもないからな。ハッハッハー!

一同(サンタ除く)-----うーむ…。

 プレゼントが貰えると思っていた時とは一転してすっかり重苦しいムードになってしまいました。クリスマスは楽しく過ごすべき、というのはサンタさんの考えでもあるのですが、この雰囲気にはサンタさんも自分で話したことの責任を感じてしまったようです。

サンタ-----ハッハッハー!ちょっと真剣になりすぎてしまったようじゃ。でも今日はせっかくクリスマスなんじゃ。みんなでクリスマスを崇めて盛り上がらないと行けないぞ!

ニヒル・ムスタファ-----クリスマスを崇める?

サンタ-----この次元ではそういう考えじゃないのかね?

Little Mustapha-----いや、なんというか。元々は、とある宗教のお祭りって感じだったんですけど、最近ではクリスマス自体が崇められてるって感じもするけどね。

サンタ-----それなら大丈夫じゃ!ハッハッハー!それじゃあ、さっきつまらない話をしてしまったお詫びの印に、これをそのバケツの水に入れてあげるぞ!

Little Mustapha-----アッ!それはもしかして…?!

一同(サンタ除く)-----サンタの国のサンタの酒だ−!ヤッター!

サンタ-----ハッハッハー!良く知っているねえ。

Little Mustapha-----ボクらはサンタの酒に関してはプロ並みだからね。じゃあ、サンタの酒のお礼として食べ物を作ってくるよ。もうアボカドも酸化してグズグズになってるし。今日はとっておきの二品目として「蒸し焼きそば」を用意してあるんだよ。

サンタ-----ハッハッハー!せっかくじゃが、私はもう行かないといけないのじゃよ。間違いだと解っていてもあと数件リクエストの手紙をもらったからな。「キュウリの…」をあげても喜ばれないなんて悲しいことじゃが、任務は果たさないといかないからな。

ミドル・ムスタファ-----ボクら以外にもリクエストの手紙出す人がいるんですね。

サンタ-----そのようじゃ。プリンセスなんとか、って人だったがね。とにかくキミ達、無事にサンタを見つけてプレゼントが貰えるように頑張るんじゃぞ。それじゃあ。

一同(サンタ除く)-----さようなら!異次元のサンタさん!

サンタ-----ハッハッハー!さようなら!

 異次元のサンタさんは来た時と同じように玄関から地味に出て行きました。

Little Mustapha-----まあ、今年も失敗だったけど、その代わりにサンタの酒というのは嬉しいよね。じゃあ、その前に「蒸し焼きそば」作ってくるよ。すぐ出来るから待ってて。

ニヒル・ムスタファ-----いや、なんていうか。オレ達もそれはいらない気がするんだが。

Little Mustapha-----なんで?

ミドル・ムスタファ-----なんで、って。なんで焼きそばに「蒸し」がつくんですか?

Dr. ムスタファ-----そうだな。ちょっと前に見たニュースを思い出すんだが。アレは食欲がなくなるしな。

Little Mustapha-----そうなの?じゃあ「蒸し」は入れないでおくよ。「蒸し焼きそば」ってけっこう美味しいと思ったんだけどなあ。

ミドル・ムスタファ-----というか、いま「入れない」って言いました?なんか解っててやってませんか?

Little Mustapha-----いやいや、気にしないで。でも蒸さないけど、カップのじゃないから十分ぐらいはかかるよ。

ニヒル・ムスタファ-----まあ、なんでも良いぜ。「蒸し」が入ってなければな。

Little Mustapha-----じゃあ、しばしお待ちを。

Dr. ムスタファ-----だが、あれだな。科学的に考えて、ホントはムシぐらいどうってことないんだがな。

ニヒル・ムスタファ-----珍しくまともな意見だな。

ミドル・ムスタファ-----あの嫌悪感というか、あれは何なんですかね。

マイクロ・ムスタファ-----ミステリーですよ。全てはミステリーなんです…。

 さっきの人間が消えた話とは関係なく、なぜかムシの話で盛り上がる彼ら。しばらくしたらLittle Mustaphaがタダの焼きそばを持ってくるでしょう。

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