クリスマス あっちとこっちで グダグダで
「別の次元っぽいところ」に迷い込んでしまった三人を助けるための方法を知っていそうだったトナカイは用事を思い出してブラックホール・スタジオ（Little Mustaphaの部屋）から帰ってしまい、やることがなくなったLittle Mustaphaとマイクロ・ムスタファはとりあえず留守番電話に録音されているメッセージを聞いてみることにしました。
マイクロ・ムスタファ-----この展開だと、このメッセージはあの「謎の声」かも知れませんね。
Little Mustapha-----そうかもね。でも今年はなんとなくあの声は聞きたくないな。ボクらはプレゼント欲しさに油断してしまったんだと思うよ。ボクもキミも、ここにいない三人もね。
マイクロ・ムスタファ-----そのようです。私達は本当に愚かな生き物なのです。
Little Mustapha-----そうだなあ…。ボクらの犯してきた罪の重さに気付いた時には全ては手遅れ…。あれ？なんかキミと一緒にいたら後ろ向きな性格が感染してしまったぞ。そんなことよりもメッセージを聞かないとね。というか罪の重さって何だよ！
マイクロ・ムスタファ-----あなたが言ったんだから私に聞かないでください。
Little Mustapha-----そうだっけ？とにかくメッセージを聞くからね。
Little Mustaphaが再生ボタンを押しました。
留守番電話-----ゴゴ・ゴジ・ゴゴ・ゴゴ・ゴゴゴ・ゴゴゴゴ…ピーッ！「ちょいと！あなた達はなんだって言うの？今年もあたくしを呼ばずにクリスマスパーティーですの？それにそこにいる女は何なんですの？あたくしよりも、そんな角の生えた女が良いとでも言うんですの？今年もクリスマス・イヴのラジオ特別番組の後の予定は開けておいたのに、これではせっかくのクリスマス気分が台無しですわ！あなた達が今年もあたくしに対して失礼千万だということを反省してあたくしに謝罪したいのなら、あたくしのお屋敷に電話するんですのよ！あたくしのお屋敷の電話番号は666の…」ピーッ！メッセイジ・オワリ！
Little Mustapha-----ここで来たか。
マイクロ・ムスタファ-----これは興味深いですね。
Little Mustapha-----なにが？
マイクロ・ムスタファ-----あの…、いや。私もここで彼女からのメッセージが再生されるとは思っていなかったので、特に私の小説からの引用も用意できてなかったのですが。
Little Mustapha-----そうなのか。まあ、ボクらは基本的にアドリブとか得意じゃないからね。でも、キミが毎回その場の雰囲気で未完の小説のネタをやっているのではないということは証明できたね。
マイクロ・ムスタファ-----そうですが、それが証明できてもあまり意味がありませんよね。
Little Mustapha-----それはそうだ。というか、やることなくなっちゃったね。
マイクロ・ムスタファ-----とりあえず、ミドル・ムスタファ達の所に電話をしてみたらどうでしょうか？
Little Mustapha-----電話してどうするの？彼らを助ける方法は今のところ見付からないとか、サンタが今年は死者が出ると言っていたよ！とか伝えるの？
マイクロ・ムスタファ-----そうではなくて、我々二人で考えるよりも、いつものように五人で何かを考えていた方が解決の糸口が見付かるかも知れませんよ。
Little Mustapha-----そうかも知れないけどね。でも、毎回ボクらが解決策を考えているのではなくて、いつの間にか解決しているという感じだったと思うけど。まあ、とにかく電話はしてみようか。
Little Mustaphaはマイクロ・ムスタファに言われたとおりに電話をかけました。自分の家から自分の家の電話番号にかけて本当に彼らのところに繋がるのか知りませんが、電話をかけるといつもとはちょっと違う電話の音がして、いつもとはちょっと違う感じで呼び出し中の音が聞こえてきました。長い間呼び出し音が鳴っていましたが、根気強く待っているとミドル・ムスタファの声が聞こえて来ました。
ミドル・ムスタファ-----ハイ！こちら異次元っぽい世界です！もしかしてLittle Mustaphaですか？
Little Mustapha-----何だ、そのヘンなテンションは？
ミドル・ムスタファ-----アーノー、すいませんねー。私達はいつもピンチになると酒を飲んでたでしょ？だから今日も飲んでたら何か起こるかな？見たいな。ハハハハハッ！
Dr.ムスタファ-----おいLittle Mustapha！私は凄い発見をしたぞ！キミがいないとな、ゼンゼン酒が減らないんだ。だけど私らはこんなに酔っ払ってしまったけどな。ガハハハッ！
Little Mustapha-----それに関して言うとね、実はマイクロ・ムスタファもボクと同じぐらい飲んでいることが今回明らかになったんだけど。…というか、そんなことを話しても意味がないんだけどさ！なんで、そんなに酔っ払いなんだよ！
ニヒル・ムスタファ-----それはキミがここにいないから言えることだぜ。オレ達のうち一人は今日ネコに喰われるかも知れないんだぜ。ヘヘッ。なんか皮肉な話だよな。こんな感じで最後になるなんてな。オレはずっと黙ってたんだが、本当はオレだってキミ達みたいにバカなことを言って見たかったんだぜ。本当はキミのことがずっとうらやましかったんだよ。でもオレがいつでもオレらしくしてないと、オレ達は上手くいかなかっただろ？知ってるんだよ。でも今日はもう大丈夫だよ。オレはやっと自由になれるんだ。この状況になってやっと自分のやりたかったことが…
Little Mustapha-----ちょっと！ちょっと待って！
そう言ってLittle Mustaphaは電話機の「保留」ボタンを押しました。異次元っぽい場所では電子音でヘンな音楽が流れ始めました。
Little Mustapha-----ちょっとヤバいことになっている気がするんだけど。
マイクロ・ムスタファ-----そうですね。今回の電話では向こうもハンズフリーモードになっています。
Little Mustapha-----いや、そうじゃないよ！ニヒル・ムスタファに死亡フラグが立ちかけてなかった？
マイクロ・ムスタファ-----何ですか、それ？
Little Mustapha-----キミは自称小説家のくせにそんなことも知らないのか？あのニヒル・ムスタファの告白とか、どう考えても今回の犠牲者はニヒル・ムスタファじゃないか？って気になるでしょ。
マイクロ・ムスタファ-----ああ、そう言うことですか。でも彼らは今みんなデスパレートになってますから、それは仕方のないことだと思いますが。
Little Mustapha-----デスパレートってなんだ？…まあいいか。とにかく、この状況はマズイ感じだよね。こっちだってサンタの酒を飲んでいてそうとうに酔っ払いなはずなのに、向こうの方がさらに酔っ払いだし、ここは通話を始める前にアルコール度数を高めないといけないな。
マイクロ・ムスタファ-----それはつまりマンモ…
Little Mustapha-----ア、ア、ア、ア、ア、ア！
マイクロ・ムスタファ-----そうでしたね。あれは禁止になっていたんですね。
Little Mustapha-----そうだよ。今年からは装いも新たに…、えーと…「ギガ・ギルガメッシュ飲み」をしましょう！ということかな。
マイクロ・ムスタファ-----なんですか、それは？
Little Mustapha-----とりあえず仮の名称だから何でも良いんだよ。じゃあ、とりあえず一気飲みしたら通話を再開ね。
マイクロ・ムスタファ-----良いですよ。
Little Mustapha-----それじゃあ、メリー・クリスマース！
良くわかんないですが、Little Mustaphaとマイクロ・ムスタファがグラスに注がれた「サンタの国のサンタの酒」を一気飲みするとハイテンションのLittle Mustaphaがもう一度「保留」ボタンを押して異次元っぽい世界との通話を再開しました。
Little Mustapha-----イエーイ！みんな盛り上がってるのかな？
電話-----………。
Little Mustapha-----あれ？！ちょっと…、まさか。今回は一人だけでしょ？！三人とも無反応とかって…
電話-----………。
マイクロ・ムスタファ-----ちょっと待ってください。
Little Mustapha-----何が？
マイクロ・ムスタファ-----聞こえませんか？
Little Mustapha-----だから、何が？
マイクロ・ムスタファ-----寝息ですよ。
そう言われてLittle Mustaphaが耳を澄ますと電話機のスピーカーから幽かに向こうから聞こえてくる寝息のような音が聞こえてきました。
Little Mustapha-----これはどういうことだ？
マイクロ・ムスタファ-----良く解りませんが、保留中に流れる音楽が彼らにとって余程退屈なものだったんじゃないですか？いったいどんな音楽を流してるんですか？
Little Mustapha-----そんなことを言われても、家の電話の「保留中の音楽」なんて聞いたことないし。
マイクロ・ムスタファ-----とにかく彼らを起こさないといけませんね。
電話の向こうで寝ている人間を起こすのは至難の業ですが、マイクロ・ムスタファはハンズフリーモードの電話機に近づいて言いました。
マイクロ・ムスタファ-----もしもし、マイクロ・ムスタファですが、ここでお知らせがあります。どうやら私は妊娠しているようなんです！
電話の向こうの一同-----（ウワーッ！）（マジかよ！）（というか、ありえんだろ！）
Little Mustapha-----ま…、マジで？！
マイクロ・ムスタファ-----あなたまで驚かないでくださいよ。これが文学というヤツです。
Little Mustapha-----文学ではないと思うけど…。というか、これまでずっとそう思っていたし、そうだとは思うんだけど、キミは男でよろしかったよね？
マイクロ・ムスタファ-----そうですよ。とにかく私の文学によって三人とも目が覚めたみたいだから良いじゃないですか。
Little Mustapha-----何が文学だか全然解らないけど…。まあ、とにかく話を先に進めないとね。というかボクはもう一度サンタの酒を一気飲みしないといけない感じだけど。
Little Mustaphaがもう一度サンタの酒を飲み干してからまた電話に向かって話しかけました。
Little Mustapha-----イエーイ！みんな盛り上がってるかな？
ミドル・ムスタファ-----盛り上がるというか、すっかり酔いが醒めてしまいましたけど。
Dr.ムスタファ-----それよりもマイクロ・ムスタファは男だよな？これまでずっと男だと思っていたけど、妊娠しても男だよな？
Little Mustapha-----それは文学だからダイジョブみたいだよ。
ニヒル・ムスタファ-----文学って何だよ？
Little Mustapha-----それはボクにも解らないけどね。とにかくここでどうすればキミ達を救うことが出来るのか考えるべきだと思うんだけどね。
ミドル・ムスタファ-----それはそうですけど、あなたはその方法が解ったから電話をかけてきたんじゃないんですか？
Little Mustapha-----そんなに簡単にいったらクリスマスって感じじゃないしね。「みんなで力を合わせて」というのが今回のコンセプトっぽいから。
ミドル・ムスタファ-----なんですかそれは？それに、みんなで力を合わせるといっても、私達はここではすごく無力な気がするんです。…何というか、どこにもヒントがないという感じで。テレビをつけたらおぞましい映像ばかりですし、ラジオを聞いたら気持ち悪い音楽が流れてきて、不安になるし。それに酒を飲んでみてもただ酔っ払うだけでいつものように奇跡的なことが起きないんですよ。
Little Mustapha-----それじゃあ、やっぱりダメなのかなあ？
Dr.ムスタファ-----何を言っているんだ！科学的に考えれば簡単に解決策は見付かるはずだぞ！
ニヒル・ムスタファ-----だったら先生が見付けてくれよ。
Little Mustapha-----…ああ、そうだ！
Dr.ムスタファ-----ほら、科学的に考えたら解っただろ！
Little Mustapha-----そうじゃなくてね。今回はキミ達がいなかったせいもあってテレビとかラジオをあまり見たり聞いたりしてないんだよ。もしかするとそこに何らかのヒントがあるかも知れないね。
Dr.ムスタファ-----やっぱり科学に勝るものナシだな。
ニヒル・ムスタファ-----何が科学なのかゼンゼンわかんないけどな。
そんな感じなのでLittle Mustaphaはとりあえずテレビをつけてみました。クリスマス特別番組ということでクリスマスっぽいバラエティ番組がやっていて盛り上がっているということになっていましたが、これは彼らにとって意味があるとは思われませんでした。テレビを消すとLittle Mustaphaはラジオを持ってきて電源を入れました。
Little Mustaphaのいる世界はいつものクリスマスと違って何事も起きていないので、ラジオの電源を入れると普通に音楽やニュースが聞こえてきます。それらを聞いても特に気になることもないので、Little Mustaphaはラジオのチャンネルを一番低い周波数に合わせてほとんどのラジオで受信することの出来ない謎のローカルFM局の音を聞き始めました。
知っている人は知っていると思いますが、そのローカルFM局ではPrincess Black holeのクリスマス特別版組が放送されていました。