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#204 「シュンニュンリュィウィチュリュムニ」 2023-12-24 (Sun)

 ブラックホール・スタジオ(Little Mustaphaの部屋)では何かが起きるのか、起きないのか?という感じで中途半端な緊張感のまま時間が過ぎていきました。

 誰かが何かを喋ると、それに対して一人か二人が反応してそのあとで沈黙が続くという状態でした。そしてまた沈黙が訪れた時。部屋の隅にあるパコリタ・ナラ・ズイルベー・Zeroのランプが点灯しました。

「あっ、夜も更けてきたので、ナノベーが明かりを消します」

パコべーから声がしたと思ったら、部屋の電気が消えました。この時間のブラックホール・スタジオ(Little Mustaphaの部屋)はいつも特殊な状態なので、Little Mustaphaの作った自動的に部屋明かりを消すシステムもなかなか自慢できません。そして、主要メンバー達もこの音声と自動的に明かりが消えることは知っているので、特に驚くこともなく明かりが消えるのを眺めていました。厳密にいうと「ナノベー」というのは今回始めて聞いたので、何のことだろう?と思っていたメンバーもいるのですが、今日はそこを細かく質問しているような雰囲気でもないので、ただ黙っていました。


Little Mustapha-----あ、もうこんな時間か。明かりが消えたってことは、すぐに12時になるよ。

ミドル・ムスタファ-----どうしますか。またフロアランプを点けますか?ちょうど私のところにスイッチがありますけど。

退役サンタ-----いや、ちょっと待て。こうして部屋の中が暗くなっているほうが、外が確認しやすいな。もしもこれから何かがここにやって来るとしても、どういう手段で来るか解らないからな。暗くしておけば窓の外も監視しやすいってことだ。お前達も異常がないかちゃんと見張っていろよ。

Little Mustapha-----でも去年はどこかから転送されてきたような登場の仕方だったよ。

退役サンタ-----その時はその時でな。転送されて来る時にはオレか犬サンダ和尚が気づくからな。

犬サンタ君-----そうだワン。何かが来そうな雰囲気には私が一番良く気づくから任せるんだワン。アァミートーフウォー(阿弥陀佛)…。

Little Mustapha-----またビミョーに発音が違うなあ。

それから、また誰かが喋ったり沈黙したりしながら時間が過ぎていきました。もしかして今日はなにも起きないかも、と思い始めていた時のことです。


マイクロ・ムスタファ-----あ、窓の外のあそこ。何か光っているように見えるのですが。

退役サンタ-----なに?!どこだ?

マイクロ・ムスタファ-----あそこです。なにか青白いものが…。

退役サンタ-----本当だ良く気づいたな。

マイクロ・ムスタファ-----細かいことに気づくのは得意なので。

Little Mustapha-----本当だ。あの青白い光は、なにか嫌なものを思い出してしまうよ。

Dr. ムスタファ-----だが遠すぎて何が来てるのか解らないぞ。青いってことは東横インの光が反射してる可能性もある。

Little Mustapha-----確かにそうかも知れないけど。こういう時にはこのあいだ買ったけど全然使う機会がないモノキュラーを使えば良いんだよ。


 Little Mustaphaがちょっと前に買った5000円の単眼鏡を出してきました。買ったのは天体観測のためでしたが、夜空に浮かぶ小さなものを見るには向いていないようで、覗いても見えるのは暗い空ばかりなのです。なので遠くからやって来る怪しい発光物体に焦点を合わせることもなかなか出来ませんした。

 しかし、それがこちらに向かっていることは明らかなようで、見ていると最初は気づかないような小さな点だったのが次第に大きく見えるようになってきました。


退役サンタ-----よし、それを貸してみろ。

Little Mustapha-----これじゃ全然見えないけど。

退役サンタ-----こういうのはコツがあるんだよ。

ミドル・ムスタファ-----退役サンタの筋肉のおかげなのか、単眼鏡を持つ手が全然動かないで安定してますね。

Little Mustapha-----筋肉で全てを解決だな。

退役サンタ-----そんなこと言ってる場合じゃねえぜ。この単眼鏡の倍率じゃ良く見えねえが、どうやらあれは乗り物のようだぜ。

ニヒル・ムスタファ-----でもその暗殺者っていうのは直接ここに転送されてくるんじゃないのか?

犬サンタ君-----それは解らないんだワン。時空間の混乱のせいで転送がうまく出来ない可能性もあるから、乗り物でやって来ることもあり得るんだワン。

退役サンタ-----どうやら最悪の事態ってことだな。お前ら準備は良いか。なんでも良いから身を守れるようなものを探しておけ。

Dr. ムスタファ-----またしても12時が近づくにつれて大ピンチなのか。

Little Mustapha-----身を守るって。そういうことに役立ちそうなのはアルミパイプぐらいしかないけど。それよりも、こういう時にはアレしかないって気がするんだけど。退役サンタさん。もしかしてサンタの国のサンタの酒とか持ってない?

退役サンタ-----酒?!酒じゃなんにも解決できねえよ!

ミドル・ムスタファ-----それじゃあ、犬サンタくんなら持ってないですかね。

犬サンタ君-----今日は必要ないって言われたから持ってきてないんだワン。

Dr. ムスタファ-----なんだか絶望的だな。せめて私の電撃銃が完成していれば。

ニヒル・ムスタファ-----それって何年前の話だよ。

退役サンタ-----つべこべ言ってねえで準備しろ。こういう時はビビってるやつに足を引っ張られるのが一番困るんだ。よし、まだやつが来るまで時間がありそうだからな。ここで気合を入れてやる。

ミドル・ムスタファ-----またやるんですか?

ニヒル・ムスタファ-----あれは恥ずかしいよな。

Little Mustapha-----でも、こうなったら気合でなんとかするしかなさそうだし。

退役サンタ-----いいか、いくぞ。全面戦争じゃぁ!

一同(退役サンタと犬サンタ君除く)-----ウォー!

退役サンタ-----だめだ。気合が足りない!全面戦争じゃぁ!!

一同(退役サンタと犬サンタ君除く)-----ウォーー!!

退役サンタ-----もっと大きな声で!全面戦争じゃぁ!!!

一同(退役サンタと犬サンタ君除く)-----ウォォォーーー!!!

Little Mustapha-----なんか恥ずかしすぎて顔が熱い感じだけど。逆に血の巡りが良くなって良いこと考えたよ。

Dr. ムスタファ-----なんだ?助かりそうな方法があるのか?

Little Mustapha-----いや、そうでもないけど。でもあの硬い体に対してアルミパイプはあまり効果的ではないとは思うでしょ。それよりも金属にも対応した工具の方が有効ということで、ここにあるのは電動ドリルとジグソーと、あとはノコギリとパイプカッターが金属に使えるか。それと金属にも使えるヤスリ。これで人数分だ。

ニヒル・ムスタファ-----全部、武器というより、ちょっとずつ削って加工する感じの工具だな。

退役サンタ-----なんだって無いよりはマシだ。そんなことよりあの光はもうすぐここに来るぞ。

Little Mustapha-----ホントに?ボク等はどうすれば?

退役サンタ-----とりあえず押入れにでも隠れてろ。運が良ければ奴はお前らがいないと思って帰るかも知れないからな。

Little Mustapha-----そうなってくれれば良いけど。


 最後に危険が迫ってくるというおなじみの展開になってきました。これじゃあ最初の方にずっといつもと同じにならないようにしていた努力の意味がないという感じですが、そんな事を考えている間に危険はすぐそこまで迫っているようです。

 Little Mustapha達は頼りにならない工具を持って押し入れに隠れました。ついでに書くと、電動ドリルもジグソーも充電式ではないので、コンセントにプラグをささないと全く意味のないものだということに押し入れに入ってから気づきました。

 しかし、ここで慌ててはいけません。どっちにしろそんな工具で深淵の暗殺者に対抗できるワケがないので、彼らは黙って押し入れの外の気配を窺っていました。

 部屋の明かりを消したままで押し入れに入ったので、真っ暗で何も見えなません。でもその暗さのおかげで窓の外に青白い発光物体が近づいてくるのが良く解ります。押し入れの戸の隙間から青白い光が中に差し込んできました。

 どうやら青白い物体はベランダに降りてきたようです。音は殆ど聞こえませんでしたが、かすかにモーターの回転音のようなものが聞こえました。そして、光が動かなくなるとその音も消えました。このあとで乗り物から何者かが降りてきてこの部屋に入ってくるに違いありません。

 これから一体どうなるのでしょうか?

 暗殺者はいきなり退役サンタを攻撃するのか。それとも、言葉が通じないながらも「Little Mustaphaはいますか?」みたいな事を聞こうとして、それに対して退役サンタさんは「Little Mustaphaならいねえよ」とか、そんなやり取りがあったりするのでしょうか。とにかく暗殺者が来たらLittle Mustapha達がいないと勘違いしてもらう他はないのです。

 Little Mustapha達は助かるために気配を消しました。元々そういうことが得意な彼らですから、押し入れの外からだとまったく人の気配が感じられません。

 不気味な静けさのなか、ベランダに面した窓を開ける音がミョーに大きく聞こえてきます。そして、そのすぐ後でした。

「あ、先輩」

誰かがそういうのが押入れの中にも聞こえてきました。