ポータブル・ポータル
いつものように変な乾杯でパーティーが始まりましたが、今回はLMB20周年の年のクリスマスです。いつもと同じじゃないことも起こるかも知れないと思ったとたん、Little Mustaphaのいる部屋に変化が起こり始めました。
静電気を帯びたものを肌に近づけた時の、あのソワソワするような感覚がLittle Mustaphaを包み込んでいるような気がしてきました。それと同時に小さな振動音のような音も聞こえています。
何が起きているのか解らないままLittle Mustaphaは主要メンバー達の映っている悪魔デバイス・ポータブルの画面を見ていました。彼らは特に何も感じていないようですが、その時突然ミドル・ムスタファの姿が画面から消えたのです。
驚いて目を丸くしていたLittle Mustaphaですが、さらにメンバー達の姿が次々に消えて行きました。Little Mustaphaの目は画面に釘付けになっていましたが、さっきと周りの雰囲気が変わったような気がして、画面から目を離しました。
すると、なんと部屋の中に主要メンバー達が悪魔デバイス・ポータブルを持って座っていたのです。Little Mustapha同様に他の主要メンバー達も何が起きたのか解っていないようです。でもLittle Mustaphaはこれも良いことの前兆だと思って少し嬉しそうでした。
Little Mustapha-----うわぁ!キミ達もここに来られたのか!
ミドル・ムスタファ-----どういうことですか、これは?
ニヒル・ムスタファ-----ここはキミの部屋じゃないよな。
マイクロ・ムスタファ-----しかし、さっきビデオでLittle Mustaphaの後ろに映っていた部屋とは同じようですね。
Little Mustapha-----さすがマイクロ・ムスタファ。そういう所には良く気付くね。
Dr. ムスタファ-----なんだ?引っ越したのか?
Little Mustapha-----引っ越した…という表現はちょっと違うかな。
ニヒル・ムスタファ-----そんなことよりも、なんでオレ達がここにいるんだ?さっきまで自分の部屋にいたんだぜ。
Little Mustapha-----それはつまり、キミ達も永遠に繰り返される悪夢から抜け出すことが出来たってことだよ。
ミドル・ムスタファ-----なんか怪しい感じですが、どういうことですか?
Little Mustapha-----これは説明するのが難しいんだけどね。どこから話したら良いのか…。
ニヒル・ムスタファ-----何でも良いから、まずはここがどこなのか教えてくれよ。
Little Mustapha-----この家こそがボクの本当の家なんだよ。
Dr. ムスタファ-----本当の家?前の家は何だったんだ?
Little Mustapha-----これはけっこう前から気になっていたことなんだけど。ある日見た夢の中で自分のいた場所がまた別の夢にも出てくるってことあるでしょ?
ミドル・ムスタファ-----まあ、あるような気はしますけど。
Little Mustapha-----ボクの場合はそれがとある家だったんだけど。子供の頃から最近まで、ずっと夢の中に同じ家が出てくる事があったんだよ。それで、夢の中のあの家でもボクの生活が現実世界と平行して続いていたとしたら?とか思ったんだけど。そうやって考えていたら、そうじゃなくて現実のものだと思っている家の方が、実は夢の中の家なんじゃないか?って思えてきたんだよ。
ニヒル・ムスタファ-----なんか変な話になってきたな。つまり、オレ達がいつも集まっていたあの家は現実じゃなかったって言いたいのか?
Dr. ムスタファ-----でもあそこで起きたことは夢じゃなくて全部現実だぞ。
Little Mustapha-----夢の中ではみんなその夢が現実だと思ってるはずだし。それに良く考えてみてよ。これまでクリスマスにあの家で起きたこと。そして、どんなに頑張っても貰えないプレゼント。さらに、ボクの作ったものがワケの解らないところでパクられてたり。あんなことが何年も同じように繰り返されるってことが現実に有り得ると思う?
ミドル・ムスタファ-----確かにあの家で起きていたことは、現実離れしていましたけど。でもアレが夢で、今いるこの場所が本当のあなたの家っていうのは、あなたが考えた事でしょ?
Little Mustapha-----いや。この家が夢の中の家みたいだって言ったら、コマリタちゃんが教えてくれたんだよ。
マイクロ・ムスタファ-----あの、ちょっと良いですか?
Little Mustapha-----まあ、良いですよ。
マイクロ・ムスタファ-----そのコマリタというのは、今あなたが作ろうとしているデジタル・アシスタントの…。
Little Mustapha-----パコリタね。
マイクロ・ムスタファ-----そのパコリタの進化したものということでしたね。
Little Mustapha-----うん。
マイクロ・ムスタファ-----でも、そのパコリタというのを作っていたのは、あなたが夢の中の家と言っているあの家だったんですよね。
Little Mustapha-----良いところに気付いたね。でもボクがこの部屋に来た時に、この部屋にも同じ作りかけのパコリタがあったんだよ。きっとこっちの出来事があの夢の中にも反映されてるってことだよね。
Dr. ムスタファ-----なんだか全然話が解らないな。私らは夢から目覚めたワケじゃなくて、この装置の電源を入れたらここに転送されてたんだぞ。
Little Mustapha-----そうじゃなくて、ボクらはここでこの装置を持ったまま寝ていたのかも知れない。
ミドル・ムスタファ-----でもあなたはずっとここにいたんですよね?
Little Mustapha-----ああ、そうか。じゃあ、ボクもみんなと一緒のタイミングで目覚めたのか?…でも、それだと変だな。
ニヒル・ムスタファ-----もうこれは話してても埒があかないぜ。
Little Mustapha-----まあ、そういうことなら直接コマリタちゃんに聞いてみれば良いんだよ。
Little Mustaphaが悪魔デバイス・ポータブルに付いているスイッチを押しました。
Little Mustapha-----ヘイ、コマリタ!
Little Mustaphaが言うと、部屋の外からモーターの回転する音の混じった足音が聞こえて来ました。そして、部屋の外で足音が止まるとドアが開いて、コマリタ・ナラ・ズイルベーが入ってきました。
コマリタ-----私はコマリタ・ナラ・ズイルベー。ズイ、ズイ、ズイルベー!コマリタ・ナラ・ズイルベー!
ニヒル・ムスタファ-----なんだそれは?
コマリタ-----私の原形になったパコリタ・ナラ・ズイルベーに記録されていた挨拶を元に作られたコマリタ版の挨拶です。それよりも皆さん。ここがどこだか解りますかぁ?
ミドル・ムスタファ-----それを聞きたいと思っているんですが。
コマリタ-----それは大ハズレ!なんとここはLittle Mustaphaが現実だと思っていたのは実は夢で、夢だと思っていたこちらが現実だったという話の「こちら」なんです!
Dr. ムスタファ-----なんかテレビみたいな話し方だな。
Little Mustapha-----それはボクも気になってたんだけど。未来じゃそういうのが流行ってるのかもよ。
ニヒル・ムスタファ-----そんなことよりも、この機械のスイッチを入れた途端にオレ達がここにいたのはどういうワケなんだ?
コマリタ-----それは転送装置によって転送されたのだと思います。悪夢の中の家はLittle Mustaphaのいた家だけ。他の皆様の家はそうではありません。
ミドル・ムスタファ-----じゃあ、ここに来る必要はなかったような気もしますが。
Little Mustapha-----でも、コマリタちゃんによると悪魔デバイス・ポータブルはプレゼントを貰うのに必要な装置ってことだからね。こうしてみんながここにいることによって、プレゼントを貰える確率が上がってるんだよ。そういうことでしょ?
コマリタ-----そのように思われます。しかし、その機械に関しての詳細はデータベースの中には見つかりませんでした。私はデジタル・アシスタントとして悪魔デバイス・ポータブルを皆様の家に届けました。そして、その結果が今の状況です。今のところ問題は見つかっていません。
Little Mustapha-----ふーん。でも悪魔デバイス・ポータブルに関しては良く解らないのか。これはサンタの孫娘さん達の組織が作ってるみたいだから、極秘な部分が多いのかな?
ニヒル・ムスタファ-----なんだかスッキリしないけどな。
Little Mustapha-----心配性だなあ。まあ、最悪いつものようにボクらが危険な状態になったとしても、この悪魔デバイス・ポータブルで助かる感じがするでしょ。人を転送する機能もあるんだし、逃げるのは簡単だよ。
ニヒル・ムスタファ-----確かにそうかも知れないな。
Little Mustapha-----もう細かいことは気にしないでさ。20周年記念でやっと真実に気付いたボクらがプレゼントを貰えるクリスマスなんだし、ここで乾杯音頭をやり直し。現実の家にも酒は沢山あったからね。
ミドル・ムスタファ-----というか、買いすぎじゃないですか?
Little Mustapha-----現実世界ではさらに酒好きなのかな。どうでもイイけど。じゃあ、みんなコップに酒を汲んで。せーの…!
一同-----メリー・リアル・クリスマース!
ホントにこんな事で大丈夫なのか解りませんが、そろそろみんな酒が飲みたくなっていたので、沢山の疑問を残したままパーティーが再開されました。本当のLittle Mustaphaの家と言われている場所で。