プロローグか
2024年秋。まだ暑すぎた夏が終わらずに、いつまでも続くかと思われたある日のことである。
人気女子アナのウッチーこと内屁端は少し慌てた様子でスマホを手にとって通話を始めた。
「…はい、こちら人気女子アナのウッチーこと内屁端でぇす。少しお話よろしかったでしょうか?実は先月の通信料金なのですが、どうしてこんなに高いのですかぁ?」
どうやらスマホの通信料金におかしなところがあったようである。電話の相手がウッチーの名前や電話番号などを確認すると、しばらく経ってから答えが返ってきた。
「先月の通信料金に関しては請求の通りで間違いはないようです。定額の通信量を超えた時に『追加ギガギルガメッシュブースター』を購入しています。『追加ギガギルガメッシュブースター』10回分購入の代金が月々の通信料金に上乗せされています」
「確かに、そういうメッセージが出てきたのでタップした覚えがありますが、それは恐らく亜毛パンこと元女子アナの亜毛屁端のオンライン専用デジタル写真集『擬我(ギガ)』のダウンロードの時だったと思います。しかし、その亜毛パンのデジタル写真集は亜毛パンから無料になるクーポンを貰って購入したのでタダになるのではないでしょうか?」
「それは私どもの提供しているサービスではないので、こちらでは対応しかねますが。ただ、ここだけの話、近頃そういう問い合わせが増えていまして、そのデジタル写真集というのが弊社とは別の通信事業者と亜毛屁端さんのコラボ企画でして。普通にダウンロードすると膨大な通信量で莫大な通信料金も発生するのですが、その通信事業者と契約している方なら通信量無料でダウンロードできるというサービスなのです」
「ぶっちゃけ、その通信事業者というのは亜毛パンが最近CMに出ている仰天モバイルですね。ということは文句をいうのなら仰天モバイルということでよろしかったでしょうか?」
「ええと…。そういうことになりますでしょうか」
「ということなら…っと、思ったらちょっと待て!危うく騙されるところだったんですが、写真集はタダだったから請求も0円で、こっちは問題ないのです!どちらかというと10回使っただけで20万円もするそのなんとかブースターが問題じゃないんですかぁ?」
「それはお客様が画面をタップした時点で規約に同意したことになるので、購入に関しては問題はないかと思われます」
「てめえ…女子アナなめやがって…」
「あ、先に申し上げて起きますが、私は実はAIなので脅しとかは通用しませんよ」
「AI…?!そ、それならまあ、そうだな。…以上!ウッチーこと内屁端でした!」
どうにもひどい話ではあるが、実際のところはウッチーが高い買い物をしたというだけの話である。それにしてもどうしてAIと聞くとウッチーは大人しくなってしまうのかというと、これまでの話を知っていれば解るかも知れないが、ここでこれ以上この話をしても意味がない。秋の出来事はここまでにしておくのである。
(ホントのところは、秋に書かれるはずが時間がなくて書けなかった亜毛パンの写真集ネタは書いておかないと後の話に影響する可能性もあるので念のために書かれた、ということである。)
もうクリスマスか
意味があるのか解らないプロローグのようなものから月日は流れ、今日はクリスマスイブです。ずっと暑かったし、冬の直前まで暖かくてもやっぱりこの時期には気温も下がって冬の雰囲気。そしてクリスマスムードの街の景色がさらに冬を演出しています。
そんな街なかをLittle Mustapha's Black-holeの主要メンバー達がブラックホール・スタジオ(Little Mustaphaの部屋)へ向かって歩いていました。各自口には出しませんでしたが、今年こそはプレゼントが貰えると思っているようです。それというのも、前回の集まりではクリスマスにサンタからプレゼントを貰うことに関して問題があれば連絡を取り合うという事になっていたのが、そういう連絡が一つもなかったからです。
駅前の賑やかな通りを過ぎて人の少ないブラックホール・スタジオの近くまで来た時には、その寂れた雰囲気に少しだけ不安になることもありましたが、それも各自口には出さず、ただプレゼントを貰う期待を胸に歩いていました。
いつものように鍵のかかっていないブラックホール・スタジオの扉を開けて主要メンバー達は中へ入って行きました。その時に玄関で「おや?」と思ったのは異変に良く気づくマイクロ・ムスタファだけではなかったはずです。しかし、気にするほどのことではないと思ってそのままブラックホール・スタジオ(Little Mustaphaの部屋)へと向かいました。
そしてブラックホール・スタジオ(Little Mustaphaの部屋)のドアを開けると、そこにはLittle Mustaphaだけでなく、見慣れない男の人がLittle Mustaphaと話していたところでした。早くも予定と違うことが起きています。主要メンバー達はやっぱり不安になってきました。さっき主要メンバー達が玄関で気づいた事というのは、明らかにLittle Mustaphaのものではない靴のことでした。
Little Mustapha-----やあ、やっぱり今日はちょっと早めに来たね。
ニヒル・ムスタファ-----まあ、そうなんだが…。
見慣れない男の人-----あっ、それじゃあ私はこの辺で失礼しますね。
Little Mustapha-----そんな事言わずに、ちょっとでも参加していけばイイのに。
見慣れない男の人-----いや、だめなんですよ、私。パーティーとか、ホントに苦手で。それじゃあ、どうも忙しいところ失礼しました。
Little Mustapha-----いやいやこちらこそ、大してお構いもできませんで。
主要メンバー達は黙ったままモッサリとした雰囲気の男が軽く頭を下げながら部屋から出ていくのを見送りました。
ミドル・ムスタファ-----ちょっと、これは異常事態じゃないんですか?
Little Mustapha-----何が?
Dr. ムスタファ-----何が、って。我々の知らない人がいて、そして帰っていったぞ。
マイクロ・ムスタファ-----ここはひとまず落ち着きましょう。私達だってLittle Mustaphaの知り合いを全員知っているワケではないんですから。
ニヒル・ムスタファ-----まあ、そうだよな。それで誰なんだ?今の人は。
Little Mustapha-----知り合いってほどじゃないんだけどね。里梅屋(リバイヤ)さんだよ。
一同(Little Mustapha除く)-----リバイヤサン?!
Little Mustapha-----そんなに驚かなくても…。
ミドル・ムスタファ-----でもなんとなく不吉な感じがしませんか?
Little Mustapha-----何が?というか、良く知らない人に対して不吉とか、それは失礼なんだし。ボクもいきなり来た時はちょっと驚いたけどね。でも色々と教えてくれてさ。まあ、不吉かどうか?ってことだとビミョーな内容ではあるんだけどさ。とにかく、あの人は悪い人じゃなさそうだし。
ニヒル・ムスタファ-----そんな説明じゃ不安にしかならないぜ。
Little Mustapha-----それもそうか。それじゃ、何が起きたのか回想していくから。