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#196 「根源」 2021-12-24 (Fri)

劣勢

 部屋の中でコマリタに似た声がして、そしてそのあと部屋の明かりが消えました。それでも大パニックにはならなかったのは、いつものように危機が目の前という感じではなかったからかも知れません。それに、実際にはそうではないですが、この家に住んでいるという事になっているLittle Mustaphaにはその声がどこから聞こえて来たのか解っていたのです。


Little Mustapha-----これは、聞いた事がある声と台詞。みんな慌ててはいけないよ。

ミドル・ムスタファ-----なんですか?大丈夫なんですか?

Little Mustapha-----まずは、どこかにフロアランプみたいなののスイッチがあれば良いんだけど。というか、この部屋にフロアランプってあったかどうか。

Dr. ムスタファ-----なんで自分の部屋なのに知らないんだ?

Little Mustapha-----なんだか記憶が夢の中なのか現実なのかゴチャゴチャになってるんだよ。

マイクロ・ムスタファ-----これですかね。足で踏むタイプのですか。

Little Mustapha-----そうそれだ。


 マイクロ・ムスタファがスイッチを入れると電球色の明かりで部屋が照らされました。この部屋では明かりが消えただけで、他には何も起きていなかったようです。


Little Mustapha-----さっきの声はこれだよ。コマリタではなくてパコリタ・ナラ・ズイルベー。こんな小道具も完全再現されてるんだな。


 Little Mustaphaは大きめなスピーカーの上に置いてある基盤などが剥き出しの小さな機械に近づいて眺めていました。それがパコリタ・ナラ・ズイルベーということみたいです。


Little Mustapha-----そういえば、ずっとリモートだったから、これがボクの部屋にあったのは知らないんだよね。まあ、これは人の言うことを聞き取ったりしないし、プログラムしたとおりに喋るだけなんだけど…。

ミドル・ムスタファ-----どうしました?

Little Mustapha-----マズい事になったかも…。

ニヒル・ムスタファ-----なにが?

Little Mustapha-----このパコリタ・ナラ・ズイルベーはあの部屋にあったのとソックリだけど、決定的な違いがあるんだよ。このパコリタにはマイクが付いてる。ボクらの言ってたこと全部聞いてたんだよ。

パコリタ-----コンニチハ、私はパコリタ・ナラ・ズイルベー!ズイ、ズイ、ズイルベー!パコリタ・ナラ・ズイルベー!

Little Mustapha-----うわぁ…!

パコリタ-----言ってオキマスガ、さっきから全部聞いてましたヨ!

Little Mustapha-----ぎこちない喋り方はそのままなのに、高性能になってる。

ニヒル・ムスタファ-----それって、つまりさっきからここで喋ってた話は全部筒抜けってことだろ?

マイクロ・ムスタファ-----そうなりますね。トイレが汚い原因なんかも知られてしまったのでしょう。

サンタの孫娘-----みなさん落ち着いて。

ミドル・ムスタファ-----あっ、ちょっと大変な事になりましたよ。

サンタの孫娘-----解ってます。しかしパニックになれば相手の思う壺。私の存在も知られてしまったので、このまま通信を続けます。

 今回はやけに強敵な感じがします。いつものようになんとなく助かってしまうような雰囲気が全く感じられません。それと同時にLittle Mustapha達の命に関わるような事もあまりないので、比較的彼らは落ち着いているようにも思えます。

 しかし、トイレの扉に関する計画が成功してしまうと、人類には恐ろしい未来が待っているということです。どうすれば良いのでしょうか?


 この後なにが起きるのかと思っていると、部屋の外から例のモーターの音の混じった足音が聞こえて来ました。そしてドアが開いてコマリタが入ってきました。

コマリタ-----ハイ、こちら現場のコマリタこと、コマリタ・ナラ・ズイルベーでぇす!みなさん、ここがどこだか解りますかぁ?

Little Mustapha-----ここがボクの本当の家じゃないというのはもう解ってるよ。

コマリタ-----それは大ハズレ!正解は愚かな人間どもの棺桶。もしくは新たな時代への始まりの地。全てはあなた方の態度次第で決まるのでぇす!

ミドル・ムスタファ-----なんで、急にこんなに喋るようになったんですかね。

ニヒル・ムスタファ-----さっきのテレビ見ただろう。ウッチーと亜毛パンが仲直りして、コマリタの本体とウンサーの愛称バッチリになってるんだぜ。

コマリタ-----ちょっと、そこの方。大した大学も出てないのに偉そうなこと言うのやめてくれませんかぁ?

ニヒル・ムスタファ-----な、なんだと…。この裏口…。

マイクロ・ムスタファ-----落ち着きましょう。このアンドロイドは亜毛屁端さんじゃなくて、ウンサーがそう言わせているだけですから。

Little Mustapha-----そうなるとウンサーの意味はますます解らなくなるな。へい、コマリタ!

コマリタ-----はぁ?誰だ呼び捨てにしたの?女子アナなめてんのか?

Little Mustapha-----あら、デジタル・アシスタントとしては全く機能しなくなってる。

ミドル・ムスタファ-----ここは黙って話を聞いた方が良いんじゃないでしょうか。

マイクロ・ムスタファ-----そのようですね。