クリスマス 場所はどこでも クリスマス
背後霊の葉井後冷子(ハイゴレイコ)さんが登場してワケが解らなくなってきたのですが、そんな状態になるとなぜか「とりあえず飲む」ということになるLittle Mustapha達。しかも背後霊の冷子さんまで参加してパーティーが盛り上がって来ています。飲み物はLittle Mustaphaの想像から現実化される「地獄の一丁目の地酒」です。ほとんどウィスキー味ですが、酔えば酔うほどアルコール濃度が高くなるとか。このまま行くとサンタ国のサンタの酒状態になりそうですが。
とにかくLittle Mustapha達の様子を見てみることにしましょう。
Dr.ムスタファ-----…ということでな。霊体というのは水に弱い性質も持っているから、仮に幽霊として現世に戻っても女風呂に忍び込んだりするのは危険なんだな。
冷子-----…って。なんで私にそんなスケベな話をするのか?ってことだけど…。
Dr.ムスタファ-----ああ、これは失礼した。どうも最近酔っ払うとアレなんだな。だが幽霊ならその辺は気にならないんだろ?
冷子-----幽霊じゃなくて背後霊だし。背後霊でもレディーはレディーなんだし。うーん…。
Dr.ムスタファ-----まあ科学の話なんだからそう気にしなくても。
ニヒル・ムスタファ-----どこが科学だよ。それに幽霊とか霊体とか言ってるけど、オレはまだ信じてるワケじゃないぜ。
ミドル・ムスタファ-----でも、Little Mustaphaが想像しただけで酒が出てくるんだし、ここは普通の場所ではないって事は解りますよね。
ニヒル・ムスタファ-----だからといって地獄って事もないだろ。これまでだって異次元世界とか、良く解らない場所には行ったことがあるんだしな。
冷子-----うーん…。だから、さっきから何度も言ってるんだけど。なんで解ってくれないのか?って事なんだし。
ニヒル・ムスタファ-----それを証明することが出来ればオレも信じるけどな。
冷子-----証明っていっても、ここはまだ現世の記憶が中心になっている場所なんだし。証明できることだと、うーん…。十二時になって閻魔大王から呼び出されたらそれが証明になるんじゃないか?ってことだけど…。
Little Mustapha-----十二時って。それって日付が変わる時間?
冷子-----そうだけど。24時とか零時とか言った方が良かったかも知れないけど。
ミドル・ムスタファ-----つまりクリスマスの日になる瞬間って事ですか。それじゃあこれまでと一緒でなんだか少しイヤな予感もするんですが。
Little Mustapha-----まあ、そんな事は気にしないで、ここはちょっと休憩ってことで。十二時まで時間は沢山あるし。
ミドル・ムスタファ-----…で、そこで何を見てるんですか?
Little Mustapha-----なんか、さっきの話聞いてたら、家の外を見てみたくなってね。
Dr.ムスタファ-----女湯の話か?
ニヒル・ムスタファ-----違うと思うぜ。
Little Mustapha-----現世の記憶がどうのこうの、ってやつだけど。家の外に懐かしいモノとか見えないかな?とか思ったんだけど、いつもどおりだな。ミドル・ムスタファみたいにジョーイ・ラモーンとかも見てみたいんだけど。どうやってやったの?
ミドル・ムスタファ-----特に何もしてないですけど、ここに来る途中にラモーンズを聴きながら来たから。それが原因じゃないでしょうか。
ニヒル・ムスタファ-----ただの幻覚とも言えるぜ。
冷子-----そうだとしたら、今飲んでる酒も幻覚なんじゃないか?ってことだぜ。
ニヒル・ムスタファ-----うーん…。なんかもどかしい感じだな。
Little Mustapha-----ついでに、ニヒル・ムスタファにも喋り方が感染しかかってる、ってことだけど…。
ニヒル・ムスタファ-----なにがだ?
ミドル・ムスタファ-----いや、そんな事はどうでも良いですけど。実は私もまだ自分が死んだってことが信じられないんですよね。なんて言うか普通すぎるんですよ。
冷子-----うーん…。そんなこと言われても、これ以上説明のしようがないんだし。
マイクロ・ムスタファ-----みなさん、良いですか。
一同(マイクロ・ムスタファ除く)-----誰ですか、あなたは?
マイクロ・ムスタファ-----ええっ?!
Little Mustapha-----いやいや、冗談なんだし。
マイクロ・ムスタファ-----冗談って。しかもなんで冷子さんまで冗談に参加してるんですか。
冷子-----背後霊なんだし、こういうネタは全部知ってたりするんだけど。
マイクロ・ムスタファ-----そうですか。それはどうでも良いですけど、私に提案があるのですが。
Little Mustapha-----そういう提案ってどうなんだろうね。
ミドル・ムスタファ-----どういうことですか?
Little Mustapha-----いや、そういう風に「提案があります」っていう感じの提案ってダメな感じが多い傾向にあるよね。
ミドル・ムスタファ-----そうでしょうか?
Dr.ムスタファ-----まあ、一応聞くだけ聞いてみたら良いんじゃないのか?
マイクロ・ムスタファ-----ちょっと、みなさん。あなた方が変な冗談で間を開けるから「提案がある」って言わなければならなくなったんですし。
ニヒル・ムスタファ-----このままだとキレそうだぜ。
Little Mustapha-----そのようなのでマイクロ・ムスタファ君の意見を聞くことにしましょう。
マイクロ・ムスタファ-----別にキレたりはしませんけど。でもみなさん、今日はいろんな事を忘れてませんか?私たちは今死後の世界にいるということになっているので、さすがにいつもの留守番電話に異常はありません。でも、私たちがいつもやっている事を忘れていると思うんですけど。
Little Mustapha-----乾杯して、ゲストが来て、酔っ払って、Dr.ムスタファのスケベな科学を聞いて…。あとやってないことは…、あっ、そうか!今日はまだ特製料理が登場してないね。それじゃあ、はい!想像を現実化したスパム炒めでござい!想像するだけで良いからあっと言う間だよ!
ニヒル・ムスタファ-----ござい、って…。
マイクロ・ムスタファ-----そういうことではないですよ。
Little Mustapha-----まあ、だいたい解っていたけどね。それで何を忘れてるのか?ってことだけど…。
マイクロ・ムスタファ-----今日はまだテレビを見ていませんよね。これまでのクリスマスでは重要な要素だったテレビです。
ミドル・ムスタファ-----そういえばそうですね。
Dr.ムスタファ-----「テレビを見ずして死ぬなかれ」ってことだな。
ニヒル・ムスタファ-----それはたいした名言だな。
Dr.ムスタファ-----そうか?
ニヒル・ムスタファ-----(ウソだけど。フヒュヒュヒュヒュ!)
ミドル・ムスタファ-----それならテレビを見てみましょうか。でも現世の記憶がどうのこうのって言ってましたし、けっこう普通のテレビ番組がやってるんじゃないですかね。
冷子-----地上波とBSとCSは映らないけど。
Little Mustapha-----それって全部じゃない?…というかなんで冷子さんがそんなことを言うのか?って事でもあるけど。
冷子-----ホントだとテレビはどの世界でも、つまりこの世もあの世も共通で映るはずなんだけど。大王はコピーコントロールが嫌いだから、お前らのいた世界のテレビは映らなくなったんだけど。
Little Mustapha-----なんだそのビミョーな感じは?!つまりテレビ大好き人間なら死んでも地獄ではそれほど退屈しなかったってことか。でもデジタル化によって大変な事になってるんだな。
冷子-----ただし、一番ヤバい地獄では関係ない、ってことだけど…。フヒュヒュヒュヒュ!
Little Mustapha-----そういう恐ろしい話はしないでよ。
ニヒル・ムスタファ-----どうでも良いが、そのテレビは付けたら何が映るんだ?地上波とBSとCSがダメなんだろ?
冷子-----つまり、それ以外が映る、ってことだけど…。
Little Mustapha-----とにかく点けてみたら良いんだし。
ここでLittle Mustaphaがいつものように何も考えずにテレビの電源を入れました。デジタルで薄型の時代になっても、しばらくは何も表示されないのは現世もここも同じ。彼らがしばらく暗い画面を眺めていると、わずかに明るくなった画面から薄暗いニュース番組が流れてきました。
テレビ-----「はい!こちらは現場の人気女子アナ候補の横パンこと横屁端です!なんと去年に引き続きわたくし横屁端が異次元世界のクリスマスを中継することになりました!これも有能な新人女子アナから人気女子アナへのステップアップの一つの段階ということでしょうか?それはともかく、みなさん、ここがどこだか解りますかぁ?…そうなんです。異次元世界なんです。どうして解ったのでしょうか?それはともかくあちらをご覧ください!見てください、あの大きく凛々しい姿を。もちろんあそこにあられるは強欲の使いであり闇の支配者、そして究極の恐怖!そうです!リボンを付けたネコ様です」
ミドル・ムスタファ-----なんだか恐ろしいモノが出てきちゃいましたけど。
Little Mustapha-----でもここは地獄だからダイジョブじゃない。
ニヒル・ムスタファ-----そうじゃなくて、地獄かどうかを調べるためにテレビを点けたんじゃなかったか?
Little Mustapha-----ああ、そうか。でも異次元世界のテレビ放送って誰が見てるのかと思ったら地獄の人が見てるんだな。というか、他にチャンネルはないの?
冷子-----うーん…。残念ながら、これしかないんだし。まあ、現世のテレビだってチャンネルはいっぱいあっても結局見てるのはその中のいくつかしかないんじゃないか?ってことだし。
ニヒル・ムスタファ-----そうだよな。チャンネルが増えても面白い番組が増えるワケじゃないし。チャンネルが増えればそれだけ各番組の視聴率も減るわけだけど、そうなるとスポンサーも付かないから、見る人の少ないBSなんか番組自体がCMの通販番組だらけだしな。
Dr.ムスタファ-----だが、あれはたまに科学的に面白い商品を紹介してるがな。
ニヒル・ムスタファ-----まさか、マイナスイオン?
Dr.ムスタファ-----いや、プラズマなんとかというヤツだが。
Little Mustapha-----まあ、それはどうでも良いけど。それよりもテレビを点けてみたけど、これで何が解ったのか?ってことだけど…。マイクロ・ムスタファ君。
マイクロ・ムスタファ-----いや、なんというか。特に収穫はなかったですかね。
ミドル・ムスタファ-----ええ?!そうなんですか?
マイクロ・ムスタファ-----でも、いつもの世界ではないということは解りましたよね。
ニヒル・ムスタファ-----それはさっきから想像の酒を飲んだりしてるんだから、解ってただろ。
マイクロ・ムスタファ-----そうですけど…。
冷子-----うーん…。じゃあ、仕方ないから電話してみるんだし。
Little Mustapha-----電話ってどこに?
冷子-----良いから見てろ、ってことだけど…。
テレビ-----「はい、こちら現場の横屁端です!中継の途中ですが、ここで視聴者からの電話がかかってきたようなので『全身全霊生電話!』のコーナーに行ってみたいと思いまぁす!もしもし…!」
冷子-----もしもし、ってことだけど…。
テレビ-----「今日はどんなお話でしょうか?」
冷子-----ちょっと相談がある、っていうか、うーん…。死んだことに気づいてない人間がいるとして、それに気づかせる方法があるのか?ってことだと、どうなるのか?ってことなんだけど…」
テレビ-----「なになに。へえ。離婚したいのに旦那さんが別れてくれない。それまたどうして?」
冷子-----そうじゃないんだし。何を言っているのか?ってことだけど。離婚じゃなくてここが地獄って事を知らせたい、って事なんだけど…」
テレビ-----「奥さん、心配しないで。今日は頼もしいゲストがたくさんいるから、ね。法律の専門家までいるんだから、何でも聞いて大丈夫だから」
冷子-----だから、法律とかどうでも良い、ってことなんだし…。うーん…。でも法律って言ったら、もしかするとLittle Mustapha達の死亡証明みたいなものを取り寄せられないか?ってことにもなるんだし…」
テレビ-----「そうは言ってもね、奥さん。旦那さんがお母様の事を思う気持ち、あるんじゃないの?」
冷子-----ちょっと、意味わかんないんだし…
テレビ-----「それで旦那さんは今いくつ?」
冷子-----それ、真面目にやる気あるのか?ってことだけど…
テレビ-----「そうかあ。それだけ年の差があると大変でしょう?ねえ…それで、奥さんと…」
冷子-----もうイイんだし!じゃあな!
テレビ-----「もしもし?奥さん?…奥さん?…それじゃあここでCMに行きたいと思いまぁす!」
ミドル・ムスタファ-----何だったんですか、今の?
冷子-----うーん…。電話相談、ってことだったけど…。
ニヒル・ムスタファ-----ていうか、会話になってなかっただろ?
Little Mustapha-----面白ければそれでイイ、ってことで何だって視聴者が興味を持ちそうな話題にすり替えちゃうんだな。
冷子-----もう怒ったんだし。絶対にテレビなんか見ないんだし!離婚したい奥さん、って一体何なのか?ってことなんだし!
ミドル・ムスタファ-----ずいぶん怒ってますけど。そんなに気にしなくても。
冷子-----別に怒ってないんだし…。
ニヒル・ムスタファ-----でも「怒った」って自分で言ってたぜ。
冷子-----うーん…。まあいいか。お前らの話を聞いてると怒ってるのがバカらしくなるってことなんだし。
Little Mustapha-----それよりも、さっきの電話を聞いてて気になってしまったんだけど。冷子さんは背後霊ってことで、それはつまり何らかの理由で死んだから背後霊になった、って事に違いないんだけど。
冷子-----それ聞くのか?ってことだけど…。
Little Mustapha-----いや、別にちょっと気になっただけだし。奥さんだったり旦那さんがいたのか?とか。
冷子-----まあ、これは隠さなくても良いことだから言うんだしけど。私は性格も暗いんだし、考えることも変わってる、って事だから、学校とかでも友達が出来なくて…それだけじゃなくて、いじめられることもあったりして。まあ、それを苦にして…
ミドル・ムスタファ-----あぁ、なんか余計な事聞いちゃったんじゃないですか?
ニヒル・ムスタファ-----ホントだぜ。背後霊にまで余計な事を言うんだな。雰囲気暗くなって来たぜ。
Little Mustapha-----いや、別にそんなつもりじゃなかったんだけど…。
冷子-----って、信じたのか?ってことだけど…。
一同(冷子除く)-----えっ!?
冷子-----フヒュヒュヒュヒュ!そんなのウソに決まってるんだし。フヒュヒュヒュヒュ!
Little Mustapha-----なんでそんなところでウソつくんだ?
冷子-----こういうことは背後霊じゃなきゃ言えないジョークなんだし。フヒュヒュヒュヒュ!それに自殺なんてしたら背後霊にはなれないんだし。
Little Mustapha-----なんかちょっと不謹慎なんだが。
冷子-----まあ、気にするな、ってことだけど…。私はちゃんと寿命をまっとうしたんだし。けっこう長生きしたんだけど、最後の方は朦朧としてよく覚えてないんだけど。
ミドル・ムスタファ-----そうなんですか?でもなんで今は若い姿なんですか?
冷子-----そりゃ背後霊だってシワシワよりも一番良い時の姿でいたい、って事だし。もっと美人になっても良いんだけど、そこはウソついても仕方ないんだし。まあまあな感じにはしてるんだけど。
ニヒル・ムスタファ-----なんか良く解らなくなってきたな。
Dr.ムスタファ-----それで、ここは地獄なのか?地獄じゃないのか?
一同(Dr.ムスタファと冷子除く)-----さあ…。
冷子-----うーん…。
結局ここが地獄なのかそうでないのか解らないままですが、一体彼らはこれからどうなってしまうのでしょうか?
一方そのころ…