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#177 「レザレクション」 2017-12-23 (Sat)

抜き足、差し足、忍び足…(泥棒)

「ど…、泥棒!」

開いた扉の向こうを見てLittle Mustaphaがおどおどしながら言いました。

それは確かに泥棒のようでしたが、どこか違うような気もします。

泥棒らしき男-----ど、泥棒とはなんだ?!人聞きの悪い。

ミドル・ムスタファ-----でも、その格好じゃどう見ても泥棒ですよ。

泥棒らしき男-----オレはサンタだよ。これはどう見てもサンタの格好だろ。

ニヒル・ムスタファ-----ウソつくなよ。隣の部屋でブツブツ言ってたの聞こえてたんだぜ。あんなこと言うのは泥棒以外にいないからな。

Dr. ムスタファ-----とにかく、怪しいやつが勝手に部屋に入ってきたんだから、警察を呼んだら良い。

Little Mustapha-----そうだね。不法侵入は不法だからね。

泥棒らしき男-----待ってくれ!警察だけは勘弁してくれよ。オレは本当にサンタクロースなんだよ。女房も子供もいるんだ。オレがいなくなったらアイツらはどうして暮らして行けば良いのか。

Little Mustapha-----まあ、そこまで言うなら仕方ない。ホントのサンタかどうかは簡単に確かめられるからね。

泥棒らしき男-----ああ、良かった。何で確かめるんだ?サンタの社員証みたいなのも貰ったから、それで良いか?

ミドル・ムスタファ-----そんなものじゃ信用できませんよ。

ニヒル・ムスタファ-----本当のサンタだったらオレ達が長年待ち望んでいたものを持っているはずだからな。

Dr. ムスタファ-----そうだ。それが一番手っ取り早いし、早起きは三文の得だな。

泥棒らしき男-----それは一体どういう意味で?…まあ良いか。それよりもなんだ。あんた達が望んでるものってのは?

ニヒル・ムスタファ-----そんなものは聞かなくても解るはずだぜ。

Little Mustapha-----そうだ、そうだ!

Dr. ムスタファ-----早く出すんだ。

ミドル・ムスタファ-----早く出してください。

Little Mustapha-----さもなければ。…良くて終身刑かな。なんせ不法侵入だし。

泥棒らしき男-----えぇ?!そんなに重い罪なのか?…待ってくれよ。ホントに何も知らないんだ。オレは今年から始めたばっかりだし。もしかして金が欲しいのか?それだったら無理だ。やっと見付けた仕事なんだ。この仕事を終えて給料を貰うまでは文無し同然なんだよ、オレは。

Dr. ムスタファ-----これはどうやら警察を呼ばないとダメなようじゃないか。

Little Mustapha-----プレゼントもないし、お金に困ってるとか言ってるし。これじゃあ泥棒しにこの家に入ってきたとしか思えないよ。

泥棒らしき男-----だから違うんだ。信じてくれよ。プレゼントだったらこの袋に入ってるんだ。だが、これは絶対に子供達のところへ届けないと給料が出ないからな。

ニヒル・ムスタファ-----やっぱり信じられないな。プレゼントを渡すべき相手がここにいるのに、何にも解ってないじゃないか。

泥棒らしき男-----あんた達が?!…なに言ってんだ。大人はサンタクロースからプレゼントを貰ったりはしないんだ。

Little Mustapha-----じゃあ、そういうことなら、こっちも大人の対応として警察に連絡を…。

泥棒らしき男-----うわ。ちょっと待って…。

マイクロ・ムスタファ-----あの、ちょっと良いですか。

泥棒らしき男-----うわ…、もう一人いたのか?!

ニヒル・ムスタファ-----おい、せっかく救いの手が伸びてきたかも知れないのに、差し出した人間を怒らせちゃいけないぜ。

泥棒らしき男-----いや、そういうつもりじゃ…。

マイクロ・ムスタファ-----別に良いですよ。それよりも、この人を泥棒と決めつけるは早いと思うのですが。

Little Mustapha-----というか、一目見て泥棒だと思うけど。

ミドル・ムスタファ-----まあ、そう言わずにマイクロ・ムスタファの意見も聞いてみましょうよ。

マイクロ・ムスタファ-----この泥棒サンタさんが言うには、今年からサンタになったって事ですけど。

泥棒らしき男-----そうなんだ。誰にも気付かれないように家に入ってプレゼントを配れる人ってことで雇われたんだ。そういうのは得意だからな。

ニヒル・ムスタファ-----ここまでの経過からしてそれが得意だとは思えないんだが…。

マイクロ・ムスタファ-----まあ、それはともかく。こうしてサンタに見えない人がサンタをやっているのは、昨今のサンタ業界に起きている事と関係しているかも知れませんよ。

Little Mustapha-----サンタ業界って、もう色々と起きてるから何がどうなってるのか解らないけどね。

マイクロ・ムスタファ-----そうですが。去年のクリスマスには大量のサンタがいなくなって、その中の何割かは地獄の軍団に寝返ったということでしたよね。それですが、地獄の軍団をカズコが手放したことによって、またサンタ業界にも変化があったのかも知れないですよ。泥棒サンタさんはどこでこの仕事を見付けたんですか?

泥棒らしき男-----どこ、って言われてもな。刑務所出る時に紹介されたんだ。

ニヒル・ムスタファ-----やっぱり泥棒じゃないか?

泥棒らしき男-----なに言ってんだ。捕まったのはスリでだよ。調子に乗って同じ場所でやってのがいけなかったな。

マイクロ・ムスタファ-----そうですか。つまり泥棒の才能はあったけど、スリの才能はなかったんですね。

Little Mustapha-----それって、何か関係あるの?

マイクロ・ムスタファ-----いや、特にないですけど。でもサンタをスカウトするには刑務所というのも意外とうってつけなのかも知れません。

ミドル・ムスタファ-----それよりも、この人は泥棒なんですか?サンタなんですか?

マイクロ・ムスタファ-----話を聞く限りだと、今はサンタみたいですけど。ボクらへのプレゼント以外にそれを証明できるものがあれば良いんですけどね。サンタならこれから回る家の住所のリストなんか持ってないんですか?

泥棒らしき男-----それならあるぜ。夕方は一家で食事に出かけてるって情報が書いてあったから、この家を最初に選んだんだが。大人の同居人がいるなんて知らなかったしな。

Little Mustapha-----同居人?!というか、うちに子供はボクらだけだよ。

ミドル・ムスタファ-----私達は子供じゃないですよ。まあ、サンタにプレゼントをリクエストしているという部分では子供ですが。

泥棒らしき男-----なに言ってるのか解らないが、13丁目ってここじゃないのか?

Little Mustapha-----13丁目?!ここは三丁目だよ。というか、13丁目まである街なんてあるの?

マイクロ・ムスタファ-----そう書いてあるのならあるのかも知れませんが。ちょっと泥棒さん。そのリスト見せてもらえないでしょうか?

泥棒らしき男-----ああ、いいぜ。

マイクロ・ムスタファ-----うーん…。これは一丁目三番地ですね。縦書きで棒で区切ってあるので一と縦棒がくっついて「十」に見えなくもないですが。

泥棒らしき男-----本当か?!チッ…。汚え字書きやがって。字の汚いやつは心も汚いんだ。こんな家の子供にはプレゼントを渡す必要はねえな。

ミドル・ムスタファ-----いやいや、それは良くないですよ。

ニヒル・ムスタファ-----そんな事したら、新たな惨劇の始まりを予感させるよな。

Little Mustapha-----そうだよ。そういうちょっとした事が原因で、この街では毎年クリスマスになると大惨事なんだからね。その子が大人になって、ボクらと同じ悲劇を繰り返さないように、プレゼントは確実に渡さないといけませんよ。

Dr. ムスタファ-----だいたい、心が汚いとかアンタに言えることじゃないだろう。

泥棒らしき男-----だが、オレの字は綺麗だぜ。心だってホントは綺麗なんだ。本当は…、本当はこんな事になるはずじゃなかったんだ。オレはもっとまともな人間だったんだぜ。まともな仕事をして、幸せな家庭を築くはずだったんだ。それなのに、それなのに…。全部世の中が悪いんだ。世の中のせいなんだ!

Little Mustapha-----こういう人って、大体そう言うよね。でも、そんな事には興味がないので、涙を誘おうと一生懸命の泥棒サンタさんの持っている袋の中身を確認させていただきますが…。

泥棒らしき男-----おい、勝手にそれを…。

Little Mustapha-----ドゥワッと!…もしかして、これは本物のサンタの袋?

ミドル・ムスタファ-----どうしたんです?

Little Mustapha-----袋の中を覗くと無限の空間が…!

ニヒル・ムスタファ-----それはまさに、持ちきれない程のプレゼントを配ることの出来るサンタならではのアイテムだな。

Dr. ムスタファ-----ワームホールの技術を応用だな。

Little Mustapha-----袋・ザ・ワームホール!

一同(泥棒らしき男除く)-----袋・ザ・ワームホール!

泥棒らしき男-----なんだよ?!みんなそろって。

Little Mustapha-----ということで、この人が大体サンタクロースって感じになってきたけど。その袋からボクらのプレゼントを出せないの?

泥棒サンタ-----そんなことは無理だろう。

ミドル・ムスタファ-----でも、ボクらもちゃんとリクエストしてるんですよ。

Dr. ムスタファ-----専用の用紙でな。

泥棒サンタ-----オレは上の指示で動いてるだけだからな。ここ、三丁目って言ってたが、オレの持ってるリストには三丁目はないんだ。だから、別のサンタクロースがあんた達のプレゼントを持ってるんじゃないか?

Little Mustapha-----えぇ…。でもまあ良いか。ちょっと待てば良いことだし。

ニヒル・ムスタファ-----そうだな。まだ夕方だし、プレゼントを貰って喜ぶにはまだ早いからな。

ミドル・ムスタファ-----そうですね。それに、こんな人から貰っても喜びが半減ですし。

泥棒サンタ-----おい、それはどういうことだ?

Little Mustapha-----まあまあ。でも泥棒サンタだって自分の立場をわきまえて貰わないと。サンタと解ったからって、プレゼントを持ってないんじゃ不法侵入には変わりないからね。

泥棒サンタ-----ああ、すまねえ。悪気はなかったんだが…。それで、見逃してくれんだろ?

Little Mustapha-----まあ、今日のところはね。ちなみに、ボクらはイケメンのサンタ君とはマブダチだからね。何かあったらすぐにナントカなっちゃうからね。

泥棒サンタ-----サンタ君って誰だ?

ニヒル・ムスタファ-----まあ、初心者には解らないよな。

一同(泥棒サンタ除く)-----ファッファッファッファッファ…。

泥棒サンタ-----なんだよ、その不気味な笑いは…?

Little Mustapha-----とにかく、今日のところは見逃してあげるから、サンタの仕事を続けなさい!

泥棒サンタ-----そりゃありがてえや。それじゃ、世話になったな。

クリスマスパーティーが始まる前に一騒動ありましたが、これでやっといつものように乾杯ができそうです。

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