破れかぶれの
その頃、腹黒い雰囲気の漂うテレビ局の応接室では。
テレビ局の偉い人-----ついに始まりましたな。
通信事業者の偉い人-----これだよ、キミ。この混乱。この失態。いくら人気があっても今時それだけで商品は売れん。知名度を上げるにはこういう大失態が必要なのだよ。
テレビ局の偉い人-----苦労してウンサーを手に入れた甲斐がありました。どうやら写真集の予約もどんどん増えているようで。
通信事業者の偉い人-----それはなにより。そうだ。予約数が増えたところで「残りわずか」という表示を付けることにしよう。そうすればいくらでも複製可能だと知らずにさらに予約が増える。
テレビ局の偉い人-----さすがですな。イヒヒヒヒ…!
通信事業者の偉い人-----イヒヒヒヒ…!
この腹黒い人たちの狙いはこういうことだったようである。
強いウンサーを持つといわれる女子アナ達が毎年クリスマス特番で色々とやらかすのだが、それと同時に彼女達の知名度は上がるということに気付いて、そこに関連していると思われるウンサーに目をつけたということである。
そして、狙いどおりウンサーを手に入れ、そのウンサーを身に付けたアイドル達が今はテレビ中継中にもかかわらず大暴れ。彼らがどうしてウンサーの事を知ったのかは解らない。本当に次元の境界が曖昧になっていて、何かのきっかけで偶然知ったのか。あるいは裏に誰かがいるのかも知れない。
腹黒い二人はこれからウンサーをどう利用していくか?と考えながらテレビの映像を見ていたのだが、これまでのクリスマスマーケットの会場の映像が切り替わり、どこかで見たことがあるビルの廊下が映された。
そして制止させようとする警備員を突き倒しながら進む内屁端の姿。おや?と思ったと同時に部屋の外からはテレビと同じ声が聞こえてきたのである。
「邪魔だ!邪魔だ!雑魚どもに用はねえんだ!」
画面の中で内屁端が目の前のドアを蹴破ると腹黒い二人の部屋にバーンという大きな音がして、開いたドアから内屁端が入ってきた。
内屁端-----てめえらか。ウンサーを悪用しているやつらは!
テレビ局の偉い人-----キ、キミ。何なんだねいったい。こ、この方は、スポ…スポ…。
通信事業者の偉い人-----スポンサーに向かってそんなことを言っていいのかね?
内屁端-----やかましいやい!てめえらがどうやって金儲けしようが知ったことじゃねえ。だがな。その下らねえ金儲けのために有望な新人女子アナの未来を潰しやがって。それだけじゃねえぞ。有名になりたい。チヤホヤされたい。ゆくゆくはイケメンの金持ち実業家と結婚したい。そんな彼女達を炎上商法のネタにしやがった。その汚え手でみんなの夢をゴミのように踏みにじりやがって。てめえら人間じゃねえ!叩き切ってやる!
テレビ局と通信事業者の偉い人-----ヒエェ…!
時刻は午前零時。テレビでは一番盛り上がるシーンになっていましたが、これ以上放送時間の延長は出来ないということで次の番組が始まりました。
続きが気になって仕方ないのですが、次の番組でドラマが始まってしまったのでこれ以上テレビを点けていても意味がありません。Little Mustapha達は辛いウォッカでの宴会に集中することにしました。(ちなみに、ドラマといっても麻薬取締官のやつではありません。それから、来年のクリスマス特番のスポンサーは今年とは違っているでしょう。)
Little Mustapha-----結局なんだったのか解らないけど。これまでで一番目茶苦茶なクリスマス特番だったね。
ミドル・ムスタファ-----途中まではまともでしたけど。それもAIにつくられたものの影響だったんですかね。
ニヒル・ムスタファ-----その反動で最後はスゴいことになったのか。
マイクロ・ムスタファ-----いや、もしかするとAIの生成物の再生を防ぐために誰かがわざと目茶苦茶になるように仕向けたとも考えられますよ。長官の孫娘さんがなるべく異常にしてくれって言っていましたし。異常な事が多くなればこれまでAIが普通と思っていたことも普通ではなくなってくるので、混乱が生じるのだと思います。
Little Mustapha-----そういうことだとしたら、このパーティーはまだあんまり異常じゃないんだけど。
ミドル・ムスタファ-----だって、辛すぎて全然酒が進まないですし。
Little Mustapha-----そうだよね。しかも異常にしようと思えば思うほど普通になってしまうというのはボクらの欠点かも知れない。
ニヒル・ムスタファ-----異常になろうとしたことはないけど、言いたいことは解るな。
Little Mustapha-----もしかして犬サンタ君がこういう時のためにサンタの国のサンタの酒とか持ってきてるとか?
犬サンタ-----さっきカバンの中を見たと思うけど、今日はiPadと人形だけだワン!
Little Mustapha-----ということは仕方がない。ここからは激辛ハラペーニョッカで乾杯し続けよう。
ミドル・ムスタファ-----ホントに?
Little Mustapha-----だって、ここで頑張らないと知らないうちにAIの作ったいかにもありそうな世界に丸め込まれちゃうんだよ。ボクらもいつしかそれが普通だからってことでプレゼントのリクエストはしなくなったりして。そんなことは許されないでしょ。
ニヒル・ムスタファ-----そうだな。
マイクロ・ムスタファ-----それは世の中のためになることかも知れません。
Dr. ムスタファ-----やるしかないのか。
ミドル・ムスタファ-----そのようですね。
犬サンタ-----みんな良い子なんだワン!それじゃあ私はジャーキーを食べながら応援するんだワン。
Little Mustapha-----それじゃあみんな。コップにハラペーニョッカを汲んで。…せーの!
一同-----メリークリハラペーニョッカスマース(だワン)!
一同(犬サンタ君除く)-----うわぁ!辛〜っ!
このようにして限界が来るまでLittle Mustapha達は激辛のウォッカを飲み続けたのです。長官の孫娘さんとの通信に使われた人形には動力となるウンサーが残っていなかったので、あれから連絡を取ることは出来ませんでした。それで彼らは知らなかったようですが、テレビ局で起きた騒動があまりにも異常だったためにあの時点でAIによる「いかにもありそうな世界」の生成は止まっていたということでした。
Little Mustapha達にはこの事実は知らせない方が、彼らも世界を救ったという気になるかも知れないのでこのままにしておく方が良いでしょう。
しかし、今回のAIによる「いかにもありそうな世界」を作ろうとしたのは何者なのか?そしてウンサーの存在を腹黒い人たちに教えたのは?
今回はAIをつかっったありそうな世界の構築とウンサーの悪用という二つのことが同時に起きたために最悪の事態は免れることができました。こう考えるとこんな人知を超えたような話であっても物事はバランスを保とうとする方向へ動こうとしているようにも思えます。さまざまな出来事が起きることによってなんとかして均衡は保たれているのです。そのバランスが崩れてしまったらどうなるのでしょうか?世界は「ありそうなこと」だらけになってしまうのか。それともウンサーが混乱をもたらすのか。
長官の孫娘さん達は詳しいことを調査中ということですが、謎は深まるばかり。Little Mustapha達はまた来年もプレゼントをリクエストするはずですが、どうなっていくのでしょうか。
というところで、今回の話はこれでおしまい。今年もあと少しで終わりということで、またBlack-holicの年間の記事数が少ないという反省をしないといけなくなりました。
書くことは楽しいけどネタがないとか。ネタがあっても時間がないとか。言い訳は色々と出来るのですがやっぱりもう少し頑張った方が良いですかね。
次回は大特集を頑張りたい大特集でしょう。
ここはサンタの国のサンタの事務所。イケメンのサンタ君が慌てて扉を開けると中へ入ってきました。
顔面蒼白でサンタの衣装も乱れているサンタ君は事務所にある装置を起動させてマニュアルどおりに操作をしていきました。
そのマニュアルには「サンタの国のサンタの緊急時プロトコル」と書かれています。
急いで操作をしたサンタ君は力尽きたようにその場に倒れ込みました。
(続編のある映画みたいにエンディングのあとにワンシーンを付け加えてみました。)