Little Mustapha達は、自分達がどこにいるのか解らないまま例のほとんど何もない部屋の中にいたのですが、テレビのようなものだけしかない部屋というのは退屈すぎるのです。
サンタ君-----それ、何やってるんですか?
Little Mustapha-----こうするとテレビがつくんじゃないかと思ってね。
サンタ君-----そのテレビって、手のひらをかざすとつくようになってるんですか?
Little Mustapha-----いや、手のひらをかざしてるのは、なんていうかポーズみたいなことだけどさ。ボクの部屋のテレビだって、リモコンの電源ボタンが壊れてるのに強く念じるとテレビがつくんだよ。テレビが見たいという強い思いが一時的にリモコンを直しているんだと思うんだけどね。だからここでもテレビが見たい!と強く念じることによってテレビがつくと思って。
サンタ君-----ホントなんですか、それ?
Little Mustapha-----ウソに決まってるけど。なんかサンタ君はサンタのくせに全然夢がない感じだよね。
サンタ君-----スイマセン。
Little Mustapha-----別に謝らなくても良いんだけど。それよりもこのテレビはどうやってつけるんだろう。リモコンの場合は調子悪くても押し方によってつくことがあるんだけどなあ。この霊界テレビはボタンも何もないしなあ。
サンタ君-----裏とかにスイッチがあったりしませんかね。…って、あれ?なんか触ったらテレビつきましたよ。
Little Mustapha-----あれ、ホントだ。昔流行った触るとつくランプみたいなことか。というか、これなんの番組だろう?
サンタ君-----なにか目的があってつけたワケじゃないんですか?
Little Mustapha-----いや、ヒマだったからさ。テレビがついたら良いなあ、と思ってただけだし。これってニュース番組かな。
サンタ君-----そうみたいですけど。
テレビ(女子アナ)-----はい、こちら地獄の人気女子アナ、横パンこと横屁端です。みなさん、ここがどこだか解りますかぁ?…はい、そうなんです。今日はクリスマスイブということで、これまでの血塗られたクリスマスの歴史を展示している「楽しいクリスマス展」の会場なのです。あっ、あそこに可愛くない子供がいるので、お話を聞いてみたいと思いまぁす!…このクリスマス展、どうでしたかぁ?
テレビ(可愛くない子供)-----えーっと。言うこと聞かないで悪い子にしていた子供が怪物に食べられたりしたところが面白いと思いました。
テレビ(横屁端)-----そうですか。ありがとうございます。この「楽しいクリスマス展」は明日の25日まで開催中です。浮かれたクリスマスに嫌気がさした方にはお勧めですよ。それではスタジオにお返ししまぁす!
Little Mustapha-----すごく怪しい感じもするけど、それとは関係なく横パンだとスムーズに中継できるんだな。
サンタ君-----というか、今のなんだったんですか?子供が食べられるとか、そんな酷い話がテレビでやってるなんて。
Little Mustapha-----ああ、そういえばそうだよね。なんか毎年のことだから感覚が麻痺してる気がするな。でも、あんな放送が映るということは、ここは人間の住む世界ではないって事かも知れないけど。地獄の人気女子アナとかも言ってたしね。
サンタ君-----ドゥエって、それどういう事ですか?!
Little Mustapha-----でたな、変な驚き方。でもこの世界ではそんな喋り方をしても女性達にウケないからね。
サンタ君-----スイマセン。なんかクセになっちゃってて。でも早く元の世界に戻ってサンタの仕事をしないと。子供達がプレゼントを貰えなくなってしまう。
Little Mustapha-----そうだよね。子供達だけじゃなくてボクらだって困るんだし。このテレビで人間界の放送とかも映ったら良いのに。外の様子が解れば何が起きてるか理解出来るかも知れないし。このテレビはどうやってチャンネルを変えるんだろう?
サンタ君-----チャンネルを変えても人間界の放送は映らないんじゃないですか?
Little Mustapha-----それは解んないよ。東京でもtvkが映るし。そう考えたら、このどこだか解らない場所でも人間界の放送は映るかも知れないんだし。
サンタ君-----そんな理屈は通用するんですか?
Little Mustapha-----ここなら多分大丈夫。ってことで、触って電源がオンになったということは、手を叩けばチャンネル変わるかな?[パン!]…っと思ったらホントにチャンネル変わったよ。
サンタ君-----ホントですね。…でも、それ人間界の放送じゃない気がしますが。
Little Mustapha-----でも映ってるのは人間界のような気が…。というか、これってボクの部屋じゃないか!?
モオルダア-----ということでね、その通報というのは特殊な感じなんだよね。
ミドル・ムスタファ-----そうなんですか。サンタが殺されるのを目撃したって通報と、サンタがもう一人のオッサンと一緒に連れ去られたって通報と。どっちが正しいんですかね。
ニヒル・ムスタファ-----でもサンタが殺されたってのはあっても、オッサンが殺されたってのはなかったんだろ。オッサンというのがLittle Mustaphaだとして、ヤツが殺されてるってことはないんじゃないか。
ミドル・ムスタファ-----そう願いたいところですが。…アッ、捜査官も遠慮しないで飲んでください。焼酎とかウィスキーとか、濃い酒ばかりで申し訳ないですが。
Little Mustapha-----アーッ、みんな勝手に飲み始めてる!しかも、なんでモオルダア捜査官がいるんだ?
サンタ君-----これって、ホントにあなたの部屋なんですね。
Little Mustapha-----そうだよ。というか彼らが来て飲み始めているってことは、もうクリスマスイブの夜って感じだけど。
サンタ君-----エェ…。困ったなあ。
Little Mustapha-----困ったよ。ボクだってこんなところにいたらプレゼントが貰えなくなるし。というか、去年渡したリクエスト用紙だけど、ちゃんとおじいさんタイプのサンタクロースに渡してくれたよね?
サンタ君-----それは大丈夫ですけど。
Little Mustapha-----それなら一安心だけど。でもこのままだとボクだけプレゼントを貰えないとか、そういう展開にもなりかねないなあ。キミ、電話持ってる?
サンタ君-----持ってないです。サンタですから。
Little Mustapha-----今時のサンタなのに持ってないの?!うーん…。クリスマスには電話があればなんとかなったりするんだけどなあ。
サンタ君-----あなたは持ってないんですか?
Little Mustapha-----だって、昨日いきなりキミが来て、そこからいつの間にかこの部屋って事なんだし。いちいちスマホをポケットに入れて玄関に出たりしないからね。
サンタ君-----そうなんですか。今時の人間は常にスマホを持っているのかと思いましたよ。
Little Mustapha-----それはSNSに必死な人だけだよ。ヤツらは人が死にそうになっていても、とりあえず写真に撮ってから助けるしね。
サンタ君-----ホントですか?!
Little Mustapha-----まあ、たとえ話だけど。でもホントにそんな話もありそうで恐いよね。
サンタ君-----サンタには関係ないですからね。
Little Mustapha-----なんだ、その素っ気ない感じは。
サンタ君-----アッ、あなたの部屋に動きがあったようですよ。
Little Mustapha-----キミは意外と自由な感じなんだな。
Dr. ムスタファ-----なんだ?!なんでいきなりテレビがついたんだ?
ミドル・ムスタファ-----なんでですかね?さっきボタン押したのが時間差でついたとか。
ニヒル・ムスタファ-----そんなワケないだろ。
モオルダア-----ああ、すまない。ボクがお尻でリモコン踏んづけてた。
Dr. ムスタファ-----そういう時にはちゃんと機能するんだな、そのリモコンは。
ニヒル・ムスタファ-----お尻の科学ってヤツじゃないか?
Dr. ムスタファ-----なんだそれは?
ミドル・ムスタファ-----そんな事よりも、せっかくテレビがついたんですから、世の中の様子とかも探ってみないと。もしかして事件に関して何かやってるかも知れないですし。
テレビ-----「はい!こちら会場の人気女子アナウッチーこと内屁端です!みなさん、ここがどこだか解りませんかぁ?…全然違います!今年のクリスマスは楽しくないのがトレンドなんです。そしてここは、血塗られたクリスマス展の会場なのです。見てください。これはまさに地獄絵図ではないでしょうか。悪人達がサンタによって裁かれる様子が絵や映像、そして模型で再現されているのです。アッ、ちょっとそこのお子さんにインタビューしてみたいと思いまぁす!ねえ、キミ。このクリスマス展どうだった?」
テレビ-----「ウワァァ〜ン…」
テレビ-----「泣いているようですね。ちょっと恐かったかな?」
テレビ-----「ウワァァァアア…」
テレビ-----「そうか、恐かったね。それじゃあ、いったんスタジオにお返ししまぁす!…おいてめえ、泣いてる子供連れてきたんじゃインタビューにならねえだろ!え?」
テレビ-----「ここでいったんCMです」
テレビ-----「過払い金!過払い金!過払い金!過払い金でお金が足りないよぉ。そんな時にはカードローン!フォースの力で自転車操業!期間限定スターウォーズ勝手にコラボカードを手に入れるチャンス。過払い金に困ったらフォースと共にカードローン。抽選でスパイダーマン当たります」
ミドル・ムスタファ-----ここでまさかのスターウォーズコラボCMでしたね。
Dr. ムスタファ-----流行ってたらなんだって良いんだろ。
ニヒル・ムスタファ-----それよりも、なんなんだあのクリスマス展って。なんか気持ち悪いサンタだったけど。なんとなくイヤな予感がしないか?
ミドル・ムスタファ-----そうですよね。なんかサンタが人間を処刑している場面とか。まさか今回の事件と関係してるってことはないですかね?
モオルダア-----それはないだろうね。サンタを殺害したり、あるいは誘拐するっていうのは簡単な事ではないし、裏に大きな組織が関係している可能性もあるけどね。でもそういう組織の人間があんな目立つ場所で活動するとは思えないよ。あれはたまたま趣味の悪い展示会がやっていただけだと思うけど。
ミドル・ムスタファ-----そう言われるとそんな気もしますが。
ニヒル・ムスタファ-----まあ、外で変な事件が起きてなかった、ってだけでも良かったんじゃないか。
ミドル・ムスタファ-----そうですね。それじゃあ、せっかくなのでLittle Mustaphaが戻ってくることを願ってもう一度乾杯と…。
マイクロ・ムスタファ-----あの、ちょっと待ってください!
ニヒル・ムスタファ-----なんだ?まさか、留守番電話か?
マイクロ・ムスタファ-----いや、そうではなくて。物音がしたのですが。
Dr. ムスタファ-----なんだ物音って?そんな音は聞こえないぞ。
ミドル・ムスタファ-----もう酔っ払ってるんじゃないですか?
マイクロ・ムスタファ-----いや、確かに聞こえましたよ。
モオルダア-----それなら、ここは私にまかせて。様子を見てくるから、キミ達はここで待っていたまえ。
ミドル・ムスタファ-----はあ。
ニヒル・ムスタファ-----モデルガン構えて行ったけど、アレって意味あるのか?
ミドル・ムスタファ-----まあ、気休めというか。ああすると落ち着くんじゃないでしょうか。
マイクロ・ムスタファ-----玄関の方に行ってしまいましたが、音がしたのは違う方だと思いますが。
Dr. ムスタファ-----じゃあ、ベランダか?
マイクロ・ムスタファ-----ほら、また。
ミドル・ムスタファ-----アッ、ホントだ。ベランダでガサガサしてますよ。
Dr. ムスタファ-----サンタか?!とうとう来たか?!
ニヒル・ムスタファ-----まあ、落ち着こうぜ、先生。最近のクリスマスの傾向からすると違うと思うぜ。
ミドル・ムスタファ-----ああ、そうですね。Little Mustaphaが行方不明でも、その辺は変わらない感じになってるんですかね。
いつもとは様子が違うクリスマスも、この辺は定番の展開なのでしょうか。そしてLittle Mustapha達はどこにいるのでしょうか。