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#130 「ソリティア」 2009-12-19 (Sat)

クリスマス 巨大なネコの プレゼント


 人を食べる「リボンを付けたネコ」が途中で見付けた人間を食べて巨大化しながらブラックホール・スタジオ(Little Mustaphaの部屋)に近づいてきています。いつもなら「サンタの国のサンタの酒」を飲み続けていればこういうピンチは乗り越えられたのですが、今回はそうはいきません。なにしろ「リボンを付けたネコ」は彼ら全員を丸飲みできるほどに巨大化しているので、彼らがどれだけ酔っ払っていようと関係ないのです。

 それはそれで大ピンチなのですが、それよりも前にくだらない話をしていたために別のピンチが彼らの元に訪れてしまいました。存在感がないことをネタにされ続けていたマイクロ・ムスタファがとうとう本気で怒り出しそうなのです。


マイクロ・ムスタファ-----ぅぅぅぅうううう!…ゥゥゥゥウウウウ!

ミドル・ムスタファ-----あの…なんて言うか、これはほんのジョークなんですから、そんなに怒らないで。

マイクロ・ムスタファ-----ぅぅぅぅうううう!…ゥゥゥゥウウウウ!

Dr.ムスタファ-----そうだぞ。それよりも私らはキミがこれまで影ながら活躍してきたことはホントにすごいと思ってるんだからな。

マイクロ・ムスタファ-----ぅぅぅぅうううう!…ゥゥゥゥウウウウ!

ニヒル・ムスタファ-----そうだぜ。それに、今はそんなところを気にしてる場合じゃなくて、みんなで力を合わせてこの状況を乗り切らなきゃいけない時なんだぜ。…というか、Little Mustaphaも何とか言えよ。元はといえばキミがヘンなことを言い出すから。

Little Mustapha-----ボクは、ヘンなことなんか言ってないけど。

ミドル・ムスタファ-----言ってましたよ!

Little Mustapha-----そうだっけ?

マイクロ・ムスタファ-----ぅぅぅぅうううう…。じゃあ、もうイイですよ。

ミドル・ムスタファ-----イイって、何がですか?

マイクロ・ムスタファ-----何がっ、ていうか「ぅぅぅぅうううう」って言ってたらスッキリしましたから。

Dr.ムスタファ-----それだけで良いのか?

ニヒル・ムスタファ-----なんかLittle Mustaphaよりも簡単にスッキリするんだな。

Little Mustapha-----それじゃあ、これからは腹が立ったりイライラした時には「ぅぅぅぅうううう!」って言ってれば良いんだな。

ミドル・ムスタファ-----そういうことではないと思いますが。

ニコラス刑事-----それはどうでもイイと思うんだが、我々は今もっと別のことを気にしたほうがいいと思うんだが。

ミドル・ムスタファ-----ああ、そうでしたね。テレビはどうなりましたか?

Dr.ムスタファ-----ずっとCMのままだな。

ニヒル・ムスタファ-----だいたいあのアナウンサーが食べられたんだぜ。続きがあるとは思えないけどな。


 マイクロ・ムスタファがキレそうな問題は簡単に解決してしまいました。ということは、もう一つの大きな問題を解決解決しないといけません。テレビはあれからずっとCMを流し続けていましたが、ちょうどいいタイミングで臨時ニュースが再開されました。


スタジオのキャスター-----ここで先程「リボンを付けたネコ」に食べられたウッチーこと新内屁端アナのリポートです。ウッチー、そちらでは一体何が起きているのでしょうか?

新内屁端-----ハイ!こちら現場の内屁端です!みなさま、ご心配をかけてまことに申し訳ございませんでした。それよりも、ここがどこだか解りますかぁ?

スタジオのキャスター-----いや、良く解らないですけど。だいぶノイズがひどいようですが。

新内屁端-----それは違います!私は今、先程私を食べた「リボンを付けたネコ」の胃袋の中にいるのです。そして、その後にカメラマンやその他のスタッフ達も食べられてしまって、胃袋の中にやって来たので、こうして中継を再開することが出来たのです!

スタジオのキャスター-----それはつまり…。良く解らないのですが、食べられたのに大丈夫なんですか?

新内屁端-----どうやら、あの「リボンを付けたネコ」は巨大化しすぎたために人間サイズなら丸飲みに出来るようなのです。それでウッチー達は生きたまま胃袋までやって来たということです。

スタジオのキャスター-----でも胃袋の中なら、消化されたりはしないんですか?

新内屁端-----今のところそのような状況にはなっていません。しかし、若干の胃液は出てきているようで、ただ今私の靴底は少しグチャグチャした感じになってまーす!

スタジオのキャスター-----ということは、いずれは全員が胃液で溶かされるかとも思うのですが。

新内屁端-----それよりも、みなさん!こちらをご覧ください!ここは胃袋の中なのですが、ここに面白いことが書かれていまーす!

スタジオのキャスター-----あの、今は緊急事態なのですから、そんなに楽しそうに中継されても困るんですが。

新内屁端-----そんなことは知りません。クリスマスだから楽しそうにやってくれ!って言ってたのはそっちのほうでーす!

スタジオのキャスター-----それは夕方のニュースの時ですよ。

新内屁端-----それよりも、こちらをご覧ください。みなさん、見えますでしょうか?ここは「リボンを付けたネコ」の胃袋の中なのですが、興味深いことが書いてありますよ!なんと、ここには「トイレはこちら」という表示があるのです。

スタジオのキャスター-----それはどういうことですか?

新内屁端-----これはつまり、この看板に書かれている「こちら」の方に行くと、その先に腸があって、さらに進んでそこから外に出ると、そこはトイレということに違いないのです!これがどういうことだか解りますかぁ?

スタジオのキャスター-----何を言っているのか全然わかりません。

新内屁端-----つまり、この「リボンを付けたネコ」はちゃんとしつけられていて、ちゃんとトイレでウン○をするようになっているんです!この先がどうなっているのか確かめてみたいのですが「トイレはこちら」と書いてあるところにある扉は現在開かないようになっているので、確かめることが出来ません。

スタジオのキャスター-----おそらく、それはあなた達が胃液で消化されたあとに開くのだと思いますが。そうなってしまうのは問題なので、ウッチー達はなんとかして口の方から出てこられるように努力してみてくれませんか?

新内屁端-----それよりも、ここで凄い発見をしてしまいました。私達よりも先に食べられていた人間が半分消化されながらも生きていることが判明しました。ここでウッチーが突撃インタビューしてみたいと思いま〜す!…あの、今はどんな気分ですかぁ?

半分溶けた人間-----ウブッ。グブブブブッ…。グヘッ……

新内屁端-----とても盛り上がっているようでーす!

スタジオのキャスター-----以上、現場からでした。予定より早く中継が終わったのでここからは「プロ野球珍プレー好プレー集」をお楽しみください。


ミドル・ムスタファ-----テレビを見てもあまり意味がありませんでしたね。

ニヒル・ムスタファ-----でもあのネコは人間を丸飲みするから、喰われてもしばらくは生きてられるということは解ったよな。それが解っても、どうということはないがな。

Little Mustapha-----それはどうかな?ボクの書いた「トイレ大好き」という小説で主人公の便座屁端は「ザ・ベンザーズ」というロックバンドを結成して何かとてつもない…

ミドル・ムスタファ-----なんですか、それは。今はふざけている場合じゃないと思いますが。

Little Mustapha-----そうじゃなくてね。ボクもたまにはマイクロ・ムスタファみたいな感じで細かいところに気付いたりするから、そういう時にはマイクロ・ムスタファ風にした方がいいのかなあ、とか思ってね。

ミドル・ムスタファ-----別にしなくて良いですよ。

ニヒル・ムスタファ-----それよりも、何に気付いたんだ?

Little Mustapha-----さっきテレビで言ってた「トイレはこちら」というヤツだよ。

Dr.ムスタファ-----あれはテレビ的に面白おかしくやってるだけだろ?

Little Mustapha-----そうじゃないと思うんだよね。ボクは始め、あのネコがこの世界にやってきたのはキミ達三人がこっちの世界に戻ってきた時のどさくさにまぎれて一緒にやって来たからだと思ったんだけど、そうではなさそうなんだよ。最初あのネコはマイクロ・ムスタファがいた世界にいて、それから生け贄を食べるために三人のいた世界に行ってたんだよ。

マイクロ・ムスタファ-----それはそうかも知れませんね。私は今日あのネコに襲われませんでしたから。

Little Mustapha-----そして、今はこの世界にあのネコがいる。どうしてそんなことが可能なのかというと、あのネコは体内に異世界への扉を持っているんだと思うんだよね。

Dr.ムスタファ-----何のことだか全然わからんぞ。

Little Mustapha-----さっきテレビでやってた「トイレはこちら」というのはホントはトイレじゃなくて異世界へ移動するための器官のことを示しているんだと思うんだよね。キミ達はトイレに入って出てくるとこの世界に戻って来たし。あのネコはそれと同じことを体内でやっているんだよ。

マイクロ・ムスタファ-----ちょっと待ってください!今は緊急事態だから自分の小説の引用とかしませんけど、それはおかしいですよ。

Little Mustapha-----なんで?

マイクロ・ムスタファ-----この部屋のトイレの扉が異世界に通じているのは、異世界への入り口がちょうどトイレの扉と同じ場所にあるからであって、異世界への入り口とトイレとは直接関係がないと思うんですが。それに、私があっちの世界に迷い込んでしまう前にはトイレには入ってなかったんですよ。ですから、ここはトイレと異世界への入り口は分けて考えるべきかと思うのですが。

Dr.ムスタファ-----それはまったく持って科学的な意見だな。まさに身から出た…

ニヒル・ムスタファ-----それはもういいぜ。それよりも、ヤバいことになっているのに気付かないか?

ミドル・ムスタファ-----何がですか?

ニコラス刑事-----なんていうか、地震かな、これは?

ニヒル・ムスタファ-----そうじゃなくて、巨大化した「リボンを付けたネコ」がもうすぐそこまで迫ってるってことだと思うけどな。


 一同が黙っていると、一定間隔で部屋全体が幽かに揺れていることが解りました。そして、その揺れは次第に大きくなっているようでした。


ミドル・ムスタファ-----ちょっと、どうするんですか?まだ何にも解決策がないまま大ピンチになって来てますよ。

Dr.ムスタファ-----またそのサンタの酒を飲み続けてれば助かるんじゃないのか?

ニヒル・ムスタファ-----毎回、そう上手くはいかないと思うけどな。

Little Mustapha-----まさに身から出た錆だな。

ミドル・ムスタファ-----なんであなたが言うんですか?!

ニヒル・ムスタファ-----そんなことは気にしても仕方がないぜ。それよりも、オレにそのサンタの酒のボトルを渡してくれないかな。

ミドル・ムスタファ-----なんでですか?

ニヒル・ムスタファ-----もう他に手はないと思うんだよな。というよりも、これまで何の解決策も出てこなかったんだし、最後はこのサンタの酒に頼るしかないんだろ。

Dr.ムスタファ-----それをどうするって言うんだ?

ニヒル・ムスタファ-----オレが外に出て最初にこのボトルごとあのネコに食べられればイイと思うんだがな。どうせ丸飲みされるから、しばらくは生きてられんだろ?だからあいつの胃の中でこの酒をぶちまけたらあのネコはイチコロだと思うけどな。見ろよ。今年はさらにアルコール度数が上がって120%になってるぜ。いつも奇跡を起こすサンタの酒だし、いくら巨大化してもこれを胃の中に直接流し込まれたらどうにもならないと思うけどな。

ミドル・ムスタファ-----でも、そんなことをして、あなたはどうなるんですか?助かるかどうかは解りませんよ。

ニヒル・ムスタファ-----そんなことはどうでもいいのさ。今回に関しては全部オレが悪いんだろ?ミニ・ムスタファの部屋に行こうと言い出したのもオレだしな。それに、オレがいなくなっても特に困ることはないんだろ?だからオレが犠牲になっても大丈夫なんだよ。

Dr.ムスタファ-----だが、キミがいないと私が寂しいんだが。

ニヒル・ムスタファ-----オレだって、そうだけどな。でも全員死ぬよりはましだろ。だからそのボトルを渡してくれよ。

Little Mustapha-----なんか、盛り上がっている感じだけど、そんなことは絶対に許されません!

ミドル・ムスタファ-----何でですか?せっかくニヒル・ムスタファが命がけで私達を救ってくれようとしてるのに。

Little Mustapha-----そうかも知れないけど、そんな英雄的な行為でニヒル・ムスタファが人気者になるのは許されないし、このサンタの酒は今年ボクがもらったプレゼントだから、ニヒル・ムスタファに渡すか渡さないかはボク次第だからね。それよりも、ボクの言っていたトイレの説はどうなったんだよ?

ミドル・ムスタファ-----でも、どちらかというと、あのネコの胃の中に直接サンタの酒をまいた方が効果的という気もしますが。

Little Mustapha-----まったく解ってないなあ。場合によっては飲み薬よりも座薬の方が効果的って知らないの?…もしかすると、この家のトイレの扉は人間には見ることのできない何かを通じてあのネコのコウモンとつながっているかも知れないんだよ。

ニコラス刑事-----なんか汚い話になってなってきてないか?

Little Mustapha-----まあ、そんな気もするけどね。でも今回の裏切り者への罰ゲーム企画第1弾として、ニヒル・ムスタファにはこのサンタの酒をこの家のトイレにまいてきてもらいます。

ニヒル・ムスタファ-----何言ってんだよ。オレが命がけでキミ達を守ろうとしてるのに。そんなことしてサンタの酒がなくなったら、全員ヤバいことになるかも知れないんだぜ。

ミドル・ムスタファ-----それはそうですが、なんとなくこれまでもバカっぽい方が正しかったりしましたしね。

Dr.ムスタファ-----そうだな。それに「命がけ」というのは何だか、らしくないよな。我々にとっては。

Little Mustapha-----ということなんで、このサンタの酒をトイレにまいてきてくれるのなら渡すけど。どうしますか?

ニヒル・ムスタファ-----なんだよそれ?そんなんじゃ全然雰囲気が出ないんだけどな。…まあ、解ったよ。罰ゲームとしてサンタの酒をトイレにまいてくるから渡してくれよ。どうなっても知らないぜ。

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