裏のワイヤーの端っこに
ハトが三匹とまって
一羽目のハトのいうことにゃ
おらが球場のスタンドのお母さん
芝好きフェンス好き座席好き
わけて好きなが座席でござる
座席どこが良い最前列じゃ
誰もいぬから勝手に座る
飛んだボールが引っ掛かり
係員に怒られた
それでも前が良いと
帰された
帰された

ザク巡査-----この手毬唄がなんだって言うんですかね？
レッシィ団員-----ボール君が引っかかってる話しを聞いたら、この古くから伝わる手毬唄をどうしてもみんなに聞いてもらいたいって。
ザクレロ団長-----なんていうか、ロッテの頃の川崎球場みたいだな。あの時は指定席でも空いてる席がいっぱいあったし、好きな所に座れたんだが。でも流石に一番前とかは無理ってことで、座ると注意されたんだがな。
レッシィ団員-----なんかのどかな話ですね。
名探偵ズゴック-----それよりも気がかりなことがあるのですが。飛んだボールが引っ掛かり、って部分。ボールカメラ君の状態がまさにそれだと思うのですが。
ジムⅡ団員-----そうですね。それに、どうしてボールが引っ掛かると係員に怒られるのか？というのも謎ですけど。
ザクレロ団長-----うーん...。まあその辺は上手く歌詞を考えられなかったんじゃないかな。
名探偵ズゴック-----しかし、もしもボールカメラ君がこの歌になぞらえてあの鉄塔に引っ掛けられたとすると、更なる被害者が出る恐れがありますよ。犯人はきっとこの歌の歌詞を再現するはずです。すいませんがこの歌の続きを歌ってもらえないですかね。
レッシィ団員-----おじいちゃん。唄の続きを歌って欲しいって。
旧ザク団員-----...。わしゃ、今年で 95 になりますじゃ。
キュベレイ団員-----でたな、老人の耳が遠いネタ。
コルタナ団員-----しかも、想像以上に高齢よ。
レッシィ団員-----おじいちゃん！歌の続きだって。
旧ザク団員-----...。
レッシィ団員-----なんか、歌詞忘れちゃった、って言ってますよ。
名探偵ズゴック-----そうですか。それじゃあ仕方ない。ちょっと行って調べてきますよ。
ザクレロ団長-----行くって、どこへ？
名探偵ズゴック-----街の方へ。それじゃあ、また。
ジム団員-----街って、駅の方っすかね？
ザクレロ団長-----どうだろうな。ここはそんな山奥じゃないし、ちょっと下ったら街と変わらないしなあ。
レッシィ団員-----そんなことよりも、あの引っ掛かってたボール君ってどうなったんですか？
ザク巡査-----あっ！？しまった...！

ボールカメラ君-----良かった...。助かった...。
ザク巡査-----すまなかったね。なんかゴタゴタしてて、キミのことを助けるのが後回しになってしまったよ。
キュベレイ団員-----おい、オマワリ。それでボールカメラから犯人は聞き出せたのか？
ザク巡査-----いや、たった今おろしてもらったばっかりですから。それにしてもレスキューの人はスゴいですな。あんな高いところまでスルスル登っていって。下から見てるこっちが縮み上がりましたよ。
キュベレイ団員-----それはボールの話をしているのか？
ザク巡査-----ん？！...あ！いや。これは失礼。それでボールカメラ君。救助されたばかりで悪いんだが、何が起きたのか話してもらえますかね。
ボールカメラ君-----えっ？！お巡りさんに話すんですか？なんかもっと偉い人に聞かれるのかと思ってましたけど。
ザク巡査-----ああ、やっぱりお巡りさんじゃ説得力ないかな。でも殺人事件じゃないんだし、こういう時の基本的な事情聴取はお巡りさんがやるものだしな。
キュベレイ団員-----それにこの私もいるんだ。全て話すが良い。
ボールカメラ君-----そうなんですか。じゃあ、話しますけど。チョット前に差出人不明の手紙が届いたんです。その手紙にはこう書いてありました。お前の父親のことが知りたければ今日この鉄塔の下に来い、って。
キュベレイ団員-----父親のこと？
ボールカメラ君-----実を言うとボク本当の両親が誰なのか知らないんです。ボールのようでカメラだったり。カメラのようでメダマのようだったり。
ザク巡査-----なんだか複雑な事情がありそうですね。
ボールカメラ君-----でもボクは、本当の父親はハムスターなんじゃないかと思っているんです。
キュベレイ団員-----ハムスターだと？！
ボールカメラ君-----そうです。なんだかハムスターを見ていると、なんとも言えない気持ちになるんです。それは愛というか絆というか。どう説明していいか解らない感情なのですが。
ザク巡査-----萌え、ってやつじゃないかな。
ボールカメラ君-----そうでしょうか。でも私はハムスターが父親のような気がしてならないのです。
キュベレイ団員-----うーん...。これは興味深い話だな。よし！解った！犯人はマリンくんだ。

ザク巡査-----マリンくん？！
キュベレイ団員-----そういえばオマワリはまだこの話を聞いてなかったな。何十年も前に起きた「顔無しハムスター事件」の事だ。恐らくマリンくんはハムスターの血を引く者からの復讐を恐れて先手を打ったに違いない。よし。早速マリンくんを指名手配するぞ。
ザク巡査-----いや...。なんの権限があってあなたがそんなことを？
キュベレイ団員-----ああ、そうだった。とにかく、オマワリは上の方にそう報告すればイイのだよ。
ザク巡査-----えぇ？！

ジム団員-----今回は旧ザク団員がおじいちゃんだから、キャッチボールの相手は団長っす。
ザクレロ団長-----しかし、久々にボール投げると肩がバキバキなんだし。これじゃあ、また腕がもげてしまうがな。
ジム団員-----それはマジでヤバいっすけど。でも団長はマトが小さいから投げづらいっすよ。
ザクレロ団長-----まあ、そんなことは言わずに。私がキャッチャーだと思って投げたら良いんだし。
ジム団員-----じゃあボクはピッチャーっすね。じゃあ行きますよ。まずはストレートから！...オリャ！
ヒュン...！
ザクレロ団長-----うわっ！ちょっと力入れすぎなんだし。森の中に入ってしまったぞ。
ジム団員-----まじやっちまったっす。

カキーン！
ギャー...！

ザクレロ団長-----なんだ今の音は？
ジム団員-----バットでボールを打ったような音だったすけど。
ザクレロ団長-----その後の悲鳴は...？
ジム団員-----あっ！団長、あそこ！
ザクレロ団長-----ああ！あんな高い木の上にボールが引っ掛かってるぞ。
ジム団員-----あの高さは投げて届く場所じゃないっすよ。
ザクレロ団長-----といことはやっぱりバットで...。というか、あのボールって良く見たらあの時のボール君じゃないか？
ジム団員-----あの時って、いつっすか？
ザクレロ団長-----いつと言われても困るが。確かボール君のお母さんの息子が誰か？という話になった時に、実は本当の息子だったというボール君だが。
ジム団員-----なんか覚えてる気がするっす。でも、さっきまで気づかずにキャッチボールに使ってたっすよね。
ザクレロ団長-----まあ、何も言わなかったボール君も悪いってことだが。おーい、ボール君！大丈夫か？
硬式ボール君-----助けてください。何者かに背後からバットで打たれました。
ザクレロ団長-----どうやら我々がキャッチボールに使っていたことに関しては何も思っていないようだな。
ジム団員-----なら安心っすね。でも、どうするんすか？グローブ投げてぶつけたら落ちてくるっすかね？
ザクレロ団長-----それじゃあグローブが枝に引っ掛かるだけだしな。こういう時は木を揺らしたら良いんだし。...と思ったけど、この木は幹が太すぎてびくともしないな。
ジム団員-----タイボクっす。
ザクレロ団長-----おーい、ボール君。今助けを呼んでくるから、そこで待っていてくれたまえ。
硬式ボール-----早くしてください。ボク高いところは嫌いなんです。
ザクレロ団長-----そういえば、アレは飛ばないボールだったな。
ジム団員-----高く上がるのがイヤなら遠くにも飛ばないっすからね。
ザクレロ団長-----飛ばないボールの仕組みって、意外なことだったんだな。それはともかく、早く助けを呼んでこないとな。

ジム団員-----ちょっとヤバいっすよ。またボールが引っ掛かったっす。
コルタナ団員-----解析中...。酷いノーコンね。
ジム団員-----そうじゃないっすよ。ちょっとノーコンでシュってなったんすけど、そうしたらカーンってなってビューンって...。
ジムⅡ団員-----それじゃ全然解かんないですよ。
ザクレロ団長-----なんていうか、森のなかに入ってしまったボールを誰かがバットで打って、それが木に引っ掛かったってことなんだが。
レッシィ団員-----じゃあ、二人以外の誰かがやったってことですか？
ザクレロ団長-----そういう事になるな。それに、そのボールって良く見たらボール君のお母さんの息子って設定だったボール君だったんだな。

リックディアス刑事-----ちょっとみなさん。困りますなあ。こんな事件が起きているのに私に黙っているなんて。
ザクレロ団長-----ああ、刑事さん。でも黙ってるって言っても、あなた刑事なんだしどっちかって言うと我々よりも詳しいはずなんだが。
レッシィ団員-----そうですよ。それに私たちは探偵団じゃなくて応援団なんですからね。
ジムⅡ団員-----でもリックディアス刑事さんがそんなに気にしているということは、このボール君達が引っ掛けられている事件は昔の事件と関係があるってことなんですか？
リックディアス刑事-----確信はないんだが、どうやらボール君達の父親はハムスターなんじゃないか、ってことなんだがな。
ジム団員-----マジっすか？！
コルタナ団員-----解析中...。ちょっと待って。また旧ザク団員が歌を聞かせたいって。
リックディアス刑事-----歌ですか？
レッシィ団員-----もしかすると事件と関係があるかも、って。
ジムⅡ団員-----続きの歌詞も思い出したかも知れませんよ。

裏のワイヤーの端っこに
ハトが三匹とまって
一羽目のハトのいうことにゃ
おらが球場のスタンドのお母さん
芝好きフェンス好き座席好き
わけて好きなが座席でござる
座席どこが良い最前列じゃ
誰もいぬから勝手に座る
飛んだボールが引っ掛かり
係員に怒られた
それでも前が良いと
帰された
帰された

コルタナ団員-----解析中...。前と一緒よ。
ジム団員-----写真も一緒っすね。
リックディアス刑事-----なんだ。一緒じゃ意味がない...。
レッシィ団員-----おじいちゃん。みんな続きを歌って欲しいって言ってますよ。
旧ザク団員-----...わしぁ、今年で 98 になりますじゃ。
ザクレロ団長-----なんか前より歳とってないか？
ジムⅡ団員-----これは、続きを聞くのは無理そうですね。
レッシィ団員-----そういえば、引っ掛かったボール君ってどうなったんですか？
ザクレロ団長-----あっ！しまった。

ジム団員-----十人の娘が旅に出た...♪十人の娘が旅に出た...♪
キュベレイ団員-----おい、紛らわしいからその歌はやめるんだ。
ジム団員-----そうっすか？なんか急に歌いたくなって。なんでっすかね？
ザク巡査-----そりゃ、あの手毬唄のせいだと思いますが。それよりも、なんか用なんじゃないですか？
ジム団員-----そうだったっす。なんかまたボール君が引っ掛かってるんで、救助を要請したいんすよ。
キュベレイ団員-----まただと？だがボールカメラならあそこにいるぞ。
ジム団員-----そうじゃなくて、別のボール君なんすけど。木に引っ掛かったから救助隊を呼びたいんすよね。でもどこに電話していいか解らないから、お巡りさんの所に来たんすよ。
キュベレイ団員-----そうか。今回は頼りにされているな。オマワリ。
ザク巡査-----そうですかね。とにかく、そのボール君を助けに行きましょうか。

レッシィ団員-----あーぁ。せっかく探偵団になったのに、なんか退屈だなあ。
ザクレロ団長-----別に我々は探偵団になったワケではないんだし。
レッシィ団員-----でもここにいるだけじゃつまんないですよ。ねえ、ジムⅡ君と私で、悪人のアジトに忍び込んでドキドキする、っていうのはどう？
ジムⅡ団員-----映画じゃないんだし、そんなことは危険ですよ。それよりも悪人のアジトってなんですか？
レッシィ団員-----例えば、の話ですよ。探偵団が出てきたら悪人のアジトだってあるに決まってるんだから。
ザクレロ団長-----団長として、そういう危険な行為は許すワケにはいかんぞ。
レッシィ団員-----もう。ケチ！
ザクレロ団長-----ケチ、って何が？！

ズゴ太郎-----ああ、いたいた。
ザクレロ団長-----あら。キミは名探偵ズゴックの助手のズゴ太郎君か？
ズゴ太郎-----まあ、助手とはちょっと違うんだが、そんなところかな。それよりも、こんなこと聞くのもなんだが、紙コップ持ってないか？
ジムⅡ団員-----紙コップが必要なんですか？
ズゴ太郎-----なぜ紙コップが欲しい？お前は紙コップマニアか？...ああ、すまない。ちょっと興奮してた。ただ誰も片付けない紙コップがある。それが耐えられないんだよ！」
コルタナ団員-----解析中...。そのネタはあまり解る人がいないと思うわ。
ズゴ太郎-----だろうな。誰もズゴ太郎がマギー*ネタをやるとは思わないからな。でも紙コップは座席に置きっぱなしにしないで、ちゃんとゴミ箱に入れてくれよな。
*)マギー：Fallout:NewVegas のDLC 「Old World Blues」に登場するキャラクター。元楽天イーグルスの選手でもないし、綺麗なお姉さんでもない。
ザクレロ団長-----その辺に関しては、我々は心配ご無用だな。
レッシィ団員-----団長達が沢山ビール飲むから捨てないと目立ちますもんね。
ズゴ太郎-----それなら良いんだが。それよりも、刑事さん、アンタに話があってきたんだ。名探偵ズゴックからの伝言で、昔の事件の時にハムスターの顔は見つかったのか？って事を知りたがってたぜ。もし見つかってないんだったら、現場近くの沼をさらってみるべきだって。
リックディアス刑事-----顔ですか...。うーん...。確かに顔は見つからなかったんだが。しかし、あれからすでに38年ですぞ。もうすでに跡形もなくなっていると思うんだが。
ズゴ太郎-----それが、名探偵ズゴックの言う所によると、そうはならないってことなんだよな。それから、ボール君のお母さんがこの辺にいるはずだから、警察の方で探して欲しいってことだったな。
リックディアス刑事-----ボール君のお母さん。やっぱり彼女も関わっているのか？なんだか良く解らなくなってきたが。それじゃあ、とにかく沼の方を調べてみることにしましょう。それじゃあ、青年団のみなさん。協力頼みますよ。
レッシィ団員-----青年団って、私たちのことですか？
ザクレロ団長-----なんか「団」がついてたら何でも良いみたいだな。我々は応援団だって言ってるのに。
ジムⅡ団員-----でもココにいてもやることがないですし、手伝いましょう。
ザクレロ団長-----そうなのか。でも今回は旧ザク団員がおじいちゃんだから、一人あたりの負担が大きくなるけどなあ。まあ、やるか。
コルタナ団員-----私は女の子だから見学してるわね。
レッシィ団員-----じゃあ私も！
ザクレロ団長・ジムⅡ団員-----えぇ？！

硬式ボール君-----ありがとうございます。ご迷惑をお掛けしました。
ジム団員-----助かって良かったっすよね。
キュベレイ団員-----しかし、あのレスキュー隊員は木登りもお手の物だったな。うちにもあんな団員が一人欲しいものだ。
ザク巡査-----応援団にですか？
ジム団員-----どんぐり公園の椎ノ木だったらボクも登れるっすよ。
キュベレイ団員-----なんだ、その適当な名前の公園は？
ジム団員-----うちの近くの公園っすけどね。ちゃんとした名前は知らないっす。
キュベレイ団員-----そうか。それより、なんで我々はそんな話をしているのだ？
ザク巡査-----それはあなたが木登り名人が欲しいとか言うから。
キュベレイ団員-----おお、そうだったな。あの男、ちょっとイケメンだったからな。すまない。気を取り直して捜査を続けるぞ。
ジム団員-----キュベレイ団員はいつも勝手に刑事なんすね。
キュベレイ団員-----そこは気にするな。それよりも硬式ボールに話しを聞こうではないか。オマワリ。
ザク巡査-----そうでした。それは私の仕事ですからね。硬式ボール君。キミはなんであんな所に引っ掛かってたんだね？
硬式ボール君-----それが、背後から襲われたんで、ほとんど覚えていないんです。でもバットで打たれたのは解ります。これまでもバットで打たれたことはありますからね。
キュベレイ団員-----慣れているのなら、もう少し何か覚えていることはないのか？
硬式ボール君-----うーん...。そうですねえ。...あっ！そうだ。
キュベレイ団員-----なんだ？
硬式ボール君-----あの時、母さんのニオイがしたような気がします。
ザク巡査-----母さんのニオイですか？
キュベレイ団員-----なんかマザコンみたいだが。本当に母親だと思うのか？
硬式ボール-----解りません。もしかすると気を失ってから見た夢かも知れませんし。
キュベレイ団員-----ますます怪しいな。
ザク巡査-----でも気を失ってたんだったら、犯人を探すことも出来なかったってことですね。せっかく高い所にいたのに。
硬式ボール君-----そうですね。でも下から声をかけられて気が付きましたから、気を失っていたのはほんの少しの間だけだと思います。
キュベレイ団員-----その時にすでに犯人の姿が無かったということは、計画的な犯罪ということだな。うーん...。よし、解った！犯人はやっぱりマリンくんだ。
ザク巡査-----えぇ？！なんでそうなるんですか？
キュベレイ団員-----動機はさっきと同じだ。昔の事件に関連しているに違いない。硬式ボール君が木に引っ掛かっていればマリンくんに都合のいいことが何かあるんだ。
ジム団員-----でもお母さんのニオイがしたって言ってたっすよ。
キュベレイ団員-----そんなことも解らないのか？マリンくんがお母さんの匂い袋を使ったに決まっておろう。
ジム団員-----なんすかそれ？
ザク巡査-----これは一度話しをまとめてみないことには、何とも...。

「おーい...！顔がでたぞー...！おーい...！」

キュベレイ団員-----おや？！あの声は？
ザク巡査-----あっちの沼の方からですね。
ジム団員-----あれって、団長の声じゃないっすか？
キュベレイ団員-----これは何かありそうだな。行ってみるぞ。
ザク巡査-----そうしましょう。

[つづく...]