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#209 「浸透」 2024-12-26 (Thu)

群衆

 ブラックホール・スタジオ(Little Mustaphaの部屋)に劣らず、あるいはそれ以上にいつでも雲行きが怪しいのはいつものテレビの現場。夕方のニュース番組でこの時間は特番の前に腹パンこと腹屁端アナが普通のニュースを読んでいるのだが、その舞台裏では特番で放送される中継の準備が進められているところだった。


AD-----あれなんすかね?

カメラマン-----おまえこの業界にいて知らないの?亜毛パンの入り待ちのファンだよ。

AD-----へえ、自分いつもウッチーさんとこなんで知らなかったっす。でもなんで脚立とか使ってんすか?

カメラマン-----なんでも亜毛パンがSNSで「美しい私を撮影してくださるのは大歓迎」とか書いたら、真に受けたファンがカメラを持って現場に殺到するようになってさ。今じゃ「撮り亜毛パン」って有名だよ。

AD-----なんかあんな沢山来てヤバいっすね。脚立とか危ないし。

カメラマン-----これからもっとヤバくなるよ。


 ちょうどそこに現場に到着した亜毛パンの姿が。撮り亜毛パン達が道の両脇で待っている所へ亜毛パンが近づいていくと、次第に一眼カメラのシャッターを切る音が大きくなるのが聞こえてきたのだが、それと同時になぜか罵声も聞こえてきたのである。


群衆(撮り亜毛パン達)-----邪魔だー!…前通るな!…どけー!…マネージャー、一緒に歩くな!…後ろ歩けよ!…お前○ろすぞ!


AD-----なんであんなに怒ってるんすか?

カメラマン-----どうやら写真に亜毛パン以外の人とかが写ってると評価が良くないらしいんだ。それでいつもあの有り様。

AD-----あの人達ずっといるんすかね?

カメラマン-----まあ、亜毛パンがいると解ってたらいるだろうね。

AD-----まずいなあ…。


 明らかに生中継の邪魔になる撮り亜毛パンの集団。しかも全員が亜毛パンのファンとなるとウッチーとの衝突は避けられそうにないのである。

 さらにまずいことに、今夜のクリスマス特番には辞めた新人女子アナ代わりのアイドルグループのメンバーが大量に登場して、亜毛パンの前を横切る可能性も大いにあるのだ。そして、そのアイドルグループであるが、当初予定されていたアイドル達の他に新たに数グループが加わる事になっているのだ。

 これに関しては内屁端も眉をひそめているのである。


内屁端-----はい、それで。新たに加わったのがIDL/42(「42ぶんのあいどる」と読む)と、…袋小路5000?!人数増えてるの?それで、また出すんですか?…事務所の関係って、確かに宇絵座理保の後輩かも知れませんが。それで食レポの方は「香るコンポスト」の子たちで間違いないですね。一応彼女たちは全員二十歳以上ってことにしておいてくださいね。去年のこともありますから。


 電話での慌ただしいやり取りのあと、思わず裏の顔が出てしまいそうになるのをグッとこらえる内屁端。さらに出演者が増えて、しかもそれぞれが大人数のグループ。画面に収まりきるのかも解らないような人数になっているのだが、番組側がこんな無茶なことをするとは思えない。となるとこれはスポンサーが何か口出ししたに違いない。しかし、そこを気にしている場合ではないのである。新人女子アナを大量に失った今、有り合わせの戦力でなんとかクリスマス特番を成功させないといけないのだ。

呪いの人形

 これまで良くあった恐怖のクリスマスとはちょっと違っていますが、ブラックホール・スタジオ(Little Mustaphaの部屋)でも何かが少しずつ怪しくなってきていました。しかし、どんなに怪しいことがあっても、それがプレゼントを貰うことに関係していないのなら心配することではない、とLittle Mustapha達は動揺しないように勤めていました。


犬サンタ-----ということでだワン。名探偵としては、それがたとえご主人様であっても気掛かりなことがあれば調べなければいけないと思って、こっそりご主人様の部屋の様子をうかがってみたんだワン。そうしたらやっぱり人形があって、ご主人様がそれに針を突き刺しているようだったんだワン。

Little Mustapha-----つまり、長官の孫娘さんが呪いの人形を作っていて、それでボクに呪いをかけてるってこと?そんなことはあり得ないの倍の倍!

ミドル・ムスタファ-----なんですか、倍の倍って。

Little Mustapha-----二重にあり得ない感じだったからさ。だって長官の孫娘さんがそんな陰険なことをするワケないしさ、さらにその相手がボクってこともあり得ないよ。だってボクのこと愛してんだぜ!

ニヒル・ムスタファ-----二つ目の理由は願望だと思うけどな。だがオレも長官の孫娘さんがそんなことをするとは思えないな。

犬サンタ-----でも実際に部屋には怪しい人形があったんだワン。きっとLittle Mustaphaが一方的に好きって言ってるのが疎ましくなって、それで呪いをかけてるんだワン。

Little Mustapha-----えぇ…!ホントだったら超ショックだからやめてくれよ。

犬サンタ-----それに、この部屋だって、さっき別の人がいたという以外にもなにか違和感を感じるんだワン。きっと呪いと関係しているんだワン。

ミドル・ムスタファ-----この部屋って来るたびにビミョーに違ってますからね。どれがどう違和感なのか良く解りませんね。

Dr. ムスタファ-----いつもと違うことと言ったら、材木があちこちに置いてあることか?これ何なんだ?

Little Mustapha-----これは悪魔デバイスの第2ステージ計画だけどね。これって見た目のショボさにかかわらず、長官の孫娘さんと連絡の取れる重要な装置でもあるんだよね。でも大きいし部屋の隅に置くしかなくてね。それだと急に長官の孫娘さんから連絡が来た時に不便だったりするから、第2ステージでは「悪魔デバイス Fixed」として、ベッドの棚と一体化させる予定なんだよ。本当はクリスマスまでに完成させる予定だったんだけど、上手くいかないことが多くてまだ開発中だけどね。完成したら四六時中長官の孫娘さんからの連絡を待ってる状態だよ!

ニヒル・ムスタファ-----待ってるだけじゃ、なんか虚しくないか?

Little Mustapha-----夢があればそんなことはないよ。

ミドル・ムスタファ-----やっぱり虚しい感じがしますね。

犬サンタ-----それよりも、もうそれは通信装置としては使われないんだワン。

Little Mustapha-----えっ、なんで?

犬サンタ-----最初は安全だったけど、今では通信を傍受される恐れがあるからもう使わないことになったんだワン。でも毎年ちゃんとジャーキーを私に買ってくれる限り、こうして私がやってくるんだし、心配はいらないんだワン!

Little Mustapha-----そうじゃなくて、長官の孫娘さんから連絡が来て欲しいんだけど。こっちからはどうしたって連絡が出来そうにないし。

犬サンタ-----そんなことは知らないんだワン。どっちにしろご主人様は忙しいからあなたにかまっている暇はないと思うんだワン。

Little Mustapha-----うーん…。でももしかしてトイレの扉がまた時空の扉になったらこっちから連絡が出来たりしないかな。

ミドル・ムスタファ-----恐ろしいこと言うのはやめてくださいよ。

Little Mustapha-----いや、冗談だけどね。


ブラックホール・スタジオ(Little Mustapha)の部屋では話があちこちにそれるので何が怪しいのか解らなくなりそうですが、とにかく何かが怪しくなっているようです。