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#204 「シュンニュンリュィウィチュリュムニ」 2023-12-24 (Sun)

 その頃、ブラックホール・スタジオ(Little Mustaphaの部屋)では…といきたいところですが、クリスマスにプレゼントをもらう準備だけは年を追うごとに完璧に近づいているので、今年もすでに準備万端。あとはサンタからプレゼントをもらうだけという状態なので、クリスマス前にはやることがもうないのです。

 なので、それから数日経ってクリスマスイブのブラックホール・スタジオ(Little Mustaphaの部屋)では、早くも主要メンバーが集まってパーティーが始まろうとしています。

 ここ数年はLittle Mustaphaがクリスマスイブに変な場所にいたりして心配なことも多いので、自然と全員が早めに到着したようです。それに準備は完璧に近づいているといっても、毎年プレゼントをもらうのに失敗しているのですから、おかしなことが起きないように全員で監視したいということもあるのでしょう。

 そして、確認のためにここでもう一度書いておくと、去年のクリスマスにはサンタの国の予測システムによって主要メンバー達が将来犯罪者になるという判定になって、彼らはプレゼントが貰えなかったのです。なので、ことしは絶対に犯罪者にならないように気をつける事が重要なことなのです。

Little Mustapha-----みんな来るのが早すぎてまだ食べ物とか買ってきてないんだけど。

Dr. ムスタファ-----それは買いに行くのが遅いってことじゃないのか?

ニヒル・ムスタファ-----そうかも知れないが、それはそれで好都合だな。

ミドル・ムスタファ-----なんでですか?

ニヒル・ムスタファ-----今回はみんなが犯罪者にならないように気をつけるっていうのが一番重要なことだったし。こうして集まっているから、今のところ誰も犯罪を犯してはいないってことだが、最後の最後に買い物に行ったLittle Mustaphaがうっかり支払いを忘れて店を出てきてしまうとか、そんなことが起きないとも限らないからな。

Dr. ムスタファ-----ああ、なるほど。

Little Mustapha-----なるほど、って。普段ならともかく、こういう重要な日のいつもと違う買い物だし、会計を忘れるなんてことはないと思うけど。

ミドル・ムスタファ-----でも、途中で謎の人物が現れて、なにかおかしな事を吹き込まれるとかも有り得ますし。

Little Mustapha-----前にそういうことはあったけど。今日とは状況が違うし。それよりも、そんなに心配ばっかりしていると、物事は悪い方向へ進んでいくんだから。もっと気楽にやらないと。

Dr. ムスタファ-----といっても心配なものは心配だからな。科学的にはみんなでLittle Mustaphaの買い物を監視したら間違いはないんだし、気楽になれるだろうな。

Little Mustapha-----初めてのお使いみたいなことになってるけど。まあ、食べ物は重たいし人数が多いほうが楽だから、みんなで買い物に行くならそれでも良いけど。

マイクロ・ムスタファ-----ちょっと待ってください。

一同(マイクロ・ムスタファ除く)-----な、なんだ?!もうなにか起こったのか?

マイクロ・ムスタファ-----いや、そう焦らないでください。そうではなくて、みんなで買い物に行くのも問題かと思うのです。二年前は「Little Mustaphaの本当の部屋」と偽った部屋が作られてましたし、去年は次元の間にある空間に偽のLittle Mustaphaの部屋が作られていました。なので今回は我々がいない間にこの部屋に何かが起きないとも限らないと思うのです。

Little Mustapha-----なんで買い物に行くだけなのにこんな議論をするんだ?それなら誰かが残ればいいじゃん。

ミドル・ムスタファ-----一人だと心配ですから二人にしたらどうですか。

Dr. ムスタファ-----じゃあ、言い出しっぺのマイクロ・ムスタファと私が残れば良いかな。外に出るのは面倒だし。

Little Mustapha-----それならそれでもう安心ということで。ここからは前向きに気楽にいくからね。失敗なんて絶対にしない!そういう自己暗示でなんとかすれば、もう不測の事態なんて起こらないし、起こったとしてもプレゼントはもらえるんだから。

ニヒル・ムスタファ-----それって、結局自分も心配だって言ってるようなもんだけどな。

Little Mustapha-----いいから、とにかく気楽にいくから。口笛吹いたり、細長い雑草みたいなのを口にくわえたりして買い物に出発!


 あまりにもみんなが心配するのでLittle Mustaphaも最終的には心配になってきたようですが、とりあえず万全の備えをしてLittle Mustapha達は買い物にでかけました。

 それからしばらくして。


Dr. ムスタファ-----ということでね、科学的に私の考えたSF小説はかなり良いと思うんだがね。

マイクロ・ムスタファ-----どうでしょうかね。あらすじを聞いただけでも私にはシュールレアリズム小説に思えてしまいましたよ。

Dr. ムスタファ-----それは、あれだよ。ローマの道も一歩にあらずということわざもあるようにね。

マイクロ・ムスタファ-----まずはことわざを勉強するところから始めるべきじゃないでしょうか。

Dr. ムスタファ-----うーん…。そうかなあ。


 留守番のDr. ムスタファとマイクロ・ムスタファの怪しい会話が続いていましたが、そこへLittle Mustapha達が帰ってきました。


Little Mustapha-----ああ、やっと着いた。

ニヒル・ムスタファ-----だいたい何でこんないっぱい買うんだよ。

Little Mustapha-----だって、三人いたら沢山持てるしさ。

ミドル・ムスタファ-----でも人数は一緒なんですし、いつもどおりで良かったんじゃないですか?

Little Mustapha-----それは問題発言だよ。いつもどおりということはどういうことか?と考えたらそんな発言は出来ないはずだよ。

ミドル・ムスタファ-----確かにそうかも知れませんが。

Dr. ムスタファ-----なんだ、ずいぶん沢山買ってきたんだな。私は唐揚げだけで十分なんだが。

ニヒル・ムスタファ-----別に先生のために買ってきたんじゃないぜ。

Little Mustapha-----こうやって沢山食べ物とか飲み物があればクリスマスっぽいし。良い雰囲気は出しておかないと。

ニヒル・ムスタファ-----だけど、クリスマスっぽい雰囲気を出す作戦も前にやったよな。

Little Mustapha-----そうだけど。今回は一味違うんだし。去年はパーティーは中止になるはずで何も買ってなかったからね。予算は二年分ってことで、なんと牛肉も買ったんだよ!

ミドル・ムスタファ-----「なんと」って付ける程のことでもないと思いますが。とりあえずちゃんとお金も払って無事に帰って来ましたし、こっちで何もなければ我々全員が犯罪者にならずにクリスマスを迎えることが出来そうですね。

マイクロ・ムスタファ-----こちらも問題ないです。科学的に文学について語り合っていただけですから。

ニヒル・ムスタファ-----なんだそれは?

Dr. ムスタファ-----まあ、素人には理解できない内容だがな。

Little Mustapha-----とにかく、お腹も空いてきたことだし、食べ物を並べたりしつつ乾杯してプレゼントを待とうではないか。


 大量に買ってきた食べ物と飲み物を並べるとなんとなくクリスマスっぽい雰囲気になりました。思えばちゃんとした形で集まってクリスマスパーティをするのも久々です。今年は何か良いことが起きるのではないか?と、各自が密かに期待をいだき始めていました。

 絶対に成功する。絶対にプレゼントはもらえる。彼らは望みを実現させるためにできる限りの事をしています。ただし、何をやっても失敗してきた過去のことを考えると逆に何をするかということよりも、何をしないか、ということの方が重要な気もしてきます。

 なのでなるべく悪いことは考えない。留守番電話にメッセージが残っていないか?ということなども気にしないようにしました。

 サンタがプレゼントを持ってやって来るまで、ただクリスマスパーティーを楽しむ。単純に考えれば簡単なことでも、どうしても楽しまないといけないと思うと、窮屈な感じがして全然楽しくなかったりするのです。

Little Mustapha-----ということでね、冷水シャワーを浴びると窒息しそうになるんだよね。

一同-----アハハハハ…!

一同-----…。

Little Mustapha-----はぁ…。なんか疲れちゃったな。

ミドル・ムスタファ-----ホントですね。でもまだ一時間しか経ってないですよ。

Little Mustapha-----酒はいつも以上のペースで減っているのに、全然盛り上がらないし。

ニヒル・ムスタファ-----というか、冷水シャワーで窒息する話で盛り上がろうとするのがおかしいだろ。

Little Mustapha-----そうだけど。楽しく盛り上がろうとすればするほど、面白いことが思いつかなくなるんだよ。

ミドル・ムスタファ-----そうやって無理やり盛り上がろうとするのがいけないんじゃないですか。ここは視点を変えて普通の会話みたいなところから始めたほうが良いですよ。こうして最初からみんなが集まるのは久々なんですし、年末でもあるんでこの一年の報告とかそういう感じのことを話したら良いんですよ。

Little Mustapha-----なるほどね。

一同-----うーん…。

ニヒル・ムスタファ-----って、誰も何もしてなかったのかよ!

Dr. ムスタファ-----最近は一年なんて、何もしなくてもアッと言う間に過ぎていくからなあ。

Little Mustapha-----でも提案したミドル・ムスタファには何かあるってことでしょ?

ミドル・ムスタファ-----いや、私も特には…。一人ぐらい面白い事をした人がいるとは思ったのですが。

Little Mustapha-----なんか余計に落ち込むけど。

Dr. ムスタファ-----仕方ないからテレビでも見るか。テレビなら面白い雰囲気は出してるだろ。

ニヒル・ムスタファ-----今日テレビを付けるのは一番危険なことだぜ。

ミドル・ムスタファ-----そうですよ。テレビを見るのはなにかマズい状況になってきた時ですからね。

Little Mustapha-----それじゃあ、こうしよう。これまでしなかったことをすれば、これまでと違う展開になるということで、ラジオを聴いたら良いんだよ。幸いなことにここにはラジオを受信できる装置がたくさんあるからね。

ニヒル・ムスタファ-----なにが幸いなのかは謎だが、一つあれば十分だろ。

Little Mustapha-----まあそうだし。しかもよく考えたら今はネットでラジオも聴けるんだよね。でもあれは実際の放送より数秒遅れて時報とかが変だから、聴くならやっぱりラジオチューナーだよ。

ミドル・ムスタファ-----誰もネットで聴こうとは言ってないですが。

Little Mustapha-----まあ、とにかくラジオを聴くから、一番いい音と思われるAVアンプのチューナーをオン!


 テレビをつけると変な事件が起きていたりすることが多いのですが、ラジオの場合はごく普通の放送がやっていました。ごく普通、ということはごく普通の音楽が流れたりするということです。そして、この時期なのでクリスマス・ソングが中心だったりします。

 クリスマス・ソングといっても、それはサンタからプレゼントを貰って嬉しい、という曲であるはずがありません。夕方のごく普通のラジオで流れるごく普通のクリスマス・ソングは大抵の場合はラブソングでもあります。

 クリスマスがテーマのラブソングの世界などLittle Mustapha達にとっては存在しない世界の話ですから、しばらくはラジオに集中していたのですが、そのうちに上の空になってラジオの音など聞こえているのか解らないような状態になっていました。するとその時、不意に玄関のチャイムが鳴って、上の空だった主要メンバー達は驚いてビクッとなりました。ただし、恥ずかしいのでビクッとなったことはお互い気づかないフリをしている、というのはいつものことです。

 玄関に誰か来たので、Little Mustaphaがラジオを消してからカメラ付きのインターホンで対応しました。するとそこにいたのは…。