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#170 「フォルトゥーナ」 2015-12-23 (Wed)

 5秒前!4…3…2…。


 結局犬サンタ君がサンタの国のサンタの酒を持ってきてくれただけのクリスマスイブももう一秒以下。ブラックホール・スタジオ(Little Mustaphaの部屋)では、今まさに虚しい乾杯が行われようとしています。

Little Mustapha-----1…。せーの…!

一同-----プレゼントが貰えるまで、あと364日と23時間59ふ…。

 みんなで一緒に言うシリーズで盛り上がろうとしたその時でした。頭を揺さぶるようなとてつもなく大きな轟音が響き渡りました。それはこの部屋だけでなく、街中、いやもしかすると世界中に轟いたかもしれません。そして、そのあまりの音量に、その音が収まった時には世界中がしばらく沈黙していました。


Little Mustapha-----…なんだ、今のは?!

犬サンタ-----ワンワンワン!ビックリするんだワン!ワンワン!ワンワン!

マイクロ・ムスタファ-----アァッ…!

ミドル・ムスタファ-----なんですか、今度は?

マイクロ・ムスタファ-----その電話…。そのランプは…。

Little Mustapha-----あれ?見たことないランプが点滅してるけど。コレどういう事?

犬サンタ-----私に聞いても解らないんだワン!ワンワン!ワンワン!

ニヒル・ムスタファ-----ちょっと、犬サンタ君。落ち着こうぜ。

犬サンタ-----でもなんか嫌な予感がして落ち着かないんだワン。ほら、外にいる犬たちもさっきの音でみんな吠えてるんだワン!ワンワン!

Little Mustapha-----それで、このランプだけど。どうすれば消えるんだ?

ミドル・ムスタファ-----いや、それは下手にいじらない方がイイと思いますが。

Little Mustapha-----でも、いつものように、このランプが点滅してるまま部屋の電気を消すとチカチカしてイライラして眠ることは不可能だって事だし。

ニヒル・ムスタファ-----でも、そのランプがさっきの音と関係してるんだったら、これは問題だぜ。

Little Mustapha-----問題かどうかは押してみないと解らないんだし。エイ!

ミドル・ムスタファ-----ああ、ちょっと待って…。


 ボタンに付いているランプが点滅していたら押してみないと気が済まないのか、Little Mustaphaが何も考えずにボタンを押しました。


Little Mustapha-----…。あれ?何も起きない。なんだ、やっぱり変に心配しないでも…。


 するとその時です。また世界中に響き渡るような大きな音がしました。今度はただの音ではなくて人の声でした。


大音量の声-----我はクリスマス…!世界は我に従い、我を崇めるのだ!さもなくば、世界は永遠の闇に包まれ、人々は全ての喜びを忘れることとなろう。我はクリスマス!我を崇めるのだ!


Dr. ムスタファ-----なんだこれは?

ニヒル・ムスタファ-----クリスマス、って。一体誰のことだよ?

ミドル・ムスタファ-----なんかあの声ってその電話から聞こえて来ませんでした?

ニヒル・ムスタファ-----あんな大音量がそこから出るわけないだろう。

Dr. ムスタファ-----いや、まてよ。もしかして世界中の電話がハンズフリーモードで音を出したとしたら、あんな音になるかも知れん。

ミドル・ムスタファ-----ということはどういう事ですか?

Dr. ムスタファ-----良く解らんが。

犬サンタ-----そんな事はどうでも良いんだワン。恐いからなんとかするんだワン!ワンワン!

Little Mustapha-----まあ落ち着こうよ。その前に、あの声だけど。確かどこかで聞いたような…。

ミドル・ムスタファ-----ホントですか?

Little Mustapha-----みんなも聞き覚えない?

一同-----(考え中…。)


 するとその時、今度は普通の音量で電話が鳴りました。でもさっきの犬サンタ君の着信音ではなくて黒電話風のベルの音だったので、黙って考えていた彼らの驚きはいつも以上。全員が飛び上がるぐらいビクッとしたのですが、恥ずかしいからいつものようにみんなで気付かないフリです。


Little Mustapha-----なんで黒電話の音なんだ?

ミドル・ムスタファ-----それよりも、どうするんですか?

Dr. ムスタファ-----ここは慎重になったほうが…。

Little Mustapha-----といっても、電話の音が嫌いなボクにとってこの黒電話の音が鳴り続けてるのは地獄なので出ちゃいます!

ミドル・ムスタファ-----あぁ…。

電話-----「なにグズグズしてんのよ。早くボタン押さないから少しタイミングがずれたじゃないのよ」

ニヒル・ムスタファ-----なんかさっきの声に似てるぞ。

Dr. ムスタファ-----だが何を言ってるんだこの人は。

Little Mustapha-----あぁ、思い出した。この声は!

電話-----「久しぶりじゃないのよ、ウンチッチ」

Little Mustapha-----ウンチッチじゃないよ。そういうあなたは地獄の占い師カズコだな。

電話-----「そうよ。せっかく大金払って大がかりな仕掛け作ったのに、アンタがなかなかボタン押さないから台無しじゃないのよ!」

Little Mustapha-----そんなこと言われても困るけど。だいたいさっきの我はクリスマスって、なんのことだ?

電話-----「そんなことはアンタが知る必要ないのよ。アンタはただ黙ってテレビをつければ良いのよ。今すぐだよ。でないとあんた死ぬよ」

Little Mustapha-----でたな、久々にそのフレーズ。

電話-----「いいからテレビつけなさいよ。話はそれからよ」…ガチャ。


Little Mustapha-----電話切る時の音まで黒電話だけど。

ミドル・ムスタファ-----それよりも、どうするんですか?テレビは。

Little Mustapha-----つけないと死んじゃうらしいから、つけた方が良いんじゃない。

Dr. ムスタファ-----まあ、テレビをつけるぐらいなら科学的にも問題ないからな。

ニヒル・ムスタファ-----その一言で余計に心配になるが。まあ、仕方ないからつけてみようぜ。

Little Mustapha-----それじゃあ「つけーーーー!」


 Little Mustaphaがまたテレビのリモコンの電源ボタンをギューッと押してテレビをつけました。


内屁端-----はい、こちら現場の内屁端です!先程のハプニングにより、惜しくも記録更新は途絶えましたが、ただいま正式にギネスに認定されたとの報告がありました。アッ、そして今偉業を達成した、生意気な後輩でもある腹パンこと腹屁端がこちらにやって来ました。腹パーン!こっちこっち!

腹屁端-----あっ、ウッチー先輩。腹パンの努力は報われていたでしょうか?

内屁端-----もちろんです。連続嘔吐の世界記録、3時間21分2秒はこの先決して破られることがないでしょう。人気女子アナとしても後輩のがんばりに鼻高々です!

腹屁端-----ありがとうございます。腹パン、吐きすぎて今はとっても腹ペコです。なので世界記録達成の直後ですが、いまから仕事に戻ってグルメリポートを続けたいと思います。

内屁端-----はい、それでは頑張ってレポートしてください。

腹屁端-----はい、頑張って行ってきまーす。

内屁端-----…なんて素晴らしいことでしょうか。これぞ女子アナの鏡です。記録達成の喜びにひたる間もなく仕事にもどるストイックさ。でも人気女子アナの座は決して渡すつもりはないので、これからも後輩に対する陰湿ないじめは続けていきたいと思いまぁす!では続きまして…。


Little Mustapha-----ホントに3時間も吐いてたのか?

ニヒル・ムスタファ-----それよりも、こんなの見せてどうしろって言うんだ?カズコは。

Dr. ムスタファ-----だが、見てみろ。テレビの映像にノイズが…。

 テレビのノイズが酷くなって、画面全体が砂嵐状態になってしばらくすると、砂嵐の向こうに人影が見えてきました。そして、さらにしばらく待つとその姿が鮮明に映し出されるようになりました。そこにいるのは地獄の占い師カズコでした。

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