20. その後:海の方の大きな展示場
「世界冷凍食品展」の開催最終日が終わって、出展していた世界中からやって来た食品会社は急いで商品の搬出を始めていた。持ってきた商品の多くはサンプルとして配ったり、開催期間内に日本の会社に売れたりもしたのだが、やはり残るものもあるので、そういうのは持ち帰らないといけない。
持ち帰るといっても、彼らが手荷物として持って帰る事の出来る量ではないので、冷凍コンテナに入れて船で自分たちの国へと運ばれるのだが。
会場の外ではそういう荷物を運ぶために大型のトラックが何台も並んでいた。会場のほうではこういうことには慣れているようで、運送会社や参加企業と上手いこと連携して、荷物の搬出はスムーズに行われていたのだが、その一画でなにか問題が起きていたようだった。
荷物を運んでいた作業員が数人で何かを話している。英語ではない外国語で言っていることはさっぱりだが、ちょっとした異常があって話し合っているような感じである。
そこへスーツを着た外国人の男がやって来てその会話の中へ入っていった。恐らくその人がその中で一番偉い人らしいが、作業員達は彼らの運んでいたクーラーボックスをその男に見せた。そのクーラーボックスには遠目にも解るほどの穴が空いていた。
クーラーボックスといってもステンレス製の丈夫なやつなので、穴が空くというのは滅多にない。スーツの男もそれを見て困ったというような感じで頭を抱えていたが、今は急いで撤収しないといけない。彼らも夜の飛行機で帰る予定なので時間を無駄に出来ないのである。
スーツの男が指示をすると作業員達は頷いてそのままクーラーボックスをコンテナの中へ運んでいった。まあ、言葉が解らないので「そんな感じだった」ということなのだが。少なくともクーラーボックスに穴が空いていたのは事実である。
その後、どうなったのかは知らない。