クリスマス イルミネーション イルミナティ
コッチの次元とアッチの次元でおかしな感じのクリスマスパーティーを始めたLittle Mustaphaとマイクロ・ムスタファですが、Little Mustaphaだけでなくマイクロ・ムスタファも意外と沢山飲むので、最初に飲んでいた高級（ということになっている）ワインはすぐになくなって、今では二人ともいつもの安いウィスキーを飲んでいます。
Little Mustapha-----これまで気付かなかったけど、キミって毎回そんなに酒を飲んでいたの？
マイクロ・ムスタファ-----ええ、まあ。作家と酒は切っても切り離せないモノだという私の哲学もありますし。私の書いた「上戸（じょうご）の季節」という小説で主人公の上戸屁端彩（ウエトヘバタ・アヤ）は…
Little Mustapha-----ちょっと待った！
マイクロ・ムスタファ-----なんですか？
Little Mustapha-----その主人公だけど、真面目にその名前なのか？なんだか、キミは毎回「私の書いた小説」とか言ってるけどいつも適当にその場で考えてない？
マイクロ・ムスタファ-----そんなことはありませんよ。「上戸の季節」は何年も前に書き上げた未完の小説です。
Little Mustapha-----未完じゃ書き上げてないじゃん。まあ、どうでもいいか。それよりも、さっきからキミと話をしていることは話しているんだけど、キミは一体この部屋のどこにいるんだ？
マイクロ・ムスタファ-----いつものように部屋の端に座っています。
Little Mustapha-----そうなのか。なんかどこを見て喋ったら良いのか良くわかんなくてね。でもさ、もしもボクがコッチの部屋のその場所に行ったらなんか起きるかな？
マイクロ・ムスタファ-----そういう好奇心は危険だと思いますよ。
Little Mustapha-----なんで？
マイクロ・ムスタファ-----もしも、我々が別の次元のほぼ同じ場所にいる時に私がソッチの次元に戻ってしまったり、あなたがコッチの次元に来てしまったりしたらどうなると思いますか？
Little Mustapha-----ウーン。なんかそれは恐ろしい感じだな。二人の人間が同じ場所にいることはあり得ないから、もしもそんなことになってしまったらあり得ないことになる、ということだな。
マイクロ・ムスタファ-----そういうことです。
なんだか難しいのかそうでないのか、良く解らないことを考えていたら、なんとなく話が続かなくなってしまって二人とも黙ってしまったのでLittle Mustaphaがテレビをつけました。テレビではいつものように夕方のニュース番組が放送されていました。
スタジオのキャスター-----さて、ここでクリスマスで盛り上がっているギンギラの街から中継です。お台場には先日二代目人気女子アナのウッチーこと内屁端アナを襲名した新ウッチーがいます。それでは早速中継してもらいましょう。ウッチー！
新内屁端-----ハイ！こちらは現場のウッチーで〜す。みなさん、ここがどこだか解りますかぁ？
スタジオのキャスター-----いや…、だからお台場じゃないんですか？
新内屁端-----ゼンゼン違います！ただ今私は、天性の勘を働かせて毎年クリスマスにおかしな事件の起きる街にやって来ているのです！
スタジオのキャスター-----そうじゃなくて、今日はクリスマスのイルミネーションがギラギラしているお台場からの中継が番組のメインということなんですが…。
新内屁端-----しかし、報道番組としてはそういう娯楽的要素よりも、リアルな事件を現場からお伝えしなくてはならないのです。…アッ！ちょうど今通りかかった人にインタビューしてみたいと思いま〜す！…現場はどのような状況になっているのですか？
通行人-----何これ？テレビ？
新内屁端-----そうでーす！
通行人-----あっ！あなた夕方のニュースに出てる人だ！これ今映ってんの？
新内屁端-----生中継でーす！
通行人-----ということは、オレって有名人じゃん！イエ〜ィ！イエ〜ィ！
新内屁端-----現場はダブルピースで非常に盛り上がっていま〜す！イエ〜ィ！イエ〜ィ！
スタジオのキャスター-----そうじゃなくて、そこでは何か事件が起きているのですか？
新内屁端-----…残念ながら何も起きていませ〜ん！
スタジオのキャスター-----…あぁ。…ここでいったんCMです。CMのあとは特集コーナー「最新激安グルメ情報。コレは喰えるか？喰えないか？工業地帯の公害料理特集」です。
その頃、ミニ・ムスタファがいないままクリスマスパーティーを始めた三人は、いまいち盛り上がらないままミニ・ムスタファの現れるのを待っていました。
ミドル・ムスタファ-----おかしいですねえ。そろそろ来ても良い頃なのに。
Dr.ムスタファ-----ヤツがどんな人間なのか解らないのが余計に我々を不安にさせるな。こんなことならLittle Mustaphaの所に行ってたほうが良かったんじゃないか？
ニヒル・ムスタファ-----何言ってんだよ。ここに来るまでは今年こそプレゼントが貰えるって盛り上がってたくせに。ミニ・ムスタファの目的は知ってるだろ？あいつはオレ達を取り込んでLittle Mustapha's Black holeを乗っ取ることが目的なんだぜ。だからなんとしてでもオレ達にプレゼントを用意して、オレ達を仲間にしようと思ってるから、こんなに遅れてるんじゃないか？
Dr.ムスタファ-----プレゼントを貰ったらミニ・ムスタファの仲間になるのか？
ニヒル・ムスタファ-----その辺は深刻にならなくてもいいのさ。もしそうなってもLittle Mustaphaはまたミニ・ムスタファからLittle Mustapha's Black holeを取り戻そうとして、ボクらに何らかのオイシイ話を持ってくるんと思うんだよね。
Dr.ムスタファ-----すると、わしらは、なんというか、やりたい放題だな！
ニヒル・ムスタファ-----だろ？
ミドル・ムスタファ-----それはどうですかね？
Dr.ムスタファ-----何がだ？
ミドル・ムスタファ-----これはウワサなんですけど、Little Mustapha's Black holeでは大幅な人員削減が予定されているらしいんですよ。
ニヒル・ムスタファ-----そんなウワサはどこで聞いてきたんだよ？
ミドル・ムスタファ-----どこで聞いたか良く解らないのがウワサというものですけど。でも、最近Little Mustapha's Black holeに登場するキャラクターが多すぎて面倒なことになっているから、何人かは降板になるということらしいんです。まあ、あくまでもウワサですけど。
Dr.ムスタファ-----でもわしらは、Little Mustapha's Black holeではそれなりに重要な場所で登場するからダイジョブだろ。私の翻訳コーナーは大人気らしいしな。
ミドル・ムスタファ-----それが、そうでもないんですよ。ボクらがLittle Mustaphaとの連絡を絶ってからボクらが担当するはずのコーナーがボクら抜きで更新されているんですよ。しかも、そっちの方がやりやすいからこれからもボクら抜きで更新されるとか、そんな話もあるんですよ。
Dr.ムスタファ-----それは本当か？！まさに登場人物の事業仕分けだな！
ニヒル・ムスタファ-----そんな例えはどうでも良いぜ。どっちにしろオレには関係ない話だけどな。
ミドル・ムスタファ-----ああ、すいません。あなたは自分が活躍するコーナーがなかったんですよね。なんかニヒル・ムスタファがすねてしまいましたが。
ニヒル・ムスタファ-----すねてなんかいないぜ。それよりも、キミ達がくだらない話をしている間になんかイヤなことが起きたみたいだぜ。
Dr.ムスタファ-----何がだ？
ニヒル・ムスタファ-----そこの留守番電話のことさ。
ミドル・ムスタファ-----これまたLittle Mustaphaの部屋にあるのとそっくりな電話ですけど…。これは、どうしたら良いんですかね？
Dr.ムスタファ-----メッセージが録音されているなら聞かないといかんだろ？
ミドル・ムスタファ-----でも、いつものように電話が鳴っていないのにメッセージが録音されているんですよ。
ニヒル・ムスタファ-----今日はその辺はあまり気にしてなかったから、オレ達が来る前から録音されていた可能性もあるぜ。
Dr.ムスタファ-----それなら聞いても大丈夫じゃないか？
ミドル・ムスタファ-----聞くんですか？
ニヒル・ムスタファ-----もしかするとミニ・ムスタファからのメッセージかも知れないしな。
ミドル・ムスタファ-----…じゃあ、聞いてみましょうか。
その頃Little Mustaphaの部屋では、普段はほとんど喋らないマイクロ・ムスタファがあり得ない感じでたくさん喋っているのに、自分の書いた「○○の季節」という小説を引用したり、それをLittle Mustaphaが途中で遮ったりするのが大変で、たくさん飲んでいるのにもかかわらず、それほどパーティーは盛り上がっていませんでした。
Little Mustapha-----そ、それはどうでも良いんだけどね。それよりも今日はいつものアレはないの？
マイクロ・ムスタファ-----アレってなんですか？私の書いた「アレの季節」で主人公の荒屁端（アレヘバタ）は抽象的すぎる概念を利用して何かとてつもない…
Little Mustapha-----そうじゃなくて、キミがいつも最初に気付く留守番電話のアレのことだよ。
マイクロ・ムスタファ-----ああ、アレですか。まあ、特におかしな所はなさそうですね。というよりも、私は今別の次元にいるのですから、ソッチのことはソッチで調べた方が正確なんじゃないですか？
Little Mustapha-----まあ、それもそうだな。ということで留守番電話を確認してみますが、特に異常はナシという感じですけどね。
マイクロ・ムスタファ-----それはそうと、今日は他に誰か来るんじゃないですか？トナカイとか、呼ばなくてもやって来るニコラス刑事とか。
Little Mustapha-----ああ、そうだった。でも今日は玄関の鍵を閉めてあるからなあ。
マイクロ・ムスタファ-----そんなことをしてダイジョブなんですか？少なくともプレゼントを持ってくるトナカイが来るまでは鍵は開けておいた方が良いんじゃないですか？
Little Mustapha-----それはそうなんだけど。なんていうか、ボクも一人だとちょっと恐いんだよね。またいつものようにここにモンスターがやって来ても、キミは別の次元にいるし。ボク一人じゃいくら酔っ払いでも奇跡が起きない気もするんだよね。
マイクロ・ムスタファ-----でも、さっきのテレビのニュース番組を見ている感じだとそれほど危険な感じはしませんでしたよ。
Little Mustapha-----なんかキミは別の次元にいると楽観的なんだな。なぜか今日はボクの方が慎重な気がするけど。
マイクロ・ムスタファ-----そうですかね？なんか私はこっちでリボンを付けたネコに何度も襲われているうちに少し大胆な考え方が出来るようになっているのかも知れませんね。
Little Mustapha-----そうじゃなくて、どうしてもプレゼントが貰いたいという事じゃないのか？
マイクロ・ムスタファ-----それは違うと思いますが。
Little Mustapha-----どうでも良いけど、玄関から予期せぬ客がやって来て、それをきっかけにまた恐怖のクリスマスになったら大変だから、今日は鍵はかけっぱなし…
Little Mustaphaがそこまで言ったところで、部屋からベランダへ出られる大きな窓の方から物音が聞こえてきました。そして、窓が開くと誰か（或いは何か）が入ってきました。
Little Mustapha-----や…やったぁ…！