クリスマス アッチもコッチも 大変だ!
なぜかマイクロ・ムスタファがこっちの世界に戻って来られたのですが、やはりブラックホール・スタジオのクリスマスはまともでなくなります。いつものようにマイクロ・ムスタファが留守番電話にメッセージが残されていることに気付きました。そして、いつものようにLittle Mustaphaが再生ボタンを押しました。
留守番電話-----ゴゴ・ゴジ・ロク・ヒャク・フン。ピーッ!「もしもし。ミドル・ムスタファです。私達は今、大変なことになっているんです。あなたが今回の我々の行動に関して腹を立てているのは解っていますが、私達の命がかかっているのです。お願いですから、どうか電話に出てください。私達はまんまと…」ピーッ!メッセージ・オワリ!
Little Mustapha-----なんだこれは?まだ電話に出てくれとか言ってるけど、電話は鳴ってないしなあ。助けが必要ならミニ・ムスタファに頼めばいいのにな。
マイクロ・ムスタファ-----それはどうですかね。今のミドル・ムスタファの声はそうとう動揺しているようでした。私の書いた「ピンチの季節」という小説で主人公の絶対屁端舌明(ゼッタイヘバタ・ゼツメイ)はこういう状況で助けを求めたのに無視されたことによって何かとてつもない…
研修中トナカイ-----それよりも、いいですか。
Little Mustapha-----なにが?
研修中トナカイ-----また電話が鳴りそうですよ。
Little Mustapha-----なんでトナカイさんとかって、そういうことが解るんだ?
そう言ってLittle Mustaphaが電話を見つめたとたんに電話が鳴り出したので、Little Mustaphaとマイクロ・ムスタファは一緒に驚いてビクッとなりました。例によって、二人ともお互いにそのことには気付かないフリをしていました。
Little Mustaphaは電話のボタンを押してハンズフリーモードで電話に出ました。
Little Mustapha-----もしもし。
ミドル・ムスタファ(電話)-----良かった!やっと出てくれましたね。
Little Mustapha-----やっと、っていってもキミからの電話が鳴ったのはこれが初めてだけどね。
ミドル・ムスタファ(電話)-----それよりも、大変なんです。
Little Mustapha-----それはさっきのメッセージで聞いたけど。何が大変なんだ?
ミドル・ムスタファ(電話)-----私達はこのままここにいたら三人とも殺されてしまいます。
Little Mustapha-----それは、大変だねえ。
ミドル・ムスタファ(電話)-----そんな、気楽な感じで反応しないでくださいよ!こっちはホントに大変な事になっているんですから。
Little Mustapha-----そうは言っても、キミの説明が足りてないからビックリしようがないんだよね。
ミドル・ムスタファ(電話)-----そうですか。あなたも知っているとおり、今年はミニ・ムスタファの部屋に行く予定でした。そして、私とニヒル・ムスタファとDr.ムスタファでここにやって来たのですが、ここはミニ・ムスタファの部屋じゃなくてどこか別の場所だったんです。
Little Mustapha-----それは大変だ!
ミドル・ムスタファ(電話)-----まだ「大変」なところまで話してませんよ!
Little Mustapha-----あれ?そうなの?
ミドル・ムスタファ(電話)-----私達はどうやら例のあの謎のメッセージを残す人物に騙されたようなんです。私達がミニ・ムスタファの部屋だと思っていた場所に行く間に、おかしな世界に連れて行かれてしまったみたいなんです。
Little Mustapha-----つまり、マイクロ・ムスタファみたいに別の次元みたいなところに迷い込んでしまったということ?
ミドル・ムスタファ(電話)-----そのようなんです。ここにはあなた達やその他の人間もいないみたいですが、ここはあなたの部屋にそっくりなんです。
Little Mustapha-----それはおかしいな。今日はマイクロ・ムスタファも別の次元っぽいところのボクの部屋にいたんだよ。だから、そこが別の次元っぽいところだったらマイクロ・ムスタファに会っても良さそうな気がするけど。
研修中トナカイ-----それは違います。「同じ場所にあるけど別世界」は無限に存在可能と言われています。
ミドル・ムスタファ-----今の声は誰ですか?
Little Mustapha-----とってもセクシーな研修中のトナカイさんだよ!どうだ、うらやましいだろ。しかも全裸だぜ!
研修中トナカイ-----ちょっと!…
Little Mustapha-----ああ、ごめんなさい。今の発言は撤回いたします。
ミドル・ムスタファ(電話)-----そんなことはどうでもイイです。それよりも、続きを聞いてください。私達がここにいると、あなたの部屋にあるのと同じような留守番電話にメッセージが残されていて、例のあの声が恐ろしいことを言っていたんです。
Little Mustapha-----それは大変だ!
ミドル・ムスタファ(電話)-----まだですよ!
Little Mustapha-----ああ、すいません。
ミドル・ムスタファ(電話)-----そのメッセージによると、今日この三人の中の一人が「リボンを付けたネコ」の生け贄にされるというのです。その「リボンを付けたネコ」は一年に一度生け贄を求めてこの世界…というか「別の次元っぽいところ」というのですか?どうでもいいですけど、ここにそれがやって来て生け贄を食べるんです。
Little Mustapha-----それで、誰が食べられることになったの?
ミドル・ムスタファ(電話)-----そうじゃなくて、今が驚くところじゃないですか?!
Little Mustapha-----ああ、そうか!それは大変だ!…というか、キミ達がいないとヘンな話としては盛り上がらないからね。今やっとヘンな感じで盛り上がって来たけど。
ミドル・ムスタファ(電話)-----そんなことを言っている場合じゃないんですよ。誰が食べられるにしても生き残った二人は次の一年、この誰もいない場所で過ごさないといけませんし、きっとそんなことになったら気が狂って何をするか解りませんし、そうならないとしても二年経てば私達は全員「リボンを付けたネコ」の餌食なんです。だから、なんとかしてくれませんか。
Little Mustapha-----なんとかする、とか言われてもねえ…。これはいつもとは勝手が違うから無理かも知れないねえ。
ミドル・ムスタファ(電話)-----そんなことは言わずに、お願いしますよ。
Little Mustapha-----まあ、なるべくなんとかなるように考えてみるけどね。でも明るいニュースを一つ教えておくとね、反射神経が鈍いというウワサのマイクロ・ムスタファは何度か「リボンを付けたネコ」に襲われたけど助かってるから、生け贄になってもしばらくは逃げられると思うよ。それから、言い忘れたけどマイクロ・ムスタファは元の世界に戻ってきちゃったよ。なんでか知らないけど。
ミドル・ムスタファ(電話)-----そうなんですか?…でも、それを知ったところでなんにもならないですけど。とにかく私達もなんとかなるように努力してみますから、そちらでも頼みますよ。それから恐らくですが、そっちの電話であなたの部屋の電話番号をかけるとコッチに繋がると思います。この電話もそうやってかけてますから。それじゃあ、何かあったらまた電話しますし、そっちでも何かあったら電話してください。
研修中トナカイ-----これは大変な事になりました!
Little Mustapha-----なんか急にハイテンションだけど。
研修中トナカイ-----あなたはまだ「リボンを付けたネコ」の恐ろしさが解っていないからそんなことが言えるのです。
Little Mustapha-----でも、マイクロ・ムスタファでも逃げられたんだし、家の中なら安全だとか言ってたでしょ。
マイクロ・ムスタファ----まあ、それはそうですけど。
研修中トナカイ-----でも、マイクロ・ムスタファさんの場合は…、その…特別な能力が…
Little Mustapha-----なんだそれ?もしかしてマイクロ・ムスタファは人間ではなかった!とか、そんな展開はやだぞ。
マイクロ・ムスタファ-----そうじゃないですよ。トナカイさんは気を使ってくれてますけどね。私に存在感がないから、あのネコも私に気付かずに、襲ってくるタイミングが遅れるんです。だから私は助かっていたんです。
Little Mustapha-----ああ…、そうなのか。じゃあ、あの三人はホントにヤバいということなのか?
研修中トナカイ-----こうしてはいられません。私達であなたの仲間を助けに行きましょう!さあ、冒険の準備をしてください!
Little Mustapha-----冒険の準備って…!?もしかして今回はこの部屋を飛び出して三人を救出する大アドベンチャーになるってこと?!それは良い感じだなあ。一回そういうのをやってみたかったんだよね。じゃあ、ちょっと待っててね。冒険の準備をするから。…というか、何を持っていけば良いんだ?とりあえずケータイとiPod touchと…冒険だからハンディGPSとかもあった方がいいかな?デジカメも一応持っていくか。…というか、これはちょっと遠出をする時の持ち物だな…。まあ、とにかくいつものリュックを持っていけば良いということだな。
研修中トナカイ-----マイクロ・ムスタファさんも準備は良いですか?
マイクロ・ムスタファ-----私も行くんですか?
研修中トナカイ-----当たり前です。みんなの力を合わせないと「リボンを付けたネコ」には勝てません。
Little Mustapha-----そうだよ!みんなで力を合わせないとね。動きが遅くて、攻撃力も低いマイクロ・ムスタファ君は僧侶という設定にしておくけどね。それじゃあ、大冒険に出発だ!…というか、最初はその辺の野良猫と戦ってレベルを上げたりするのかな?でもそんなことをしているヒマはないから…
研修中トナカイ-----あっ、ちょっと待ってください。
Little Mustapha-----なにが?
研修中トナカイ-----また電話が鳴ります。
ちょっと盛り上がっていたところですが、またトナカイが電話が鳴ることに気付いてLittle Mustaphaとマイクロ・ムスタファが電話を見つめていると電話が鳴って、二人がビクッとなってから、何事もなかったようにLittle Mustaphaがまたハンズフリーモードで電話に出ました。
電話-----オーッホッホッホッホッホ!キミ達、クリスマスを楽しんでいるかね?
Little Mustapha-----その声は去年のサンタさんだ。
サンタ(電話)-----今年はなにか恐ろしいことが起こると思って、何が起きても良いようにキミ達の中の一人を別の次元っぽいところに連れて行ってしまったんだが、上手くいってるかね?
Little Mustapha-----それって、もしかしてマイクロ・ムスタファのこと?上手くいってるかどうか知らないけど、何かの拍子にこの世界に戻ってきてしまったけど。
サンタ(電話)-----そうなのか?それは不思議な話だな。
Little Mustapha-----それよりも、サンタさんは旅に出ているということになってるけど、今はどこにいるの?
サンタ(電話)-----そうなんだが、ちょっと疲れてしまったから今はサイパンで休憩中なんじゃよ。オーッホッホッホッホッホ!
Little Mustapha-----休憩中って!?しかもサイパンってビミョーな感じですよね。というか、今日はクリスマスなんだからそんなところにいないでプレゼントとか配ったりしないと。
サンタ(電話)-----まあ、そうなんだが、休憩とクリスマスが重なってしまったのは偶然だから仕方がないのだよ。オーッホッホッホッホッホ!それにハワイとかに行くとこの先、有名人がたくさんやって来るから面倒なんじゃよ。
Little Mustapha-----というか、お正月まで休憩するつもりなの?!…まあ、いいか。それよりも旅に出て何か解ったんですか?あの謎のメッセージのこととか。
サンタ(電話)-----まあ、少しずつだがなんとなくな。少なくとも今年はキミ達が大ピンチなことは解ってたから、緊急措置であらかじめ一人を別の次元っぽいところに送ってあっただろ。そうしておかないと、今年の君は仲間全員に裏切られて一人になってしまうから、それはそれで大変な事になっていたはずだぞ。オーッホッホッホッホッホ!
Little Mustapha-----そう言われるとそうかも知れないけど、根本的なことは何も解決してないとか、そんな感じもするけど。まあ、とにかくこれから大冒険が始まって今年のクリスマスの面倒なことは全て解決するからダイジョブですよ。
サンタ(電話)-----そうか。それなら良いけどな。それから、ちょっと気になるから言っておくけど、今年は君らの仲間の中に一人だけ死者が出るかも知れないぞ。…アッ、これは言わない方が良かったかな?オーッホッホッホッホッホ!それじゃあ、また合おう!オーッホッホッホッホッホ!
Little Mustapha-----ちょっと、なんだよ今の!?死者が出たらマズいんじゃないの?そんなことにならないように早く冒険の旅に出なくては!さあ早く!出かけるよ!
研修中トナカイ-----アッ、いけない!
Little Mustapha-----どうしたの?
研修中トナカイ-----今の電話で思い出してしまったんですけど、私はこんなことをしている場合じゃなかったんです。本当はあなた達にプレゼントを渡したらサンタの孫娘さんがプレゼントを配るのをお手伝いしないといけなくて。…ああ、もうこんな時間になってしまって。こうしてはいられません。後はあなた達でなんとかしてくださいね。
Little Mustapha-----ちょっと、待ってよ。大冒険はどうなるの?というよりもヘンな世界の三人は大ピンチだし、さっきサンタさんは不吉なことを言ってたんだし、プレゼントとかよりもこっちが優先じゃないの?
研修中トナカイ-----こども達の夢とあなた達の命。どっちが大切だと思いますか?
Little Mustapha-----それはどっちかって言うと、命の方が…
研修中トナカイ-----それでは、私はこども達に夢をあたえるために仕事に戻ります。あなた達とはきっとまた会えますよね。ごきげんよう!ニャン!
Little Mustapha-----エェェェェ!エェェェェ!…エェェェェ!…エェェェェ!
マイクロ・ムスタファ-----もう行ってしまったから、あきらめた方がいいんじゃないですか。
Little Mustapha-----まあ、そうなんだけどさ。キミはこの展開に対して何も思ってないの?トナカイさんはもっと研修して空気を読めるようにならないといかんな。
マイクロ・ムスタファ-----私だって、あなたと同じ気持ちです。でも、みっともないからあなたみたいに「エェェェェ!」とは言いませんけどね。
Little Mustapha-----みっともなくてスイマセンね。…それよりも、どうすんの?トナカイさんがいなくなったから大冒険しようにも、どこに行けば良いか解らないし。こうしている間にも別の次元っぽいところの三人は危険な状況になっているかも知れないし。
マイクロ・ムスタファ-----とにかく、目先の問題から解決したら良いのではないでしょうか。
Little Mustapha-----問題って?
マイクロ・ムスタファ-----その電話です。
電話を見ると、留守番電話のメッセージが録音されていることを示すランプが点滅していました。