扉の向こう

「キャー！Little Mustaphaさんのエッチ！」

　ドアの中から閃光が溢れ出てくることはありませんでした。その代わりに悲鳴と、バケツの水を撒いたようなパシャッと言う音がしました。

　ドアの周辺の光は消え、暗くなった家の中は静まりかえっています。そしてズブ濡れのLittle Mustaphaがトイレのドアの前に立っていました。

ミドル・ムスタファ-----なんだったんですか、今の？

Little Mustapha-----サリーヌちゃんのお風呂シーンだった…。（参考[ Museum of Ludicrous]）

ニヒル・ムスタファ-----全然意味が解らないぜ。

Little Mustapha-----でも、この状況は…。やっぱりボクの思ったとおりだ！

ミドル・ムスタファ-----なにがですか？

Little Mustapha-----この扉のことだよ。さっき急にこれまでの歴代クリスマス・スペシャルの内容を思い出してね。まあ言ってみれば走馬燈って感じだけど。その時に閃いたんだよね。

Little Mustaphaが説明を始めようとしましたが、その時に部屋の中に犬サンタ君がと犬弟子サンタ君が現れました。

犬サンタ-----シールドがなくなって入れるようになったんだワン。でももう片は付いたのかワン？

Little Mustapha-----まあ、ボクの活躍でね。それで何を閃いたのかというと、このドアの性質についてなんだけど。普段のボクはトイレの利用者としてこの扉を使っているでしょ。でもこれまでのクリスマスでは危険なことから逃れるために、このトイレの扉を時限の扉の利用者として使っていたんだよ。そうすることが出来るのは、それがすでに次元の扉としての機能を持っていたからだけど。それを未完成の扉でやるとどうなるか？と思ってね。結果はあんな感じだけど。要するにこの扉を完全な次元の扉にするためには、ボクがトイレの利用者として扉を開ける必要があったに違いないんだ。

ニヒル・ムスタファ-----ホントにそんなことなのか？

Dr. ムスタファ-----まあ科学的には正しそうな話だがな。

Little Mustapha-----でも、ウンコ我慢の状態でそれをやるのは難しいと思ったよ。だからボクは次元の扉を使ってサンタの孫娘さんのところへ行くんだ！ってことを強く心に思ってたんだけどね。

ミドル・ムスタファ-----だけど、違う場所につながったようですね。

Little Mustapha-----まあ、扉が未完成な次元の扉だったってこともあるし。

Dr. ムスタファ-----それで、サリーヌっていうのはなんなんだ？

Little Mustapha-----それは、ボクがキモいしずかちゃんというコンセプトで書いた絵をキャラ化したやつだけど。なんでここで出てきちゃったのかは知らない。

サンタの孫娘-----ふざけるのはやめてください！

犬サンタ-----うわ、ご主人様激オコなんだワン！これはマズいんだワン！

Little Mustapha-----でも、上手くいったじゃん。あの状況で他に手があったかどうかはビミョーだと思ったし。

サンタの孫娘-----それでも、あたなは人類全体を危険にさらしたのですよ。それに本当にあなたの作戦が成功したのかは調査をしないと解りません。

Little Mustapha-----でも、見た限りでは色々成功してるんだけどなあ。

　Little Mustaphaが部屋の中を見渡すと、さっきまでの人間らしいところが全くなくなったコマリタがマネキンのように倒れていました。もう動くことはなさそうです。そして、この部屋に置いてあった偽物のパコリタ・ナラ・ズイルベーも、何かがショートしたのか、焦げ臭い匂いを放って停止しています。

サンタの孫娘-----とにかく、みなさんはそこから出ることが出来ます。まだその場所は危険かも知れませんから、トイレはまだ我慢して、犬サンタちゃんと犬弟子サンタちゃんに転送してもらって各自の家に帰ってください。

マイクロ・ムスタファ-----最後の緊張感でその辺の問題はどっかに行ってしまいましたけどね。

　マイクロ・ムスタファの意外な発言は異様な雰囲気の場を和ませようとしたものでしょう。しかし、全員が憔悴しきってしまうような緊張感のあとの雰囲気はあまり変わらなかったようです。