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#196 「根源」 2021-12-24 (Fri)

カウントダウン

 とうとう本性を現したのか、あるいは今の状態が異常なのか解りませんが、女子アナ以上に女子アナっぽくなってしまったコマリタ。罠にはまって閉じ込められたLittle Mustapha達はコマリタの言いなりになるしかないのでしょうか?それとも、まだ助かる手段は残されているのでしょうか?


コマリタ-----はい、無駄話はここまでにして、ここで重大発表があります!なんと!先程から無能なエージェントがマイクの存在にも気付かずに重要な情報をペラペラ喋ってくれたおかげで、この家のトイレを正常なものにすることが可能になったのです!見たら使ってみたくなる、とっても綺麗なおトイレですよ。どうですか?ドアを開けて見てきては?

Little Mustapha-----そんなことするはずないでしょ。

サンタの孫娘-----そうよ。そこの人達はアンドロイドの言うことなんか聞きません!

コマリタ-----はぁ?誰がアンドロイドだって?女子アナなめてんじゃねえぞ。…あ、失礼しましたぁ。まだみなさんおトイレに行きたくなる時間じゃないそうで。でもみなさん知ってますかぁ?この後どうしてもおトイレタイムが来てしまうのです。

ミドル・ムスタファ-----それって、どういう事ですか?

コマリタ-----例えば、ここにあるお酒。それでは、飲んでみたいと思いまぁす…!…ああ、美味しい。腹パンお腹タップタプ!あ、でも、これは…どうしたことでしょうか…。腹パンお腹超特急…!どうやらトイレに行かないといけなくなったようです。

Dr. ムスタファ-----まさかとは思うが。さっきからどうもお腹の調子が…。

コマリタ-----そうなんです!ここにある食べ物や飲み物には、ユックリとそして確実に効果を発揮する、特性の下剤が入っていたのです。そろそろクリスマスイブもオシマイ。そしてクリスマスへのカウントダウンと同時におトイレタイムのカウントダウンも始まる頃かと思いまぁす!

ミドル・ムスタファ-----これは大変な事になりましたよ。

Little Mustapha-----でも、みんなは大丈夫だよ。ボクさえトイレを使わなければ良い話でしょ。それにボクはウンコ我慢には自信があるんだ。

Dr. ムスタファ-----そうか、ならちょっと行ってくるぞ。

Little Mustapha-----エッ?!ホントに行くとか。ボクのために一緒に我慢とかないのかよ。

ニヒル・ムスタファ-----まあ、そこは一緒に我慢するより冷静な人間が多い方が良いと思うぜ。

Little Mustapha-----まさか、キミも行くつもりだな。まあ、良いよ。こうなったのもボクの責任かも知れないんだし。ボクがウンコ漏らしてなんとかなるのならそれでイイ。

コマリタ-----それは大ハズレ!そういった場合にはあなたの仲間を殺しても良い事になっているのです!こちらをご覧ください!


 コマリタがそう言いながら両手を上の方に掲げると、ヒジから先の部分がグニャグニャっとした感じで動いたように見えました。そして、その動きが止まるとコマリタの腕の先が巨大な刃物に変わっていたのです。


コマリタ-----なんと、コマリタの体の中には武器が沢山仕込まれているのでぇす!一人ずつ仲間を片付けていけば、最終的にはこちらの言うとおりにしてくれると思われまぁす!でもまずはどこまでトイレを我慢できるか、レッツチャレンジ!


サンタの孫娘-----なんて酷いことを…。解りました。取引しませんか?命まで奪う必要はないはずです。何をすれば彼らを解放してくれますか?

コマリタ-----それはあり得ないのではないでしょうか?うーん…。でも長官の命と引き替えなら考えないこともないです!

サンタの孫娘-----そ、それは…。


Dr. ムスタファ-----長官って誰だ?

ニヒル・ムスタファ-----というか、もうトイレ済んだのかよ?

Dr. ムスタファ-----ああ、綺麗になってたからな。それで長官っていうのは?

ミドル・ムスタファ-----サンタの孫娘さんのお爺さんですよ。今でもサンタの孫娘さんって呼んでますけど、サンタだったのは仮の姿で、実は何かの組織の人だったでしょ。それでその長官が彼女のお爺さんって、何度かこの話はしてますけどね。

Dr. ムスタファ-----ああ、そうだったか。


コマリタ-----どうするんですかぁ?長官の命を差し出しますかぁ?

サンタの孫娘-----…それは、無理です。

コマリタ-----もう、どうせ出来ないなら余計な事はしないでくださぁい。


Little Mustapha-----うぅぅ…。まったくなんなんだ。ボクは段々腹が立ってきたぞ。ボクらが長年頑張ってきたことの結果が、このウンコ我慢なのか?たった一つの簡単なことが出来さえすれば、あのトイレのウンコが正しい事のために置かれたのか、悪いことのために置かれたのか、そんなことなど考えずに済んだのに。それから、今我慢しているウンコは良いウンコなのか悪いウンコなのか。そんなことは誰が考えるんだよ!ボクらはただプレゼントが貰いたかっただけなのに。たった一度、望みどおりのプレゼントをサンタクロースからもらって、みんなと同じように嬉しい気持ちになれたらそれで良いのに。どうしてボクらだけがこんな目にあうんだ!


 Little Mustaphaがいつになく感情的なので他のメンバー達は少し呆気にとられていました。

 そして、その激しい口調に呼応するように部屋にあった五つの悪魔デバイス・ポータブルと呼ばれていた機械が動き出しました。五つの機械は一度ブーンという大きな音を立ててまた静かになりました。


サンタの孫娘-----なんですか、今の音は?みんな大丈夫ですか?


コマリタ-----あっ、みなさん。ちょうど今、世の中でクリスマスのカウントダウンが始まったようなのですが、それと同時にトイレの扉の方の準備も整ってきたようです。では、こちらをご覧ください!


 コマリタが部屋のドアを開けると、出てすぐ左のドアの周囲がボンヤリと明るくなっていました。右が風呂場で左がトイレだったようです。


コマリタ-----そして、カウントダウンが進むと同時に我慢も限界に近づいているんではないでしょうか?

ニヒル・ムスタファ-----マズいな。オレもさっき先生のあとで行ってくれば良かった。


コマリタ-----どうでしょうか?まだ我慢できますかぁ?

Little Mustapha-----うるさいよ!くそぉ。20周年のクリスマスはウンコ我慢なのか。しまった、ウンコ我慢中に「くそぉ」とか行ってしまった。


 部屋の外に見えるトイレのドアのところでは、ボンヤリとしていた光が次第に強くなっていきました。そして、光が強くなる度に重低音が起こす振動が伝わってきました。それがLittle Mustaphaのお腹にも響いてきて、Little Mustaphaは気の遠くなるような感覚になっていました。

 20周年イヤーだというのに、今年もこんなクリスマス。そんな中でLittle Mustaphaの頭に過去のクリスマスの記憶が蘇って来ました。クリスマス前に期待が膨らんでは、毎回見事に裏切られる。それだけではなく、命の危険にさらされたり、一度は死んで地獄へ行ったこともありました。


Little Mustapha-----ああ、そうだよな。みんなボクらを利用しているだけなんだ!サンタの孫娘さんだってボクらを守ってくれてたワケじゃない。良く解らないトイレの扉のために、ボクらはプレゼントが貰えないばかりか、こんな危険な目にあわないといけないんだぞ。

サンタの孫娘-----それは違います!扉を守るのはあなたなんです。だから私達はあなたを守るんです。

コマリタ-----適当なこと言わないでくださぁい。この人達はあなたをたぶらかして扉を自由に使おうとしてるんですよぉ!

Little Mustapha-----うるさい!どっちの言うことももう信じない!ボクの家のトイレはボクのものだ!…そうか!そうだよ。ボクの家のトイレはボクのものなんだよ!この扉はボクのものだ!

ミドル・ムスタファ-----大丈夫ですか?

ニヒル・ムスタファ-----ウンコ我慢しすぎておかしくなったか。

Little Mustapha-----解った!もうウンザリだ!ここで全てを終わらせてやる!プレゼントが貰えないのはクリスマスがあるからだ!だったらクリスマスなんてなくしてしまえば良いんだよ!この下らない家と、世の中の全て。ボクの便意もろとも消し去ってやる!これがボクらのサンタに対する最後の復讐だ!

コマリタ-----つまり、トイレを使う気になったのですね!みなさん、ご覧ください。我らが英雄Little Mustaphaがユックリとトイレに向かっていきます。


ニヒル・ムスタファ-----おい、何やってるんだよ。まさかトイレを使うんじゃないだろうな?

Dr. ムスタファ-----いや、あれはトイレを使う目だ。

サンタの孫娘-----ダメ。冷静になって!


コマリタ-----準備万端整いました。実はLittle Mustaphaが喋っている間に日付は変わって、いつでもトイレの扉を使う事が出来るのです。さあ、こちらへ!


 Little Mustaphaがトイレに近づくに連れて、その辺りを照らしていた光が大きく揺らめき始めました。Little Mustaphaはユックリとそこへ向かって歩いて行きます。

 そして、ドアに手を伸ばしました。


ミドル・ムスタファ-----ダメですよ!人類の未来がかかってるんですよ!

Little Mustapha-----もうこうするしかないんだよ!やると決めたらやる!

ニヒル・ムスタファ-----とうとうヤバい事になってきたな。

Dr. ムスタファ-----こうなったら祈るしかないな。

サンタの孫娘さん-----やめてください!何をしているか解ってるんですか?お願いだから、やめてください!


 ここでこの話の最初に書かれた台詞の部分がコピペされました。それはだいたい違和感なく収まっています。つまり、時間の流れは大きく変わることなく進んできたということでしょう。

 ということは、このあとLittle Mustaphaがドアを開けると激しい閃光がドアからあふれ出してくるはずです。

 一体どうなるのでしょうか?