15. イベント会場
[通行人2、数人のエキストラ5〜(客のふりをしたテロリスト達)とドコデーモス、ドチラーノンが開演を待っている、その後ろでニコラス刑事が警備をしている]
ニコラス刑事 : なんだか平和な光景だなあ。どう考えても警察が警備するようなものではないのだが。何人か警官を帰らせた方がいいかな。他で事件でもあったらそれこそ大問題だし。
[スケアリー入場]
スケアリー : ニコラス刑事様!
ニコラス刑事 : ああ、スケアリーさん。どうしたんですか?モオルダアさんは?
スケアリー : モオルダアなら、何かがどうしたとか言って、どこかへ行ってしまいましたわ。
ニコラス刑事 : なんですか、それは?あなたも一緒に行った方が良いんじゃないですか?
スケアリー : そんなことはありませんわ。それにあたくしのことを必要としている人がここにいるのに、どうしてモオルダアなんかに付いていかなくてはいけないの?
ニコラス刑事 : ああ、そうですか。あの人達はずいぶんとあなた方のことを信用しているんですね。それならここにいたほうが、あの人達も喜ぶでしょう。
スケアリー : 何を言っているの?またそうやってはぐらかして。
ニコラス刑事 : 何がですか?
スケアリー : もうごまかしたり出来ませんわよ。あたくしここで思い切って聞いてしまいますわ!
スケアリー[歌] : もうこれ以上待てないの
あなたの思い、ここで…(途中で終わる)
ニコラス刑事 : あっ!始まりますよ。
[アティラーノン入場]
[ドコデーモス、ドチラーノンの拍手と客のふりをしたテロリスト達の偽の拍手でアティラーノンを迎える]
ドチラーノン : とうとう始まりましたね、あなた。どうしても心配でなりません。
ドコデーモス : そう心配するな。予言者も先ほど心配はいらない、ともうしていたではないか。
アティラーノン : みなさま。今日は忙しい中、こんなにたくさん集まっていただいて、本当にありがとうございます。それでは、あたしの愛の歌。一生懸命歌うので聞いてください!
ニコラス刑事 : おお、あれがアティラーノン姫なのか?!なんて美しいのだ!
スケアリー : ちょいと。ニコラス刑事様?
[ニコラス刑事、アティラーノンの前に向かう]
アティラーノン[歌] : ウソでしょ、マジなの?お魚ダンス
迷路にはまって、目が回る
アー、恋をするのよ、見知らぬ国で
アー、夢みた人は、奇跡の海で
待っているの
思っているの
珊瑚礁、きらめいて燃え上がる
南の島の、恋の秘密
伝説に迷い込むラビリンス
抜け出して、あなたの元へ
[間奏]
ニコラス刑事 : なんて素晴らしい歌なんだ。それにこの歌声。私の魂が揺さぶられるようだ!
スケアリー : 何なんですの、あの歌は?それにニコラス刑事様はどうしてあんな女に見とれているんですの?
[通行人1、尻尾が迷路になっているイヌを連れて入場]
通行人1 : おや?今日はめずらしい人が来ているんだなあ?
通行人2 : よし、みんな準備は良いか?二番が終わったら作戦開始だ。
エキストラ5〜[小声で] : おう!
アティラーノン[歌、2番] : マジなの?マジでしょ、フカヒレざんす
お城の生活、目が回る
アー、恋をしたのよ、見知らぬ国で
アー、夢みたあなた…[伴奏だけ続く]
ばあや[声だけ] : 姫様!姫様!大変な事になりもうした!
アティラーノン : ばあや?!どこなの?どこにいるの?
ばあや[声だけ] : 姫様、ばあやはここにおります。予言者にこんな姿にされてしまいました。
アティラーノン : そこのタバコをくわえたネコ!もしかして、あなたがばあやなの?
ばあや[声だけ] : そうです。姫様、早く逃げるのです。予言者はとんでもないことをたくらんでおるのです。
アティラーノン : ダメよ。歌わないと「夢みた人」には出会えないのよ。
[禁煙の練習をするネコ入場]
禁煙の練習をするネコ(ばあや) : いけません姫様!全ては予言者の陰謀なのです。
通行人1 : ウワァ!アレは禁煙の練習をするネコじゃないか!おい、ダメだ!落ち着くんだ。行っちゃダメだ!
[尻尾が迷路になっているイヌ、通行人1の持っている綱を振りほどいて吠えながらステージへ走る]
通行人2 : ウワァ!大変だ!イヌだ!アレは尻尾が迷路になっているイヌだ!
エキストラ5〜 : ウワァ!イヌだ!大変だ!尻尾が迷路になっているイヌは破壊の神だ!ウワァァァァ!
[通行人2、エキストラ5〜、逃げ出す(退場)]
ドチラーノン : あなた!大変よ!アレは尻尾が迷路になっているイヌじゃありませんか。
ドコデーモス : なんて恐ろしい!予言者は?予言者はどうしたのだ?
ニコラス刑事 : なんだ、この騒ぎは?大変だ!猛犬が突進してくるぞ。美しいアティラーノン姫を守らなければ!
[ニコラス刑事、ステージに上がってアティラーノンをかばう。尻尾が迷路になっているイヌは二人の横を通りすぎて、禁煙の練習をするネコを追いかける。その後を通行人1が追う。禁煙の練習をするネコ、尻尾が迷路になっているイヌ、通行人1退場]
スケアリー : ちょいと、どういうことですの?どうしてあの二人は見つめ合っているんですの?そこの小娘!ニコラス刑事様から手を離しなさい!さもないと発砲しますわよ!
ニコラス刑事 : ケガはありませんか?お姫様。
アティラーノン : ええ。あなたのおかげで…。私の夢みた人…
ドチラーノン : あの子は?あの子は無事なの?
ドコデーモス : 見たまえ、あの二人を。どうやら伝説は本当だったようだ。
アティラーノン : ハッ!ばあやが、予言者が!大変な事になっています。早く助けないと!
ニコラス刑事 : 落ち着いてください。ここはまだ危険です。早く安全なところに逃げましょう。
[アティラーノン、ニコラス刑事退場]
スケアリー : ちょいと、そこの二人!どこに行くんですの?待ちなさい!
[スケアリー、二人を追うがその前に予言者が現れる]
スケアリー : 何なんですのあなたは?その格好はどう考えても予言者ですから、あなたは予言者ですわね?
予言者 : なんということだ。伝説が…。私の予言は完璧だったはずなのに。
スケアリー : あなた、もしかしてニコラス刑事様に何かヘンなことを吹き込んだりしてないでしょうねえ?
予言者 : 誰だおまえは?…そうか、エフ・ビー・エルだな。おまえも予言を信じない者の一人というわけだな。
スケアリー : どうでも良いですけど、おまえって呼ぶのやめてくれませんこと?ムカつきますわ。あたくしはスケアリー特別捜査官ですわ。
予言者 : そうか。予言を信じないスケアリー特別捜査官。私はここにテロリストを集め、エニホエア王国を乗っ取ろうと企んでいたのだが。伝説とは馬鹿に出来ないものだ。スケアリー特別捜査官も少しは迷信深くなった方が身のためだぞ。
スケアリー : つまり、あなたがテロを企てていた張本人というワケね。でしたら、あなたを逮捕いたしますわ。
予言者 : そうではない!私はただエニホエア王国の王になりたくて…。
スケアリー : ごまかしてもダメですわ!今時、テロはかなりの重罪ですのよ。あなたはどこの国の法律で裁かれるかわかりませんが、エニホエア王国の法律で裁かれた方が良いかも知れませんわね。首を一日に1ミリずつ切り落とされたらいいんですわ!
予言者 : ああ、なんということだ!
[スケアリーの携帯電話が鳴る。着信音はまたなぜかスキヤナーの歌のメロディーになっている]
モオルダア[声だけ] : ああ、スケアリー?ボクだけど。なんだかヒドイ話だよ。大手町にいたのは「角が迷路になっている羊団」だったんだけど、それが実は大道芸人のグループだったんだよね。ボクはてっきりあの予言者が連れてきたテロリストだと思ってたけど。大道芸人ファンの間では人気らしくてね。ボクも見てたけどけっこう面白かったよ。
スケアリー : 何を言っているんですの?こちらでは今大変なことになっているんですのよ!
[予言者、こっそり逃げ出す(退場)]
モオルダア[声だけ] : 大変なことって?まさかテロがあったんじゃ?
スケアリー : あぶないところでしたけど、あたくしの活躍で何とかくい止めることが出来ましたのよ。たった今、あたくしがテロの首謀者を捕まえて…
[スケアリー : 予言者が逃げたことに気付く]
スケアリー : コラ!待ちなさい!…モオルダア!あなたのせいですからね!
モオルダア[声だけ] : えっ?!何が?
[スケアリー、予言者を追いかけて退場]
ドチラーノン : これで全てがまるく収まったと思いますか?あなた。
ドコデーモス : これで全てがまるく収まったと思いたいね。
ドチラーノン : 災い転じて福となし、幸せの先にあるものは、地獄の業火やもしれぬ。
ドコデーモス : どうしてそんなことを言うのだね?
ドチラーノン : 私のネガティブな本質は変えられないのですよ、あなた。
[Exeunt]