17.
一体何が起きたのか?とモオルダアとスケアリーは救急車が去っていった方を見つめていた。警官達はあまり目立たないようにしながら周囲の警戒に当たっていたが、遠條刑事がいなくなって特に危険なこともなくなったようだ。
するとそこへ入り口にいた責任者ふうの男が小走りに近づいて来た。
「ああ、大丈夫でしたか。救急車が来ましたよ」
「救急車って?誰が呼んだの?」
よく解らない事になってきてモオルダアが聞き返した。
「乱闘騒ぎになっていたみたいですし、私が呼んだのですが」
「救急車ならもう来ましたわよ」
「エッ?」
「そして、もう行ってしまったけど」
全員で何が何だか解らない状態になっているところへ、さっきと同じように白いヘルメットと白衣の救急隊員がやって来た。当たり前ではあるが、さっきの二人とは違う隊員だ。せっかくやって来た救急隊員だが、彼も「何が何だか解らない状態」の中に加わっただけになってしまった。
「どうやら、もうここには用はないって事になりそうだね」
モオルダアはこれまでのことを思い出して、なんとなく状況を理解してきた気がした。
「モオルダア。それはどういうことですの?」
「もう、ここには何もないと思うよ。心配なのは遠條刑事だけど」
「あの方ならさっきの救急隊員の方達が…」
「彼らは遠條刑事を助けるために来たんじゃなくて、彼の頭の中にいるアレを処分しに来たと思うんだよね」
「モオルダア!」
スケアリーは言ったが、その後が続かなかった。
その後彼らは警察と協力して、例の救急車の行方を追ったのだが、見付かることはなかった。
モオルダアは口には出さなかったが「もしかすると、これで良かったのかも知れない」と思っていた。