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#209 「浸透」 2024-12-26 (Thu)

深夜帯

 Raspberry Pi Zeroのスピーカーからは音がしなくなったのでコマリタはログアウトしたようです。ちょっとした静寂の後、今度はRaspberry Pi Zeroの正常な機能としてスピーカーから音声が流れてきました。

「さっきから気になってましたが、夜も更けてきたのでナノべーが明かりを消します」

音声が再生されると部屋の明かりが消えました。

 時間が来ると部屋の明かりが自動的に消えるシステムですが、今日も混乱した状況になっていたのでLittle Mustaphaが作ったこのシステムの自慢をする時間はないようです。

 部屋の明かりが消えるとやはり気になるのが留守番電話機にメッセージが残されていることを示すランプの点滅です。


Little Mustapha-----テレビも気になるけど、まずはこの留守番電話だな。

Dr. ムスタファ-----大丈夫なのか?聞かないでメッセージを消すって機能もあるんだろ?

マイクロ・ムスタファ-----それは良くないのではないでしょうか。もし恐ろしい内容だったとしても、何も知らなければ対処が出来ませんから。

Little Mustapha-----そうだよね。でも最近はこの留守番電話のメッセージは大して危険な感じがないからね。さっさと聞いてテレビを見ようよ。それじゃあ、メッセージ再生、ピッ!


留守番電話機-----ゴゴ・ゴジ・ゴジ・ゴゴ・ゴゴゴ・ゴゴゴゴ・イップン・サイショノ・メッセーピーッ!「ちょいとなんなんですの?今日はクリスマスイブでございましょう?それであたくしが素敵なラジオの番組をやっていたはずなんですけれど、なんだかスゴく普通でつまらない番組だった気がしてならないんですのよ。ロココでアールヌーボーな番組になるはずでしたのに。きっとあなた達が唐揚げだらけのつまらないパーティーをしているからいけないんですわ。それにあたくしをパーティーに呼ぶこともしないで。でもそんな普通でつまらないパーティーなんか行く気にはなれませんけれど、あたくしを呼ばなかったことに関しては謝罪をしないと許されませんわよ。あたくしに心からの謝罪をするつもりがあるのなら、あたくしのお屋敷の電話番号は666の…」ピーッ!次のメッセイピーッ!「フッフッフッフ…!」ピーッ!メッセイジ・オワリ!


Little Mustapha-----だいたい予想どおりかと思ったら二件目があったね。でもテレビが気になるから、まあいいか。

ミドル・ムスタファ-----良いんですか?!

Little Mustapha-----だってコマリタはテレビを見たら参考になるって言ってたし、今の留守番電話に関するヒントもあったりするよ。ということでテレビに集中!

 テレビではクリスマス女子会という設定のトークコーナーが終わりに近づくと同時に、今回の大量のゲストが出演するクリスマス特番の種明かし的なことが行われようとしていた。亜毛屁端の6冊目となる写真集が完成間近という発表の後で、今回のゲストのアイドルグループ達の写真集発売の告知があったのである。

 写真集は莫大な通信量が発生することで問題となった亜毛屁端のデジタル写真集と同じく、仰天モバイルの運営するスマホ用オンライン書籍販売の仰天堂が独占販売。

 グループに人数が多いので亜毛屁端の時とは比べ物にならない通信量となりそうである。

 しかし、それでも購入したいというのがファンのさが。特にIDL/42などはビジュアル担当、グラビア担当以外のメンバーの姿も見られるとあって、マニアなファンは大歓喜なのだ。

 そして、圧巻なのがやはり袋小路5000。いつの間にかメンバー数が5000人を超えて名前も変わっているが、全メンバーそれぞれの写真が少なくとも10ページ以上。主力メンバーになると50から100ページになるという超大作。さらに卒業が決まっている増矢場(マシヤバ)マキと須石音(スゴクネ)ミキに関してはファイルサイズ4倍の特別版も発売されることになっている。

 もちろんこんな大容量のファイルをダウンロードするにはギガが足りないということになるし、場合によっては定額通信量の上限を超えて高額な請求となるのだが、仰天モバイルなら通信量を気にせずダウンロード可能となっている。

 ついでに、すでに仰天モバイルを利用している方でも該当する写真集を購入した方にはもれなく「麻薬取締官ホンビノス恵子」の下敷き差し上げます!

 言うまでもなく、今年のクリスマス特番のスポンサーは仰天モバイル一社である。


 という女子会トークとは思えない内容の話になってきたあたりで、クリスマスマーケットの会場がザワザワしてきたようです。


腹屁端-----はい、そろそろクリスマス女子会の方も終わりに近づいてきました。…あ、なんでしょうか?クリスマスマーケットの会場の方はスゴく盛り上がっているようですね。それでは今回のゲストとしてトークを盛り上げてくれましたシナビル・シトラスのみなさん。初めてのクリスマス特番でしたがいかがでしたかぁ?

シナビル・シトラス:シナビル・レモン-----実は出演が決まった時からスゴく緊張していて上手く話せるか心配だったのですが、内屁端さんに女子アナとしての心得を伝授していただいて。おかげでなんとか最後まで…

群衆-----どけー!…亜毛パンの前に座ってんじゃねえよ!…こ○すぞ!こらぁ!

シナビル・シトラス:シナビル・レモン-----!!

内屁端-----(レモンさん。こういうのはスタッフに任せて)

シナビル・シトラス:シナビル・レモン-----…なんとか最後まで役目を果たせたと思っています。

AD-----あれ。いなくなってたと思ったら撮り亜毛パンたち戻ってきてるっすね。ちょっと行って注意した方が良いっすね。

ディレクター-----いや、ちょっと待て。何もするな。

AD-----でもヤバいっすよ。

ディレクター-----上からの指示だ。このまま中継を続ける。

シナビル・シトラス:シナビル・ライム-----…ということで、いずれはトーク中心のお仕事もしてみたいと思っているので、今日はスゴく勉強になりました。

腹屁端-----ではミカンさんはどうですか?

シナビル・シトラス:シナビル・ミカン-----私はメンバーの中では笑わせる役割なのですけど。今日は少しスベってしまいました。でもみなさんにフォローしていただいて…

群衆-----おまえつまんねえんだよ!…じゃまなんだよ!…どっかいけー!

シナビル・シトラス:シナビル・ミカン-----うぅ…。

シナビル・シトラス:シナビル・レモン-----おいちょっと待てよ!お前ら、こっちが黙ってればイイ気になりやがって。アイドルなめてると痛い目に遭うぞ!

 ここでまさかの裏キャラ発動である。彼女達が内屁端から伝授されたのは女子アナっぽい喋り方だけではなかったのである。女子アナの裏の顔もしっかり伝授されていたアイドル達。我慢の限界を超えて見せてはいけない裏の顔で撮り亜毛パン達に向かっていくのであった。

 アイドルグループの中でも正統派と思われていたシナビル・シトラス。なので撮り亜毛パン達も何を言っても大丈夫と思っていたのだろう。しかし思いも寄らぬ迫力で迫ってくるシナビル・レモンの目に光る怒りに恐れおののいた撮り亜毛パン達。脚立も片づけず、ほうほうの体で逃げていったのである。

 シナビル・レモンは散り散りになって逃げる撮り亜毛パンを追い回すことはなく、その場に立ち止まった。そして、そこへやって来た他の二人とともにガクリとひざを突いてうずくまってしまったのである。

 心配になった内屁端が彼女達のもとへ歩み寄る。涙を流しながら話すシナビル・レモンによれば、アイドルとして見せてはいけないものを見せてしまったと、自らの行いを悔いていたのである。

 それを聞いた内屁端は言う。

「アイドルだけがあなた達の生きる道ではないのよ。それにあなた達が良いウンサーを持っているからこそ、今のような行動ができたの。あなた達ならきっと良い女子アナになれるわ」

内屁端は良いことを言ったし、これで彼女達も元気になってくれるだろうと思ったのだが、シナビル・レモンから返ってきたのは意外な言葉だった。

「違うんです。私達にはウンサーなんて少しもなかったんです。でも有名になりたい一心である人の言葉を鵜呑みにしてしまい、言われるままにウンサーに手を出してしまったのです」

「え、それって、まさか…」

「私達だけじゃありません。今日出演した全員が出所の解らないウンサーを渡されて使っているのです」

それを聞いた内屁端は退社していった新人女子アナ達を思い出していた。もしかして彼女達のウンサーが盗まれて悪用されているのでは…。そう思った時に彼女のすぐ近くでどこかで聞いたことのある声がしました。

「大体解ってきたのではないでしょうか?どこかにウンサーを利用してぼろ儲けしようと企んでいる人がいるようです」

「あなたはアンドロイド女子アナ?」

「いいえ、違います。今のユーザーはリコール社専属女子アナの横屁端アナ。私は女子アナ以外のアンドロイド、コマリタ・ナラ・ズイルベーです。ズイ、ズイ、ズイルベー。ご・ま・み・そ・ズイルベー!」

「そのぼろ儲けを企んでるっていうのはどこのどいつだ?」

「それは簡単です。社員である女子アナの管理をしたり、番組に出る出演者のことに口出しできるような立場の人とは、どんな人達だか解りますかぁ?」

コマリタのクイズ形式での返答でしたが内屁端には答えはすぐに解ったようです。

「…ゆるせねえ」

そうつぶやくと内屁端は大通りに向かって走り出しました。それを見た中継スタッフ達も、これは面白いことになったと後を追います。