どこにあるか解らない部屋ではLittle Mustaphaがテレビの前でゲッソリしていました。
Little Mustapha-----ああ、お腹空いた…。またテレビがついたのは良いけど、どのチャンネルにしてもグルメ番組、って。どうなってるんだ、この世界は?
サンタ君-----フワフワとかサクサクとかモチモチとかトロトロとか。みなさんそういうのが好きなんですね。
Little Mustapha-----なんでそんな分析をしてるんだ?
サンタ君-----いや、サンタですから。人間が好きそうなことは調べておかないと。
Little Mustapha-----というか、ここは人間の世界じゃないけど。…てもグルメ番組の内容はだいたい人間の世界と一緒だな。それよりも、サンタ君はお腹空かないの?
サンタ君-----ボクは出る前に食べてきましたからね。
Little Mustapha-----出る前って。昨日の話じゃないの、それ?
サンタ君-----でも、一応サンタですから。
Little Mustapha-----それをどう理解したら良いのか謎だけど。サンタは小食ってこと?
サンタ君-----ちょっと違いますけど。あんまりお腹は空かないって事ですかね。
Little Mustapha-----ああ、そうか。食べたものをエネルギーにする効率が良すぎるってことだな。だからサンタはみんな太ってお腹が出てるのか。ということは、サンタ君もそのうちお腹が出てきちゃうのか。
サンタ君-----いや、それは気にしてる事なんですけどね。先輩達にも太らないように言われてるんですけど。最近はサンタも格好良くないとダメだって。
Little Mustapha-----だいたいなんで、サンタが女性陣を意識するんだ?ってことだけど。
サンタ君-----子供に好かれるには、まずは親からとか、そういう事みたいですね。
Little Mustapha-----親と言うよりも、母親だよね。でもそれで夫の方はどう思うか?というとビミョーな気もするけど。まあ、その辺はどうでも良いのかな。ボクには解らないけどね。
サンタ君-----なんか複雑そうですね。
Little Mustapha-----それは良いけど、なんでこんな話してるんだ?
サンタ君-----ホントですね。
Little Mustapha-----ああ、もうダメだ!お腹が空いて気がおかしくなりそうだ。もう、どうなってもイイから、ここから出るぞ!
サンタ君-----どぅワッと。ちょっと、ダメですよ。その扉を開けたら何が起きるのか解りませんよ。
Little Mustapha-----放せ!放すんだ!せっかくスーパーで大量のお菓子とかツマミとか買ってきたのに。それに、犬用のビーフジャーキーも味見してみようと思ってたのに!このままじゃ全部あいつらに食べられてしまう!放せ!放すのだ!ウゥゥゥウウウ!
サンタ君-----ちょっと、しっかりしてくださいよ。そんな状態で外に出たら、本当に危険ですよ。
Little Mustapha-----危険かどうかは外に出てみないと解らないし。もうお腹が空いて死にそうです…。
サンタ君-----そんなこと言わずに頑張りましょうよ。ああ、困ったなあ。人間ってそんなにすぐにお腹空くんですね。
Little Mustapha-----すぐっていっても、あれからもう一日以上経ってるし、ボクが昼食を食べてからってことになると、さらに数時間プラスで何も食べてないんだし。
サンタ君-----でも、このテレビと扉の謎が解決しない限り、外には出ない方が良いはずですから。
Little Mustapha-----そんなものは、さっきの雰囲気で決めただけだし。それに、お腹が空いたのはテレビをつけようとして「チーン」って音がして、電子レンジを連想したからだし。それで外に出たくなったのなら、もうテレビと扉の謎は解けたってことだよ。
サンタ君-----お腹が空いただけじゃ、謎は解けていませんよ。その扉の向こうに何があるのか。それについては何も解ってないですから。
Little Mustapha-----いや、そうじゃなくて、扉を開けると、大きなイチゴの乗ったクリスマスケーキとか、特盛りの天丼とか。焼きそばとかとか餃子とか、B級グルメが…。ああ、ダメだ。解った。ボクにかまわず、キミはここに残るんだ。さあ、ボクにかまわず残るんだ!
サンタ君-----それを言うなら、ボクにかまわず逃げろ、ってやつじゃないですか。
Little Mustapha-----そうだけども。あぁ…!犬用ビーフジャーキーが食べたい!
その頃ブラックホール・スタジオ(Little Mustaphaの部屋)では。
犬サンタ-----?!
ミドル・ムスタファ-----どうしたんですか?
犬サンタ-----誰かに呼ばれた気がしたんだワン。…でも気のせいだワン。
ニヒル・ムスタファ-----それよりも犬サンタ君。そんなにビーフジャーキー食べて大丈夫なのか?
犬サンタ-----もうお腹いっぱいだワン。なんだか犬用にしては量が多過ぎなんだワン。
ミドル・ムスタファ-----無理して全部食べようとしなくても良いのに。
犬サンタ-----つい食べてしまうんだワン。でも我慢しないとご主人様に怒られてしまうんだワン。
ミドル・ムスタファ-----そういえばLittle Mustaphaがいないんで聞いてなかったですが、ご主人様である長官の孫娘さんは何してるんですか?
犬サンタ-----今日は特殊な任務だからナイショなんだワン。
Dr. ムスタファ-----それはつまり、サンタがいないとか、そういう事に関係する任務なのか?
犬サンタ-----それを言ったら怒られてしまうから特殊な任務なんだワン。私を困らせたらいけないんだワン。
ニヒル・ムスタファ-----まあ、つまりそういう事だろうな。
ミドル・ムスタファ-----うーん…。Little Mustaphaはどうしてしまったのか。そしてサンタはやって来てプレゼントをくれるのか。
犬サンタ-----ご主人様達はいつでも最善を尽くす。それだけしか言えないんだワン。
ミドル・ムスタファ-----でも、なんか心配ですよね。プレゼント…というかLittle Mustaphaがどうなってしまったのか。とか。
ニヒル・ムスタファ-----だか、オレ達に出来る事が何もないってのもな。今回は恐ろしい事も起きないし、楽なような気もするけど、こうして何も起きない中で何かを待っている、ってのも辛いものだな。
マイクロ・ムスタファ-----いや、待ってください。
ミドル・ムスタファ-----なんですか?!なんかありましたか?
Dr. ムスタファ-----なんだ?なんだ?!
マイクロ・ムスタファ-----いや、そんな期待してもらうと困るんですが。その電話機のところの…。
一同(マイクロ・ムスタファ除く)-----アーッ!電話が鳴ってないにもかかわらず留守番電話のメッセージが残されている事を示すランプが点滅している!(んだワン!)
マイクロ・ムスタファ-----そこはやっぱり、みんなで同時に驚くんですね。
ミドル・ムスタファ-----それはそうですけど。でも、これどうするんですか?
Dr. ムスタファ-----うーん。何も考えないでボタンを押すキャラのモオルダア捜査官もいないしなあ。
ニヒル・ムスタファ-----だが、押すしかないだろう。点滅してたら気になって仕方ないしな。
ミドル・ムスタファ-----そうですか。それじゃあ、まあこれは連帯責任ということで。押しちゃいましょう。(ピッ!)
留守番電話-----ゴゴッゴッッゴッゴッッゴ…。イッケン・ノ…メッ…セッ…イ・ジッ。「ちょいと、なんなんですの?!あなた方…。そこにいるのは一人じゃないんでございましょ?…それはどうでもイイですわよ。ホントにイヤになってしまいますわ。どうしてモオルダアが酔っ払っているんですの?勤務中のエフ・ビー・エル捜査官にお酒を飲ませるなんて、あってはならないことですのよ。おかげであたくしは酒臭いモオルダアと捜査をしなくてはなりませんですし、オマケに異次元の扉がどうとか、モオルダアは変な事ばかり言うんですのよ。これもすべてあなた方の責任ですからね。謝罪したいのならあたくしの連絡先は666の…」メッセーィジ・オーワリ!
Dr. ムスタファ-----最後のところの発音変だったぞ。
ニヒル・ムスタファ-----そんなところは気にしなくてイイんだよ。
ミドル・ムスタファ-----それよりも、これは…。プリンセス・ブラックホールではなさそうですけど。
ニヒル・ムスタファ-----ということはエフ・ビー・エルのスケアリー捜査官ってことだな。
Dr. ムスタファ-----それで、このメッセージを聞いて、なんだったんだ?
ミドル・ムスタファ-----さあ、どうでしょう?
ニヒル・ムスタファ-----それよりも、みんな気付いてるか?
ミドル・ムスタファ-----なんですか?
ニヒル・ムスタファ-----オレも飲んでたからウッカリしてたんだけどな。もう12時まであんあまり時間がないんだよな。
一同-----アーッ!(だワン!)
ミドル・ムスタファ-----というか、犬サンタ君は驚かなくて良いんじゃないですか?
犬サンタ君-----でも、みんなで驚くの面白いから参加させてもらったんだワン。
Little Mustapha-----あぁ…。ビーフジャーキー…。ビーフジャーキー…。
サンタ君-----ちょっと、しっかりしてくださいよ。ボクだけじゃこの扉の謎は解けそうにないですから。
Little Mustapha-----いや、心配するな。ビーフジャーキーと見せかけて、実はカルパスだよ。
サンタ君-----大丈夫ですか?まさか幻覚を見ているとかじゃないですよね?
Little Mustapha-----大丈夫だよ。幻覚なんか見るわけがない。それに、今日はクリスマスイブだっていうのに、ボクは一口も酒を飲んでないんだよ!こんな事ってあり得るのか?
サンタ君-----知りませんけど。でも、クリスマスイブなんですよね。
Little Mustapha-----そう。クリスマスイブ。こんなに空腹でさらに乾きを感じているということは、すぐに日付も変わってしまうだろうね。まあ、それもどうでも良い事だよ。ボクはプレゼントを貰うことも出来ず、ここで飢え死にするんだ。そして、キミはここで何をするのか知らないが。キミのせいでプレゼントを貰えない子供達が大勢。子供達がプレゼントが貰えないという悲劇はもう繰り返されてはいけないと思っていたけどね。まあ、ボクには関係ないことだよ。
サンタ君-----なんでそんな事を…。でもそれは真実かもしれない。ボクがこんなところでもたついているから子供達が悲しい思いをしてしまう。このテレビと扉の謎が解けないために、可哀想な子供達を増やしてしまう。いったいこのテレビとはなんなのか。ただチャンネルを変えてつまらないといっているだけで、何も解らなかった。…いや、待てよ。そうではないのかも知れない。テレビで面白い番組を探すことだけが目的ではないはず。真に素晴らしい事というのはテレビの中にあるのではない。それを気付かせるためのテレビだったんだ。何かを成し遂げるには扉を開けて外に出なければいけないんだ!
Little Mustapha-----ウワァ!スゴいこじつけだけど。それはそれで良い考えだからね。そうと決まったら早速外に出ましょう!
サンタ君-----エエッ?!お腹空いて死にそうだったんじゃないんですか?
Little Mustapha-----そういうのは気持ちの問題だからね。外に出ると決まったらあと2時間はもつよ。
サンタ君-----なんか騙された気がするんですが。とにかく外に出ると決めてしまったんで、行きましょうか。
Little Mustapha-----そうそう。そうしましょう。
なんだか変なテンションによって外に出ることに決めてしまったLittle Mustapha達。外に出ても大丈夫なのかどうかは解りませんが。