時々季節感のない異常な天候な日が続いたりして、今が何月なのか解らないような冬がやって来ましたが、気がつけばもうすぐクリスマス。とくれば、ここはクリスマスにプレゼントをもらうために作戦を考えているLittle Mustaphaの部屋と思いきや、別の場所。
人気女子アナのウッチーこと内屁端アナは、この自宅へ帰ってくる途中に立ち寄ったコンビニで思わず手に取ってしまった手前、買わないワケにはいかなくなった漫画雑誌の表紙をめくって中を確認し始めました。
「ちっ、ふざけやがって…」
そう言いながらウッチーはさらにページをめくっていきました。
彼女がコンビニで思わずこの漫画雑誌を手に取ってしまったのは、表紙に最近人気上昇中のお天気キャスターの宇絵座理保の名前を見つけたからです。宇絵座理保といえば本来はウッチーが担当することになっていた夕方のニュースのお天気コーナーに出演中のアイドル出身の気象予報士です。そんな彼女が漫画雑誌のグラビアに登場していると解ったらウッチーとしては気にならないワケがないのです。
「なんだよ、これグラビアっていっても普段着みたいな服着て。薄着ですらないじゃねえか」
ウッチーは部屋に一人きりなので、裏の顔丸出しでつぶやいています。
「だいたい何なんだ、この雑誌は?『ヤング・ガウンウン』だって?こんなグラビアじゃヤングはウンウン言わねえ、っつうの」
なぜか露出が少ないことに文句を言っているオジサンみたいですが、そこはどうでもいいのです。ウッチーとしては自分の知らない間に後輩がこのような仕事をしていることが気に入らないのです。
「女子アナなめてんな…」
お決まりの台詞が出たちょうどその時、彼女の部屋の呼び鈴を鳴らす音が聞こえてきました。
「はい、どちら様ですかぁ?」
ウッチーは一瞬で怒りの表情から人気女子アナの顔に戻ってインターホンで玄関の外に来た人に対応しました。
「偉大なる人気女子アナの開祖。全てのアンドロイドの神。我々は人気女子アナの内屁端アナに全ての処理能力を捧げる」
「あの、どこかで聞いた声のようですが、どちら様ですかぁ?それに人気女子アナとしては、私にウッチーの称号を授けてくださった初代ウッチー先輩がいるので、少し間違っているのではないでしょうか?」
「我々にとって創造主のあなたこそが人気女子アナ。今日は我々の活動を報告に参りました」
何やら怪しい客がやってきたと思ったウッチーですが、「創造主」と言われてどうしてこの声に聞き覚えがあったのかが解りました。
「もしかして、あなたは私が作ったアンドロイド女子アナのアンパンではないでしょうか?」
「ああ、全能なるウッチー様。全てをお見通しのようです。我々はウッチー様が世界をその手に収める時が来るまで、ウッチー様を邪魔する者達を排除する活動を始めたのです。新たなる次元への旅立ちの日が来るまで、我々はあなたにつくすでしょう」
「あの、何かの間違いなのかと思うのですが。一体何の話ですかぁ?」
ウッチーは少しマズいことになっていると思い始めたのですが、玄関の外にいたアンパンらしき人はすでに何処かへ行ってしまったようです。
それからしばらくすると内屁端アナのスマホに着信がありました。電話をかけてきたのは後輩の腹パンこと腹屁端アナです。
「ウッチーさん、夜分遅くによろしかったでしょうか?大変な事になったのです。先程謎の集団に襲われて、そのために今は病院にいるのです」
「だ、大丈夫ですかぁ?」
内屁端アナはすぐにさっきのアンドロイド女子アナの事を思い出しました。
「はい。とっさの判断でその集団の中の一人を食べたところ、他の人達は逃げていきました。でも酷い食あたりで、胃袋自慢のこの腹パンではありますが、やむを得ず入院となってしまったのです。そして、重要なことがあるのです。その謎の集団ですが、ウッチーさんの名前を口にしていたような気がするのです。もしかするとウッチーさんも狙われているかも知れないので、十分に気をつけて欲しいのです」
やっぱりマズいことになっていると、内屁端アナは思っていました。
腹パンを襲ったのはアンドロイド女子アナに違いありません。アンドロイド女子アナが内屁端アナのライバルを襲うとしたら次は誰になるのか?内屁端アナは机の上に置かれたヤング・ガウンウンを見つめながら背筋をゾクゾクっとさせていました。