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#148 「in Gloom」 2012-12-21 (Fri)

 玄関から誰かが入って来た音が聞こえて、ブラックホール・スタジオにいたメンバー達は誰が来たのか?と思いながら静かにして廊下を歩いてこの部屋に向かってくる足音を聞いていました。そして扉が開いて入って来たのは、なんとLittle Mustaphaだったのです。


Little Mustapha-----あれ、もう来てたのか。

ミドル・ムスタファ-----もう来てたのか、って。あなたは大丈夫なんですか?

Little Mustapha-----まあ、大丈夫だけど。

ニヒル・ムスタファ-----それよりも、どこに行ってたんだ?

Little Mustapha-----ちょっとバッティングセンターへね。スッキリしない事が起きてしまったからスッキリする必要があってね。

Dr. ムスタファ-----そんなことで大丈夫なのか?

ミドル・ムスタファ-----思っていたよりも傷は浅いのかも知れませんね。

犬サンタ-----心臓に毛が生えているんだワン!

Little Mustapha-----そういうキミは、犬サンタ君じゃないか。なんだかいつの間にかレギュラーになっているようだけど。  ああ…。そんなことも、もうこれが最後。キミの飼い主は…。もう名前を口にすることさえ許されないのか!  あの偽りなき澄んだ瞳に、ウソだと言え!などと誰が言えようか?(いや、誰も言えない!) ボクの頭にあの最後の声がこだましているよ。ああ…!ああ…!ああ、犬サンタ君。キミと会うのもこれが最後なんだろうね。それじゃ…。

ミドル・ムスタファ-----ちょっと!どこに行くんですか?

Little Mustapha-----バッティングセンター。

ニヒル・ムスタファ-----やっぱり重傷かもしれないぜ。

犬サンタ-----ちょっと待つんだワン!これは全て間違いなんだワン。ご主人様は誤解してるんだワン!

Little Mustapha-----え?!それ、マジで?!ホントに?!

犬サンタ-----そんなに急にテンション上がると気持ち悪いんだワン。

Little Mustapha-----ああ、失礼。それで、何が間違いなの?

ニヒル・ムスタファ-----キミがフラれた話だけど。どうやらサンタの孫娘さんの勘違いでそうなったらしいぜ。ただ、その裏になにかイヤなものを感じないこともないけどな。

Little Mustapha-----そうなの?まあ、おかしいとは思ったんだけどね。ボクは何もしてないのにボクが極悪人みたいな事になってたし。いったいどうなってたんだ?

ミドル・ムスタファ-----まあ、また偽Little Mustaphaが現れたという感じでしょうか?といっても、今回はあなたを偽って手紙を出しただけだったみたいですけど。

犬サンタ-----その手紙のせいでご主人様はあなたと絶交すると言い出したんだワン。でも、それはご主人様にもLittle Mustaphaにも良くないことだから、こうして私がやって来て全てを解決する事になったんだワン!詳しいことは前のページを読んだら良いんだワン!

Little Mustapha-----…ふむふむ。そうだったのか…。さすがは犬サンタ君!会った時からキミはスゴいヤツだと思ってたよ!

犬サンタ-----エッヘン!なんだワン!

ミドル・ムスタファ-----あの、その前に一つ問題があるとも思うのですが…。

ニヒル・ムスタファ-----そうだな。ミョーに自信満々でキミを助けに行ったヤツがいるんだが。

Little Mustapha-----ん?!誰?ニコラス刑事?

ミドル・ムスタファ-----ちょっと、本人のいないところでそれをやると、なんか悪意を感じるからやめましょうよ。

Little Mustapha-----ああ、そうだね。というかマイクロ・ムスタファはいずこへ?

ミドル・ムスタファ-----いずこ、って。

Dr. ムスタファ-----キミを助けに絶倫の荒野に旅立ったぞ。

一同(Dr. ムスタファ除く)-----…?

ニヒル・ムスタファ-----先生、それはギャグのつもりなのか?それとも本気で間違ってるのか?

Dr. ムスタファ-----科学的には…。あってると思ったが違ったか?

ミドル・ムスタファ-----絶望の荒野って言ってましたよ。というか、絶倫の荒野にはあまり行きたくないですし。なんでLittle Mustaphaがそこにいると思うんですか?

Dr. ムスタファ-----まあ、科学的にはあり得る話だとも思ったしな。とにかくマイクロ・ムスタファとはどうすれば連絡が取れるのか、考えないとな。まあ、その前にこれまでの出来事を何とかしてもらわないと。プレゼントの事もあるんだしな。

ミドル・ムスタファ-----そうですね。Little Mustaphaが戻ってきたんだし。とりあえず犬サンタ君にこの状況をなんとかしてもらわないといけませんよね。

犬サンタ-----そうなのかワン。それじゃあ説明するんだワン。「振り出しに戻る券」を使って二人の関係を元に戻せば良いんだワン!

Little Mustapha-----なんだそれ?そんな都合の良い券があるなら、いろんなことが上手くいってしまうよ。ここはふざけないで真面目にやろうよ。

犬サンタ-----何を言ってるのかワン?去年渡した「振り出しに戻る券」だワン!アレはご主人様が何か悪いことが起きるかも知れない、と言って渡した券だったんだワン。勘違いされないようにメッセージカードとして渡したんだワン。そうすればあなた方が受け取ってくれるから、って言ってたんだワン!だけど去年はすでにあなた方は死んでたから使いようがなかったんだワン。

ミドル・ムスタファ-----もしかしてアレの事ですか?額に入れて飾ってある。

犬サンタ-----アハハハハ!だワン!なんで額に入れるのかワン!おかしな人なんだワン!アハハハハ!だワン。

Little Mustapha-----そんなに笑わなくても良いじゃないか。

犬サンタ-----でも普通は引き出しに入れるものなんだワン。

Little Mustapha-----だって、そんな券だったなんて知らないし。

ニヒル・ムスタファ-----ただしメッセージカードだったとしても額には入れないぜ。

Little Mustapha-----そんなのはどうでも良いから、早くこの券を使って元に戻さないと。

Dr. ムスタファ-----元に戻って二人はまた「ただの知り合い」に、ってことか。

ミドル・ムスタファ-----でも、今よりは良いんじゃないですか。

Little Mustapha-----アッ!良いこと考えたぞ。最初の方の偽の手紙を読んでサンタの孫娘さんは喜んでた、って事だったけど。そのあたりの状態に戻すっていうのは出来ないの?

犬サンタ-----そんなことは許されないんだワン!偽の手紙が届いた事実をリセットしない限り、最終的には今の状態になってしまうんだワン。

Little Mustapha-----なんか難しくてよく解らないけど。

ミドル・ムスタファ-----過去に干渉するというネタはいつもややこしいですからね。

犬サンタ-----どっちにしろLittle Mustaphaにあんなカッコいい手紙は書けないから、それは失敗するんだワン!余計な事はしない方が良いんだワン!

Little Mustapha-----そうなのか、それじゃあ仕方ないな。ところでマイクロ・ムスタファがいないのは大丈夫なの?

犬サンタ-----それは知らないんだワン。絶望の荒野なんて聞いたことないんだワン。

ミドル・ムスタファ-----その券を使ったことによって戻ってこられなくなるとか、そういうことだと困りますよね。

Dr. ムスタファ-----でも、その券を使ったらイロイロとなかったことになるんだから、ヤツがどっかに行ったのもなかったことになるんじゃないのか?

犬サンタ-----それは解らないんだワン。「振り出しに戻る券」を使うのは初めてだからどうなるか解らないんだワン。

Little Mustapha-----うーむ…。じゃあ、仕方ない。一刻も早く元に戻したいところだけど、ここはテレビでも見ながら待ちましょう。

ニヒル・ムスタファ-----でもリモコンがないぜ。

Little Mustapha-----え?!そんなことないよ。リモコンなら目の前にあるし。

ミドル・ムスタファ-----あれ?ホントだ!そんなところにあったなんて。

Dr. ムスタファ-----どうして気づかなかったんだ?

Little Mustapha-----これはボクの考えた新しい収納方法だけど。こうやって「目の前にあると気づかないという場所」にしまうことによって部屋がスッキリするからね。ここにはその他のリモコンとかゲームのコントローラとかもしまってあるけど。まるで何もないかのようでしょ?

ニヒル・ムスタファ-----それって、ただゴチャゴチャしてて見つけられないだけだったんじゃないか?

Little Mustapha-----いや、ちがうよ。これは「目の前にあると気づかないという場所」だから気づかないんだよ。

犬サンタ-----そんなことはどうでも良いんだワン!早くテレビをつけるんだワン!

Little Mustapha-----ああ、そうか。それじゃあ、スイッチオン!

ミドル・ムスタファ-----それ、言わなくても良いんじゃないですか?

Little Mustapha-----でも言った方が反応が良くなるし。

ニヒル・ムスタファ-----ウソだろ?

Little Mustapha-----まあね。

 犬サンタ君がやって来て今回の騒動はなかったことに出来るのか?という事になってきましたが、その前にテレビを見ることになったようです。Little Mustaphaがスイッチを入れるとミョーな間を空けてテレビの画面が明るくなりました。なんで液晶テレビってあんなモッサリした感じなんでしょうね?でも、最新型ならもっと早いのですかね?と、いつも思うのですが、それはこの話と関係ありません。

 テレビではいつもの「夕方のニュース番組」がやっているようでした。


スタジオのキャスター-----…まことに痛ましい事件ですね。それでは続いてのコーナーに行ってみましょう。「冬のハイテクスマート祭り」から中継です。それでは不死身の人気女子アナのウッチーこと内屁端アナを呼んでみたいと思います。ウッチー!

内屁端-----はい!こちら新しいボディーを手に入れて美しさに磨きのかかったウッチーです!みなさん、ここがどこだか解りますかぁ?

スタジオのキャスター-----えーと。ハイテクスマート祭りの会場ですよね?

内屁端-----それはハズレです!私がいるのはハイテクスマート祭りの会場の一画なんです!そして、こちらをご覧下さい。これは今では「持っていない人は人間ではない」とも言われているスマホ。つまりスマートフォンを略したものなのですが、ここで展示されているのはこのスマホ、ではなくて、このスマホにインストールして使うアプリなのです。

スタジオのキャスター-----アプリですか。それはどういったアプリなのでしょうか?

内屁端-----みなさんはこんな経験はないでしょうか?目の前にご馳走があると思って食べてみたら、実は展示用のサンプルだった、ということは。

スタジオのキャスター-----ああ、良くあるんですよね。ゴムのようなビニールのような、酷い味なんですよね。

内屁端-----そうなのです。あんな失敗はもうこりごり、という方のために開発されたこのアプリ。早速試してみたいと思います。ここに美味しそうなカレーが二皿ありますが、色が違っているようですね。両方とも美味しそうなのですが、本当に食べられるのか?そんなときにはこのアプリを起動して、カメラで食べ物を撮影すれば良いのです。(カシャ!)…さあ、解析が終わったようです。

スマホ-----「コレハ・カレー・デス。アンゼンナ・タベモノデス」

内屁端-----お解りいただけたでしょうか?写真を解析してアプリが食べられるかどうかを教えてくれました。それではもう一つのお皿で試してみましょう。(カシャ!)

スマホ-----「コレハ・タベラレマセン!コレハ・ウンチ・デス。コレハ・ウンチ・デス。カレーアジ・デ・スラ・アリマセン!」

内屁端-----このように、このアプリで調べる事によって、誤ってウンチを食べてしまう事もなくなるというワケです!それでは解析が本当に正しかったのかどうか、試しにこの偽のカレーを食べてみたいと思い…

スタジオのキャスター-----あっ!それはよした方が良いと思いますよ。それよりも開発者の話を聞いてみたいですね。

内屁端-----そうですか。それではお話を聞いてみたいと思いまぁす!こちらにいるのがアプリの開発者である多部田 雲治さんです。このアプリはどのようにして生み出されたのでしょうか?

多部田-----えーとですね。その…以前に私がカレーと間違えて食べてしまったウンt…


 ここでLittle Mustaphaがテレビを消しました。


Little Mustapha-----マイクロ・ムスタファが戻ってこないから、なんだか変な気分にさせられてしまったな。

ミドル・ムスタファ-----そうですよね。あんなもので実験しなくても良いのに。

犬サンタ-----でも不思議なんだワン。どうしてカレーとウンチの区別がつかないのかワン?あれは全く違うものなんだワン!

Dr. ムスタファ-----それは人間に与えられた最大にして最後の課題でもあるんだがな。

ニヒル・ムスタファ-----なんだよそれ?どうでもイイけど、しばらく食べる気が失せるな。


 どうでも良い会話が始まりかけていた時でした。会話の途切れたタイミングを見計らって電話がなり出しました。控えめに鳴り出したその電話の音にはいつものように驚くこともありませんでした。そして、いつものようにLittle Mustaphaがハンズフリーモードで電話に出ることになります。

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