あちらでは
ブラックホール・スタジオ(Little Mustaphaの部屋)では全てが上手くいっている、少なくともLittle Mustapha達はそう思っているようだが、ここでは以前からちょっとした問題が発生しているようである。
ここ、とはどこかというと、それはもちろん人気女子アナのウッチーこと内屁端を始めとする女子アナ達のいるテレビの現場である。
それは今から一ヶ月ほど前のこと。ウッチーこと人気女子アナの内屁端が手塩にかけて教育してきた新人女子アナたちが次々に女子アナを辞めていくという異常事態が発生したのだ。
今時ならパワハラとも言われかねないウッチーの厳しい教育に耐えて、過酷な女子アナの世界で生きていける能力を身に着け、やっと一人前になろうかというところでの出来事だったのでウッチーとしてもショックであった。退社の理由も「やる気がでない」とか「女子アナとしての情熱を失った」とか、これまでの頑張りからは想像できないようなものであったのも気がかりではあったが、辞めてしまったものは仕方がない。
本来ならクリスマス特番で活躍する予定だった新人女子アナ達の大量辞職によって代わりが必要になったのである。そして、選ばれたのがなぜかあちこちのアイドルグループの寄せ集め。
ウッチーとしては、また「アイドル崩れ」が女子アナの仕事を奪うのか?と納得がいかないところもあったようだ。しかし、彼女たちが女子アナっぽくなるために、この一ヶ月ほどウッチーが研修をしていたところ、礼儀正しいし、思った以上に能力があるし、彼女達ならやってくれると思い始めていたようである。状況が状況なだけに、ウッチーとしても必要以上にアイドル達をしごいたのだが、それでも弱音を吐くことなく研修を終えた彼女たちの姿を見て、ウッチーはこの時代にもこんな若者がいるものなのかと、内心驚いていたともいわれている。
そして研修の期間を終えてやってきたクリスマスイブ。いつもの出演者にリポーターとしては不慣れなアイドル達。そして、秘密の特別ゲストというのは、どう考えても内屁端の天敵であるフリーになってやりたい放題の亜毛パンこと亜毛屁端に違いない。
こんな現場では順調に事が進んでいたとしても全てのことが問題の原因となりうるような、そんな状況にもなっているのである。
こちらでは
クリスマスパーティーが始まったブラックホール・スタジオ(Little Mustaphaの部屋)では、張り切りすぎて主要メンバーが早めに集まってしまって、パーティーも早めに始まってしまったために、すでにマッタリした雰囲気になって来ています。
こんなことならいつものように変な出来事があったりした方が楽しいのに、というようなことを各人が思い始めていましたが、そういうことを口にした途端に実際にそういうことが起きたりするのが世の常ということで、誰もそのことは口にしませんでした。
Little Mustapha-----それじゃあ、そろそろ宴もたけなわということね。特製の酒とかも出してみる?
ニヒル・ムスタファ-----たけなわって。まだ6時にもなってないぜ。
Little Mustapha-----そんなこと言っても。みんな早く来ちゃうし。Dr. ムスタファは唐揚げばっかり食べるから、残ってる料理のバランスが変だし。
Dr. ムスタファ-----私は好きなものを食べる。
ミドル・ムスタファ-----まあ残りの料理のバランスを気にする方が変ですけどね。それよりも、さっきから時々出てくる「特製の酒」ってなんですか?
ニヒル・ムスタファ-----まさか密造酒とかじゃないだろうな?
Little Mustapha-----ジャンル的には近いけどね。密造酒っていっても、本当にヤバいやつもあれば、法律上しかたなく密造酒扱いになるのもあるし。でもここに取りい出したるこの酒には何の問題もありません!
Dr. ムスタファ-----なんだ、ただのウォッカじゃないか。
Little Mustapha-----それが、ただモノではないウォッカなんだよね。
ミドル・ムスタファ-----それって、中に入ってるのハラペーニョじゃないですか?もしかして激辛って言ってた自家製のやつじゃないですか?
Little Mustapha-----そのとおり!ペルツウォッカという唐辛子入りのウォッカがあるんだけど、そういうのはどうやって作るのか?とか色々と調べたところ、唐辛子の辛い成分はアルコールとか油に溶け出すってことだったからね。それならハラペーニョでも瓶に入れておくだけで大丈夫ってことで入れてみたら、ペルツウォッカより遥かに辛い飲み物になってしまったよ!
ニヒル・ムスタファ-----変なテンションで盛り上がってるけど、飲んでも大丈夫なのか?
Little Mustapha-----味というか風味はかなりイイんだけどね。辛すぎて一人じゃ飲みきれないと思ったので、特製の酒としてここで振る舞われるのであります!
ミドル・ムスタファ-----また変なテンションですけど。要点を言うと、辛すぎて一人じゃ飲みきれないから、私達に飲ませるって事ですよね。でも不味かったら飲みませんよ。
Little Mustapha-----不味くはないけど、辛いとだけは言っておくよ。それじゃあ、まずは一口だけストレートで味見ということで、各自コップにちょっとだけ入れて。…それじゃあ、行くよ!せーの…!
一同-----メリークリハラペーニョッカスマース!
謎の乾杯で激辛ウォッカを一口のんで、ここで各自が「ウワァ、辛い!」という感じのことを言うというところでしたが、そのタイミングで部屋の電話機の着信音が鳴り出してしまったので、一同顔を赤くして鼻の頭に薄っすらと汗をかいた状態で電話の方を見ました。
いつものように電話の着信音は普通のプルルルというやつでありません。今回はミステリアスなメロディーの音楽でした。